あたたかく光る

たまこ

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6話

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 ミウはどうしてこんなに嫌われているのに自分は生きているのだろうかと考えた。
自分はなにも持っていないし、なにも出来ない。

(そうだ、そうだった。僕はみんなのハオを守るために生きてるんだ)

「自分は自分のために生きてるんじゃない。勘違いするな。」とミウは自分に改めて言い聞かせた。

自分のために生きる意味はなくても、ハオにのために生きている意味はある。

落ちこんでいた自分をそう奮い立たせた。


 「ミウ~!探したよ!もう出発するって」
「⋯ハオもう大丈夫⋯?」
「うん、ばっちし!ありがとう!」
「そっかよかった」

ハオはすっかり元気になっておりミウは安心した。

「いてっ⋯」

ミウは立ちあがるととてつもない足の痛みを感じた。
無理をしすぎたのだろう。

「ミウ?!大丈夫?!いま呼んでくるから待ってて」
「いやっ、いいよ!」

と言ったが、ハオは既に走って行ってしまった。

「どうしよう」とオロオロしていると、ハオとアルンとエリルがやってきた。
特にエリルにはとても嫌われており、ミウを見るなり睨みつけた。

今朝のこともあってミウは縮こまった。

「ミウ、足が痛いみたいで」
「はっ、そんなやつほっとけばいいだろ」
「なんでそんな事言うの!?エリルの意地悪!」
「なんだと?!」
「足をみせてみろ」

ふたりが喧嘩をしている中、アルンがミウに話しかけた。

「いえ⋯僕大丈夫なので」
「いいから」

と足をみるとミウの足は青紫になっていた。

「痛かっただろう」

初めて触れた優しさにミウはじんわり心があたたかくなった。

アルンはミウの足に手際よく包帯を巻いてくれた。

「しばらくは安静に、だ」
「はい、ありがとうございます」

処置が終わってもまだふたりは喧嘩をしていたが、アルンが「出発するぞ」と言い終止符がうたれた。


 がたんがたんと馬車に揺られる。

「ハオ揺れ大丈夫?」
「うん、酔い止めもらったから!」
「そっか」

ハオは酔い止めをもらったようでもう酔って具合が悪くなる心配はないらしい。
それにミウはほっとした。

しばらく揺られていると、ミウは空腹を感じた。
長時間歩いたのに、昨日の夜も今日の朝も食べられず胃が空っぽだ。

この空腹を忘れたいとミウは目をつぶり寝ようとした。
が、あまりの空腹に眠ることができない。

ぐぅとなるお腹の音。

「ミウお腹減ってるの?」
「う、ううん。減ってない」
「そうなの?」 
「うん」
「あ、ご飯といえば、昨日僕具合が悪くなった時ね、エリルがお粥作ってくれたんだよね。獣人って怖いのかなぁっておもってたけど優しいね」

「それはハオだけにだよ」と言いたかったが、ミウは自分が悪いことをしたから嫌われていると思っているのでそんなことは言えなかった。

お粥の話をされてミウの空腹はどんどんと増していき足も心もお腹も痛くなってきた。
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