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第8章 蔓延
10 影武者出現
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ふと、空気に圧迫感を感じる。いつの間にか、カエルや虫の声が消えている。まるで久遠寺の周囲だけ世界から取り残されたようだった。
「みんなあ~!撃たれました!今、刑事にフナムシくんが撃たれましたよぉ~!!」
その一瞬の静寂を破るように、トレンチ男の凶声が響く。男の声を皮切りにあちこちから悲鳴が上がり、集団から蜘蛛の子を散らすように西の暗闇に逃げて行く。トレンチ男はハンディカメラを巨漢男に向けている。フナムシくんとは巨漢男のことなのだろう、彼はガクンと膝を折り、道に正座して胸に顎を埋めて正座した格好で動かなくなっていた。意識が凝固していた浦安も我に返り、状況を収束させようとインカムを持つ。
『番場は捜査本部に緊急出動要請、酒井田は救急車の手配!橋爪班は袴田の確保!』
浦安の指示でそれぞれが動く中、浦安は巨漢男に寄る。
「大丈夫か?」
首元を手で抑えるが、脈動は感じられない。苦渋に目を閉じ、発泡した袴田を睨む。
「銃を捨てて手を上げろ!」
橋爪班の三人が袴田に銃を構え、ジリジリとにじり寄る。橋爪の声に袴田は手をダランと下ろし、ギャヒギャヒと人間とは思えない声で笑っていた。橋爪は銃を向けたまま、すかさず袴田の両脇を他の二人が掴む。持っていた銃を奪い、何とか確保出来たと思った矢先だった。袴田はブルブルっと身を震わせたかと思うと、その首をヌルヌルと伸ばし始めた。その伸びた首を曲げ、右側の捜査員の首に噛み付く。
「うわあっ!」
左側の捜査員がその姿にびっくりして後退り、拘束の解けた袴田は噛みついた捜査員に覆い被さった。捜査員の首から鮮血が吹き上がる。
「橋爪!撃て!撃て!」
橋爪はハッとしたように構えた拳銃に力を入れる。その時、
「ああ~っと!なーんと、刑事が!刑事が化け物に変わりました~!化け物です!首が伸びてます!みなさーん、噂は本当でした!この町では人間が化け物になってます!」
トレンチ男が奇声を上げて袴田の様子をずっと撮影している。それに怯んだのか、橋爪は銃を撃てないでいる。
「誰か、あいつを黙らせろ!」
浦安は巨漢男の横にしゃがみながら、橋爪に寄ってカメラを向けるトレンチ男を指差して叫んだが、近くには番場しかいない。その番場は、目を大きく開いて浦安を凝視している。
「か、係長、後ろ!」
番場が浦安の後方を指差す。ふと首筋に生臭い空気が這う。振り向くとすぐ目の前で巨漢男の顔が大きく口を開けて迫っていた。
「うわあっ!!」
間一髪で飛び退き、巨漢男は宙を噛んだ。何と、巨漢男の太い首も伸びている。身体は正座したままの姿勢を保っているが、首だけ伸びてこちらを真っ赤な目で睨みつけてきた。途端、浦安の身体が動かなくなる。
「おおーっと!何と何と!フナムシくんも!フナムシくんも化け物になってます!一体この町はどうなってるんでしょう?怖い怖い怖い怖い、怖いねえ~」
目ざとく異変を察知したトレンチ男のカメラが巨漢男に向く。その隙にバキュンと発砲音がし、袴田の後頭部を橋爪の銃弾が貫いた。袴田がバタっと倒れ、噛まれた捜査員の元に橋爪が駆け寄る。巨漢男の視線がそちらに逸れ、浦安も動けるようになってそちらに走った。
「どうだ?」
浦安の問いに、脈を診ていた橋爪は無念そうに首を振った。
「係長!見て下さい!」
