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第3部 他殺か心中か
大力の暗殺部隊
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神崎一虎が目を覚ましたと報告を受けた岩隈は、意気揚々と神崎の入院する病院へと出向いて行った。だが神崎の容態は不安定で、脊髄に損傷を負ったのが元で話もろくに出来ないのだと主治医に伝えられた、と朝の会議で岩隈は忌々しい口調を隠そうともせずに報告していた。
会議が終わり、神崎の状態を詳しく聞こうと岩隈に寄っていく涼宮班長の後ろに、柳沢も付き従った。
「いや、会議では詳しく言わんかったんですがね、神崎の病室にはまるで世話女房のような女がずっと付いてましてね、彼女が頑なに神崎の側に寄ることを許さんのですわ。なので自分も神崎の姿を一目も見れんかったんです」
会議と全く同じ表情で岩隈が言う。涼宮はその女性の身元について聞いた。
「いやあ、どうも神崎の親族でも交際相手でもないらしいんですがね、神崎の昔馴染みのようで、今は自分が身の回りの世話をしているからと言い張るんです。こちらとしてもまだ令状を用意出来てないでしょう、引き下がるしかなかったんですわ」
「そうですか…なら、今からもう一度行きましょう。今日は私も同行させてもらいます」
涼宮のその言葉に、岩隈は眉を潜める。
「いやきのうの今日ではまだ無理でしょう。それに、組関係の方面はうちの担当です。はい行きましょうとは言えませんな」
エラに力を入れて口を結んだ岩隈に、涼宮が精悍な笑顔を向けた。
「四課さんもすぐに情報を取りたいでしょう?もし僕が一緒に行くことで話が聞けるとしたら、同行する意味はあると思いますが」
「はあ?何でそうなるんです?今も言ったように神崎には世話女房みたいなやつが張り付いてるんですよ?」
「ええ分かってます。その女性、おそらく僕の知ってる人やと思うんです。あ、言い遅れましたが、実は僕も神崎の昔馴染みでしてね。その世話女房さんが僕の知ってる女性なら、話をさせてもらえる可能性は高いと思いますよ」
ええー!と、まず柳沢が驚き声を上げる。先を越されたというように、岩隈は柳沢を睨む。
「言うたやろ?俺は宮本拓也と昔馴染みやって。宮本も神崎も同じ幼馴染仲間なんや。なので岩隈さん、僕らにしても、神崎から話を聞く必要はあるわけです」
そうして三人で神崎の病室を訪れたわけだが、涼宮の言った通り、神崎に付き添っている女性はすんなり面会を許した。
「あまり長くならないようにお願いしますよ」
主治医が折り畳みの椅子を三脚用意してくれ、そう念を押して部屋から出ていく。神崎の傍らにいた女性、夏美もそれに続いて出て行こうとすると、
「夏美、も、側に、いてくれ」
と、神崎が辿々しい口調で引き止めた。神崎は思うように身体を動かすことが出来ないらしく、掛け布団から顔だけ出してベッドに横たわったままだった。口調は辿々しいが、聞き取れないという程ではない。夏美が神崎に頷き、ベッドの横のデスクから椅子を取って神崎の枕側に置き、柳沢たちと並んで神崎に向いて座った。岩隈が痰を切るように喉を鳴らし、最初に質問する。
「あー、神崎さん、あまり時間が取れないということなので、単刀直入にお聞きします。あんたが拳銃で撃たれた時、現場にいたのは虎舞羅の連中に違いありませんね?」
いきなり本題に入ったなと思った。イエスかノーで答えられるように端的に聞く。その姿勢に無駄が無く、普段憎まれ口をよく叩かれていた岩隈の仕事ぶりを柳沢は少し感心して聞いた。神崎はと見ると、それと分かるように首を左右に振り、岩隈の言葉を否定した。
「違う。虎舞羅と…違う」
岩隈から息を飲む気配が伝わる。
「それは…仲間を庇って言ってるん違うやろな?虎舞羅と違うんやったら、一体誰や言うねん?」
少し余裕が無くなったのか、今度はイエス・ノーでは答えられない聞き方だ。夏美がチラッと、口調が鷹揚になった岩隈を睨んだ。
