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箱と触手
若い内のやらかしは人間も魔族も変わらない・2
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「頼んでないもん! そんなバカなことするマッピーが悪いんでしょバカ!」
「そもそも収容違反なんてバカやらかすミミックのせいでしょうがこのバカ!」
「どっちもバカよ」
バカバカと頭の悪い口喧嘩を一言で収拾させたのは、ミミックが腰にくくりつけた箱に座るテンタクルであった。
耐水性のシートを敷き詰めた箱の中、触手の下半身をちょこんと納めるテンタクルのなんと冷めたことか。
気だるげに髪の一房を指に絡めて暇潰しをする様が、無関心さを演出している。
「言い争ってる暇があったら、手を動かしなさいな。
仕事中でしょ」
「おっしゃる通りで」
今日も触手姫の言葉の切れ味は抜群である。
破壊した区画を修理する業者の手伝いを任命されたマッピーは、ぐうの音も出ず同意するしかなかった。
玄関には賽の目状に刻まれた瓦礫を拾い集めた押し車が置かれたままだ。
マッピーがミミック達の仮住居を訪ねたのは、単に彼らの様子が気になったからである。
「ところで、あの時言ってたぼくらを外に出してくれるってお願いはまだ上司の人にしてないの?」
「あんだけ怒られた直後でできるわけないでしょうがバカ。
ミミックの同伴でテンタクルが部屋の外に出ても文句言われないようになっただけありがたいと思えバカ」
「バカじゃないもん……」
ミミックとテンタクルの上には、相変わらず分厚い天井がある。
仮住宅とはいえ魔族を収容する施設の頑強さに抜かりはない。
ただ、魔王のごとき覇気を放っていた主任が落ち着いたタイミングを見計らい、かろうじてテンタクルの室外への外出要請は通った。
一つ、ミミックかマッピーを同行につけること。
一つ、粘液が付着するなどなにか異常が起こればすぐに各エリアに備わっているマイクに向けて報告すること。
その他諸々の条件付きで、事前に知らせずとも室外へ出られるようになったのだ。
元よりテンタクルが部屋から出てはいけないという規則はなく、骨を折ったのは粘液の毒性を危惧していた3-A区画担当者への説得くらいなものだったが。
……正確に言えばほとんど説得用の言葉を考えたのはメカクレ先輩なのだが、マッピーには事実をわざわざ告げる気はさらさらなかった。
十割マッピーのおかげと思わされているミミックは、おかげでバカと連呼されてもむっつりと口をつぐむしかなかった。
「そもそも収容違反なんてバカやらかすミミックのせいでしょうがこのバカ!」
「どっちもバカよ」
バカバカと頭の悪い口喧嘩を一言で収拾させたのは、ミミックが腰にくくりつけた箱に座るテンタクルであった。
耐水性のシートを敷き詰めた箱の中、触手の下半身をちょこんと納めるテンタクルのなんと冷めたことか。
気だるげに髪の一房を指に絡めて暇潰しをする様が、無関心さを演出している。
「言い争ってる暇があったら、手を動かしなさいな。
仕事中でしょ」
「おっしゃる通りで」
今日も触手姫の言葉の切れ味は抜群である。
破壊した区画を修理する業者の手伝いを任命されたマッピーは、ぐうの音も出ず同意するしかなかった。
玄関には賽の目状に刻まれた瓦礫を拾い集めた押し車が置かれたままだ。
マッピーがミミック達の仮住居を訪ねたのは、単に彼らの様子が気になったからである。
「ところで、あの時言ってたぼくらを外に出してくれるってお願いはまだ上司の人にしてないの?」
「あんだけ怒られた直後でできるわけないでしょうがバカ。
ミミックの同伴でテンタクルが部屋の外に出ても文句言われないようになっただけありがたいと思えバカ」
「バカじゃないもん……」
ミミックとテンタクルの上には、相変わらず分厚い天井がある。
仮住宅とはいえ魔族を収容する施設の頑強さに抜かりはない。
ただ、魔王のごとき覇気を放っていた主任が落ち着いたタイミングを見計らい、かろうじてテンタクルの室外への外出要請は通った。
一つ、ミミックかマッピーを同行につけること。
一つ、粘液が付着するなどなにか異常が起こればすぐに各エリアに備わっているマイクに向けて報告すること。
その他諸々の条件付きで、事前に知らせずとも室外へ出られるようになったのだ。
元よりテンタクルが部屋から出てはいけないという規則はなく、骨を折ったのは粘液の毒性を危惧していた3-A区画担当者への説得くらいなものだったが。
……正確に言えばほとんど説得用の言葉を考えたのはメカクレ先輩なのだが、マッピーには事実をわざわざ告げる気はさらさらなかった。
十割マッピーのおかげと思わされているミミックは、おかげでバカと連呼されてもむっつりと口をつぐむしかなかった。
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