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第9章 終焉
5 浦安の凶行
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「今朝、ニュースを観ました。髙瀬と三国が首無し連続殺人の被疑者になっていた。どういうことです?あれは殺人なんかじゃない。それはすでに本庁でも把握しているでしょう?一体、警察庁長官は、いや、政府は何を考えてる?答えてもらおう」
言いながら、浦安は静かに銃口を沖芝に向けた。沖芝はギョッと目を見開いたが、さすが管理官に上り詰めるだけはある、直ぐ様目の奥に感情を隠した。そしてまた諭すような口調で言う。
「そんなことをして、ただでは済みませんよ?仕舞いなさい」
浦安は目を細め、右の口角だけを上げた。我ながら取ってつけたような悪笑顔だと思う。
「覚悟はできてます。こっちも大勢の仲間を目の前で死なせたんだ、通常の心理ではないとご理解下さい」
沖芝の顔が心なしか青くなる。そして頬を引きつらせる。
「あなた…まさか、目から血が出たんじゃ……」
なるほど、妖化が起こってると思われたのだ。それならそれで都合がいい。
「そう思ってもらって構いません。そのうち首が伸び、首だけで飛び回るかもしれませんね。そういう姿を見たことは?」
「報告は…受けてます」
「ということは見たことはないと?あなたも現場に行って見てみるといい。人がどんな姿になるのかを。今大切なのはそのことを隠蔽することじゃない、どうやってこれ以上広まるのを防ぐかってことなんだ。あなたも娘さんがいるんでしょう?その娘さんが顔だけで飛び回って人の血を吸い出したらどう思います?」
娘と言った時、沖芝のこめかみがピリっとビクついたのを見た。だが管理官の口はあくまでも固かった。
「私も一人の公務員でしかありません。守秘義務があります。それに私ではあなたの知りたいことを答えてあげられません。私も本庁の指示で動いているだけなのですから」
ダン、とテーブルを叩く。そして拳銃をチラつかせた。
「これが見えませんか?命あっての物種でしょう?何でもいい、知っていることを全部話して下さい!」
しばらく睨み合いが続く。沖芝の口からため息が漏れる。
「あなたのお仲間が亡くなったことには私も大変残念に思っています。ですが私も、あなたには特別な権限を与えてきたつもりです。それは我々警察庁から離れたところから捜査してもらいたかったからです」
「ほう、では、私を停職にしたのもその為だと?」
揺るぎのない沖芝の視線に、ふと、天冥が自分の停職のことを知っていたのを思い出す。警察官の中に天冥と通じている者がいる気はしていたが、まさか、彼女なのか?浦安はさらに突っ込んだ質問を試みた。
「今回の襲撃には聖蓮女子の水谷鈴や、私が事情聴取に行った際に目から出血させた生徒たちの顔もありました。顔も、です。言ってる意味、分かりますね?彼女らは本庁の方で保護していたはずです。なのになぜ、あんな姿になっていたのか?答えて下さい!あなたが知らないわけないでしょう?」
浦安がそれを聞いた時、鉄面皮だった管理官の表情が揺らいだ。目の奥に動揺が走った気がした。
「影武者……」
彼女がその言葉を発した時、バタン、と部屋の扉が開く。
「おお?何何何何ぃ!?どういう状態?これ。まこっちゃ~ん!すごいことやってんねえ~!」
飛び込んで来て素っ頓狂な声を上げたのは紫のスーツの男だった。公安調査庁の朝霧だ。
「なぜここにいる?今取り込んでるんだ!」
「いやいやいやいや、まこっちゃんさあ、それヤバいっしょ、犯罪よ?犯罪!」
場違いな軽薄声に浦安は顔をしかめた。沖芝が今何かを言いかけたのにと、恨めしい目で朝霧を睨む。そこへ沖芝が咳払いをし、朝霧に声をかけた。
「何か?」
「え?ああいや、うちの室長がまこっちゃんを連れて来いって言うもんでね、探したらここだって聞いたもんで」
「なら電話をかければいいだろう?こんなとこまでのこのこ来なくても!」
