121 / 183
第2部 萌未の手記
艶やかな蝶と歪な蛾
しおりを挟む
部屋の一番奥にいたその男は、あたしの方に移動するとルイママとマリアの間にドッカリと入り込む。
「ほーら、そんなに固くならないで。さ、シャンパンどうぞ」
高級そうな黒のスーツにノーネクタイの黒いシャツ、第3ボタンまでをはだけた肌には宝石が散りばめられた金色のクロスがかかっている。そんなチャラそうな男が両手に持つシャンパングラスの一方をあたしに差し出した。それを受け取ると、
「ようこそ、黒の軍団の会合に」
と、如才なさそうな笑顔で自分のグラスと合わせた。一口飲むと酸味のきつい炭酸が鼻の頭を刺激する。
「ソウメイだよ。飲んだことある?」
見るとテーブルの両端にシャンパンクーラーに入れられた黒いボトルがそれぞれ置かれていた。
「で、どこ?」
男は一昔前のトレンディ俳優といった顔立ちで、口髭とあご髭に挟まれた唇をにやりと湾曲させ、ギラついた目をあたしの顔の真ん前に近づけた。
「あ、若名、です」
「若名ぁ?あんな陰気な店辞めなよ。ドルチェにしな、ドルチェに。なあ、ママ?」
「ほんまや。みく、鳴海はどこ行ったん?」
「ん~なるちゃん?ホールで女引っ掛けてるんと違う?」
「呼んできいや」
「ほーい」
一年前のフジケンのアフターにもいたギャル風ホステス、みくはママに言われて、奥の席からスタタタと部屋を横切りホールに降りた。黙っているとややこしいことになりそうだったので、あたしは慌ててマリアに向く。
「あ、あの、あたし、今日はマリアさんとお話したくて…」
「だから、何?ここで言いなよ」
「え?ここで?」
あたしの一挙手一投足を伺うようなその場の視線に戸惑っていると、
「あんた、そのバッグだっさいなあ。どこの?」
と、ルイママが声をかけてきた。
「え、と…コーチ…です」
「え?どこ?」
部屋のあちこちからふふふふ、と押し殺した失笑が聞こえる。ベージュに茶色のラインが入り、持ち手の赤いこの五万円で買ったバッグをあたしは気に入っていたので、それを笑われて顔が赤くなる。
「ヨッシー、買ってあげなよ。もっとちゃんとしたやつ」
マリアが失笑混じりに言うと、
「いいよぉ~。君、誕生日いつ?」
と、ヨッシーと呼ばれた男はマリアの肩に手を回した。マリアはその手を握り、自分の豊満な胸の前に誘った。
「7月…です」
「7月ね。ほら、いつでも連絡して」
と男はマリアの肩に回したのと反対の手で内ポケットから名刺を取り出し、キザったらしく指の間に挟んで差し出す。受け取ると、シルバーにラミネート加工されたその名刺には、
『ライブネット代表取締役社長 前園芳明』
と書かれていた。
「ヨッシー、私も買ってほしぃ~」
「うちも~!」
部屋のあちこちからそんな声がかかり、前園は笑いながら、
「いいよぉ~!ただし、僕のハートを射止めてくれなくちゃだけどね。さ、みんな、そんなことより踊って飲んで、楽しんでよ」
と、浅黒い顔に浮いた真っ白な歯をのぞかせながらグラスをかかげた。
いえーい!
あちこちから歓声を上げながらグラスを合わせる音が聞こえ、女たちはそれぞれにホールに降りたり、ルイママを囲んでシャンパンを飲んだりし出した。前園はキスするのかというくらいマリアに顔を近づけていちゃいちゃしだす。あたしはその真ん前でそれをぼんやりと見ていた。変なお香の煙りのせいか、頭の中が次第にモヤがかかったような不鮮明さに覆われる。
いつしかあたしはソファに背を預けて部屋全体を眺めていた。ふと気づくと前でセミロングのストレートヘアの男が片膝をついて名刺を差し出している。
「萌未さんですね。ドルチェの鳴海です」
ドルチェの黒服だろうか?それにしては風体がチャラい。
「お電話、ちょこちょこ差し上げてたんですよ。今日はお会いできて光栄です」
登録されていない番号からの着信はたまにあるが、そのうちの一つだろうか。そういえば一年前にドルチェの貴代ママに番号を教えたのを思い出し、ママがこの男に教えたのだということが思い当たった。
あたしの前では鳴海が熱心にスカウトトークを繰り出し始める。隣りではマリアが前園に密着してイチャイチャしている。スモークがかかったような部屋の中では黒いドレスの女たちが物憂げにシャンパングラスを持ち、いつ入ってきたのか、女たちの横には男たちがベッタリと寄り添っていた。
はあ~~~!
