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第2部 萌未の手記
普通でいることへの憧憬
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苦はあたしを捉えて話さない──
思えばいつも、あたしの隣りには苦しみがあった。
小山内が亡くなったことに、あたしはまた苦しんだ。
生真面目だけが取り柄のようなおじいちゃん………あたしさえ接触しなければ、彼はきっとその愚直な人生を天寿まで全うできただろうに……。
DもEもFも憎い!
必ず目に物見せてやると思っている。
その一方で、本当にこのまま突き進んでいいのかと、心の中で警鐘が鳴る───。
また眠れなくなり、志保姉の睡眠薬を取りにミナミの部屋に取りに行ったあたしは、その夜涼平の腕の中で寝た。
涼平に触れることで、例え束の間であっても、復讐から離れたいあたしがいた──。
涼平と長めのキスをした。
「涼平ならうんこ食べた後でもキスしてあげる」
「いや、うんこは食べへんけどな…」
そんな軽口を叩きながら、涼平の腕の中に収まる。
「こうしてると落ち着く。涼平は睡眠薬いらずね」
あたしは涼平の手をあたしの敏感な部分へと誘う。とても切なく、温かい時間だった。小波に揺られるように、穏やかなまどろみに包まれた。
あたしは思い描く。
このまま志保姉の敵討ちなんか忘れて、普通の大学生になった未来を。
今更普通がどんなものかあたしには分からないけど、普通の大学生の、普通の二十歳の女の子……
普通に恋をして、普通に将来について語る……
その相手はもちろん、涼平だ。
そんな姿を思い描いていると、不思議に拓也が美伽と結婚することも許していい気持ちになった。
だけど、あたしの歩んで来た道はすでに血塗られている──。
(向こう陣営にはもうあなたは神崎の敵として認識されています。いつあなたがお友達と同じ目に遭うとも分からない状況なんです)
出来島の言葉が過り、すでに平穏な道は閉ざされているという現実を突きつける。
このまま復讐を完遂したとしても、その時あたしは、普通に戻ることなんて出来るのだろうか……?
現状あたしの前には小山内から受け取った、榎田の不正を暴くことのできる裏帳簿がある。これを公表すればおそらく榎田の政治生命は終わり、それに伴ってフジケンと大力を繋ぐ金脈も絶たれるだろう。
それをもって志保姉の敵討ち完了とすべきか……
あたしにはまだ何か、わだかまりがあった。志保姉が殺されたと思っているあたしは、まだ直接手を下したやつが誰なのか突き止めていない。そこに、大きな手落ちがあるように感じていた。
まだ何か情報が足りない気がして、拓也の元に向かった。
あたしが裏帳簿を手に入れたことを知った拓也は、自分の知っていることを話す代わりにそれを預けて欲しいと言う。取り敢えず拓也の家で聞くことにした。拓也は書斎のパソコンを起動させ、一つのファイルを開いて見せる。
「これは大塚さんが住んでいた家…つまり君と志保が暮らしていた家の登記簿謄本のコピーだ。志保が池橋市の法務局出張所から取ってきた物なんだ」
「え、志保姉が?」
目の前に志保姉が生きていた頃の痕跡がある、あたしはそう思うと、そのファイルを感慨深く眺めた。
「そう。これの乙区という所を見て欲しい。ここに篠原コーポレーションと書かれているだろう?これは君の住んでいた家の所有権が篠原コーポレーションという会社に移ったということを示しているんだ」
「所有権が?て、どういうこと?」
「つまり、抵当に入っているってことだね。そしてね、この篠原コーポレーションなんだけど、代表の篠原という人物は今では大力会の若頭になっているんだ」
「大力会の!?つまり、あたしたちが住んでいた家は大力会の所有になったってこと?」
「うん、一度はね。でもその後、所有権はフジケン興業に移った。ほら、前にマンション建設予定地を見ただろ?あそこだよ」
