異世界最強のセンセイ~王女の妹と令嬢達の先生になったんだが、教え子たちが可愛すぎて授業どころじゃない~

古澄典雪

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第二章

第九十一話 まよいさまよい

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 周りで治療を見ていた人が、怪我人を数人連れてきて、それを見ていた人がまた連れてきて――と言う感じで、気づけば俺と沙也夏は最終的に、三十人ほどの治療をしていた。

「もうお困りの方はいらっしゃいませんか?」

 ……誰も前に出てこないので、切り上げ時みたいだ。

「では、なにかあれば明想院まで来てくださいね」

 ○

 再び書店への道を歩く。

「沙也夏」

「なんですか?」

「さっき見てて思ったんだけど、魔法的な不調――っていうのかな、魔力循環の乱れとかも治療対象なんだね」

「ええ。まあ――ひどく乱れているときは流石に明想院まで来てもらわないとどうしようもないですけど、風邪レベルなら対処できますから」

「……それなんだけどさ。魔力経路のどこが不調の原因かって、どうやって判断してる?」

「どうやって……というと?」

「えーと……俺の場合は、患者さんに微量の魔力を当てて、その反発が正常かどうかで判断しているんだけど……」

「してません」

「……え?」

「何と言いましょうか……判るんですよね。直感的に」

「……まじか」

「はい」

 ……悔しくなんかない。

 ……ないってば。

「ゆ……じゃない、さゆりちゃんは毎回そうやって診断してるんですか?」

「うん」

「そっちの方が凄いと思いますよ。正確性に於いてはどう考えてもそっちの方が信頼が置けますし」

「……まあ、ありがとう」

 そんなこんなで。

 ひときわ大きな建物が見えたかと思うと、沙也夏が「あれです」と指差した。

「規模が大きいな……」

「んー。この街で本屋って言ったらここかもう一軒くらいしかないですし。客が分散しない分、経営しやすいんじゃないですかね」

「なるほどね……」

「さゆりちゃんはどれくらい居るつもりですか?」

「……待っててくれるの?」

「帰りは迷わないんですか?」

「……いや、迷うけど、一回通った道なら何とか帰れると思う」

「……ほんとに?」

「……まあ、夜が明ける前には」

「せめて日が暮れる前に帰ってきてください……」

 わかりました、と沙也夏は続ける。

「迎えに来ます。なので滞在希望時間を教えてください」

「一時間……でもいい?」

「了解です。じゃあ、私はちょっと他の用事を済ませてくるので、ごゆっくり」

「ありがとう、沙也夏」

 にっこり笑い小さく手を振って、沙也夏は通りの先へ進んでいった。

 一度店を仰ぎ見る。

 そう、仰ぎ見るほどに大きい建物なのだ。一時間程度で全部は見て回れないだろうが、小説も魔術の教本も、読んだことのないものが山ほどありそう。

「よし……」

 気合を入れて、いざ。
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