捻くれ者

藤堂Máquina

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ひねくれもの23

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翌朝の私は思ったよりは元気だった。
私の感情は殆ど一過性で、大抵のことは一晩眠るとリセットできる。
昨日の震えも収まり、約束の刻限までに会社に行った。
私は社長室まで通され話をした。
諸悪の根源はこの社長の横暴である。
勿論それに従ってきたコロンビア社員や反抗してこなかった日本人たちにも問題はあると思っている。
だが彼らにも生活があることを考えると、割り切って働いている彼らを悪者にはできない。
私が社長室にいたのは30分程度である。
全て録音を残しているため私が来たことも、私が正式に辞めたことも証拠として残っている。
おかしな主張をされた時には自分で弁護士のところへ行けばいいと、そう臨んでここにいる。
もっとも社長の声を聴くだけで私の体にはストレスがたまるような、寒気がするような、アレルギー反応のようなものが起こるため、二度と再生したいとは思っていない。
話し合いはまず私の退職届の提出から入った。
思いのほかすんなり受け入れられた。
多分私がもう思い通りに動かないと知ってあきらめたのだろう。
それからビザを停止させるからできるだけ早く国から出るように言われた。
もう停止させた後らしい。
私は早めに航空券をとるが最短でも一週間後であると伝えた。
そこで何も言われなかったために実際のところ停止させているのかはわからない。
後になって大使館で聞いたところ、そう簡単に停止できるものではないとは言われたが、そこのところは大使館でも詳しくはわからないそうだ。
それから私の持っている携帯を返却するように言われた。
携帯は給料の支払いから引いてもらう約束で、自分のもののはずだったが、渡すように言われた。
ここで余計な揉め事を起こしてもしょうがないと思い、それは素直に渡すことにした。
その時に数えてはいないものの、まあまあな金額を渡されたため、中古で売ったことにして割り切った。
その時のその月のそれまでの給料も渡された。
その代わりに私にかけられていた保険代を払うように言われた。
確かに私は何回も病院へ行き、注射や点滴なども受けたが、それは会社の給料から支払われていたはずだった。
私は書類を見ると、確かに私の名前が印刷されていたが私のサインはなかった。
多分私の許可なしに勝手に加入したものなのだろう。
私は書類だけ受け取るとそこで形式的なものは終わった。
「他に何かいうことはないか」と言われ、何もないのもおかしいと考えて、あまり他の社員をいじめるなと伝えた。
すると社長は泣きながら「私たちのしていることは正しい、仕事は困っている人たちのためにしている、周りに頑張っている人がいるのにちょっと辛いからって辞めるのはおかしい、あなたのような人はきっとどこに行っても仕事が続かない、私はあなたを許さない」と言われた。
社長はコロンビア人で、日本語はカタコトの部分があるもののほとんどそのようなことを言った。
私は呆れて何も言えなかったが、本当に頭がおかしいことだけはわかった。
それから出て行けと言われるとおりに出ていくとそこで全て終わった。
終わりにできたのは私の力かもしれないし、そうでないのかもしれない。
しかしその時は結果に安堵していたためにどっちでもよかったのかもしれない。

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