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第8章 蔓延
3 弾正と草太
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7月30日
午前中で何とか全ての仏具の煤払いを終え、浦安が寺を離れると、入れ替わりにノワールから弾正と草太がやって来た。浦安から一旦離れると告げられた天冥が、遵奉住職に頼んで弾正を探偵…というか何でも屋として雇ってくれたのだ。そうして午後からは工場で亡くなった檀家さんの葬式に出ている住職に代わって天冥が指揮し、バラバラになった仏具のセッティングと掃除をすることになった。
「事件の犯人を見つけるって息巻いてたみたいだけど、目星はついたの?」
本堂の隣りの、作業に当てている部屋に入って来るなり、フーミーん~と馴れ馴れしく近づいてきた弾正に質問をぶつける。弾正の背後に隠れるように草太が付き従っていた。二人とも半袖スウェットにチノパンという作業しやすそうな軽装だ。
「お、聞いちゃう?それ。まあ目星はついたっちゅうか、あんたら警察ってホント駄目駄目だな。アキさんを殺した犯人なんてさ、ちょっと考えたら分かることなのに全然見当違いのとこばっか探してやんの」
アキさん…三国は何者かに首元を食いちぎられて死んでいた。その死に方はK市の高層マンションで殺された池田渚の死因に似ているが、首無し連続殺人とは首の損傷の仕方が全く違う。もし天冥の語ったことを真実とするなら、弓削にもある程度の推測は立った。首無し連続殺人は実は殺人ではなく、妖化した少女たちが自らの身体を捨て、頭だけで飛び回っているのだ。それが正しい見方なのかどうか、頭がどこにあるかが重要な手掛かりになってくる。現在、警察庁の捜査員たちが血眼になって探しているはずだ。一方、噛まれて死んだ方はその頭だけの存在が食いちぎったことによるものと、こちらも天冥の説明で推察できる。妖化した頭に襲われたのだ。そう考えると、高層マンションのどこから被疑者が来たのかの説明がつく。
だが、三国の部屋は密室だった。
天冥から聞いたところによると、妖化した者には違う次元の物理法則が働き、翼が無くても空を飛ぶなんてことも出来るようになるが、その飛頭蛮と呼ばれるモノノケには物体を透過する能力までは備わっていないらしい。そこはこの世界の物理法則に従い、対象に飛びながら食いつくことが出来ても物体をすり抜けるということは出来ない。なので、密室の中に入ることは出来ないのだ。飛頭蛮なんてモノノケが飛び回っているかどうかという議論はさて置き、弾正は自信満々に三国を殺した犯人が分かっていると言う。
「誰よ、あなたの考える犯人。聞かせてもらおうじゃないの」
「おう、別にいいんだけどさ、一応俺も探偵って看板掲げてるわけだからさ、タダでってのはどうかなあ?」
「何よ、お金取るって言うの?」
「んーまあ金でもいいんだけどさ、フーミンならそのでっかい胸を一揉みさせれくれるだけでもいいぜ?」
弓削のこめかみがピクッと動く。それを察したのか、
「弾正さん!」
と、草太が慌てて弾正のスウェットの袖口を引っ張った。だが弓削は思いの外冷静で、目を細めてニヤッと笑った。
「今、一揉みって言った?」
「ああ、言った言った。何なら二揉みでも三揉みでもいいぜ?」
言いながらジリジリと後ずさる。何がしかの危険は察知できているようだ。
「なら、今すぐ教えてよ。あんた、もうすでに一揉みしたでしょ?あんたはすでに借金状態なのよ。チャラにしてあげるから言いなさい」
その言葉に弾正は一瞬虚をつかれた顔をし、そしてワハハと豪快に笑った。
「こりゃ一本取られたな。分かった、教えてやるよ。犯人はなあ…」
「弾正と草太は組み立て作業にかかって頂戴。弓削さんは紬と、掃除をお願い」
いつの間に来たのか、天冥が弾正の言葉を遮ってこれからの作業の指示を出した。その声に、弾正の肩がビクンと上がった、ように見えた。錯覚だったのかもしれないが、弾正は今までの会話が無かったように、
「よーしじゃあ、まずはでっかいところから片付けますか」