「あれは…親父、の……大力の、あ、暗殺、部隊、やった」
途切れ途切れではあるが、神崎の口から不穏なワードが飛び出す。一瞬水を打ったように静かになり、やがてガタンと、岩隈が立ち上がった。
「まさか!?何でや?あんたの父親の部隊やろ?何でそんな部隊があんたを殺そうとするんや!?」
岩隈の声が響き、夏美が顔色を変えて立ち上がる。
「ちょっと!相手は重病人ですよ?もうちょっと静かに聞けませんか?」
岩隈がバツの悪そうな顔で座り直すと、涼宮がその後を引き継いだ。枕側から夏美の隣りに涼宮、そして岩隈、柳沢の順に座っていた。
「一虎君、久しぶり。太陽です。こんな形で再会したくなかったけど、今は俺、刑事をしてて、何の因果か拓也君が亡くなった事件の捜査をしてる。俺はもし拓也君が殺されたんやったら、必ず犯人を突き止めたいと思ってる。そんで、君の証言がその有力な手掛かりになるかもしれへんねん。何でもいい、何か心当たりあったら、教えてくれへんか?」
涼宮が神崎に語りかけている間、夏美が手で自らの顔を覆うのが涼宮の肩越しに見えた。ひょっとすると宮本が亡くなったことをまだ知らせていなかったのではと懸念したが、こちらとしても一刻も早く有力な情報を掴みたい。柳沢も目に力を込めて神崎を見つめた。
神崎はというと、涼宮が話し出した時にコクンと一つ挨拶するように頷いて見せたが、涼宮が話し出すと、天井の一点をじっと見つめ、時には顔を歪ませながらも、ただ黙って聞いていた。その表情は、前情報として聞いていた虎舞羅という荒くれ集団のヘッドとは思えない弱々しいものだった。涼宮が話し終え、夏美がすっと立ち上がる。
「トラ……ごめんなさい。拓也のこと、話さないといけないと思ってたんやけど、トラの体調がもうちょっと良くなってからと思ってたの」
夏美が神崎に頭を下げるのを見て、岩隈が今更のように、あっと声を上げる。警察が誰よりも先に亡くなった親族にその死を知らせることはよくあるのだが、今の場合は切羽詰まるあまり配慮に欠けていたことに思い当たったのだろう。当の涼宮はというと、そこには意を介さないように、言葉を継いだ。
「今、君を撃ったのは大力の暗殺部隊って教えてくれたわけやけど、その根拠な何かな?誰か、現場でそれに該当する人物を見たんだね?」
四人の視線が神崎に向く。神崎は夏美に目線を送り、
「大丈夫、気にするな」
と言った後、夏美が座るのを見届けてから涼宮に目線をスライドさせた。
「ああ、見た。キュウや。キュウが、いた」
キュウ?と、涼宮と岩隈が漏らした言葉が被る。が、神崎はそれ以上のことを語ろうとはせず、また夏美に向き、
「ここまでに、してくれ」
と、頼むような視線を送った。夏美はそれに頷き、また立ち上がって刑事たち三人に向く。
「今日はここで終わらせて下さい。まだこれからだって時間は取れるんですから、今日の所は申し訳ありませんが帰って下さい」
病室を出て、一旦署に戻る車中で、岩隈がこんなことを言った。
「大力会会長の大力誠治が構成員の他に暗殺に特化した部隊を待ってるって話は四課の間では公然の秘密やったんです。で、大力には母親の違う子どもが何人かおるんですが、その子どもの何人かがその部隊に関わってるとか」
「じゃあ、さっき神崎が言ったキュウっていうのも?」
「キュウねえ……キュウ、九、Q……大力の息子の誰か、もしくは何かのコードネームなのかもしれません。これは……思ってたよりきな臭くなってきましたなあ。あ、でも、今日は助かりました。ありがとうございました!」
後ろのシートから岩隈が殊勝に助手席に座る涼宮に礼の言葉を投げてくるのを、運転している柳沢は意外な面持ちで聞いた。
「いやあ、うちでは野崎組が神代組六代目を決めるのに自分たちが有利に事を進めようと大力会を貶めようとしてる、ちゅうのが主流の見方やったんですが、そこに大力の裏の組織が加わってるとなると、ちょっとその見方を改めなあかんかもしれません。これは…野崎と大力の間の単純な争いやない。いっそ二つの組に一斉にガザ入れせなあかんかもしれませんなあ」
