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第2部 萌未の手記
蛇の穴
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あたしも中学の時に親父狩りなんかをやっていたので、香里奈に説教臭いことを言う資格はない。そろそろ本題に入ろうと、聞きたかった話の口火を切った。
「お店のホステスさんはどうなんですか?あたしが聞いたのは、香里奈さんが綺羅ママの欲しい口座を持ってるホステスさんを風俗に落としてるって話やったんですが」
そう聞いた瞬間、香里奈の目から鈍い光が放たれるのをあたしは見逃さなかった。香里奈はそれを隠すようにまたハンカチで目を覆い、テーブルに突っ伏した。
「知らない!私、綺羅ママの言うようにやっただけやから!何にも知らない!」
香里奈の声が店に響き、マスターと目が合ったが、大丈夫、と手のひらで合図を送った。
「知らない、て、どういうこと?綺羅ママはどんな指示を出したの?」
毛先をウェービーにしている香里奈の髪が拍動に合わせて上下している。香里奈は突っ伏している腕の奥から、くぐもった声で答えた。
「ミナミのね、レガシーって店に誘ってって。仲良くなって。それだけよ。ホントに、それ以外のことは何も知らないの」
つまり、そこまでターゲットを運ぶのが香里奈の役目で、そこからはその筋の人が出てきて事を運ぶってことか…
「ね、詩音って人は?綺羅ママのターゲットになってた?」
「詩音…さん?」
香里奈はガバっと顔を上げ、しばらくあたしを見つめた。そして、
「知らない。詩音さんは私じゃない」
と言った。
「私じゃない?てことは…ターゲットにはなってたってこと?」
「確かに詩音さんが綺羅ママと口座で揉めてたのは知ってるけど、私は関係ない。ホントよ」
真意を測ろうと香里奈の目の奥を探ったが、一点を見据えたその瞳は微動だにしていなかった。
「でもどうして?萌未ちゃんが詩音さんのことを気にするの?」
姉だから。
そう告白するには早計な気がした。
「亡くなった人がいるって聞いて、それが綺羅ママや香里奈さんのせいだとしたら酷い話やと思ったものですから」
「そう…。詩音さんは自殺したそうね。でもその原因は私知らない。店で話したこともほとんど無いのよ。ホントよ」
嘘をついているようには見えない。
だが、相手は役者だ。
信じていいものかどうか…
思案しながらカシスウーロンを口に含んでいると、香里奈が覗き込んできた。
「萌未ちゃん、ここまで聞いて私のこと軽蔑したでしょ?やっぱり店から追い出したい?」
「香里奈さんのやってることはいけないことやと思います。でも、それをどうこう言う資格はあたしにはありません。あたしはただ、お店のホステスさんが危険にさらされてるんやとしたら、許せないって思うんです」
「そうよね…でもね、私、若名が好きなの。辞めたくない。だから、もう綺羅ママの言うことは聞かない」
「でもそれじゃ、綺羅ママのバックの彼氏が黙っていないんじゃ…?」
「そう…なの。でも私、戦ってみる。そのために勇気が欲しい。萌未ちゃん、応援してくれない?あ、何をしてくれってわけやないの。私と時々こうやって飲みに行ったりして、話を聞いてくれない?それだけで私、力になると思うの。どう?お願い!」
あたしの前で手を合わせる香里奈を見ていると、この人も被害者と言えないことはない、と、思えてくる。
「あ…あたしでよければ…」
「ほんと!?やっぱり萌未ちゃんって私の思った通りの人!よかったぁ、思い切って話してみて!」
香里奈は花を咲かせたような笑顔になる。
「萌未ちゃん、シャンパンで乾杯しようよ!お近づきの記念に!マスター、ベルある?」
「え、ベルなんてもったいないよ」
「いいのいいの。萌未ちゃん、マスターにお礼で来たんでしょ?私が奢っちゃう!」
カウンターの端から、マスターが笑顔を向ける。
「はーい、もったいないベルエポック、ありますよ~」
マスターがベルエポックを持ってきて用意をしている間、あたしは一旦情報を整理しようとトイレに立った。そして席に戻ると、マスターと3人で乾杯した。