と、パンパンと手を打ち、草太に指示して一番大きな仏具のパーツを二人で抱えてお堂に運び出した。
「あ、ちょっと!」
弓削はお預けを喰らう形になり、ぼんやりと立ち尽くす。弾正はもう弓削を見ようともせず、まるで天冥の視線を気にするようにテキパキと動いている。草太はどこかホッとしたように、弾正の指示によく従っていた。その二人の姿は師匠と弟子、もしくは兄と弟のようだった。
「何何ぃ?ひょっとしてフーミン、弾正のことが気になっちゃうとか?」
紬が弓削をニンマリと覗き込んだ。手には二枚の水で湿らせた雑巾を持っている。弓削はその一枚を受け取り、きっぱりとした口調で言った。
「まさか。あんなガサツ男、興味ありません」
作業は暗くなるまでかかったが、何とか今日のうちに終わらせることが出来た。弓削は完成した本堂の境内側に立ち、その全体を視界に収めた。ど真ん中から和風シャンデリアとも形容すべき、金色の折り鶴をたくさんぶら下げたような豪華な天蓋の光がキラキラと降り注ぎ、その真下に赤い柵で正方形に囲われた中に日輪を背にしたご本尊がある。遵奉住職を思わせるふくよかなご本尊の両脇には一回り小さい仏様が並び、三体とも金色に輝いている。その前に並んだ香炉や蝋燭立、花立てなどの仏具もみんな金色で、花立てに立てられている蓮の花までも金色だ。一生懸命磨いた甲斐もあり、とても絢爛に輝いている。
ご本尊の枠の左右には等身大の木造の立像。左側の仏様の名前は分からないが、右側の名前は分かる。頭に八面の顔が付いた冠を乗せ、とても特徴的なその立像の名前は九面観音。きのうの夜、夕涼みをしていた境内から帰った時に浦安に教えてもらった。その浦安も、住職に教えてもらったのだと言う。妙見信仰の象徴的な観音様で、厄除けに多大な力を発揮するとか。ご利益があるかと思って弓削はこの立像の水拭きを買って出たのだったが、間近で見たそのお顔はご本尊より幾分スリムで優しげな微笑を称え、頭の八つの顔は怒りや悲しみなどそれぞれ別々の表情をしていた。
立像の横には源氏の物と思われる鎧兜が本堂の両角に設置され、ご本尊の区画の前には読経用のスペースがある。大きなマットで畳より少し高くなっており、その真ん中に住職が座る高級そうな紫の大きな座布団。座布団には金色の唐草模様が入っている。今、その座布団には少女が崩れた正座で座り、前に並ぶ木魚やお鈴をポクポクチンチン鳴らしている。それに合わせたように左手から畳に直接置かれた太鼓をドドンと打ち鳴らす音。右手には磬子と呼ばれる、鋼鉄製の大きな鉢のような、お鈴の最終形態のような仏具があり、先が布で巻かれた木製バットのようなリン棒で青年がゴーンと鳴らしている。
ポクポク、チーン、ポクポク、チーン
ドドンドンドンドドンドン
ゴーン、ゴーン、ゴーン、ゴーン
合っているようなバラバラのような、打楽器だけのの大合奏が頭に響く。
ポクポクドドンポクドンチーンポクポクドドンゴーンチーンポクポクドドンポクドンチーンゴーンゴーンドンポクポクドーン
「うるさーーーい!!」
弓削の金切り声が本堂に響き渡り、三方からキョトンとした顔を向けられる。正面に紬、左前に弾正、右前に草太だ。
「いや俺らさあ、あさってからの練習をしてんだけど?煩いならフーミンが出て行けよ」
言って、ドン、と太鼓を鳴らす。そしてバチを肩叩き棒のように自分の肩をトントン叩き、弾正が弓削の顔を見据える。
「え?あさってからの練習?」
「ああ、和尚がさあ、家人をみんな帰したから、和尚が読経してる間、代わりに太鼓打ってくれって」
「代わりにって、あんたたち、仏教徒でもないんでしょ?そんなんで勤まるの?」
「いや、時々バイトでやってるしな、楽勝よ」
「バイトでやってるんかい!」
弾正のバイトという言葉で、仏具のセッティングを終えて次第に引き締まってきた気持ちが一気に緩んだ。住職はきっと、妖化するのを恐れて家人を帰したのだろう。それは家人を守ることでもあり、家人が妖化してお焚き火を邪魔させないためでもある。将門の悪霊は妖化した人間を操り、お焚き火を邪魔しに来るのだという。なので寺には極力不用意に人を置かないようにしているはずだ。なのに弾正や草太はバイトで雇われているという。妖化の危険はないのだろうか?
