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夢魔と人形

人間の反撃・1

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『こっちかな』
『こっちだよ』
『足音がした』
『銃声も!』

きゃらきゃらと笑い声。
小さかった音はあっという間に大音量と化し、同じ顔の群れが迫りくる。
こちらも緊急と判断したのか、わずかに浮いて移動するそれらは羽を持つ虫が軍勢を作って移動しているようでもあった。

瞳に恋という名の狂気を宿したゴーレム達は、その数の暴力を活かして視線を縦横無尽に巡らせる。
それがひっきりなしに続くものだったから、追われる方はたまったものではない。

『いた!』

恋するゴーレムの一機が、声を上げる。
同じ角度とタイミングで全員が同じ方向へ首を捻れば、記録にあるエプロンのリボンが翻るのを確かに視認した。
一瞬で角を曲がった向こう側に消えたが、あの持ち主は間違いようがない。

『マッピー・マーフィーだ』
『インキュバスも一緒かな』
『あの子を追いかけたいなあ』

各々勝手に喋る意見は違えど、大まかな方針は共通しているのが厄介なところである。

『捕まえよう』
『捕まえてインキュバスの居場所を教えてもらおう』
『怪我させるのはダメかな』
『記録してなきゃセーフ!』

さして時間を置かずに決定した予定に従い、恋するゴーレム達は殊更スピードを上げて追いすがる。
無邪気な悪意が笑いながら角を曲がった、その時だった。
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