「いやあ~べっぴんさん2人と一緒にこんな高級シャンパン飲めて、僕はもう明日死んでもいいなあ~」
マスターの大袈裟なおべんちゃらを、頭の隅で聞いていた。
それから約一時間後───
あたしはワンボックス車のバックドア前のスペースに放り込まれ、走り出した車の振動に揺れていた。
「お嬢、遅かったですね」
「あ~~かったるかった!ハルト、ちゃんと店にいる?」
「はあ、いてはると思いますよ」
「思います、て何やのよ。今日のは上玉やからね、いてもらわんと困るわ」
シュボっという音と共に煙草の煙が鼻につく。
「あ~だる!おばはんは?もう上がったん?」
「いえ、ママは今日はまだ送ってません」
「ふーん。アフター中かな。ええ気なもんやわ。私ばっかりこんな汚れ仕事させて」
「ママには無理でしょ?お嬢みたいなべっぴんさんやないと。あんな厚化粧のおばはん、誰が信用しますかいな」
「それもそうやわね」
低い男のものと香里奈の二人の笑い声。おばはん、とは綺羅ママか。どうやらこのバンで香里奈と綺羅ママはいつも送迎されているようだ。
10分ほど走り、車は止まった。後部ドアが開き、男の太い腕があたしを担ぐ。
エレベーターと思われる浮遊感があり、扉が開く音。
「お嬢、お帰りなさい!」
数人の男の声。と同時に、ニコチンとアルコールの混じった刺激臭が鼻を突く。あたしはソファと思われるところに寝かされる。起こさないようにしているためか、扱いは丁寧だった。
店で待機していたと思われる男の嬌声が降ってくる。
「おお!これが?なかなかええやないか!」
「でしょ?3千はいけるんちゃう?私さあ、欲しいバッグがあるんやけど」
「またかいな。まあ任せとけ。これなら星本さんにも喜んでもらえる」
「じゃあハルト、後は頼むわね。こいつは絶対に帰さんとってや。何やったら雄琴送る前に廻してもいいわよ?」
「ああ、せやな。ここでしっかり調教してから渡すんも悪くないかもな」
下卑た笑いが胸焼けを起こさせる。
「私さあ、こいつにはめっちゃ腹立ってんねんから。私もボロボロになるとこ見てみたいわ」
「いや、ボロボロにしてもうたら金にならんがな。まあ、お前の気がすむ程度には可愛がったろか」
「そうや、録画して送ってよ!」
「ああ、任せとけ」
「じゃ、楽しみにしてるわね」
ガタン、と扉が動く音がして、お疲れ様でした、という男たちの声が響く。
そろそろかな…?
こいつらの話をこのまま聞き続けるのはそろそろ耐え難い。あたしは喉の奥から呻き声を出し、頭をもたげた。
「う、んん…」
「お、気がついたか?」
まず目についたのは趣味の悪いソファの赤い色と、あたしを覗き込む目つきの悪いにやけた男の顔。その後ろには3人ほどの黒服の男たちがまちまちにボックス席に座っている。
「ここは…どこですか?」
「どこて、レガシーですよ。ミナミのホストクラブの。俺はそこのホストのハルト。この店を仕切ってるもんです」
ハルトと名乗った男は片膝をつき、キザったらしく手を差し伸べてきた。あたしはその手を取って起き上がる。
「どうしてここへ?あたし、新地のバーで飲んでたんですけど…?」
「あれ?覚えてない?香里奈さんと来られてドンチャン騒ぎしてましたよ?」
「そう…?で、香里奈さんは?」
「あなたが寝てしまわれたんで先に帰られました」
「そうですか…じゃあ、あたしも帰ります」
「分かりました。おーい、お会計!」
はい、と一人がカウンターに回り、何かを書き込んでいる。カウンターの前には3つほどのボックスがあり、それぞれ赤いライトに照らされて、毒々しい雰囲気を醸し出していた。
やがてあたしの前に伝票が差し出される。
「ありがとうございました。これがお勘定です」
伝票に書かれた数字を見る。
一、十、百、千、万…
「さ、三百万円ですか!?」
「ええ、何せ、高いワインを何本も飲まれましたから」
ハルトが指さした先のカウンター上には何本かの銘柄のよく分からないワインのボトルが並んでいた。
いや、あたしは来てすぐに起き上がったんだけど?