あたしは元住んでいた家がトタンの高い塀で囲われている所を拓也と見たのを思い出した。
「そしてね、これらがあのマンション建設予定地になる前の土地の登記簿謄本のコピーだ」
拓也は今度は別のファイルを開く。
「ほら、これらは別の池橋市の物件なんだけど、全てに篠原コーポレーションという会社名が入っている。最終的にこれらの土地はフジケン興業の物になるわけだけど、必ずと言ってその前に篠原コーポレーションを経由している。僕はこの篠原コーポレーションについて調べたんだけど、まあ簡単に言うと地上げをしている会社なんだ。当時、かなり強引な地上げをしていたらしい」
拓也の提示したそれらの書類から、地上げによって不当に池橋市の土地がフジケン興業に渡っていることが推察された。
そんな話をしている折、涼平から電話が入る。
『涼平やけど、部屋に置いてる萌未の靴、ちょっと貸してもらえないかなあって思って…』
「靴を?何で?」
『うん。俺がスカウトした女の子が今日から働くんやけど、そいつに貸してやりたいねん』
「あら、もう女の子スカウトするなんて、やるやない」
『う~ん、それが素人同然の子でさあ、靴持ってへん言うから玄関の萌未の借りてええかなぁ?』
「あ~ら、優しいのね。ええわよ。何やったらあたしのクローゼットの中の服、使えるのあったら貸してあげてもええよ」
『え、それは助かるかも』
「その代わり、今度何か奢ってよね」
そう言ったとき、拓也が誰?と、横から口を挟み、あたしは慌てて電話を切った。別にやましいことをしているわけじゃなかったけど、拓也には涼平のことは言っていなかったので、それ以上二人の会話を聞かれたくなかった。
なのに、電話を切った後、あたしの顔を拓也が覗き込み、
「誰とやり取りしてたの?」
と執拗に聞く。
「だ、誰だっていいやない。拓也には関係ない人」
「そう?でも今の君の顔、普通の女の子の顔をしていたよ」
「え、普通の女の子……?」
あたしもそんな顔ができる……そのことに、胸が詰まった。そんなあたしを、拓也がニヤニヤと見ていた。この後彼の質問攻勢に辟易し、昔の同級生で今は同じ大学に通っているということだけ教えた。すると拓也は何かがピンときたような顔をする。そういえばあたしは拓也に受験勉強を教わる際、なぜ神戸の大学を受けたいのかという理由に涼平の存在を仄めかしていたのだったが、拓也はきっとそれを察したのだろう。
だけど当の涼平は、黒服になってからあたしを置いてけぼりにして一人で歩き出そうとしていた。あたしは涼平がスカウトしたという女の子が気になり、涼平が入店したクラブドルチェまで見に行ったりした。その時は奇しくもフジケンと拓也が一緒だった。フジケンの顔を見ると虫酸が走るくらい嫌だったが、あたし一人で飲みに行くわけにもいかず、ドルチェに口座がある客をフジケンしか思いつかず、ちょうど来店したフジケンに頼んだのだった。拓也は拓也で涼平に興味があったようで、一緒に頼んでくれての来店だった。
涼平のスカウトした子は、可愛らしい子だった。ちょっとクラブらしくはなかったけど、普通っぽさをしっかり宿した子で、何かと世話を焼く涼平に、ちょっと……いや、かなり嫉妬した。涼平と妙に息が合っているように見えたのだ。
だけど涼平ったら意外にプレイボーイで、それから間もなくして、また違う女の子と歩いている所を見た。その子はあたしたちより少し年上に見えたが、やはり普通っぽい人だった。お水の世界にいて、普通っぽさも合わせ持てていることが羨ましく、また涼平があたしとは別の方向に引き寄せられているようで寂しかった。
その日、涼平がどこか遠くへ行ってしまうような焦燥感に駆られて、ミナミの家で涼平の帰るのを待った。
「なあ、やろうや」
この日の涼平はやけに男っぽく、あたしの上に伸し掛かってきた。その涼平の行為に、あたしの目からは涙が零れた。
この時、どうして涙が出たんだろう……?
