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夢魔と人形

夢の裏側・4

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「昔とは違い、今や技術も発展した。わざわざ人間の感情を引き出さなくたって、美味い魔力なんていくらでも溢れとる。……だというのに」

背後から衝撃。
固定の甘かった足がゴーレムを蹴ったのだと認識する前に、ぐるりと視界が回る。

「人間の女から喜んで精気を奪えないやつなんてインキュバスとは呼べない、んじゃと。価値観の古い老いぼれには困ったもんじゃよ」

形勢は逆転し、ゴーレムはインキュバスによってベッドに組みしかれる。
やれやれと気だるげに肩をすくめる動作と違い、押さえつけている手には相当の力が込められていた。
この件に関してインキュバスは強い感情を抱いている、とゴーレムはひっそりと認識を更新した。

「会館では種族名で呼ばれるじゃろう? 各種族から一体ずつ集められたわしらに、呼び間違えるような仲間は存在せんからな」

ぎち。
銃口を避けるように握られた手のひらの下で、込めた感情が軋む。

「馬鹿にせんでくれよ? それが、わしにとってはひどく居心地がいい。認めてもらえた気がするから」
「馬鹿にする予定はありません」

ですが、とゴーレムは言葉を続ける。
強めに拘束されている状態でも平然とした態度で言葉を紡げるのは、機械由来の機能なのか、ゴーレム自身の図太さ故か。
おそらく後者だろうな、と夢の中で散々騒動に巻き込まれたインキュバスは見当をつけた。
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