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箱と触手
夜の空の下・6
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「なに、……なんの話?」
ミミックがとうとう脱走の動機を話した。
が、事の発端になった会話を聞いていないマッピーにはまるで分からない状態が継続している。
『人質』としての役目を違えたからと言って悪と断定するほどマッピーは職員としての心を固めていない。
どこまでも中途半端な気持ちでは足場が悪すぎて、剣先は安定せずに地面を向いた。
べり。
剥がれるような音はひび割れではなく、ミミックの身体から鳴った。
ダメージは見えないだけで、蓄積されていた。
間髪入れずに切り落とされ、接合にも限界がきているのだ。
ちぎれて離れた腕を水中をもがくようにもう一度繋ぎなおして、ミミックはまた引っ張り続ける。
みぢみぢといういやな音は、距離の遠いはずのマッピーの方がよく聞き取っていただろう。
これ以上切ると、いよいよミミックの身体は戻らなくなると察した。
剣先はまだ持ち上がらない。
「そのままだと貴方の腕、ちぎれますよ、いいんですか」
マッピーは斬撃の代わりに現実を浴びせかける。
日中あれだけ正論にやり込められて、泣いていたはずのミミックは微動だにしない。
「人間の敵だとみなされて、ミミック族が殲滅させられてもいいんですか!」
剣は振るえない。
言葉では彼を止められない。
剣を振るってかいた汗がじわじわと冷たくなって頬を流れていく。
マッピーは、必死で壁を引っ張り続ける目の前の魔族に苛立ちを覚えていた理由をようやく理解した。
こうなりたい夢を持ち、自分で考えて決めて、行動を一度起こせば頑なに貫き通そうとする。
ああ、今一度認めよう、ミミックには勇気がある。
勇気も思考も決意も、マッピーにはないものばかり持っている!
「やめろって言ってるでしょ!」
いつものような格好をつけた呆れ顔ではない、くしゃりと歪めた目元はブサイクだ。
目の奥、脳より少し下の方でにじむ熱が止められない。
とうとう浴びせかける現実も、言葉の種類も尽きて、マッピーはむき出しになっただけの感情をぶつける。
ミミックがとうとう脱走の動機を話した。
が、事の発端になった会話を聞いていないマッピーにはまるで分からない状態が継続している。
『人質』としての役目を違えたからと言って悪と断定するほどマッピーは職員としての心を固めていない。
どこまでも中途半端な気持ちでは足場が悪すぎて、剣先は安定せずに地面を向いた。
べり。
剥がれるような音はひび割れではなく、ミミックの身体から鳴った。
ダメージは見えないだけで、蓄積されていた。
間髪入れずに切り落とされ、接合にも限界がきているのだ。
ちぎれて離れた腕を水中をもがくようにもう一度繋ぎなおして、ミミックはまた引っ張り続ける。
みぢみぢといういやな音は、距離の遠いはずのマッピーの方がよく聞き取っていただろう。
これ以上切ると、いよいよミミックの身体は戻らなくなると察した。
剣先はまだ持ち上がらない。
「そのままだと貴方の腕、ちぎれますよ、いいんですか」
マッピーは斬撃の代わりに現実を浴びせかける。
日中あれだけ正論にやり込められて、泣いていたはずのミミックは微動だにしない。
「人間の敵だとみなされて、ミミック族が殲滅させられてもいいんですか!」
剣は振るえない。
言葉では彼を止められない。
剣を振るってかいた汗がじわじわと冷たくなって頬を流れていく。
マッピーは、必死で壁を引っ張り続ける目の前の魔族に苛立ちを覚えていた理由をようやく理解した。
こうなりたい夢を持ち、自分で考えて決めて、行動を一度起こせば頑なに貫き通そうとする。
ああ、今一度認めよう、ミミックには勇気がある。
勇気も思考も決意も、マッピーにはないものばかり持っている!
「やめろって言ってるでしょ!」
いつものような格好をつけた呆れ顔ではない、くしゃりと歪めた目元はブサイクだ。
目の奥、脳より少し下の方でにじむ熱が止められない。
とうとう浴びせかける現実も、言葉の種類も尽きて、マッピーはむき出しになっただけの感情をぶつける。
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