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花と触手
部屋の中、ふたり
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どうして。なぜ、こんなことになってしまったのか。
滂沱のごとき汗を流しながら、ミミックは触手を巻き付けられ、宙吊りにされた身で必死に考える。
トレントからよこされた花を大切に運び、テンタクルの部屋を訪ねて渡した。
ら、音もなく伸ばされた触手に吊られてこの状態、というわけだ。
うぞり、肉色の紐が脈動する。
普段よりも太くなっている気がするそれはちょっとの力では引き剥がせないほど強く絡みついてきており、肌越しにみちりと己の中が圧迫される恐怖を感じた。
戦争だった頃に襲われた人間はこんな気持ちだったのだろうか、とミミックが現実逃避をしている正面で、薄暗い部屋で表情の見えないテンタクルが初めて口を開いた。
「ねえ、ミミック。わたし、怒っているのよ」
「あ、はい、だろうなって思ってた……」
「いつも注意しているのにノックもなしに勝手に部屋に入ってくるし、わたしを置いて勝手に共有スペースへ行ってしまうし。
わたしの知らないところで勝手に笑顔になって帰ってくるのも気にくわないわ」
そんな無茶苦茶な、と言い分の3分の2ほどに物申したいミミックであったが、テンタクルの台詞がまだ続いていたので口をつぐんだ。
なにより腹立たしいのは、と艶やかな薔薇色の唇が言葉を紡ぐ。
「これよ」
「えぇ?」
眼前に差し出されたのは、渡したばかりの花だ。
彼にラッピングの概念はなかったためにそのまままとめただけの文字通りの花束だったが、肝心の花はトレントから手折ったばかりのために萎れもせずにテンタクルの手に収まっている。
「あなた、これがどういう意味なのかわかっていて?」
「意味? ええと……テンタクルのことを思ってあげただけなんだけど」
ほっそりとした指が花弁の縁をなぞる。
薄暗い部屋でも映える白い肌は、同じく白い花の色によく似合っていた。
突きつけられた質問の意図がよくわからず、ミミックの頭は疑問符が埋め尽くされる。
分からないといえばトレントとインキュバスの反応もよくわからなかったな、という単純な連想から言い含められていた言葉を伝える。
「……ふーーーーん」
嘘は言っていない。
が、その言葉がテンタクルのなにかを更に刺激したことは間違いなかった。
滂沱のごとき汗を流しながら、ミミックは触手を巻き付けられ、宙吊りにされた身で必死に考える。
トレントからよこされた花を大切に運び、テンタクルの部屋を訪ねて渡した。
ら、音もなく伸ばされた触手に吊られてこの状態、というわけだ。
うぞり、肉色の紐が脈動する。
普段よりも太くなっている気がするそれはちょっとの力では引き剥がせないほど強く絡みついてきており、肌越しにみちりと己の中が圧迫される恐怖を感じた。
戦争だった頃に襲われた人間はこんな気持ちだったのだろうか、とミミックが現実逃避をしている正面で、薄暗い部屋で表情の見えないテンタクルが初めて口を開いた。
「ねえ、ミミック。わたし、怒っているのよ」
「あ、はい、だろうなって思ってた……」
「いつも注意しているのにノックもなしに勝手に部屋に入ってくるし、わたしを置いて勝手に共有スペースへ行ってしまうし。
わたしの知らないところで勝手に笑顔になって帰ってくるのも気にくわないわ」
そんな無茶苦茶な、と言い分の3分の2ほどに物申したいミミックであったが、テンタクルの台詞がまだ続いていたので口をつぐんだ。
なにより腹立たしいのは、と艶やかな薔薇色の唇が言葉を紡ぐ。
「これよ」
「えぇ?」
眼前に差し出されたのは、渡したばかりの花だ。
彼にラッピングの概念はなかったためにそのまままとめただけの文字通りの花束だったが、肝心の花はトレントから手折ったばかりのために萎れもせずにテンタクルの手に収まっている。
「あなた、これがどういう意味なのかわかっていて?」
「意味? ええと……テンタクルのことを思ってあげただけなんだけど」
ほっそりとした指が花弁の縁をなぞる。
薄暗い部屋でも映える白い肌は、同じく白い花の色によく似合っていた。
突きつけられた質問の意図がよくわからず、ミミックの頭は疑問符が埋め尽くされる。
分からないといえばトレントとインキュバスの反応もよくわからなかったな、という単純な連想から言い含められていた言葉を伝える。
「……ふーーーーん」
嘘は言っていない。
が、その言葉がテンタクルのなにかを更に刺激したことは間違いなかった。
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