……とは言わず、あたしは泣きそうな顔になる。
「え…そんな金額、払えません!」
「困るなあ、そういうこと言ってもらっちゃ。ちゃんと払ってもらわないと」
「そんなこと言われてもそんな額、持ち合わせありません」
「そうですか。いやね、俺らも鬼やないですから。お姉さん、べっぴんさんやから体で払ってもらうっていう手もありますよ?どうです?」
ハルトの顔が歪む。
後ろの男たちの顔もにやけて歪んでいる。
「そんな…これって、ボッタクリってやつですよね?警察呼びますよ?」
「おーっと、そうきますか。俺ら鬼やないって言いましたけどね、そんな態度に出られちゃあ、黙って帰すわけにはいかへんなあ!おい!お前ら!」
ハルトが凄むと同時に、男たちが立ち上がる。
あたしは…
両手で顔を覆い、肩を震わせた。
「泣いたってあかんで。まあそう恐がらんでええ。大人しくしとったら優しくしたるから」
うう…
ふふっ
う…ふふ…ふふふふふ…
「何やこいつ、頭おかしなったんか?」
あーっはっはっはーっ
そして、あたしはこらえきれずに爆笑。
それを見て、男たちは怯んで後ずさりした。
「まるで安っぽいVシネマね。あたし、こんな安っぽいタイトルぜーったい借りない!」
「はあ⁉お前、何言うとんねん。立場分かってるんか?」
ハルトはあたしの顔をまじまじと見つめる。そして、しばしの静寂が店を包む。
シーン…
え?
ちょっと…
「まあええ、やってまえ!」
男たちが下卑た笑いを帯びたまま、再びあたしに近づく。ハルトの手があたしの胸元に伸びる。
いや、ちょっと、待って…
こんなはずじゃなかったのに──!!
「お店のホステスさんはどうなんですか?あたしが聞いたのは、香里奈さんが綺羅ママの欲しい口座を持ってるホステスさんを風俗に落としてるって話やったんですが」
そう聞いた瞬間、香里奈の目から鈍い光が放たれるのをあたしは見逃さなかった。香里奈はそれを隠すようにまたハンカチで目を覆い、テーブルに突っ伏した。
「知らない!私、綺羅ママの言うようにやっただけやから!何にも知らない!」
香里奈の声が店に響き、マスターと目が合ったが、大丈夫、と手のひらで合図を送った。
「知らない、て、どういうこと?綺羅ママはどんな指示を出したの?」
毛先をウェービーにしている香里奈の髪が拍動に合わせて上下している。香里奈は突っ伏している腕の奥から、くぐもった声で答えた。
「ミナミのね、レガシーって店に誘ってって。仲良くなって。それだけよ。ホントに、それ以外のことは何も知らないの」
つまり、そこまでターゲットを運ぶのが香里奈の役目で、そこからはその筋の人が出てきて事を運ぶってことか…
「ね、詩音って人は?綺羅ママのターゲットになってた?」
「詩音…さん?」
香里奈はガバっと顔を上げ、しばらくあたしを見つめた。そして、
「知らない。詩音さんは私じゃない」
と言った。
「私じゃない?てことは…ターゲットにはなってたってこと?」
「確かに詩音さんが綺羅ママと口座で揉めてたのは知ってるけど、私は関係ない。ホントよ」
真意を測ろうと香里奈の目の奥を探ったが、一点を見据えたその瞳は微動だにしていなかった。
「でもどうして?萌未ちゃんが詩音さんのことを気にするの?」
姉だから。
そう告白するには早計な気がした。
「亡くなった人がいるって聞いて、それが綺羅ママや香里奈さんのせいだとしたら酷い話やと思ったものですから」
「そう…。詩音さんは自殺したそうね。でもその原因は私知らない。店で話したこともほとんど無いのよ。ホントよ」
嘘をついているようには見えない。
だが、相手は役者だ。
信じていいものかどうか…
思案しながらカシスウーロンを口に含んでいると、香里奈が覗き込んできた。
「萌未ちゃん、ここまで聞いて私のこと軽蔑したでしょ?やっぱり店から追い出したい?」
