荒くれ者

藤堂Máquina

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2日目、3日目

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2日目からのことである。
目が覚めたのは午後4時前、実に12時間ほど眠ってしまったのは前回述べた通りである。
こうした日記は1番はじめの章、特に今回余計な前置きなども付けてしまったために長くなってしまっているが今回からはもう少し短めに記載していこうと思う。
30時間ほどの中で移動という述べるべき出来事が多い状況と、その内起きている時間が比較的長かったのがその要因であるが、本章からの私の行動というのは実にシンプルであることを先に述べておく。
私が起きてからしたことと言えば荷解きと前回の章を作成したことくらいである。
一歩も外には出なかったし、ホストファミリーも出かけており、一瞬挨拶を交わしたこと以外は会うこともなかった。
以前も一度お世話になったことのある家だ。
メインで使っている携帯電話だけWi-Fiが繋がった。
それでこうして文章を投稿したり、家族や友人に安否を伝えたりできているのだが、その日は限られた空間で何をすべきか考えた上で特に何もしないという選択をしてしまった。
Wi-Fiのルーターのある場所が私の部屋から離れているため電波が弱くデータの読み込みに時間がかかったからである。
一通りの荷解きを終えた後、私はシャワーを浴びようと思ったのだが生憎お湯が出なかった。
今に始まったことではないのだが、ここの部屋のお湯の出る条件がわからない。
朝は比較的出るようなことを思い出し、その日は諦めることにした。
予め用意しておいたウエットティッシュで体だけ拭いたのだが、翌朝までお湯を浴びられないことを考えると正直不満はあった。
最後にシャワーを浴びてから50時間ほどは経っているいような気がする。
それでも標高2600メートルの夜に水を浴びる勇気はなかった。
仕方なくベッドに戻ろうかと思った時、部屋の片隅に有線のネットワークケーブルを見つけた。
私はそれをパソコンに接続するとモバイルホットスポットを起動して無線の電波の供給場所を変えた。
実に単純なことだが、ネットワークの面でかなり便利になった。
途端に溜まっていた通知が鳴り出したので、ベッドに仰向けになったまま、それらを処理することにした。
その日は時差ボケで眠れなかったために朝まで朝まで文章の構成を考えて過ごした。

翌朝は部屋を8時に出た。
家族に挨拶をすると家賃を払った。
24時間近くまともなものは食べていなかった私は早く買い物に行きたかった。
それまでは日本から持ってきたチョコレートとメキシコの空港で買った葡萄味のジュースで凌いでいたが、健康面を考えると何か食べるべきであったことは明確である。
部屋を出る前にシャワーも浴びて体も楽になっていた私は軽い足取りで外へ出た。

外は快晴の空であった。
今思えば一月に海外にいたことはなかった。
後で聞いた話だが、この時期のボゴタは晴れの日が続くそうだ。
その代わりに風が強く、体感的には寒い時期なのだということも聞いた。
私はSNSや友人に送る用にと何枚か写真を撮ると家のほぼ目の前にあるスーパーへと入っていった。
品揃えは思ったよりは良かった。
店内を一通り見て回った後、一度外へ出た。
金銭感覚が狂ってしまっているため他のスーパーも見ておこうと思ったのだ。
記憶している限り少し歩いた先にもう一つスーパーがあった。
そちらの方が広かったような気もする。
一つ目のスーパーでは何も買わないままそちらのスーパーへと向かうことにした。