番場も浦安の方に走って来たが、その頬が恐怖に引きつっている。その指差す方向を見ると、逃げて行ったと思われた集団にはまだ相当数そこに残って立ち尽くす姿があった。暗闇に突き刺さった黒い棒のようにじっと立っている彼らにライトを向けると、それぞれが小刻みに震えているのが分かる。そしてそれらの顔を見ると、目から赤い血を、ドクドクと流れ出していた。
「ヒイィィィ」
喉を鳴らしながら後退してきた番場とぶつかる。番場のライトが、巨漢男を捉える。巨漢男はボンレスハムのような膝を立て、ゆっくりと立ち上がって手を前に突き出した。その後ろに突っ立っている面々たちも、ニュル、ニュルっと、首を伸ばし始めた。そして手を前に突き出し、まるで昭和のゾンビ映画のように、うううとくぐもった声で呻きながら、ゆっくりとこちらに前進してきた。
「やつらの目を見るな!一旦南西の角まで下がれ!そこで体制を立て直す!」
浦安が口頭で叫び、その指示にみんな走った。噛まれた捜査員の遺体を引き上げるゆとりも無かった。
「発泡を許可する。首が伸びた者はもはや人間ではない、躊躇なく撃て!だがその際にやつらの目を見るな。難しいかもしれないが、何とか目を見ずに額を狙って撃つんだ!」
かなり無茶振りな要求だったが、もはや躊躇している場合ではなかった。南西の角に到達すると天冥から最終注意事項として聞いていた内容を叫んだ。何とかここでで食い止めなければならない。五人が前方の暗闇に銃を構えた。一同にジリジリとした緊張が走る。こんなあり得ない事態に直面して恐怖心が募っているだろうに、誰も一言も発さず黙って銃を構えて化け物の集団が到着するのを待っていた。
「うぉ~お、ゾクゾクします!みんな首が伸びてます!恐ろしいです~!」
やがて西壁に到達したトレンチ男が、集団にカメラを向けながら南に折れて来る姿が見えた。この期に及んでまだ配信しようというのか?やつはなぜろくろっ首たちの視線を受けても固まらない?
「どけ!そこにいられると撃てない!」
その身勝手さに怒りが沸き立ち、トレンチ男に向かって大声を上げた。男はその浦安の声に反応し、こちらにカメラを向けてスタスタと歩いてくる。
「あれえ?ひょっとして刑事さんたち、彼らを撃とうっての?彼ら、人間だよ?ちょおっと首が長くなっちゃってるけどさあ。人権、どうなってんの?首が伸びたら殺していいなんて法律、あったっけ?」
カメラレンズの向こうでいけしゃあしゃあと言っていたが、浦安も普段ならその言葉に耳を貸さないでもなかったと思う。だが今は非常事態だ。何としてもお焚き火を絶やしてはならない。それにやつらはこちらを躊躇なく殺しにくる。これは生存権をかけた戦いだ。殺らなければ殺られるのだ。浦安がそう自分の行為を正当化してトレンチ男に再び声を張ろうとした時、橋爪班のもう一人の捜査員が動いた。
「自分が行って止めさせてきます」
さっき仲間を見殺しにしたという負い目を感じているのだろうか、彼は言うが早いかトレンチ男に近づいていく。そして男の前に到達し、カメラを手で塞いだ時、ふっと彼の身体が浮き上がったかと思うと、西側の田んぼに頭から突っ込んだ。トレンチ男がカメラを持っていない方の手で捜査員を掴んで投げ飛ばしたのだ。
「なーんで撮影の邪魔するかなあ?刑事さんたち、そんなに人を殺したいの?そんでそれを撮影されたら困るからボクちゃんの邪魔をするんだよね?みなさーん!これぞまさに公権力の横暴ですよ~!怖い怖い、怖いねぇ~」
トレンチ男は相変わらずカメラをこちらに向けながら浦安たちの方へと歩いて来る。その口角は最大限に上がっている。