あたしはため息とも深呼吸とも取れない息を吐いた。
一体なんだろ、この空間。
同じ高級クラブのホステスといっても、こんなにも違うものだろうか……派手な女たちの中で、あたしだけが浮いている気がした。
飲まなきゃやってられない、とばかりにシャンパンを煽ると、すかさず鳴海が注いでくれる。向かいの席では春樹がそんなあたしの様子を伺っていて、目が合うと何かをつまんで目の高さまで持ち上げた。目を凝らして見ると、それは縮れた毛のようだった。
あたしはそれを見て吹き出し、何だかアホらしくなってきてまたグラスを煽り、おもむろに立ち上がって階下のホールに降りた。
青いレーザーライトに目がチカチカし、トランスの音量に頭がくらくるする。もうどうにでもなれ、そんな気持ちであたしも踊った。踊りは上手じゃなかったけど、嵐の中の木々が暴風に大きく揺らされるように、手を、頭を、腰を、激しく振って周囲に同化した。
小一時間そうしていただろうか…やがて、ふと気持ちが冷め、もう帰ろうと思った。勝手に帰るのも何なので、一言だけマリアに断ろうとVIPルームに上がった。
相変わらず前園といちゃついていたマリアは、あたしを見ると手を差し伸べ、前園とは反対側に座らせた。そして、あたしの右手を取って胸の谷間に押し当て、体重をこちらに傾けてきた。
「どこ行ってたん?」
マリアの目はトロンとしていて、全体的にアンニュイな雰囲気を纏わせている。
「下で踊ってました」
「そう。楽しかった?」
ふふふ、と笑って目の前に転がっているマスカットの粒を拾ってあたしの口に押し付けてくる。あたしは唇でブロックしたが、ずっと押し付けられて仕方なく口に入れた。お互いのこめかみがくっつくくらい近く、マリアから粉ミルクのような懐かしい匂いがした。
その距離で見るマリアの目の下にはコンシーラーで誤魔化してはいるが細かいシワになったクマができていて、綺麗な顔立ちに老いの影を落としていた。
「何か私に話があったんでしょ?話さなくていいの?」
「あ、はい。ええと、フジケンさんのことなんですけど…」
マリアはフジケンと聞いて少し顔を離し、ふんっと鼻を鳴らした。
「フジケン?あなた、あんなのにご執心なの?」
「え?いや、そういう話やなくて…前にマリアさん、若名の、綺羅ママにフジケンさんが揺すられてる、的なこと仰ってましたよね?あたし、そのことを詳しく知りたいんです」
この時を逃せばもう聞けない、そんな風に思えてあたしは一気に聞きたかったことを言い切った。
「え?そんなこと私、言った?」
マリアは下唇に人差し指を当て、上目線で考える。そして顔を起こし、あたしをじっと覗き込む。あたしの顔に何を見たのか、マリアはうふふ、と含み笑いをすると、
「フジケン、最近若名の子に入れあげてるみたいで、私のこともおざなりなの。それを何とかしてくれたら、教えてあげてもいいわよ?」
と、上目遣いに挑戦的な笑みを投げた。
フジケンが入れあげている子……
受験のために長欠して以来、あたしもフジケンとは連絡を取っていなかったので、それが誰なのか分からない。だが確かに、桜祭りの案内状は送っていたし、その間に何の音沙汰もなかったのはおかしいと言えばおかしかった。
それから……
焦点を弛めたガラス越しの視界に、ホールで色とりどりの踊り手たちの間で黒い蝶たちがひらひらと舞っている。
ここのルイママ会の女の子たち…
高いシャンパン飲み、楽しそうに踊って、自分たちが高級な夜の蝶なのを自覚してその羽を広げて…
別に羨ましいわけじゃない。
羨ましいわけじゃないけど、あたしなんかと比べるとよっぽど青春を謳歌している…そんな気がした。
自分が、羽も伸ばさずに暗い壁にじっと張り付いている蛾みたいに思えた。
歪な模様の蛾だ。
そう思うと、勝手に涙が頬を滴ってきた。
マリアがそんなあたしを抱き寄せる。
「泣いちゃって、どうしたの?」
顔が乗るくらい膨らんだ胸からミルクの香りがして、あたしはその風船のように弾力のある肌を濡らした。
