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夢魔と人形

機械人形の苦悩・12

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「それにあの人造っ子、わしのこと嫌いじゃろ。話しかけても逆効果なんじゃないか?」

これまでの迷惑行為も兼ねて実力行使に出てやろうか、と腰に差した剣に意識を向けた時、続けられた言葉にはたと気を取られる。

「そう、いえば、確かに……言葉での警告とか威嚇射撃や拘束をしてないですね、ゴーレム」
「老い先短い老人へなんとひどい扱いじゃ」

出会い頭に頭部へ銃口、ゴーレムのインキュバスに対する行動はその一択である。
わざとらしく泣きマネをするインキュバスへ白けた視線を送りながら、マッピーはなぜゴーレムがそんな対応をするのか考えを巡らせた。
使用済みの雑巾を持ってきていたダストカーに放り込むと、出した結論は。

「よっっっぽど生理的に合わないとかですかね」
「『魔族の裏切り者だからなにかしでかさないか警戒している』と言われたほうがマシに思える理由じゃな」

喉に力を込めて放った言葉には大層な感情が込められていて、インキュバスはむしろ泣きマネをやめた。
一方でマッピーの方はというと、一体の魔族の心を大層傷つけたという罪悪感は特になく。
代わりに提示された理由に、思い出していたのは先日のトレント暴走事件の後片付けだった。
テンタクルがかわいらしい顔をしかめて言う。

『魔族側の中枢とも言える大事な魔王城の情報を人間側へ売ったのが、そこのインキュバスなのよ』

「……あなたがそれ言っちゃっていいんですか」
「別に隠しとらんもん。わし、情報提供の功績で軍事裁判免れたし、ここに置いてもらっとるのもある意味それのおかげじゃしな」

しばらくは安泰じゃ~、と呑気そうにふわふわ漂うインキュバス。

「置いてもらってるって意識があるなら、ちょっとはナンパを控えたらどうですか。嫌われて追い出されても知りませんよ」
「組織は嫌いなんて感情論で動かんわい」

その組織においてよほどの不利益がもたらされない限り、周りからの訴えは聞き流されたり。
逆に人事の些細な理由でとんでもねえ所へ異動になったり。
社会の厳しい現実である。
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