涼平の心を掴めますように、と、あたしは悪魔の儀式をし、涼平のハートのパズルの欠片を今も持ち歩いている。そのことで涼平はあたしに囚われ、自分の意志に反してここにいるのではないだろうか、そう思えた。
本来の涼平はあたしなんかよりも、もっと普通の子と恋愛し、幸せな結婚をして良いお父さんになる………
そんな涼平の未来を、あたしが奪っているのではないか……?
そんな想いが湧き上がってきて、それが涙の形になった。
「最低…」
それはあたしの人生に対して言った言葉。
あたしの境遇に、
あたしの運命に、
あたしの行為に、
それは言ったのだったが、涼平は自分に言われたものと受け止めたようだった。
「なあ…萌未にとって、俺って何なん?」
「大切に思ってるよ。でも、酔った勢いとか、嫌なの」
「ここにいないときは宮本さんと一緒なんやろ?宮本さんには毎晩抱いてもらってるんやろ?」
あたしに囚われてしまった涼平の口から、嫉妬に駆られたような言葉が吐き出される。あたしはそんな涼平の本心が知りたかった。
それから……
「俺、明日ここを出ていくよ」
ついにその言葉を発した涼平に、あたしは彼を解放してあげようかどうか迷った。
でも、ダメ。
例え心が囚われてここにいるのだとしても、それならそうと割り切って、彼にはあたしの側にいて欲しい、そう思った。
まだ、解放してあげない……。
あたしは裸になり、涼平も裸にさせた。そして、裸のまま抱き合った。涼平の心が離れていきませんように…そう願いながら、くっついて抱き合っていた。
愛おしさに身悶えそうだった。あたしの青春がそこにある気がした。
「ね、あたしのこと、好き?」
そう聞くと、涼平はコクン、と頷く。
「あたしのこと、もし大切に想ってくれるなら、待ってて。何も聞かないで、ここで、待ってて」
あたしはそう言って涼平に覆いかぶさり、唇を重ねて長いキスをした。
そして思った。
後のことは拓也に託し、あたしは小山内からもらった物を公表することで復讐完了としよう、そして、もし涼平があたしを選んでくれるなら、涼平と一緒に暮らそう、と───。
思えばいつも、あたしの隣りには苦しみがあった。
小山内が亡くなったことに、あたしはまた苦しんだ。
生真面目だけが取り柄のようなおじいちゃん………あたしさえ接触しなければ、彼はきっとその愚直な人生を天寿まで全うできただろうに……。
DもEもFも憎い!
必ず目に物見せてやると思っている。
その一方で、本当にこのまま突き進んでいいのかと、心の中で警鐘が鳴る───。
また眠れなくなり、志保姉の睡眠薬を取りにミナミの部屋に取りに行ったあたしは、その夜涼平の腕の中で寝た。
涼平に触れることで、例え束の間であっても、復讐から離れたいあたしがいた──。
涼平と長めのキスをした。
「涼平ならうんこ食べた後でもキスしてあげる」
「いや、うんこは食べへんけどな…」
そんな軽口を叩きながら、涼平の腕の中に収まる。
「こうしてると落ち着く。涼平は睡眠薬いらずね」
あたしは涼平の手をあたしの敏感な部分へと誘う。とても切なく、温かい時間だった。小波に揺られるように、穏やかなまどろみに包まれた。
あたしは思い描く。
このまま志保姉の敵討ちなんか忘れて、普通の大学生になった未来を。
今更普通がどんなものかあたしには分からないけど、普通の大学生の、普通の二十歳の女の子……
普通に恋をして、普通に将来について語る……
その相手はもちろん、涼平だ。
そんな姿を思い描いていると、不思議に拓也が美伽と結婚することも許していい気持ちになった。
だけど、あたしの歩んで来た道はすでに血塗られている──。
(向こう陣営にはもうあなたは神崎の敵として認識されています。いつあなたがお友達と同じ目に遭うとも分からない状況なんです)
出来島の言葉が過り、すでに平穏な道は閉ざされているという現実を突きつける。
このまま復讐を完遂したとしても、その時あたしは、普通に戻ることなんて出来るのだろうか……?
