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俺の名前は花京院承太郎。
本名かって? よく聞かれるけど、これはマジ。
にしてもすげー名前だよな。
父さんがジョジョっていうアニメが好きらしくて――あ、父さんは花京院明典っていうんだけど――そこから貰ったらしい。
ちなみに兄貴は花京院ジョナサンっていうんだ。日本人なのに横文字かよってね。半端ねえよな。
まあお陰様で、一発で人に覚えてもらえるし、名前で弄ってもらえるし、全然嫌いじゃない。(人生で一番言われたセリフは親御さんジョジョ好きなの? だけどね)
そんな俺、あだ名は昔からじょうちゃん。
幼稚園生の頃から、社会人一年目になった今でも同じ。
仕事が終わったら合コン三昧で、得意の手品とじょうちゃんスマイルで、大体俺の一人勝ち。
この顔に生んでくれた明典と妙子(お袋)には超サンキューって感じ。
その日の合コンも盛り上がり、二次会のカラオケで狙ってた巨乳美人のユキちゃんとイイ感じになれて、このままお持ち帰りできちゃうかも……って思ってたのに、明日早いんだって振られちゃった。
テンション低めに夜道を歩く。
終電はギリギリ失くしてしまっていて、こんなことなら先に帰っておけばよかったと考えながら国道を見た。
ガードレールの向こう側で、何台もの車が素早く通り過ぎていく。
タクシー、乗るか……。
柵が途切れる地点まで歩き片手をあげたとき、深夜の街にはふさわしくないほどやかましいクラクションが耳に入った。
振り返ると、強いライトが俺を照らしていて、眩しくて目を細める。
大型のダンプカーが、凄まじい勢いを一切落とすことなくこちらへ向かってくる。
脚が全く動かずに、固まったまま息を呑んだ。
やべえ、死ぬ。
かなりの速度が出ているはずなのに、動きがまるでスローモーションのように見えた。
ブレーキは全く踏まれていない。
運転席を確認すると、男はハンドルに顔面を突っ伏していた。
居眠りかよ……!
くそっ、俺はこんな事故に巻き込まれて死んじゃうのか。
まじ萎えどころの騒ぎじゃねえ。
頭の中に、過去の記憶が蘇ってくる。
俺をはじめて抱いた時の妙子の慈愛に満ちた眼差し。
明典が家に大切に飾っているフィギアを壊しちゃった時、死ぬほど逃げたかったけど素直に謝ったら「お前も男になったな」と頭を撫でてくれた大きな手。
給食に出てきた俺の好きな揚げパンを『内緒だよ』って半分こしてくれたアケミちゃん。
借り物競争で『好きな人』と書かれた紙を握り締めて、はにかみながら俺の手を引いてくれたミキちゃん。
バレンタインデーに107個のチョコレートを貰った俺を見て『じょうちゃんにあげるチョコなんてないよ』って強気な口調なのにどこか声を震わせて鼻を啜ったキィちゃん。(その後、俺がキィちゃんを美味しくいただきました)
俺の髪の毛についた芋けんぴを取ってくれた天使スマイルのユキちゃん。
浮かぶのは笑顔、笑顔、笑顔……。
女の子たちはいつも傍にいて、俺を癒してくれた。
「あー! こうなるんだったら、ユキちゃんのおっぱい揉んでおけばよかったー!」
俺が力の限り叫び終えた瞬間、コントロールを失った塊との距離がゼロになった。
本名かって? よく聞かれるけど、これはマジ。
にしてもすげー名前だよな。
父さんがジョジョっていうアニメが好きらしくて――あ、父さんは花京院明典っていうんだけど――そこから貰ったらしい。
ちなみに兄貴は花京院ジョナサンっていうんだ。日本人なのに横文字かよってね。半端ねえよな。
まあお陰様で、一発で人に覚えてもらえるし、名前で弄ってもらえるし、全然嫌いじゃない。(人生で一番言われたセリフは親御さんジョジョ好きなの? だけどね)
そんな俺、あだ名は昔からじょうちゃん。
幼稚園生の頃から、社会人一年目になった今でも同じ。
仕事が終わったら合コン三昧で、得意の手品とじょうちゃんスマイルで、大体俺の一人勝ち。
この顔に生んでくれた明典と妙子(お袋)には超サンキューって感じ。
その日の合コンも盛り上がり、二次会のカラオケで狙ってた巨乳美人のユキちゃんとイイ感じになれて、このままお持ち帰りできちゃうかも……って思ってたのに、明日早いんだって振られちゃった。
テンション低めに夜道を歩く。
終電はギリギリ失くしてしまっていて、こんなことなら先に帰っておけばよかったと考えながら国道を見た。
ガードレールの向こう側で、何台もの車が素早く通り過ぎていく。
タクシー、乗るか……。
柵が途切れる地点まで歩き片手をあげたとき、深夜の街にはふさわしくないほどやかましいクラクションが耳に入った。
振り返ると、強いライトが俺を照らしていて、眩しくて目を細める。
大型のダンプカーが、凄まじい勢いを一切落とすことなくこちらへ向かってくる。
脚が全く動かずに、固まったまま息を呑んだ。
やべえ、死ぬ。
かなりの速度が出ているはずなのに、動きがまるでスローモーションのように見えた。
ブレーキは全く踏まれていない。
運転席を確認すると、男はハンドルに顔面を突っ伏していた。
居眠りかよ……!
くそっ、俺はこんな事故に巻き込まれて死んじゃうのか。
まじ萎えどころの騒ぎじゃねえ。
頭の中に、過去の記憶が蘇ってくる。
俺をはじめて抱いた時の妙子の慈愛に満ちた眼差し。
明典が家に大切に飾っているフィギアを壊しちゃった時、死ぬほど逃げたかったけど素直に謝ったら「お前も男になったな」と頭を撫でてくれた大きな手。
給食に出てきた俺の好きな揚げパンを『内緒だよ』って半分こしてくれたアケミちゃん。
借り物競争で『好きな人』と書かれた紙を握り締めて、はにかみながら俺の手を引いてくれたミキちゃん。
バレンタインデーに107個のチョコレートを貰った俺を見て『じょうちゃんにあげるチョコなんてないよ』って強気な口調なのにどこか声を震わせて鼻を啜ったキィちゃん。(その後、俺がキィちゃんを美味しくいただきました)
俺の髪の毛についた芋けんぴを取ってくれた天使スマイルのユキちゃん。
浮かぶのは笑顔、笑顔、笑顔……。
女の子たちはいつも傍にいて、俺を癒してくれた。
「あー! こうなるんだったら、ユキちゃんのおっぱい揉んでおけばよかったー!」
俺が力の限り叫び終えた瞬間、コントロールを失った塊との距離がゼロになった。
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