7 / 78
内臓
しおりを挟む
内臓が沸騰していた。
大釜の中で煮え繰り返るそれらの塊は、役割というものを理解してはいなかった。
時折暴れ、釜に傷をつけ、そして蓋を飛ばしては息をし続けた。
それらは捌かれたことに気づかぬ魚のそれのようであった。
大釜はそれらを抑えつけるのには不十分であった。
内側から殴られ、外側からも圧力をかけられていた。
そしてその厚みというものは本来必要なものの半分以下であった。
職人の怠りであろう。
鍛え直さなければ使うことを拒むべきであった。
しかしこうして使われ続けているというのは、代わりの釜もなく、使わざるを得ない状況であったに他ならない。
蓋が簡単に飛んでいくのも合っていないからであった。
心臓の鼓動はもうずっと前から弱くなっている。
肺も痙攣を起こしている。
胃や腸は暴れては傷つき、傷ついてはまた暴れている。
釜の内側は赤く染まり、それらが噴き出した窯の口は錆びかけていた。
それでも新しいものを用意するまでは火を止める訳にはいかず、むしろ火を強くした。
厨房には酷い臭いが漂っている。
火をつけた本人というのは、そちらを見ずに、よく鍛えられた釜のカタログを眺める。
選ばれた品は2、3日で届くそうだ。
それまでにあの釜は壊れてしまうだろう。
壊れたら捨てるだけだ。
新しい釜が来ればこの厨房も随分とすっきりしてしまうのだろう。
大釜の中で煮え繰り返るそれらの塊は、役割というものを理解してはいなかった。
時折暴れ、釜に傷をつけ、そして蓋を飛ばしては息をし続けた。
それらは捌かれたことに気づかぬ魚のそれのようであった。
大釜はそれらを抑えつけるのには不十分であった。
内側から殴られ、外側からも圧力をかけられていた。
そしてその厚みというものは本来必要なものの半分以下であった。
職人の怠りであろう。
鍛え直さなければ使うことを拒むべきであった。
しかしこうして使われ続けているというのは、代わりの釜もなく、使わざるを得ない状況であったに他ならない。
蓋が簡単に飛んでいくのも合っていないからであった。
心臓の鼓動はもうずっと前から弱くなっている。
肺も痙攣を起こしている。
胃や腸は暴れては傷つき、傷ついてはまた暴れている。
釜の内側は赤く染まり、それらが噴き出した窯の口は錆びかけていた。
それでも新しいものを用意するまでは火を止める訳にはいかず、むしろ火を強くした。
厨房には酷い臭いが漂っている。
火をつけた本人というのは、そちらを見ずに、よく鍛えられた釜のカタログを眺める。
選ばれた品は2、3日で届くそうだ。
それまでにあの釜は壊れてしまうだろう。
壊れたら捨てるだけだ。
新しい釜が来ればこの厨房も随分とすっきりしてしまうのだろう。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる