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第二章
第八十九話 始まりへと至る記憶
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● 久宮誓依
城内を歩き回って夢乃ちゃんと時葉ちゃん、佳那ちゃんを連れて図書室へと戻る。『夜明ケノ誓イ』の構成を研究しませんかと訊くと、僅かな逡巡もなく皆揃って首を縦に振り、ついて来てくれた。
やっぱり、彼女たちの心の中で由理が占めている面積はかなりのものだということなのだろう……。
それはさておき。
七人で机を囲み、立体構造になっている層を一つずつ検分していく。
一層目。
三十分位経ったあと、一応の結論が導かれる。
「……最初に全ての性質を発現させてる?」
「……そうみたいですね。存分に拗れてますけど、この層が持つ意味は四つの性質の発現……になります」
佳那ちゃんのまとめに、時葉ちゃんが苦笑して続けた。
「どうしてこの過程が必要なのかは全く分からないけれどね……」
意味が分かっても訳が分からないという類の問題だ。
「……とりあえず二層目に進みますか?」
「…………うん」
一層目の解明を主導した弥生さんは、先程からずっと顎に細くてすらりとした手を当てて、思考モードに入っている。
多分その影響で、返答が返ってくるまでに若干のタイムラグがある。
●
二層目。
……一層目の解明から一時間が経過した。こめかみが淡い熱を持っている感覚がする。
「……こう、じゃない?」
紙に書いて示すと、弥生さんが「…………そうだ。こうだね」と太鼓判を押してくれる。
二層目は八つの魔法陣が重なっていた。しかも、そのうちの一つしか意味を持たない。その他の七つは目隠しと言うか……まあ、複雑に見せるためのカモフラージュだった。
由理のやつ、どれだけ私たちを苦しめたいんだか……まあ、こっちが勝手に解明しようとしているだけなんだけど……。
「……ちょっと休憩しない?」
「さんせいです……」
溶けていくように、夢乃ちゃんは椅子の背もたれにずるずると寄りかかった。
私も既に限界が近付いている。これがあと五つもあると思うと……。
「……あれ?」
気が遠くなりそうだと思っていたところで、彩希ちゃんが声を上げた。
「どうしたの?」
「……これ……見たことあります」
三層目の魔法陣を指さす。その目には困惑が浮かんでいる。
「……こうやって分解するんです」
彩希ちゃんは、重なっている魔法陣を一つずつ紙に書き始めた。九つに分解された魔法陣は――確かに、合成すると元に戻る。
「……でも、どこで……?」
四層目。
「これも……知ってます」
五層目。
「…………」
六層目。
七層目。
瞳に浮かぶ色は、困惑から疑念へ――そして確信へと移っていった。
「兄様が教えてくれたんです……あれは……」
いつの、ことだろう。
城内を歩き回って夢乃ちゃんと時葉ちゃん、佳那ちゃんを連れて図書室へと戻る。『夜明ケノ誓イ』の構成を研究しませんかと訊くと、僅かな逡巡もなく皆揃って首を縦に振り、ついて来てくれた。
やっぱり、彼女たちの心の中で由理が占めている面積はかなりのものだということなのだろう……。
それはさておき。
七人で机を囲み、立体構造になっている層を一つずつ検分していく。
一層目。
三十分位経ったあと、一応の結論が導かれる。
「……最初に全ての性質を発現させてる?」
「……そうみたいですね。存分に拗れてますけど、この層が持つ意味は四つの性質の発現……になります」
佳那ちゃんのまとめに、時葉ちゃんが苦笑して続けた。
「どうしてこの過程が必要なのかは全く分からないけれどね……」
意味が分かっても訳が分からないという類の問題だ。
「……とりあえず二層目に進みますか?」
「…………うん」
一層目の解明を主導した弥生さんは、先程からずっと顎に細くてすらりとした手を当てて、思考モードに入っている。
多分その影響で、返答が返ってくるまでに若干のタイムラグがある。
●
二層目。
……一層目の解明から一時間が経過した。こめかみが淡い熱を持っている感覚がする。
「……こう、じゃない?」
紙に書いて示すと、弥生さんが「…………そうだ。こうだね」と太鼓判を押してくれる。
二層目は八つの魔法陣が重なっていた。しかも、そのうちの一つしか意味を持たない。その他の七つは目隠しと言うか……まあ、複雑に見せるためのカモフラージュだった。
由理のやつ、どれだけ私たちを苦しめたいんだか……まあ、こっちが勝手に解明しようとしているだけなんだけど……。
「……ちょっと休憩しない?」
「さんせいです……」
溶けていくように、夢乃ちゃんは椅子の背もたれにずるずると寄りかかった。
私も既に限界が近付いている。これがあと五つもあると思うと……。
「……あれ?」
気が遠くなりそうだと思っていたところで、彩希ちゃんが声を上げた。
「どうしたの?」
「……これ……見たことあります」
三層目の魔法陣を指さす。その目には困惑が浮かんでいる。
「……こうやって分解するんです」
彩希ちゃんは、重なっている魔法陣を一つずつ紙に書き始めた。九つに分解された魔法陣は――確かに、合成すると元に戻る。
「……でも、どこで……?」
四層目。
「これも……知ってます」
五層目。
「…………」
六層目。
七層目。
瞳に浮かぶ色は、困惑から疑念へ――そして確信へと移っていった。
「兄様が教えてくれたんです……あれは……」
いつの、ことだろう。
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