捻くれ者

藤堂Máquina

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ひねくれもの4

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電話の内容は仕事のはじめの日のことであった。
思ったよりも早く学校へ行く必要があるようだ。
普通に考えたら当たり前だ。
3日後に授業があるのだから学校の備品を確認するのは教師の義務だ。
問題は私の体調だけだった。
前回訪れた時も時差ボケがひどかった。
万全とは言えない。
しかし初めの授業が決まっている以上何もしないわけにはいかなかった。
社長は続けて他の話もした。
話によると私の後に、私と歳の近い先生が赴任してくるらしい。
面接の様子だと私よりもまじめに見えたと冗談なんかを言っている。
余計なお世話だ。
流石に面接では私もまじめだ。
明るく対応するのが教師として好感を持たれると思いそうしていた面もある。
面接の様子なんてあてにならないし、所詮然るべき場所で然るべき対応ができるかどうかを見られるだけのため、人物について考えるのは無意味だと結論付けた。
その時の電話も早々に切れた。
社長とそんなに頻繁に話すことはない。
ホストファミリーとの関係についても聞かれたが、ゆっくり仲良くなればいい。
何も焦ることはないし、この国へは二度目の滞在だけに概ねのことは理解しているつもりだ。
そう思うと大した問題は存在しないと余計に感じた。
雨が降っている。
そう気づいた時にはすっかり土砂降りであった。
平屋の屋根に当たる雨粒が耳障りな音色を奏でる。
一度意識してしまえば嫌でも耳に触れる。
大粒は屋根を跳ねる。
どうやら今は雨季のようだ。
以前来た時もそうだったような気がする。
お昼を過ぎるといつも地面は雨に濡れていた。
それでも日本と比べると幾分も乾燥した土地だけに、衣服なんかがぬれたところでかなり早く乾く。
多少のことは気にするほどのことではなかった。
これは私が日本に帰るまで便利だと感じ続けたことであった。
その後雨音が聞こえなくなる頃には私の意識はなかった。
時差ボケからかすっかり眠ってしまっていたのだ。
目が覚めた頃には真っ暗だった。
まだ慣れていない部屋だ。
一瞬どこにいるのかわからなかった。
時間だってそうだ。
体内時計も狂ってしまっている。
今は何時だろう。
部屋の外から聞こえるのはスペイン語だ。
部屋の明かりを点けると携帯電話を探す。
電源を入れると22時と表示された。
随分と長い間眠ってしまったようだ。
確か午後四時ごろまでの記憶はある。
その後はずっと闇の中である。
本来はこの時間に眠りたかった。
しかしすっかり目が覚めた今、睡魔などは私の元を離れ、再び訪れない。
結局その日はその後一睡もできなかった。
そうかと言って眠っていた分もあり、寝不足という感じでもなかった。
もっとも体内時計は完全に狂っており、治すのにももう少し時間が必要そうである。
日本ともコロンビアとも違う時間に眠ってしまった私は一体どこの国の人の生活リズムかはわからなかった。
気づいた頃にはすっかり朝であった。
空腹まで存在している。
ここに来てまだ買い物もしていない。
外にも出ていないのだから当然だ。
買い物に関してはその方法も知らない。
とりあえずお腹が空いては何もできない。
そんな諺も日本にあったような気もするが、今はお金を払ってホストファミリーにお願いする他ない。
また不本意だが、朝食の用意を申請した。
朝食は基本的にアレパと卵が出るだけであまり変わらない。
お金を払っているのだから少しは気を遣って変えくれてもいいものだろう。
食べるのにも大して時間はかからない。
元々たくさん食べる方でもないのだが、なんとなく退屈なのはどういう訳だろう。
食器の片付けなんかも家のお手伝いさんがしてくれる。
多分それ込みの費用なのだろう。
普通に買うのも自分で用意するよりも割高なのだ。
しかしここへ来てまだ買い物もしていない。
そして食べない訳にもいかない。
そういう訳で毎回の食事をホストファミリーに任せた。
到着してからの二日間というのは家から出ずに、ずっとホームステイ先で過ごした。
その二日とも夕方から夜にかけて眠ってしまっていたためにあまり体調が良いとは言えない。
しかしその後、はじめの授業の前日には学校へ行く必要があった。
準備にも十分な時間が必要だ。
未だ見ぬ生徒たちのためにしっかりとした準備が必要だ。
もちろん学校へ行くまでの間にもある程度の用意はしていた。
それは前述の通りである。
前任の者に連絡して話も聞いた。
だが実際の状況、教科書の準備や教室の使い方などの情報は学校へ行き、自分の目で確かめる必要があった。
特に教室の使い方についてだ
去年見学の際に訪れた時から校舎が変わっているのだ。
改修された後の学校はまだ見ていない。
いきなりそこに放り出されてうまくいかない可能性もある。
正直行くことに関しては必ずしも私が望んだことではない。
これも仕事だ。
そういうわけで、迎えに来る車を大人しく待つことにした。
職場に行くまでの方法はタクシー系のアプリであった。
日本では馴染みがない移動ツールだが、海外ではメジャーなアプリである。
この段階では、私はネットワークのある携帯電話を持っていなかっただけに会社が配車をしている。
私のホームステイ先の前まで車が来て、それに乗って会社に向かう。
多分到着まで十分ほどであっただろう。
それほど遠くはない。
元々「歩ける距離」だと聞いていたために、妥当な時間だとは理解した。
ちなみに「歩ける距離」というのは歩いて「40分くらい」のことらしい。
社長が明言したことだが、そこまでは車に乗っただけでは分からなかった。
ちなみに後に地図アプリで検索したところ、直線距離で2.5キロであり、一番近い道を選べば3キロくらい。
歩いて40分ほどというのは強ち間違いではないようだ。
その日私は教材の場所を聞いたり、授業の構成に必要なことを確認したりした以外は特に何もせず早々に帰宅した。

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