浦安が自分の所業を棚に上げて忌々しげに言うと、朝霧はまたいやいやと手を降る。
「まこっちゃんさあ、直留守じゃん。電源切れてんじゃないの?」
さすがに二人の動きを封じることは出来ないと、浦安は仕方なく銃をテーブルに置き、携帯を確かめた。確かに電源は落ちていた。
「ちょうど良かった。あなたは公安調査庁付きになっているのだから、室町さんの所へ行きなさいと言おうとしていたんです。もうすぐ分かることだから打ち明けますが、禍津町での権限は本日をもって警察庁から公安調査庁に移りました。知りたいことはぜひ、そちらで聞いて下さい」
沖芝は朝霧の登場に、肩の荷が下りたように張り詰めていた力を抜いた。
「そうそう、行こうぜ、まこっちゃん。室長がお待ちだよ~」
まるで飲み会に誘うような朝霧の乗りに、浦安はため息をついて腰を上げた。そして沖芝に深く頭を下げる。
「この処分は受ける覚悟です。何なら手帳もお返しします」
沖芝はそんな浦安の前の方へテーブルの銃を押し出す。
「あなたの過酷な職務を慮り、今回は不問にします。これはきっと、今後必要になります。持って行きなさい」
沖芝の言葉に目頭を熱くさせながら、浦安は銃を腰に収めた。ラッキー、と、朝霧が馴れ馴れしく浦安の肩を叩いた。
「今回の惨事のことは聞きました。私は止めたのに、あなたは言う事を聞かなかった。あげくに多くのお仲間を亡くしたとか。それであなたには何のお咎めも無かったと?警察も甘いことで」
室町室長の部屋に伺い、ソファで対峙したところで、開口一番辛辣な言葉が飛んだ。室町の隣りには朝霧がそのまま座っている。
「それを言われると返す言葉はありません。が、昨夜の一連の流れを考えた時、敵は間違いなくお焚き上げ供養を狙って襲撃してきました。逆にもっと警備を厚くしておくべきだったと考えます」
言いながら、警備を厚くしたところで犠牲者を増やすだけだったのではとも思う。浦安の言葉に、室町が眉をひそめる。
「敵、とは?」
それを説明するために、浦安は天冥から聞いた将門の影武者の話をした。そして、昨夜起こったことを細かく報告する。室町はひとしきり黙って聞いていたが、報告が終わったところで銀縁眼鏡をずり上げ、レンズの奥から鋭い眼光を向けた。
「では君は、その将門の怨霊とやらが世界を制服するためにお焚き上げが邪魔だから襲撃してきた、と?そう言いたいんだね?」
頷く浦安に、室町は鼻から息を吐く。そこにはあからさまな侮蔑が感じ取れた。
「私たちの見解はちょっと違う。いいですか?そんな三流ホラー映画のような話を真に受けるのではなく、もっと事態をシステマチックに見るべきなのです」
「システマチック…とは?」
室町の目を覆うガラスにキラリと光の線が渡った。
「今回のことで、誰が一番得をしたか、ということです」
「だからそれは、将門陣営なのでは?」
「おおー!いいねえいいねえ、僕ちゃんバトル漫画大好きなんだわ~」
朝霧が茶化すのを室町がジロリと睨み、朝霧は肩をすくめる。
「こう考えられませんか?今回の寺での大仰な儀式は禍津町に配備された機動隊を誘き出すための罠だったと。機動隊が一掃されたことで得をしたのは人の脳をおかしくする物質を散布してテロ行為をしている団体、すなわち、セフィロトであると。元々我々特務調査室はセフィロトを危険組織と睨み、調査してきた訳ですが、今回のことでいよいよその見立てが正しかったと、矜持を保てた思いでいます」
室町は当初の考えを強固にしている。浦安はその頑なさに呆れを通り越して感心した。
「室長はあくまで人の活動の範疇に見ておられるようですが、私は実際にこの目で見たんです。人の首が伸び、飛頭蛮という頭だけの化け物になって人を襲う姿を。そんな非現実的な事態をどう説明するんです?それに今回、その化け物になった者の中に、政府の特別施設に隔離されていたと見られる女子高生たちの顔も見ました。我々はセフィロトではなく、まずは政府を糾弾すべきなのではありませんか?」
次第に身を乗り出す浦安に、室町は背もたれに背を預けたままの姿勢で胸を上下させ、また鼻から大きく息を吐いた。
