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夢魔と人形

人形の反乱・9

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どんな方法思いついたんじゃ、とひとりごちる初老男性を小脇に抱え直しながら、マッピーは唇の端を吊り上げる。
その笑顔は、どこぞの火の玉小僧のような悪戯っ子の笑みであった。

「きっとインキュバスにもできますよ。なんたって、わたしもあなたも問題児であることに代わりはないですからね」

そうして伝えられた作戦内容。
インキュバスが理解するまでに時間はかからなかった。

「……模範的な生活を送っている身としては気が乗らんのう」

この年になって児童扱いされたインキュバスは、心にもないことをぼやく。

「ぶっちゃけこの程度の感情ならかわす手段はいくらでも思いつくわい」

死因第一位が痴情のもつれな種族を舐めるなよ、となにも誇れない事実に胸を張る初老男性へ、マッピーは一瞬だが床に落としてやろうかという選択肢を浮かべてしまった。

「いや、別に……提案しただけですし、インキュバスがいいって言うんなら、それでいいんですけど、……」

それが原因でゴーレムが傷害事件起こしていなくなっちゃったら困るな。
あまりに自己中心的な考えだったので、マッピーは言葉を喉元で止めた。

「それにその解決方法、結構力技じゃろ? わしは帰りの脱出のために温存して──」

「インキュバスが力を行使する理由があればよいのですか」
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