確かに広い店舗であった。
野菜の品揃えが倍以上ある。
パスタや米の種類も豊富だ。
冷凍食品や肉類も比にならない。
ここで一通り揃えてしまおうと思った矢先問題が発生した。
値段の表示がどこにも見当たらないのだ。
先程から私が気にしていることはいかに安く買うか、という点である。
その観点から言うとそれは致命的である。
1分ほど悩んだ挙句私のとった選択を結論から言うと、先ほどのスーパーになかったものをここで買うと言う捻りもないシンプルなものであった。
先ほどのスーパーを一通り見ておいたのは幸いであった。
私はレジに行くとクレジットカードを取り出して店員に渡した。
店員はそれを読み取りの機械に差し込むと私にパスワードを打つように伝えた。
私は数字を入力しようとすると早速エラー表示が出る。
パスワードを間違えた訳でもなかったために完全に機械に問題があるのだが、クレジットカードが使えないとなると焦るしかない。
もし他の機械でも読み取りができないとなると今後の生活に支障をきたす。
とりあえずその場は現金で払ったものの、少ししか持ってきていなかった現金を使うのは少々気に障った。
それから私はもう一度先程のスーパーへと向かって歩いた。
それから私がしたことは簡単で、日常使うもの、主に食べ物を買い揃えたことだけであった。
こちらの店舗では何事も無くクレジットカードを使えたりと、他の店舗に行くメリットが何も無いことに気づいた。
失敗したことがあるとすればトーストに塗るためにマーガリンを買ったつもりがチーズを買ってしまっていたことくらいだろうか。
それも思っていたものとは違ったのは事実だったのだが、別段不味いものではなかったため、使い切るまではそれを塗ることにした。
家に戻ると朝食をとった。
まともに食べたのは機内食以来だった。
そうかと言って余分に食べる訳でもない。
正直に言うと余分に用意するのが面倒だったのだ。
食べ終わる頃には11時を過ぎていたような覚えがある。
私はそれから2時間ほどダラダラと何でもない時間を過ごした後また眠ってしまった。
その夜は友達と一緒に夕食を食べる予定があったため、アラームはセットしておいた。
私が起きたのはアラームの数分前であった。
自発的に目が覚めると一瞬の焦りが生まれる。
夕方に目を覚ましたせいで時間の感覚が分からなくなってしまっていたのである。
私は時計を確認して、暫しの安堵の後、シャワーを浴びて配車アプリで車を呼んだ。
到着まで20分ほどはあっただろうか。
ドライバーは寡黙であった。
明らかにアジア人の私を見て言葉に困ったのだろう。
私の方からも特に話しかけることはなかったためそのまま助手席に座っていた。
到着したのは見慣れた建物の前であった。
ドライバーにお礼を言うとそこへ入っていった。

アパートの3階。
そこが友人の部屋であった。
彼はコロンビア人だが、英語やフランス語、日本語が堪能であった。
話を聞くとロシア語の勉強も始めたらしい。
彼とは目標という面でかなり近い思想の持ち主だったため以前からかなり仲良くさせていただいている。
まずは二人でビールを開けると私の日本での奇行を語って聞かせた。
要はただの土産話だ。
土産も渡したが、彼は人の話を聞くのが好きなのもよく知っている。
それで私は話をするのが得意ではない上で語りを聞かせ続けた。
30分ほど経った頃だろうか。
彼は立ち上がると夕飯の用意を始めた。
キッチンをみると予めご飯が炊かれていたようでその横にキクラゲが置かれていた。
どうやら今日のメニューはそれらしい。
彼はそれを鍋に移すとごま油と醤油で味付けを始めた。
部屋に香ばしさが広がる。
日本を出てまだそれ程の期間が空いた訳ではない筈だが、どこか安心する味付けだ。
それにタコも茹でていた。
どちらも日本人好みの味付けのようだ。
ご飯を含めたそれらを平たい皿に盛り付けるとそれは和食ではなかった。
しかし味は和食にかなり近いものであったことは認められた。
話しながら私はスペイン語の先生を探していることを伝えた。
すると彼はその役を買って出てくれた。
彼もまた日本語の先生を探していたそうで、言語交換をすればいいと言った。
お互いに教える技術、一定の資格を持っていただけに信頼して授業ができそうであった。
取り決めたのは週に2度、1言語90分の時間を取ると言うことであった。
かくして私は無料で先生を見つけることに成功した。
本当は授業の回数がもう少し多いと良いのだが、現状ではかなりの収穫であった。
うまくいくか分からないが他にあてがない訳でもなかった。
私が現状必要だと思っていた言語学習の方法と小銭稼ぎの方法の内、とりあえず片方の目処は立った。
食事を済ませると8時前であった。
彼はこれから別の予定があるようで、解散する流れになった。
例によって配車アプリで自宅まで帰ると、その日はお米を炊く用意をしようとも思ったが、何をする気力も無くその日は何もせずに朝までダラダラしていた。
時差ボケは一向に治る気配もなく、日本時間で生活してしまっているが、それを除いては今のところ健康を害してはいない。
1日一度しか食事をしていないだけに空腹は否めないし、今後は気をつけるべきなのだろうが、多分少し痩せた点を除いてはまだ問題はないだろう。翌日、この投稿時刻までの間、結局昼夜逆転の生活をした以外は特に何もしていない。
これが3日目までの日記である。
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