吾輩は駒である

夜美神威

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ネオショートショート

第二十五話「配役注射」

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幼い頃家族団らんの時
皆こぞってテレビにかじりついた
そこには憧れのスター達が華やかな世界を彩り
やがては僕の運命をも左右する

そう左右してしまう事になろうとは・・・

大学を卒業した僕は家族の反対を押し切りとある劇団に所属した
役者になりたかった
ドラマ・映画・舞台などで配役になりきり

まるで
ベテランになるとまるで別人の様に

そんな役者を目指していた

しかしそこで待っていた物は想像を超えた厳しい世界だった
小さな劇場周りで役など貰えずひたすら修行の日々
狭い部屋に劇団員が男女関係無く雑魚寝しては寝食共にして

「おい如月!!」
「はい」
「お前の本気はその程度か!!」

(うわ~鬼軍曹~今日も如月先輩のこと怒鳴ってるよ)

ある日舞台終わりで銭湯に行った時の事
隣に居た妙な客・・・行商?に声を掛けられた

「あんた役者かね?役者は感情をコントロール出来ないとダメだよ」

何が分かるんだよ素人に・・・と思いつつその男の話に付き合った

「いいか姿や形はその場では変えられねぇまぁ特殊メイクしたら話は別だが
声色にも限界がある・・・で役者に必要なのは何か分かるか坊主」

なんだろう・・・

「役者にはな(魂)これだ!!」

己が心を意のままにコントロール出来れば
どんな役だってやりこなすことは出来る」

脱衣所でその行商に進められたのはトランクケースに入った注射器と各液体の瓶

「刑事・探偵・エリートサラリーマンにハンサムガイからダメ男まで
何でも演じ分けられる薬だよ、良かったら試してみな」

怪しいな・・・第一注射器なんて持ってて良いのだろうか・・・

「お幾らですか?」

「タダで良いよ、どうせこんな物を使う役者は大成しないからね、

見返りは期待しない」

一応貰ったのは良いが説明書が無い

そんなある日俺は初めて役を貰った!主役級だ・・・と言ってもゲイの役だけどね
誰もやりたがらない訳だ・・・男同士でキスシーンまである

演技に自信がなかった

でもこれは最大のチャンス・・・逃したらダメだ!!

例の薬を使おう・・・

え~いこの薬だ

(同性愛者の役の薬)

舞台が始まった、初めてスポットライトを浴び台詞を
お腹の底から吐き出している
緊張はしている・・・が一向にあの薬は効いてこない
舞台が進むにつれ物語の中に自分の・・・
しいて言えば自分の演じている役が同化して
一つの作品になっている皆で作り上げている

喜びのようなものを感じていた
あんな薬に頼ろうとした俺がバカだった

舞台は終わり汗だくになった俺は団員が引き上げていく中
一人舞台の袖で感極まっていた
自分にとっての役者としての第一歩

そこへあの鬼教官が
「如月!今日は見直したぞ!よくやったな!」
「教官♪えっ・・・何だこの感じ・・・あの薬が今頃になって・・・」
「どうした?如月?目を潤ませて・・・お前・・・まさか・・・」
「ダメだ・・・感情が・・・抑え・・・ら・れ・な・い・」
「教官♪」
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