言っている岩隈の鼻息が荒くなるのが、後ろからビンビン伝わってきていた。岩隈は今回の聴取を本当に感謝してくれているようで、気をよくした彼はさらにこんなことを涼宮に打ち明けてきた。
「神崎の弟の神崎隆二なんですがね、実はこんなタレ込みが野崎の構成員からあったんです。ほら、今回の事件の発端と見られてるミナミの銃撃戦あったでしょ?あれの首謀者が隆二や言うんですなあ。まあ何か事が起こった時に末端の構成員を差し出すのはヤツラのやり口なわけですが、それに隆二を差し出すというのは、どうせ虎舞羅を、引いては大力を陥れようとする思惑なんやろって思って受け流して、会議にも上げてなかったんです。まあ今回のお礼っちゃ何ですけど、そちらのお役に立つかもしれんのでお教えしときますね。あ、私から聞いたとはくれぐれも言わないように」
ええ、ありがとうございますと、涼宮が曖昧な首肯をする。必要がないと判断して報告しなかった的なことを言っているが、部署違いの相手に必要以上に情報を渡したくなかったのだと柳沢は心の内で舌打ちした。テンションの上がった岩隈はそれからも車中一人でずっと喋り続けていた。
「でも何ですな、神崎の言うように大力の裏の部隊が関わってるとなると、ちょっと描ける絵が複雑になってきました。隆二が行方を眩ませてるんも、その辺に理由があるのかもしれません。ヤツラ、組長が臭い飯食って来いって言うたら、普通は絶対逆らいませんからね。逃げるなんてことはないはずなんです。あ、そうや、こっちで目ぼしい組員の顔写真用意しときますんで、よかったら明日も一緒に神崎の病室に行きませんか?神崎の言ってたキュウを特定出来たら、一気に捜査が進展するかもしれません」
最初、一緒に病院に行くことを渋っていたのと同じ人間とは思えないほど急にフレンドリーになってきた岩隈だったが、これ以降彼と行動を共にする日は訪れなかった……。
神崎一虎は、この日の未明、息を引き取った。病室の扉の取手の金具に首に回した手拭いを括りつけ、首を吊っているのを次の朝早くに病室を訪れた夏美が発見した。すでに事切れており、検視でも頸動脈圧迫による縊死と判定された───。
会議が終わり、神崎の状態を詳しく聞こうと岩隈に寄っていく涼宮班長の後ろに、柳沢も付き従った。
「いや、会議では詳しく言わんかったんですがね、神崎の病室にはまるで世話女房のような女がずっと付いてましてね、彼女が頑なに神崎の側に寄ることを許さんのですわ。なので自分も神崎の姿を一目も見れんかったんです」
会議と全く同じ表情で岩隈が言う。涼宮はその女性の身元について聞いた。
「いやあ、どうも神崎の親族でも交際相手でもないらしいんですがね、神崎の昔馴染みのようで、今は自分が身の回りの世話をしているからと言い張るんです。こちらとしてもまだ令状を用意出来てないでしょう、引き下がるしかなかったんですわ」
「そうですか…なら、今からもう一度行きましょう。今日は私も同行させてもらいます」
涼宮のその言葉に、岩隈は眉を潜める。
「いやきのうの今日ではまだ無理でしょう。それに、組関係の方面はうちの担当です。はい行きましょうとは言えませんな」
エラに力を入れて口を結んだ岩隈に、涼宮が精悍な笑顔を向けた。
「四課さんもすぐに情報を取りたいでしょう?もし僕が一緒に行くことで話が聞けるとしたら、同行する意味はあると思いますが」
「はあ?何でそうなるんです?今も言ったように神崎には世話女房みたいなやつが張り付いてるんですよ?」
「ええ分かってます。その女性、おそらく僕の知ってる人やと思うんです。あ、言い遅れましたが、実は僕も神崎の昔馴染みでしてね。その世話女房さんが僕の知ってる女性なら、話をさせてもらえる可能性は高いと思いますよ」
ええー!と、まず柳沢が驚き声を上げる。先を越されたというように、岩隈は柳沢を睨む。
「言うたやろ?俺は宮本拓也と昔馴染みやって。宮本も神崎も同じ幼馴染仲間なんや。なので岩隈さん、僕らにしても、神崎から話を聞く必要はあるわけです」