「まあ落ち着きなさい。アメリカのマイアミで起こったゾンビ事件をご存知ですか?違法ドラッグを摂取した者が人を襲い、あろうことか人の顔を食べるという事件が実際に起こってます。ドラッグといえば幻覚作用も伴います。今回の件がドラッグによるものとは断定出来ませんが、もし似たような物質が散布されているとしたら、集団幻覚を見たなんて可能性もあるわけです。だが我々も自分たちに何の非もないとは考えていません。我々は今回、セフィロトの実態を甘く見ていたと反省しています。君が指摘したように、確かに首相官邸では早くから諮問機関を招集し、首無し事件について医療や生物化学、薬学などに精通したお歴々が様々な検証を重ねてきました。そしてその一環として罹患したと思われる者を収容し、治療に当たっていたのも事実です。しかしその職員の中に、セフィロトのスパイが潜り込んでいたのです。君の言う、影武者、ですか?まあそういった者が潜り込んで潜入活動をしていた訳です。我々の反省点はまさにそこで、セフィロトという組織は思いの外大規模だった、ということなのです」
室町はそこまで一気に喋り、そこで浦安の顔色を伺った。幻覚だって?浦安にはその部分が納得いかないものとして引っかかっていた。そんなわけ無い、あれは実際に起こったことなのだ、と。だが室町はそんな浦安にお構い無しに言葉を続ける。室町の浦安に対する人称があなたから君に変わり、その言葉は威圧的になっていた。
「今日から、警察庁に代わって我々指導の元、自衛隊が禍津町を仕切ることになります。町は事実上、隔離されます。亡くなった警察官たちのご遺族への死亡通知ですが、それも滞りなく行います。ですが、遺体を返すことは出来ません。安全が確認されるまでは特別な施設で隔離されることになります。そのことは追って首相の方からも会見がなされるでしょう。禍津町はロックダウンされます。まずは禍津町、そしてそれでは間に合わない場合、K市全体にロックダウンを広げるかもしれません。以上、君の聞きたかったことは全部網羅したと思いますが、どうですか?」
そこまで言うと、室町は笑みを浮かべて浦安を見た。お客さん扱いだった者がいきなり独裁者になったような、そんな不敵な笑みだった。
言いながら、浦安は静かに銃口を沖芝に向けた。沖芝はギョッと目を見開いたが、さすが管理官に上り詰めるだけはある、直ぐ様目の奥に感情を隠した。そしてまた諭すような口調で言う。
「そんなことをして、ただでは済みませんよ?仕舞いなさい」
浦安は目を細め、右の口角だけを上げた。我ながら取ってつけたような悪笑顔だと思う。
「覚悟はできてます。こっちも大勢の仲間を目の前で死なせたんだ、通常の心理ではないとご理解下さい」
沖芝の顔が心なしか青くなる。そして頬を引きつらせる。
「あなた…まさか、目から血が出たんじゃ……」
なるほど、妖化が起こってると思われたのだ。それならそれで都合がいい。
「そう思ってもらって構いません。そのうち首が伸び、首だけで飛び回るかもしれませんね。そういう姿を見たことは?」
「報告は…受けてます」
「ということは見たことはないと?あなたも現場に行って見てみるといい。人がどんな姿になるのかを。今大切なのはそのことを隠蔽することじゃない、どうやってこれ以上広まるのを防ぐかってことなんだ。あなたも娘さんがいるんでしょう?その娘さんが顔だけで飛び回って人の血を吸い出したらどう思います?」
娘と言った時、沖芝のこめかみがピリっとビクついたのを見た。だが管理官の口はあくまでも固かった。
「私も一人の公務員でしかありません。守秘義務があります。それに私ではあなたの知りたいことを答えてあげられません。私も本庁の指示で動いているだけなのですから」
ダン、とテーブルを叩く。そして拳銃をチラつかせた。
「これが見えませんか?命あっての物種でしょう?何でもいい、知っていることを全部話して下さい!」
しばらく睨み合いが続く。沖芝の口からため息が漏れる。