「香里奈さんのやってることはいけないことやと思います。でも、それをどうこう言う資格はあたしにはありません。あたしはただ、お店のホステスさんが危険にさらされてるんやとしたら、許せないって思うんです」
「そうよね…でもね、私、若名が好きなの。辞めたくない。だから、もう綺羅ママの言うことは聞かない」
「でもそれじゃ、綺羅ママのバックの彼氏が黙っていないんじゃ…?」
「そう…なの。でも私、戦ってみる。そのために勇気が欲しい。萌未ちゃん、応援してくれない?あ、何をしてくれってわけやないの。私と時々こうやって飲みに行ったりして、話を聞いてくれない?それだけで私、力になると思うの。どう?お願い!」
あたしの前で手を合わせる香里奈を見ていると、この人も被害者と言えないことはない、と、思えてくる。
「あ…あたしでよければ…」
「ほんと!?やっぱり萌未ちゃんって私の思った通りの人!よかったぁ、思い切って話してみて!」
香里奈は花を咲かせたような笑顔になる。
「萌未ちゃん、シャンパンで乾杯しようよ!お近づきの記念に!マスター、ベルある?」
「え、ベルなんてもったいないよ」
「いいのいいの。萌未ちゃん、マスターにお礼で来たんでしょ?私が奢っちゃう!」
カウンターの端から、マスターが笑顔を向ける。
「はーい、もったいないベルエポック、ありますよ~」
マスターがベルエポックを持ってきて用意をしている間、あたしは一旦情報を整理しようとトイレに立った。そして席に戻ると、マスターと3人で乾杯した。
「いやあ~べっぴんさん2人と一緒にこんな高級シャンパン飲めて、僕はもう明日死んでもいいなあ~」
マスターの大袈裟なおべんちゃらを、頭の隅で聞いていた。
それから約一時間後───
あたしはワンボックス車のバックドア前のスペースに放り込まれ、走り出した車の振動に揺れていた。
「お嬢、遅かったですね」
「あ~~かったるかった!ハルト、ちゃんと店にいる?」
「はあ、いてはると思いますよ」
「思います、て何やのよ。今日のは上玉やからね、いてもらわんと困るわ」
シュボっという音と共に煙草の煙が鼻につく。
「あ~だる!おばはんは?もう上がったん?」
「いえ、ママは今日はまだ送ってません」
「ふーん。アフター中かな。ええ気なもんやわ。私ばっかりこんな汚れ仕事させて」
「ママには無理でしょ?お嬢みたいなべっぴんさんやないと。あんな厚化粧のおばはん、誰が信用しますかいな」
「それもそうやわね」
低い男のものと香里奈の二人の笑い声。おばはん、とは綺羅ママか。どうやらこのバンで香里奈と綺羅ママはいつも送迎されているようだ。
10分ほど走り、車は止まった。後部ドアが開き、男の太い腕があたしを担ぐ。
エレベーターと思われる浮遊感があり、扉が開く音。
「お嬢、お帰りなさい!」
数人の男の声。と同時に、ニコチンとアルコールの混じった刺激臭が鼻を突く。あたしはソファと思われるところに寝かされる。起こさないようにしているためか、扱いは丁寧だった。
店で待機していたと思われる男の嬌声が降ってくる。
「おお!これが?なかなかええやないか!」
「でしょ?3千はいけるんちゃう?私さあ、欲しいバッグがあるんやけど」
「またかいな。まあ任せとけ。これなら星本さんにも喜んでもらえる」
「じゃあハルト、後は頼むわね。こいつは絶対に帰さんとってや。何やったら雄琴送る前に廻してもいいわよ?」
「ああ、せやな。ここでしっかり調教してから渡すんも悪くないかもな」
下卑た笑いが胸焼けを起こさせる。
「私さあ、こいつにはめっちゃ腹立ってんねんから。私もボロボロになるとこ見てみたいわ」
「いや、ボロボロにしてもうたら金にならんがな。まあ、お前の気がすむ程度には可愛がったろか」
「そうや、録画して送ってよ!」
「ああ、任せとけ」
「じゃ、楽しみにしてるわね」
ガタン、と扉が動く音がして、お疲れ様でした、という男たちの声が響く。
そろそろかな…?