「そうだそうだー!楽勝楽勝!」
紬がチーンとお鈴を鳴らし、
「いやお前は雇われてないだろ」
と、弾正が太鼓をドンと鳴らす。その光景を見ながら、では自分はどうなのかと思いを巡らす。自分は目から血を流したことがあり、妖化が一歩進んでいる。天冥がこの場で浄化すればいいと言ってくれてはいるが、自分こそ警護なんてしていいのだろうかと不安になる。とはいえ元々妖化なんてものの仕組みが分からないのだ、専門家の天冥がそう采配するなら任せるしかないのか……
考えに沈んだ弓削にはお構いなしにまたドンドンポクポクとやり出した時、借り着していた作務衣のズボンのポケットから振動が伝わる。携帯が鳴っているらしい。耳を塞いで本堂を出、着信を受ける。電話の相手は遠藤だった。
『速水が、親父さんを刺して行方を眩ませた』
開口一番、遠藤には珍しい真面目なトーンでそう言った。速水は確か、今は絶対安静状態で病院のベッドで寝ていたはずでは?何をどう返していいか分からず、弓削は携帯を耳に当てたまま立ち尽くした。その一報がもたらした不穏な空気が具現化したのか、弓削の鼻腔を腐臭がついた。
午前中で何とか全ての仏具の煤払いを終え、浦安が寺を離れると、入れ替わりにノワールから弾正と草太がやって来た。浦安から一旦離れると告げられた天冥が、遵奉住職に頼んで弾正を探偵…というか何でも屋として雇ってくれたのだ。そうして午後からは工場で亡くなった檀家さんの葬式に出ている住職に代わって天冥が指揮し、バラバラになった仏具のセッティングと掃除をすることになった。
「事件の犯人を見つけるって息巻いてたみたいだけど、目星はついたの?」
本堂の隣りの、作業に当てている部屋に入って来るなり、フーミーん~と馴れ馴れしく近づいてきた弾正に質問をぶつける。弾正の背後に隠れるように草太が付き従っていた。二人とも半袖スウェットにチノパンという作業しやすそうな軽装だ。
「お、聞いちゃう?それ。まあ目星はついたっちゅうか、あんたら警察ってホント駄目駄目だな。アキさんを殺した犯人なんてさ、ちょっと考えたら分かることなのに全然見当違いのとこばっか探してやんの」
アキさん…三国は何者かに首元を食いちぎられて死んでいた。その死に方はK市の高層マンションで殺された池田渚の死因に似ているが、首無し連続殺人とは首の損傷の仕方が全く違う。もし天冥の語ったことを真実とするなら、弓削にもある程度の推測は立った。首無し連続殺人は実は殺人ではなく、妖化した少女たちが自らの身体を捨て、頭だけで飛び回っているのだ。それが正しい見方なのかどうか、頭がどこにあるかが重要な手掛かりになってくる。現在、警察庁の捜査員たちが血眼になって探しているはずだ。一方、噛まれて死んだ方はその頭だけの存在が食いちぎったことによるものと、こちらも天冥の説明で推察できる。妖化した頭に襲われたのだ。そう考えると、高層マンションのどこから被疑者が来たのかの説明がつく。
だが、三国の部屋は密室だった。
天冥から聞いたところによると、妖化した者には違う次元の物理法則が働き、翼が無くても空を飛ぶなんてことも出来るようになるが、その飛頭蛮と呼ばれるモノノケには物体を透過する能力までは備わっていないらしい。そこはこの世界の物理法則に従い、対象に飛びながら食いつくことが出来ても物体をすり抜けるということは出来ない。なので、密室の中に入ることは出来ないのだ。飛頭蛮なんてモノノケが飛び回っているかどうかという議論はさて置き、弾正は自信満々に三国を殺した犯人が分かっていると言う。