そうして三人で神崎の病室を訪れたわけだが、涼宮の言った通り、神崎に付き添っている女性はすんなり面会を許した。
「あまり長くならないようにお願いしますよ」
主治医が折り畳みの椅子を三脚用意してくれ、そう念を押して部屋から出ていく。神崎の傍らにいた女性、夏美もそれに続いて出て行こうとすると、
「夏美、も、側に、いてくれ」
と、神崎が辿々しい口調で引き止めた。神崎は思うように身体を動かすことが出来ないらしく、掛け布団から顔だけ出してベッドに横たわったままだった。口調は辿々しいが、聞き取れないという程ではない。夏美が神崎に頷き、ベッドの横のデスクから椅子を取って神崎の枕側に置き、柳沢たちと並んで神崎に向いて座った。岩隈が痰を切るように喉を鳴らし、最初に質問する。
「あー、神崎さん、あまり時間が取れないということなので、単刀直入にお聞きします。あんたが拳銃で撃たれた時、現場にいたのは虎舞羅の連中に違いありませんね?」
いきなり本題に入ったなと思った。イエスかノーで答えられるように端的に聞く。その姿勢に無駄が無く、普段憎まれ口をよく叩かれていた岩隈の仕事ぶりを柳沢は少し感心して聞いた。神崎はと見ると、それと分かるように首を左右に振り、岩隈の言葉を否定した。
「違う。虎舞羅と…違う」
岩隈から息を飲む気配が伝わる。
「それは…仲間を庇って言ってるん違うやろな?虎舞羅と違うんやったら、一体誰や言うねん?」
少し余裕が無くなったのか、今度はイエス・ノーでは答えられない聞き方だ。夏美がチラッと、口調が鷹揚になった岩隈を睨んだ。
「あれは…親父、の……大力の、あ、暗殺、部隊、やった」
途切れ途切れではあるが、神崎の口から不穏なワードが飛び出す。一瞬水を打ったように静かになり、やがてガタンと、岩隈が立ち上がった。
「まさか!?何でや?あんたの父親の部隊やろ?何でそんな部隊があんたを殺そうとするんや!?」
岩隈の声が響き、夏美が顔色を変えて立ち上がる。
「ちょっと!相手は重病人ですよ?もうちょっと静かに聞けませんか?」
岩隈がバツの悪そうな顔で座り直すと、涼宮がその後を引き継いだ。枕側から夏美の隣りに涼宮、そして岩隈、柳沢の順に座っていた。
「一虎君、久しぶり。太陽です。こんな形で再会したくなかったけど、今は俺、刑事をしてて、何の因果か拓也君が亡くなった事件の捜査をしてる。俺はもし拓也君が殺されたんやったら、必ず犯人を突き止めたいと思ってる。そんで、君の証言がその有力な手掛かりになるかもしれへんねん。何でもいい、何か心当たりあったら、教えてくれへんか?」
涼宮が神崎に語りかけている間、夏美が手で自らの顔を覆うのが涼宮の肩越しに見えた。ひょっとすると宮本が亡くなったことをまだ知らせていなかったのではと懸念したが、こちらとしても一刻も早く有力な情報を掴みたい。柳沢も目に力を込めて神崎を見つめた。
神崎はというと、涼宮が話し出した時にコクンと一つ挨拶するように頷いて見せたが、涼宮が話し出すと、天井の一点をじっと見つめ、時には顔を歪ませながらも、ただ黙って聞いていた。その表情は、前情報として聞いていた虎舞羅という荒くれ集団のヘッドとは思えない弱々しいものだった。涼宮が話し終え、夏美がすっと立ち上がる。
「トラ……ごめんなさい。拓也のこと、話さないといけないと思ってたんやけど、トラの体調がもうちょっと良くなってからと思ってたの」
夏美が神崎に頭を下げるのを見て、岩隈が今更のように、あっと声を上げる。警察が誰よりも先に亡くなった親族にその死を知らせることはよくあるのだが、今の場合は切羽詰まるあまり配慮に欠けていたことに思い当たったのだろう。当の涼宮はというと、そこには意を介さないように、言葉を継いだ。
「今、君を撃ったのは大力の暗殺部隊って教えてくれたわけやけど、その根拠な何かな?誰か、現場でそれに該当する人物を見たんだね?」
四人の視線が神崎に向く。神崎は夏美に目線を送り、