現状あたしの前には小山内から受け取った、榎田の不正を暴くことのできる裏帳簿がある。これを公表すればおそらく榎田の政治生命は終わり、それに伴ってフジケンと大力を繋ぐ金脈も絶たれるだろう。
それをもって志保姉の敵討ち完了とすべきか……
あたしにはまだ何か、わだかまりがあった。志保姉が殺されたと思っているあたしは、まだ直接手を下したやつが誰なのか突き止めていない。そこに、大きな手落ちがあるように感じていた。
まだ何か情報が足りない気がして、拓也の元に向かった。
あたしが裏帳簿を手に入れたことを知った拓也は、自分の知っていることを話す代わりにそれを預けて欲しいと言う。取り敢えず拓也の家で聞くことにした。拓也は書斎のパソコンを起動させ、一つのファイルを開いて見せる。
「これは大塚さんが住んでいた家…つまり君と志保が暮らしていた家の登記簿謄本のコピーだ。志保が池橋市の法務局出張所から取ってきた物なんだ」
「え、志保姉が?」
目の前に志保姉が生きていた頃の痕跡がある、あたしはそう思うと、そのファイルを感慨深く眺めた。
「そう。これの乙区という所を見て欲しい。ここに篠原コーポレーションと書かれているだろう?これは君の住んでいた家の所有権が篠原コーポレーションという会社に移ったということを示しているんだ」
「所有権が?て、どういうこと?」
「つまり、抵当に入っているってことだね。そしてね、この篠原コーポレーションなんだけど、代表の篠原という人物は今では大力会の若頭になっているんだ」
「大力会の!?つまり、あたしたちが住んでいた家は大力会の所有になったってこと?」
「うん、一度はね。でもその後、所有権はフジケン興業に移った。ほら、前にマンション建設予定地を見ただろ?あそこだよ」
あたしは元住んでいた家がトタンの高い塀で囲われている所を拓也と見たのを思い出した。
「そしてね、これらがあのマンション建設予定地になる前の土地の登記簿謄本のコピーだ」
拓也は今度は別のファイルを開く。
「ほら、これらは別の池橋市の物件なんだけど、全てに篠原コーポレーションという会社名が入っている。最終的にこれらの土地はフジケン興業の物になるわけだけど、必ずと言ってその前に篠原コーポレーションを経由している。僕はこの篠原コーポレーションについて調べたんだけど、まあ簡単に言うと地上げをしている会社なんだ。当時、かなり強引な地上げをしていたらしい」
拓也の提示したそれらの書類から、地上げによって不当に池橋市の土地がフジケン興業に渡っていることが推察された。
そんな話をしている折、涼平から電話が入る。
『涼平やけど、部屋に置いてる萌未の靴、ちょっと貸してもらえないかなあって思って…』
「靴を?何で?」
『うん。俺がスカウトした女の子が今日から働くんやけど、そいつに貸してやりたいねん』
「あら、もう女の子スカウトするなんて、やるやない」
『う~ん、それが素人同然の子でさあ、靴持ってへん言うから玄関の萌未の借りてええかなぁ?』
「あ~ら、優しいのね。ええわよ。何やったらあたしのクローゼットの中の服、使えるのあったら貸してあげてもええよ」
『え、それは助かるかも』
「その代わり、今度何か奢ってよね」
そう言ったとき、拓也が誰?と、横から口を挟み、あたしは慌てて電話を切った。別にやましいことをしているわけじゃなかったけど、拓也には涼平のことは言っていなかったので、それ以上二人の会話を聞かれたくなかった。
なのに、電話を切った後、あたしの顔を拓也が覗き込み、
「誰とやり取りしてたの?」
と執拗に聞く。
「だ、誰だっていいやない。拓也には関係ない人」
「そう?でも今の君の顔、普通の女の子の顔をしていたよ」
「え、普通の女の子……?」