「あなたのお仲間が亡くなったことには私も大変残念に思っています。ですが私も、あなたには特別な権限を与えてきたつもりです。それは我々警察庁から離れたところから捜査してもらいたかったからです」
「ほう、では、私を停職にしたのもその為だと?」
揺るぎのない沖芝の視線に、ふと、天冥が自分の停職のことを知っていたのを思い出す。警察官の中に天冥と通じている者がいる気はしていたが、まさか、彼女なのか?浦安はさらに突っ込んだ質問を試みた。
「今回の襲撃には聖蓮女子の水谷鈴や、私が事情聴取に行った際に目から出血させた生徒たちの顔もありました。顔も、です。言ってる意味、分かりますね?彼女らは本庁の方で保護していたはずです。なのになぜ、あんな姿になっていたのか?答えて下さい!あなたが知らないわけないでしょう?」
浦安がそれを聞いた時、鉄面皮だった管理官の表情が揺らいだ。目の奥に動揺が走った気がした。
「影武者……」
彼女がその言葉を発した時、バタン、と部屋の扉が開く。
「おお?何何何何ぃ!?どういう状態?これ。まこっちゃ~ん!すごいことやってんねえ~!」
飛び込んで来て素っ頓狂な声を上げたのは紫のスーツの男だった。公安調査庁の朝霧だ。
「なぜここにいる?今取り込んでるんだ!」
「いやいやいやいや、まこっちゃんさあ、それヤバいっしょ、犯罪よ?犯罪!」
場違いな軽薄声に浦安は顔をしかめた。沖芝が今何かを言いかけたのにと、恨めしい目で朝霧を睨む。そこへ沖芝が咳払いをし、朝霧に声をかけた。
「何か?」
「え?ああいや、うちの室長がまこっちゃんを連れて来いって言うもんでね、探したらここだって聞いたもんで」
「なら電話をかければいいだろう?こんなとこまでのこのこ来なくても!」
浦安が自分の所業を棚に上げて忌々しげに言うと、朝霧はまたいやいやと手を降る。
「まこっちゃんさあ、直留守じゃん。電源切れてんじゃないの?」
さすがに二人の動きを封じることは出来ないと、浦安は仕方なく銃をテーブルに置き、携帯を確かめた。確かに電源は落ちていた。
「ちょうど良かった。あなたは公安調査庁付きになっているのだから、室町さんの所へ行きなさいと言おうとしていたんです。もうすぐ分かることだから打ち明けますが、禍津町での権限は本日をもって警察庁から公安調査庁に移りました。知りたいことはぜひ、そちらで聞いて下さい」
沖芝は朝霧の登場に、肩の荷が下りたように張り詰めていた力を抜いた。
「そうそう、行こうぜ、まこっちゃん。室長がお待ちだよ~」
まるで飲み会に誘うような朝霧の乗りに、浦安はため息をついて腰を上げた。そして沖芝に深く頭を下げる。
「この処分は受ける覚悟です。何なら手帳もお返しします」
沖芝はそんな浦安の前の方へテーブルの銃を押し出す。
「あなたの過酷な職務を慮り、今回は不問にします。これはきっと、今後必要になります。持って行きなさい」
沖芝の言葉に目頭を熱くさせながら、浦安は銃を腰に収めた。ラッキー、と、朝霧が馴れ馴れしく浦安の肩を叩いた。
「今回の惨事のことは聞きました。私は止めたのに、あなたは言う事を聞かなかった。あげくに多くのお仲間を亡くしたとか。それであなたには何のお咎めも無かったと?警察も甘いことで」
室町室長の部屋に伺い、ソファで対峙したところで、開口一番辛辣な言葉が飛んだ。室町の隣りには朝霧がそのまま座っている。
「それを言われると返す言葉はありません。が、昨夜の一連の流れを考えた時、敵は間違いなくお焚き上げ供養を狙って襲撃してきました。逆にもっと警備を厚くしておくべきだったと考えます」
言いながら、警備を厚くしたところで犠牲者を増やすだけだったのではとも思う。浦安の言葉に、室町が眉をひそめる。
「敵、とは?」
それを説明するために、浦安は天冥から聞いた将門の影武者の話をした。そして、昨夜起こったことを細かく報告する。室町はひとしきり黙って聞いていたが、報告が終わったところで銀縁眼鏡をずり上げ、レンズの奥から鋭い眼光を向けた。
「では君は、その将門の怨霊とやらが世界を制服するためにお焚き上げが邪魔だから襲撃してきた、と?そう言いたいんだね?」