こいつらの話をこのまま聞き続けるのはそろそろ耐え難い。あたしは喉の奥から呻き声を出し、頭をもたげた。
「う、んん…」
「お、気がついたか?」
まず目についたのは趣味の悪いソファの赤い色と、あたしを覗き込む目つきの悪いにやけた男の顔。その後ろには3人ほどの黒服の男たちがまちまちにボックス席に座っている。
「ここは…どこですか?」
「どこて、レガシーですよ。ミナミのホストクラブの。俺はそこのホストのハルト。この店を仕切ってるもんです」
ハルトと名乗った男は片膝をつき、キザったらしく手を差し伸べてきた。あたしはその手を取って起き上がる。
「どうしてここへ?あたし、新地のバーで飲んでたんですけど…?」
「あれ?覚えてない?香里奈さんと来られてドンチャン騒ぎしてましたよ?」
「そう…?で、香里奈さんは?」
「あなたが寝てしまわれたんで先に帰られました」
「そうですか…じゃあ、あたしも帰ります」
「分かりました。おーい、お会計!」
はい、と一人がカウンターに回り、何かを書き込んでいる。カウンターの前には3つほどのボックスがあり、それぞれ赤いライトに照らされて、毒々しい雰囲気を醸し出していた。
やがてあたしの前に伝票が差し出される。
「ありがとうございました。これがお勘定です」
伝票に書かれた数字を見る。
一、十、百、千、万…
「さ、三百万円ですか!?」
「ええ、何せ、高いワインを何本も飲まれましたから」
ハルトが指さした先のカウンター上には何本かの銘柄のよく分からないワインのボトルが並んでいた。
いや、あたしは来てすぐに起き上がったんだけど?
……とは言わず、あたしは泣きそうな顔になる。
「え…そんな金額、払えません!」
「困るなあ、そういうこと言ってもらっちゃ。ちゃんと払ってもらわないと」
「そんなこと言われてもそんな額、持ち合わせありません」
「そうですか。いやね、俺らも鬼やないですから。お姉さん、べっぴんさんやから体で払ってもらうっていう手もありますよ?どうです?」
ハルトの顔が歪む。
後ろの男たちの顔もにやけて歪んでいる。
「そんな…これって、ボッタクリってやつですよね?警察呼びますよ?」
「おーっと、そうきますか。俺ら鬼やないって言いましたけどね、そんな態度に出られちゃあ、黙って帰すわけにはいかへんなあ!おい!お前ら!」
ハルトが凄むと同時に、男たちが立ち上がる。
あたしは…
両手で顔を覆い、肩を震わせた。
「泣いたってあかんで。まあそう恐がらんでええ。大人しくしとったら優しくしたるから」
うう…
ふふっ
う…ふふ…ふふふふふ…
「何やこいつ、頭おかしなったんか?」
あーっはっはっはーっ
そして、あたしはこらえきれずに爆笑。
それを見て、男たちは怯んで後ずさりした。
「まるで安っぽいVシネマね。あたし、こんな安っぽいタイトルぜーったい借りない!」
「はあ⁉お前、何言うとんねん。立場分かってるんか?」
ハルトはあたしの顔をまじまじと見つめる。そして、しばしの静寂が店を包む。
シーン…
え?
ちょっと…
「まあええ、やってまえ!」
男たちが下卑た笑いを帯びたまま、再びあたしに近づく。ハルトの手があたしの胸元に伸びる。
いや、ちょっと、待って…
こんなはずじゃなかったのに──!!
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