あたしもそんな顔ができる……そのことに、胸が詰まった。そんなあたしを、拓也がニヤニヤと見ていた。この後彼の質問攻勢に辟易し、昔の同級生で今は同じ大学に通っているということだけ教えた。すると拓也は何かがピンときたような顔をする。そういえばあたしは拓也に受験勉強を教わる際、なぜ神戸の大学を受けたいのかという理由に涼平の存在を仄めかしていたのだったが、拓也はきっとそれを察したのだろう。
だけど当の涼平は、黒服になってからあたしを置いてけぼりにして一人で歩き出そうとしていた。あたしは涼平がスカウトしたという女の子が気になり、涼平が入店したクラブドルチェまで見に行ったりした。その時は奇しくもフジケンと拓也が一緒だった。フジケンの顔を見ると虫酸が走るくらい嫌だったが、あたし一人で飲みに行くわけにもいかず、ドルチェに口座がある客をフジケンしか思いつかず、ちょうど来店したフジケンに頼んだのだった。拓也は拓也で涼平に興味があったようで、一緒に頼んでくれての来店だった。
涼平のスカウトした子は、可愛らしい子だった。ちょっとクラブらしくはなかったけど、普通っぽさをしっかり宿した子で、何かと世話を焼く涼平に、ちょっと……いや、かなり嫉妬した。涼平と妙に息が合っているように見えたのだ。
だけど涼平ったら意外にプレイボーイで、それから間もなくして、また違う女の子と歩いている所を見た。その子はあたしたちより少し年上に見えたが、やはり普通っぽい人だった。お水の世界にいて、普通っぽさも合わせ持てていることが羨ましく、また涼平があたしとは別の方向に引き寄せられているようで寂しかった。
その日、涼平がどこか遠くへ行ってしまうような焦燥感に駆られて、ミナミの家で涼平の帰るのを待った。
「なあ、やろうや」
この日の涼平はやけに男っぽく、あたしの上に伸し掛かってきた。その涼平の行為に、あたしの目からは涙が零れた。
この時、どうして涙が出たんだろう……?
涼平の心を掴めますように、と、あたしは悪魔の儀式をし、涼平のハートのパズルの欠片を今も持ち歩いている。そのことで涼平はあたしに囚われ、自分の意志に反してここにいるのではないだろうか、そう思えた。
本来の涼平はあたしなんかよりも、もっと普通の子と恋愛し、幸せな結婚をして良いお父さんになる………
そんな涼平の未来を、あたしが奪っているのではないか……?
そんな想いが湧き上がってきて、それが涙の形になった。
「最低…」
それはあたしの人生に対して言った言葉。
あたしの境遇に、
あたしの運命に、
あたしの行為に、
それは言ったのだったが、涼平は自分に言われたものと受け止めたようだった。
「なあ…萌未にとって、俺って何なん?」
「大切に思ってるよ。でも、酔った勢いとか、嫌なの」
「ここにいないときは宮本さんと一緒なんやろ?宮本さんには毎晩抱いてもらってるんやろ?」
あたしに囚われてしまった涼平の口から、嫉妬に駆られたような言葉が吐き出される。あたしはそんな涼平の本心が知りたかった。
それから……
「俺、明日ここを出ていくよ」
ついにその言葉を発した涼平に、あたしは彼を解放してあげようかどうか迷った。
でも、ダメ。
例え心が囚われてここにいるのだとしても、それならそうと割り切って、彼にはあたしの側にいて欲しい、そう思った。
まだ、解放してあげない……。
あたしは裸になり、涼平も裸にさせた。そして、裸のまま抱き合った。涼平の心が離れていきませんように…そう願いながら、くっついて抱き合っていた。
愛おしさに身悶えそうだった。あたしの青春がそこにある気がした。
「ね、あたしのこと、好き?」
そう聞くと、涼平はコクン、と頷く。
「あたしのこと、もし大切に想ってくれるなら、待ってて。何も聞かないで、ここで、待ってて」
あたしはそう言って涼平に覆いかぶさり、唇を重ねて長いキスをした。
そして思った。
後のことは拓也に託し、あたしは小山内からもらった物を公表することで復讐完了としよう、そして、もし涼平があたしを選んでくれるなら、涼平と一緒に暮らそう、と───。
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