黒騎士爆走物語

事の発端3

つい最近の情報をちゃっかりと入手している様子に、目ざといとキューは思わず半目になる。
ラタ街は戦地から逃れてきた難民達が主に暮らす街である。
戦線は移動したとはいえ、近くにはそういった戦争に関連する貯蔵庫や荷物がちらほらと放棄されている。
キューが見つけたのはそんな放棄された研究施設の一つだった。

「あそこはあんまり俺が管理したくないんだよな。てかまだ見つけたばっかりで誰かに使うには調整が……」

できていない、と続けるつもりだった言葉は爆音にかき消された。

「えっ」
「は」

ついで背中に熱波。
いったいなにが、と振り向いたキューの視界に入ってきたのは。

人々の悲鳴。
暴れてハーネスにつながったベルトをぶっちぎり、逃げ出すゴーストホース。

そして、
燃え盛る幌馬車だった。

『ええええええええ！？』

突然の出来事に驚愕するキューと、大事な商売道具が消滅していくのを目の当たりにしたシン。
二人の絶叫が、澄みきった空へ響き渡った。