「胸、大きい…」
「あら、こんなの偽物よ。元々小さかったわけやないけど、大きいにこしたことはないでしょ?」
はい、とは言いにくい。
「あたしの顔も、偽物です」
代わりにそんなことを呟いていた。
「そう…でもね、女の子が整形して綺麗になって何が悪いのって私は思うわ。どんどん綺麗になればいいのよ。そうするとね、自信が出て、もっと綺麗になるの。ただね、高級クラブのホステスなら綺麗になるだけじゃだめ。綺麗なだけやと飽きられてしまうもの。綺麗になって、あとは中身を光らせるの。それまでの人生かけてパーソナルを光らせて、それでやっと一流になれるのよ」
あたしはマリアの胸の上で目を閉じながら歌うように語るマリアの声を聞く。
整形サイボーグ…沙紀と見た夜遊び掲示板のマリアのスレッドには、そんな心無い言葉が踊っていた。彼女はきっと、そんな書き込みにも微動だにしないんだろうな、と思う。
マリアがあたしの髪を優しく撫で、あたしは目を細める。
「あなた、何か事情があってこの仕事してるのね。他の子と空気が違うわ」
揺蕩う時間の中で、歪でもいい、あたしはあたしの道を行く…そんなことを考えていた──。
「ほーら、そんなに固くならないで。さ、シャンパンどうぞ」
高級そうな黒のスーツにノーネクタイの黒いシャツ、第3ボタンまでをはだけた肌には宝石が散りばめられた金色のクロスがかかっている。そんなチャラそうな男が両手に持つシャンパングラスの一方をあたしに差し出した。それを受け取ると、
「ようこそ、黒の軍団の会合に」
と、如才なさそうな笑顔で自分のグラスと合わせた。一口飲むと酸味のきつい炭酸が鼻の頭を刺激する。
「ソウメイだよ。飲んだことある?」
見るとテーブルの両端にシャンパンクーラーに入れられた黒いボトルがそれぞれ置かれていた。
「で、どこ?」
男は一昔前のトレンディ俳優といった顔立ちで、口髭とあご髭に挟まれた唇をにやりと湾曲させ、ギラついた目をあたしの顔の真ん前に近づけた。
「あ、若名、です」
「若名ぁ?あんな陰気な店辞めなよ。ドルチェにしな、ドルチェに。なあ、ママ?」
「ほんまや。みく、鳴海はどこ行ったん?」
「ん~なるちゃん?ホールで女引っ掛けてるんと違う?」
「呼んできいや」
「ほーい」
一年前のフジケンのアフターにもいたギャル風ホステス、みくはママに言われて、奥の席からスタタタと部屋を横切りホールに降りた。黙っているとややこしいことになりそうだったので、あたしは慌ててマリアに向く。
「あ、あの、あたし、今日はマリアさんとお話したくて…」
「だから、何?ここで言いなよ」
「え?ここで?」
あたしの一挙手一投足を伺うようなその場の視線に戸惑っていると、
「あんた、そのバッグだっさいなあ。どこの?」
と、ルイママが声をかけてきた。
「え、と…コーチ…です」
「え?どこ?」
部屋のあちこちからふふふふ、と押し殺した失笑が聞こえる。ベージュに茶色のラインが入り、持ち手の赤いこの五万円で買ったバッグをあたしは気に入っていたので、それを笑われて顔が赤くなる。
「ヨッシー、買ってあげなよ。もっとちゃんとしたやつ」
マリアが失笑混じりに言うと、
「いいよぉ~。君、誕生日いつ?」
と、ヨッシーと呼ばれた男はマリアの肩に手を回した。マリアはその手を握り、自分の豊満な胸の前に誘った。
「7月…です」
「7月ね。ほら、いつでも連絡して」
と男はマリアの肩に回したのと反対の手で内ポケットから名刺を取り出し、キザったらしく指の間に挟んで差し出す。受け取ると、シルバーにラミネート加工されたその名刺には、
『ライブネット代表取締役社長 前園芳明』
と書かれていた。
「ヨッシー、私も買ってほしぃ~」
「うちも~!」
部屋のあちこちからそんな声がかかり、前園は笑いながら、
「いいよぉ~!ただし、僕のハートを射止めてくれなくちゃだけどね。さ、みんな、そんなことより踊って飲んで、楽しんでよ」
と、浅黒い顔に浮いた真っ白な歯をのぞかせながらグラスをかかげた。
いえーい!