「中津!」
橋爪が捜査員の名を呼び、駆け寄ろうとする。
「待て!」
浦安は橋爪を手で制した。
「でも、あのままじゃあ…」
橋爪の言わんとすることは分かっている。橋爪班の残りの一人、中津は田んぼにうつ伏せになったまま起き上がろうとしない。近づいてくるろくろっ首の何体かがそれを見て通路を右に折れ、田んぼの中をダイレクトに中津の方に向かい出した。このまま放置したら中津はやられてしまうだろう。だが、浦安の頭に行ってはいけないと警告音が鳴り響いている。
浦安の耳に、トレンチ男が何度も言う「怖いねえ」という言葉がリフレインする。どこかで聞いた声だと思って引っかかっていたが、思い当たった。それは聖蓮女子に事情聴取に赴いた折、須田と一緒に聴取していた公安調査庁の男の声だ。やつがそれを発した直後、水谷鈴はおかしくなって校長を刺しに走った。今目の前にいるトレンチ男は変なフェルト帽子を目深に被っていて気づかなかったが、よく見るとあの調査員に似てなくもない。それに、いくら腕力が強くても上背180cmはある筋肉質な中津を片手で投げ飛ばせないだろう。それらのことを総合し、彼の正体が導き出される。
「あいつはきっと、将門の影武者の一人だ」
浦安の低い言葉に、一同のギョッとした目が集中する。
「もお、何なのよ!一体何が起こってるのよ!」
ついに緊張から耐えかねたのか、酒井田がヒステリックな声を上げる。トレンチ男の足が止まり、カメラを持っていない方の手を高らかに天に向けた。男の纏った空気が禍々しく渦を巻く。男の顔はもう呑気なYourTuberではなかった。目を真っ赤に血走らせている、獰猛な猛禽類の目だ。ついに正体を現しやがったと思った瞬間、トレンチ男の手が前に振り下ろされ、後方のろくろっ首たちの動きが早まった。倒れていた中津に次々と覆い被さり、中津は断末魔を上げながら片手を天に突き上げる。そして、パタッと、力無く崩れた。
「無理よ、無理無理無理、無理ぃー!!」
酒井田が後方に逃げ出す。浦安、橋爪、番場の三人は、銃を突き出したまま固まっていた。
「みんなあ~!撃たれました!今、刑事にフナムシくんが撃たれましたよぉ~!!」
その一瞬の静寂を破るように、トレンチ男の凶声が響く。男の声を皮切りにあちこちから悲鳴が上がり、集団から蜘蛛の子を散らすように西の暗闇に逃げて行く。トレンチ男はハンディカメラを巨漢男に向けている。フナムシくんとは巨漢男のことなのだろう、彼はガクンと膝を折り、道に正座して胸に顎を埋めて正座した格好で動かなくなっていた。意識が凝固していた浦安も我に返り、状況を収束させようとインカムを持つ。
『番場は捜査本部に緊急出動要請、酒井田は救急車の手配!橋爪班は袴田の確保!』
浦安の指示でそれぞれが動く中、浦安は巨漢男に寄る。
「大丈夫か?」
首元を手で抑えるが、脈動は感じられない。苦渋に目を閉じ、発泡した袴田を睨む。
「銃を捨てて手を上げろ!」
橋爪班の三人が袴田に銃を構え、ジリジリとにじり寄る。橋爪の声に袴田は手をダランと下ろし、ギャヒギャヒと人間とは思えない声で笑っていた。橋爪は銃を向けたまま、すかさず袴田の両脇を他の二人が掴む。持っていた銃を奪い、何とか確保出来たと思った矢先だった。袴田はブルブルっと身を震わせたかと思うと、その首をヌルヌルと伸ばし始めた。その伸びた首を曲げ、右側の捜査員の首に噛み付く。
「うわあっ!」
左側の捜査員がその姿にびっくりして後退り、拘束の解けた袴田は噛みついた捜査員に覆い被さった。捜査員の首から鮮血が吹き上がる。
「橋爪!撃て!撃て!」