「誰よ、あなたの考える犯人。聞かせてもらおうじゃないの」
「おう、別にいいんだけどさ、一応俺も探偵って看板掲げてるわけだからさ、タダでってのはどうかなあ?」
「何よ、お金取るって言うの?」
「んーまあ金でもいいんだけどさ、フーミンならそのでっかい胸を一揉みさせれくれるだけでもいいぜ?」
弓削のこめかみがピクッと動く。それを察したのか、
「弾正さん!」
と、草太が慌てて弾正のスウェットの袖口を引っ張った。だが弓削は思いの外冷静で、目を細めてニヤッと笑った。
「今、一揉みって言った?」
「ああ、言った言った。何なら二揉みでも三揉みでもいいぜ?」
言いながらジリジリと後ずさる。何がしかの危険は察知できているようだ。
「なら、今すぐ教えてよ。あんた、もうすでに一揉みしたでしょ?あんたはすでに借金状態なのよ。チャラにしてあげるから言いなさい」
その言葉に弾正は一瞬虚をつかれた顔をし、そしてワハハと豪快に笑った。
「こりゃ一本取られたな。分かった、教えてやるよ。犯人はなあ…」
「弾正と草太は組み立て作業にかかって頂戴。弓削さんは紬と、掃除をお願い」
いつの間に来たのか、天冥が弾正の言葉を遮ってこれからの作業の指示を出した。その声に、弾正の肩がビクンと上がった、ように見えた。錯覚だったのかもしれないが、弾正は今までの会話が無かったように、
「よーしじゃあ、まずはでっかいところから片付けますか」
と、パンパンと手を打ち、草太に指示して一番大きな仏具のパーツを二人で抱えてお堂に運び出した。
「あ、ちょっと!」
弓削はお預けを喰らう形になり、ぼんやりと立ち尽くす。弾正はもう弓削を見ようともせず、まるで天冥の視線を気にするようにテキパキと動いている。草太はどこかホッとしたように、弾正の指示によく従っていた。その二人の姿は師匠と弟子、もしくは兄と弟のようだった。
「何何ぃ?ひょっとしてフーミン、弾正のことが気になっちゃうとか?」
紬が弓削をニンマリと覗き込んだ。手には二枚の水で湿らせた雑巾を持っている。弓削はその一枚を受け取り、きっぱりとした口調で言った。
「まさか。あんなガサツ男、興味ありません」
作業は暗くなるまでかかったが、何とか今日のうちに終わらせることが出来た。弓削は完成した本堂の境内側に立ち、その全体を視界に収めた。ど真ん中から和風シャンデリアとも形容すべき、金色の折り鶴をたくさんぶら下げたような豪華な天蓋の光がキラキラと降り注ぎ、その真下に赤い柵で正方形に囲われた中に日輪を背にしたご本尊がある。遵奉住職を思わせるふくよかなご本尊の両脇には一回り小さい仏様が並び、三体とも金色に輝いている。その前に並んだ香炉や蝋燭立、花立てなどの仏具もみんな金色で、花立てに立てられている蓮の花までも金色だ。一生懸命磨いた甲斐もあり、とても絢爛に輝いている。
ご本尊の枠の左右には等身大の木造の立像。左側の仏様の名前は分からないが、右側の名前は分かる。頭に八面の顔が付いた冠を乗せ、とても特徴的なその立像の名前は九面観音。きのうの夜、夕涼みをしていた境内から帰った時に浦安に教えてもらった。その浦安も、住職に教えてもらったのだと言う。妙見信仰の象徴的な観音様で、厄除けに多大な力を発揮するとか。ご利益があるかと思って弓削はこの立像の水拭きを買って出たのだったが、間近で見たそのお顔はご本尊より幾分スリムで優しげな微笑を称え、頭の八つの顔は怒りや悲しみなどそれぞれ別々の表情をしていた。