「大丈夫、気にするな」
と言った後、夏美が座るのを見届けてから涼宮に目線をスライドさせた。
「ああ、見た。キュウや。キュウが、いた」
キュウ?と、涼宮と岩隈が漏らした言葉が被る。が、神崎はそれ以上のことを語ろうとはせず、また夏美に向き、
「ここまでに、してくれ」
と、頼むような視線を送った。夏美はそれに頷き、また立ち上がって刑事たち三人に向く。
「今日はここで終わらせて下さい。まだこれからだって時間は取れるんですから、今日の所は申し訳ありませんが帰って下さい」
病室を出て、一旦署に戻る車中で、岩隈がこんなことを言った。
「大力会会長の大力誠治が構成員の他に暗殺に特化した部隊を待ってるって話は四課の間では公然の秘密やったんです。で、大力には母親の違う子どもが何人かおるんですが、その子どもの何人かがその部隊に関わってるとか」
「じゃあ、さっき神崎が言ったキュウっていうのも?」
「キュウねえ……キュウ、九、Q……大力の息子の誰か、もしくは何かのコードネームなのかもしれません。これは……思ってたよりきな臭くなってきましたなあ。あ、でも、今日は助かりました。ありがとうございました!」
後ろのシートから岩隈が殊勝に助手席に座る涼宮に礼の言葉を投げてくるのを、運転している柳沢は意外な面持ちで聞いた。
「いやあ、うちでは野崎組が神代組六代目を決めるのに自分たちが有利に事を進めようと大力会を貶めようとしてる、ちゅうのが主流の見方やったんですが、そこに大力の裏の組織が加わってるとなると、ちょっとその見方を改めなあかんかもしれません。これは…野崎と大力の間の単純な争いやない。いっそ二つの組に一斉にガザ入れせなあかんかもしれませんなあ」
言っている岩隈の鼻息が荒くなるのが、後ろからビンビン伝わってきていた。岩隈は今回の聴取を本当に感謝してくれているようで、気をよくした彼はさらにこんなことを涼宮に打ち明けてきた。
「神崎の弟の神崎隆二なんですがね、実はこんなタレ込みが野崎の構成員からあったんです。ほら、今回の事件の発端と見られてるミナミの銃撃戦あったでしょ?あれの首謀者が隆二や言うんですなあ。まあ何か事が起こった時に末端の構成員を差し出すのはヤツラのやり口なわけですが、それに隆二を差し出すというのは、どうせ虎舞羅を、引いては大力を陥れようとする思惑なんやろって思って受け流して、会議にも上げてなかったんです。まあ今回のお礼っちゃ何ですけど、そちらのお役に立つかもしれんのでお教えしときますね。あ、私から聞いたとはくれぐれも言わないように」
ええ、ありがとうございますと、涼宮が曖昧な首肯をする。必要がないと判断して報告しなかった的なことを言っているが、部署違いの相手に必要以上に情報を渡したくなかったのだと柳沢は心の内で舌打ちした。テンションの上がった岩隈はそれからも車中一人でずっと喋り続けていた。
「でも何ですな、神崎の言うように大力の裏の部隊が関わってるとなると、ちょっと描ける絵が複雑になってきました。隆二が行方を眩ませてるんも、その辺に理由があるのかもしれません。ヤツラ、組長が臭い飯食って来いって言うたら、普通は絶対逆らいませんからね。逃げるなんてことはないはずなんです。あ、そうや、こっちで目ぼしい組員の顔写真用意しときますんで、よかったら明日も一緒に神崎の病室に行きませんか?神崎の言ってたキュウを特定出来たら、一気に捜査が進展するかもしれません」
最初、一緒に病院に行くことを渋っていたのと同じ人間とは思えないほど急にフレンドリーになってきた岩隈だったが、これ以降彼と行動を共にする日は訪れなかった……。
神崎一虎は、この日の未明、息を引き取った。病室の扉の取手の金具に首に回した手拭いを括りつけ、首を吊っているのを次の朝早くに病室を訪れた夏美が発見した。すでに事切れており、検視でも頸動脈圧迫による縊死と判定された───。
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