頷く浦安に、室町は鼻から息を吐く。そこにはあからさまな侮蔑が感じ取れた。
「私たちの見解はちょっと違う。いいですか?そんな三流ホラー映画のような話を真に受けるのではなく、もっと事態をシステマチックに見るべきなのです」
「システマチック…とは?」
室町の目を覆うガラスにキラリと光の線が渡った。
「今回のことで、誰が一番得をしたか、ということです」
「だからそれは、将門陣営なのでは?」
「おおー!いいねえいいねえ、僕ちゃんバトル漫画大好きなんだわ~」
朝霧が茶化すのを室町がジロリと睨み、朝霧は肩をすくめる。
「こう考えられませんか?今回の寺での大仰な儀式は禍津町に配備された機動隊を誘き出すための罠だったと。機動隊が一掃されたことで得をしたのは人の脳をおかしくする物質を散布してテロ行為をしている団体、すなわち、セフィロトであると。元々我々特務調査室はセフィロトを危険組織と睨み、調査してきた訳ですが、今回のことでいよいよその見立てが正しかったと、矜持を保てた思いでいます」
室町は当初の考えを強固にしている。浦安はその頑なさに呆れを通り越して感心した。
「室長はあくまで人の活動の範疇に見ておられるようですが、私は実際にこの目で見たんです。人の首が伸び、飛頭蛮という頭だけの化け物になって人を襲う姿を。そんな非現実的な事態をどう説明するんです?それに今回、その化け物になった者の中に、政府の特別施設に隔離されていたと見られる女子高生たちの顔も見ました。我々はセフィロトではなく、まずは政府を糾弾すべきなのではありませんか?」
次第に身を乗り出す浦安に、室町は背もたれに背を預けたままの姿勢で胸を上下させ、また鼻から大きく息を吐いた。
「まあ落ち着きなさい。アメリカのマイアミで起こったゾンビ事件をご存知ですか?違法ドラッグを摂取した者が人を襲い、あろうことか人の顔を食べるという事件が実際に起こってます。ドラッグといえば幻覚作用も伴います。今回の件がドラッグによるものとは断定出来ませんが、もし似たような物質が散布されているとしたら、集団幻覚を見たなんて可能性もあるわけです。だが我々も自分たちに何の非もないとは考えていません。我々は今回、セフィロトの実態を甘く見ていたと反省しています。君が指摘したように、確かに首相官邸では早くから諮問機関を招集し、首無し事件について医療や生物化学、薬学などに精通したお歴々が様々な検証を重ねてきました。そしてその一環として罹患したと思われる者を収容し、治療に当たっていたのも事実です。しかしその職員の中に、セフィロトのスパイが潜り込んでいたのです。君の言う、影武者、ですか?まあそういった者が潜り込んで潜入活動をしていた訳です。我々の反省点はまさにそこで、セフィロトという組織は思いの外大規模だった、ということなのです」
室町はそこまで一気に喋り、そこで浦安の顔色を伺った。幻覚だって?浦安にはその部分が納得いかないものとして引っかかっていた。そんなわけ無い、あれは実際に起こったことなのだ、と。だが室町はそんな浦安にお構い無しに言葉を続ける。室町の浦安に対する人称があなたから君に変わり、その言葉は威圧的になっていた。
「今日から、警察庁に代わって我々指導の元、自衛隊が禍津町を仕切ることになります。町は事実上、隔離されます。亡くなった警察官たちのご遺族への死亡通知ですが、それも滞りなく行います。ですが、遺体を返すことは出来ません。安全が確認されるまでは特別な施設で隔離されることになります。そのことは追って首相の方からも会見がなされるでしょう。禍津町はロックダウンされます。まずは禍津町、そしてそれでは間に合わない場合、K市全体にロックダウンを広げるかもしれません。以上、君の聞きたかったことは全部網羅したと思いますが、どうですか?」
そこまで言うと、室町は笑みを浮かべて浦安を見た。お客さん扱いだった者がいきなり独裁者になったような、そんな不敵な笑みだった。
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