橋爪はハッとしたように構えた拳銃に力を入れる。その時、
「ああ~っと!なーんと、刑事が!刑事が化け物に変わりました~!化け物です!首が伸びてます!みなさーん、噂は本当でした!この町では人間が化け物になってます!」
トレンチ男が奇声を上げて袴田の様子をずっと撮影している。それに怯んだのか、橋爪は銃を撃てないでいる。
「誰か、あいつを黙らせろ!」
浦安は巨漢男の横にしゃがみながら、橋爪に寄ってカメラを向けるトレンチ男を指差して叫んだが、近くには番場しかいない。その番場は、目を大きく開いて浦安を凝視している。
「か、係長、後ろ!」
番場が浦安の後方を指差す。ふと首筋に生臭い空気が這う。振り向くとすぐ目の前で巨漢男の顔が大きく口を開けて迫っていた。
「うわあっ!!」
間一髪で飛び退き、巨漢男は宙を噛んだ。何と、巨漢男の太い首も伸びている。身体は正座したままの姿勢を保っているが、首だけ伸びてこちらを真っ赤な目で睨みつけてきた。途端、浦安の身体が動かなくなる。
「おおーっと!何と何と!フナムシくんも!フナムシくんも化け物になってます!一体この町はどうなってるんでしょう?怖い怖い怖い怖い、怖いねえ~」
目ざとく異変を察知したトレンチ男のカメラが巨漢男に向く。その隙にバキュンと発砲音がし、袴田の後頭部を橋爪の銃弾が貫いた。袴田がバタっと倒れ、噛まれた捜査員の元に橋爪が駆け寄る。巨漢男の視線がそちらに逸れ、浦安も動けるようになってそちらに走った。
「どうだ?」
浦安の問いに、脈を診ていた橋爪は無念そうに首を振った。
「係長!見て下さい!」
番場も浦安の方に走って来たが、その頬が恐怖に引きつっている。その指差す方向を見ると、逃げて行ったと思われた集団にはまだ相当数そこに残って立ち尽くす姿があった。暗闇に突き刺さった黒い棒のようにじっと立っている彼らにライトを向けると、それぞれが小刻みに震えているのが分かる。そしてそれらの顔を見ると、目から赤い血を、ドクドクと流れ出していた。
「ヒイィィィ」
喉を鳴らしながら後退してきた番場とぶつかる。番場のライトが、巨漢男を捉える。巨漢男はボンレスハムのような膝を立て、ゆっくりと立ち上がって手を前に突き出した。その後ろに突っ立っている面々たちも、ニュル、ニュルっと、首を伸ばし始めた。そして手を前に突き出し、まるで昭和のゾンビ映画のように、うううとくぐもった声で呻きながら、ゆっくりとこちらに前進してきた。
「やつらの目を見るな!一旦南西の角まで下がれ!そこで体制を立て直す!」
浦安が口頭で叫び、その指示にみんな走った。噛まれた捜査員の遺体を引き上げるゆとりも無かった。
「発泡を許可する。首が伸びた者はもはや人間ではない、躊躇なく撃て!だがその際にやつらの目を見るな。難しいかもしれないが、何とか目を見ずに額を狙って撃つんだ!」
かなり無茶振りな要求だったが、もはや躊躇している場合ではなかった。南西の角に到達すると天冥から最終注意事項として聞いていた内容を叫んだ。何とかここでで食い止めなければならない。五人が前方の暗闇に銃を構えた。一同にジリジリとした緊張が走る。こんなあり得ない事態に直面して恐怖心が募っているだろうに、誰も一言も発さず黙って銃を構えて化け物の集団が到着するのを待っていた。
「うぉ~お、ゾクゾクします!みんな首が伸びてます!恐ろしいです~!」
やがて西壁に到達したトレンチ男が、集団にカメラを向けながら南に折れて来る姿が見えた。この期に及んでまだ配信しようというのか?やつはなぜろくろっ首たちの視線を受けても固まらない?