あちこちから歓声を上げながらグラスを合わせる音が聞こえ、女たちはそれぞれにホールに降りたり、ルイママを囲んでシャンパンを飲んだりし出した。前園はキスするのかというくらいマリアに顔を近づけていちゃいちゃしだす。あたしはその真ん前でそれをぼんやりと見ていた。変なお香の煙りのせいか、頭の中が次第にモヤがかかったような不鮮明さに覆われる。
いつしかあたしはソファに背を預けて部屋全体を眺めていた。ふと気づくと前でセミロングのストレートヘアの男が片膝をついて名刺を差し出している。
「萌未さんですね。ドルチェの鳴海です」
ドルチェの黒服だろうか?それにしては風体がチャラい。
「お電話、ちょこちょこ差し上げてたんですよ。今日はお会いできて光栄です」
登録されていない番号からの着信はたまにあるが、そのうちの一つだろうか。そういえば一年前にドルチェの貴代ママに番号を教えたのを思い出し、ママがこの男に教えたのだということが思い当たった。
あたしの前では鳴海が熱心にスカウトトークを繰り出し始める。隣りではマリアが前園に密着してイチャイチャしている。スモークがかかったような部屋の中では黒いドレスの女たちが物憂げにシャンパングラスを持ち、いつ入ってきたのか、女たちの横には男たちがベッタリと寄り添っていた。
はあ~~~!
あたしはため息とも深呼吸とも取れない息を吐いた。
一体なんだろ、この空間。
同じ高級クラブのホステスといっても、こんなにも違うものだろうか……派手な女たちの中で、あたしだけが浮いている気がした。
飲まなきゃやってられない、とばかりにシャンパンを煽ると、すかさず鳴海が注いでくれる。向かいの席では春樹がそんなあたしの様子を伺っていて、目が合うと何かをつまんで目の高さまで持ち上げた。目を凝らして見ると、それは縮れた毛のようだった。
あたしはそれを見て吹き出し、何だかアホらしくなってきてまたグラスを煽り、おもむろに立ち上がって階下のホールに降りた。
青いレーザーライトに目がチカチカし、トランスの音量に頭がくらくるする。もうどうにでもなれ、そんな気持ちであたしも踊った。踊りは上手じゃなかったけど、嵐の中の木々が暴風に大きく揺らされるように、手を、頭を、腰を、激しく振って周囲に同化した。
小一時間そうしていただろうか…やがて、ふと気持ちが冷め、もう帰ろうと思った。勝手に帰るのも何なので、一言だけマリアに断ろうとVIPルームに上がった。
相変わらず前園といちゃついていたマリアは、あたしを見ると手を差し伸べ、前園とは反対側に座らせた。そして、あたしの右手を取って胸の谷間に押し当て、体重をこちらに傾けてきた。
「どこ行ってたん?」
マリアの目はトロンとしていて、全体的にアンニュイな雰囲気を纏わせている。
「下で踊ってました」
「そう。楽しかった?」
ふふふ、と笑って目の前に転がっているマスカットの粒を拾ってあたしの口に押し付けてくる。あたしは唇でブロックしたが、ずっと押し付けられて仕方なく口に入れた。お互いのこめかみがくっつくくらい近く、マリアから粉ミルクのような懐かしい匂いがした。
その距離で見るマリアの目の下にはコンシーラーで誤魔化してはいるが細かいシワになったクマができていて、綺麗な顔立ちに老いの影を落としていた。
「何か私に話があったんでしょ?話さなくていいの?」
「あ、はい。ええと、フジケンさんのことなんですけど…」
マリアはフジケンと聞いて少し顔を離し、ふんっと鼻を鳴らした。
「フジケン?あなた、あんなのにご執心なの?」
「え?いや、そういう話やなくて…前にマリアさん、若名の、綺羅ママにフジケンさんが揺すられてる、的なこと仰ってましたよね?あたし、そのことを詳しく知りたいんです」