立像の横には源氏の物と思われる鎧兜が本堂の両角に設置され、ご本尊の区画の前には読経用のスペースがある。大きなマットで畳より少し高くなっており、その真ん中に住職が座る高級そうな紫の大きな座布団。座布団には金色の唐草模様が入っている。今、その座布団には少女が崩れた正座で座り、前に並ぶ木魚やお鈴をポクポクチンチン鳴らしている。それに合わせたように左手から畳に直接置かれた太鼓をドドンと打ち鳴らす音。右手には磬子と呼ばれる、鋼鉄製の大きな鉢のような、お鈴の最終形態のような仏具があり、先が布で巻かれた木製バットのようなリン棒で青年がゴーンと鳴らしている。
ポクポク、チーン、ポクポク、チーン
ドドンドンドンドドンドン
ゴーン、ゴーン、ゴーン、ゴーン
合っているようなバラバラのような、打楽器だけのの大合奏が頭に響く。
ポクポクドドンポクドンチーンポクポクドドンゴーンチーンポクポクドドンポクドンチーンゴーンゴーンドンポクポクドーン
「うるさーーーい!!」
弓削の金切り声が本堂に響き渡り、三方からキョトンとした顔を向けられる。正面に紬、左前に弾正、右前に草太だ。
「いや俺らさあ、あさってからの練習をしてんだけど?煩いならフーミンが出て行けよ」
言って、ドン、と太鼓を鳴らす。そしてバチを肩叩き棒のように自分の肩をトントン叩き、弾正が弓削の顔を見据える。
「え?あさってからの練習?」
「ああ、和尚がさあ、家人をみんな帰したから、和尚が読経してる間、代わりに太鼓打ってくれって」
「代わりにって、あんたたち、仏教徒でもないんでしょ?そんなんで勤まるの?」
「いや、時々バイトでやってるしな、楽勝よ」
「バイトでやってるんかい!」
弾正のバイトという言葉で、仏具のセッティングを終えて次第に引き締まってきた気持ちが一気に緩んだ。住職はきっと、妖化するのを恐れて家人を帰したのだろう。それは家人を守ることでもあり、家人が妖化してお焚き火を邪魔させないためでもある。将門の悪霊は妖化した人間を操り、お焚き火を邪魔しに来るのだという。なので寺には極力不用意に人を置かないようにしているはずだ。なのに弾正や草太はバイトで雇われているという。妖化の危険はないのだろうか?
「そうだそうだー!楽勝楽勝!」
紬がチーンとお鈴を鳴らし、
「いやお前は雇われてないだろ」
と、弾正が太鼓をドンと鳴らす。その光景を見ながら、では自分はどうなのかと思いを巡らす。自分は目から血を流したことがあり、妖化が一歩進んでいる。天冥がこの場で浄化すればいいと言ってくれてはいるが、自分こそ警護なんてしていいのだろうかと不安になる。とはいえ元々妖化なんてものの仕組みが分からないのだ、専門家の天冥がそう采配するなら任せるしかないのか……
考えに沈んだ弓削にはお構いなしにまたドンドンポクポクとやり出した時、借り着していた作務衣のズボンのポケットから振動が伝わる。携帯が鳴っているらしい。耳を塞いで本堂を出、着信を受ける。電話の相手は遠藤だった。
『速水が、親父さんを刺して行方を眩ませた』
開口一番、遠藤には珍しい真面目なトーンでそう言った。速水は確か、今は絶対安静状態で病院のベッドで寝ていたはずでは?何をどう返していいか分からず、弓削は携帯を耳に当てたまま立ち尽くした。その一報がもたらした不穏な空気が具現化したのか、弓削の鼻腔を腐臭がついた。
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