「どけ!そこにいられると撃てない!」
その身勝手さに怒りが沸き立ち、トレンチ男に向かって大声を上げた。男はその浦安の声に反応し、こちらにカメラを向けてスタスタと歩いてくる。
「あれえ?ひょっとして刑事さんたち、彼らを撃とうっての?彼ら、人間だよ?ちょおっと首が長くなっちゃってるけどさあ。人権、どうなってんの?首が伸びたら殺していいなんて法律、あったっけ?」
カメラレンズの向こうでいけしゃあしゃあと言っていたが、浦安も普段ならその言葉に耳を貸さないでもなかったと思う。だが今は非常事態だ。何としてもお焚き火を絶やしてはならない。それにやつらはこちらを躊躇なく殺しにくる。これは生存権をかけた戦いだ。殺らなければ殺られるのだ。浦安がそう自分の行為を正当化してトレンチ男に再び声を張ろうとした時、橋爪班のもう一人の捜査員が動いた。
「自分が行って止めさせてきます」
さっき仲間を見殺しにしたという負い目を感じているのだろうか、彼は言うが早いかトレンチ男に近づいていく。そして男の前に到達し、カメラを手で塞いだ時、ふっと彼の身体が浮き上がったかと思うと、西側の田んぼに頭から突っ込んだ。トレンチ男がカメラを持っていない方の手で捜査員を掴んで投げ飛ばしたのだ。
「なーんで撮影の邪魔するかなあ?刑事さんたち、そんなに人を殺したいの?そんでそれを撮影されたら困るからボクちゃんの邪魔をするんだよね?みなさーん!これぞまさに公権力の横暴ですよ~!怖い怖い、怖いねぇ~」
トレンチ男は相変わらずカメラをこちらに向けながら浦安たちの方へと歩いて来る。その口角は最大限に上がっている。
「中津!」
橋爪が捜査員の名を呼び、駆け寄ろうとする。
「待て!」
浦安は橋爪を手で制した。
「でも、あのままじゃあ…」
橋爪の言わんとすることは分かっている。橋爪班の残りの一人、中津は田んぼにうつ伏せになったまま起き上がろうとしない。近づいてくるろくろっ首の何体かがそれを見て通路を右に折れ、田んぼの中をダイレクトに中津の方に向かい出した。このまま放置したら中津はやられてしまうだろう。だが、浦安の頭に行ってはいけないと警告音が鳴り響いている。
浦安の耳に、トレンチ男が何度も言う「怖いねえ」という言葉がリフレインする。どこかで聞いた声だと思って引っかかっていたが、思い当たった。それは聖蓮女子に事情聴取に赴いた折、須田と一緒に聴取していた公安調査庁の男の声だ。やつがそれを発した直後、水谷鈴はおかしくなって校長を刺しに走った。今目の前にいるトレンチ男は変なフェルト帽子を目深に被っていて気づかなかったが、よく見るとあの調査員に似てなくもない。それに、いくら腕力が強くても上背180cmはある筋肉質な中津を片手で投げ飛ばせないだろう。それらのことを総合し、彼の正体が導き出される。
「あいつはきっと、将門の影武者の一人だ」
浦安の低い言葉に、一同のギョッとした目が集中する。
「もお、何なのよ!一体何が起こってるのよ!」
ついに緊張から耐えかねたのか、酒井田がヒステリックな声を上げる。トレンチ男の足が止まり、カメラを持っていない方の手を高らかに天に向けた。男の纏った空気が禍々しく渦を巻く。男の顔はもう呑気なYourTuberではなかった。目を真っ赤に血走らせている、獰猛な猛禽類の目だ。ついに正体を現しやがったと思った瞬間、トレンチ男の手が前に振り下ろされ、後方のろくろっ首たちの動きが早まった。倒れていた中津に次々と覆い被さり、中津は断末魔を上げながら片手を天に突き上げる。そして、パタッと、力無く崩れた。
「無理よ、無理無理無理、無理ぃー!!」
酒井田が後方に逃げ出す。浦安、橋爪、番場の三人は、銃を突き出したまま固まっていた。
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