この時を逃せばもう聞けない、そんな風に思えてあたしは一気に聞きたかったことを言い切った。
「え?そんなこと私、言った?」
マリアは下唇に人差し指を当て、上目線で考える。そして顔を起こし、あたしをじっと覗き込む。あたしの顔に何を見たのか、マリアはうふふ、と含み笑いをすると、
「フジケン、最近若名の子に入れあげてるみたいで、私のこともおざなりなの。それを何とかしてくれたら、教えてあげてもいいわよ?」
と、上目遣いに挑戦的な笑みを投げた。
フジケンが入れあげている子……
受験のために長欠して以来、あたしもフジケンとは連絡を取っていなかったので、それが誰なのか分からない。だが確かに、桜祭りの案内状は送っていたし、その間に何の音沙汰もなかったのはおかしいと言えばおかしかった。
それから……
焦点を弛めたガラス越しの視界に、ホールで色とりどりの踊り手たちの間で黒い蝶たちがひらひらと舞っている。
ここのルイママ会の女の子たち…
高いシャンパン飲み、楽しそうに踊って、自分たちが高級な夜の蝶なのを自覚してその羽を広げて…
別に羨ましいわけじゃない。
羨ましいわけじゃないけど、あたしなんかと比べるとよっぽど青春を謳歌している…そんな気がした。
自分が、羽も伸ばさずに暗い壁にじっと張り付いている蛾みたいに思えた。
歪な模様の蛾だ。
そう思うと、勝手に涙が頬を滴ってきた。
マリアがそんなあたしを抱き寄せる。
「泣いちゃって、どうしたの?」
顔が乗るくらい膨らんだ胸からミルクの香りがして、あたしはその風船のように弾力のある肌を濡らした。
「胸、大きい…」
「あら、こんなの偽物よ。元々小さかったわけやないけど、大きいにこしたことはないでしょ?」
はい、とは言いにくい。
「あたしの顔も、偽物です」
代わりにそんなことを呟いていた。
「そう…でもね、女の子が整形して綺麗になって何が悪いのって私は思うわ。どんどん綺麗になればいいのよ。そうするとね、自信が出て、もっと綺麗になるの。ただね、高級クラブのホステスなら綺麗になるだけじゃだめ。綺麗なだけやと飽きられてしまうもの。綺麗になって、あとは中身を光らせるの。それまでの人生かけてパーソナルを光らせて、それでやっと一流になれるのよ」
あたしはマリアの胸の上で目を閉じながら歌うように語るマリアの声を聞く。
整形サイボーグ…沙紀と見た夜遊び掲示板のマリアのスレッドには、そんな心無い言葉が踊っていた。彼女はきっと、そんな書き込みにも微動だにしないんだろうな、と思う。
マリアがあたしの髪を優しく撫で、あたしは目を細める。
「あなた、何か事情があってこの仕事してるのね。他の子と空気が違うわ」
揺蕩う時間の中で、歪でもいい、あたしはあたしの道を行く…そんなことを考えていた──。
1
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
RoomNunmber「000」
誠奈
ミステリー
ある日突然届いた一通のメール。
そこには、報酬を与える代わりに、ある人物を誘拐するよう書かれていて……
丁度金に困っていた翔真は、訝しみつつも依頼を受け入れ、幼馴染の智樹を誘い、実行に移す……が、そこである事件に巻き込まれてしまう。
二人は密室となった部屋から出ることは出来るのだろうか?
※この作品は、以前別サイトにて公開していた物を、作者名及び、登場人物の名称等加筆修正を加えた上で公開しております。
※BL要素かなり薄いですが、匂わせ程度にはありますのでご注意を。
【R-18】クリしつけ
蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる