異世界最強のセンセイ~王女の妹と令嬢達の先生になったんだが、教え子たちが可愛すぎて授業どころじゃない~

古澄典雪

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第二章

第七十九話 誰もが得をする案があるそうです

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 俺が今居るこの部屋は、明涼国の首都に位置している――大教会の内部。

 そういう認識だったんだが……。

「……正確には、ここは教会ではないですけどね……。私は神に仕えているわけではありませんし」

 とのことだ。ふむ。

「じゃあなんで聖女って呼ばれてるの?」

「周りが勝手に言ってるだけですよ。私はただ魔法技能が人より優れてるだけなのに……」

 この服だって、制服みたいなものですよ。明想院所属だって示すための。と沙也夏は続ける。

 それにしても……。

「……、ね」

 ……まあ、多くは語らないでおこう。

「……えっとそれで、この部屋は建物のどの辺に位置してるんだ?」

 っていうか何の部屋なんだろう。建物の構造を知るためにも、質問してみる。

「まず、ここは『明想院』って言いまして……で、この部屋は明想院の三階にあります」

「ふむふむ」

「ちなみに私の部屋です」

「ふむふ……む?」

「ちなみに由理君がここに居ることは私と――あと一人しか知りません」

 ふむふむ。

 ………ふむ?もしかして。

「俺ここから出られないの?」

「はい」

 …………。

「その姿のままでは、って条件が付きますけどね」

「……変装でもすればいいのか?」

「まあ、そうしていただければ」

「俺の変装は一瞬で見破られることで有名なんだけど」

「……それ、変装って言わなくないですか?」

 確かに。

 んー、と考え込む沙也夏。

 言っておくけど、勿論膝枕は解除されてるからね。念の為。

「……あ、閃きました」

「いい案、見つかった?」

「ええ。とびっきり良い案です。私も由理君も得しかしないし、自然にここに溶け込めます」

 そんな夢みたいな案が存在するとはちょっと考え難い気がするけど、沙也夏がそう言うんだったらあるのかもしれない。

「ちょっと待っていて下さいね」

 沙也夏は嬉しそうに微笑んで、部屋を出ていく。

 ○

 世の中には全員が得をする事象なんて存在しないということが判明しました。ありがとうございました。

「私の見立ては間違ってませんでしたね……いえ、想像以上ですよ」

「…………」

 沙也夏が持ってきたのは巫女服だった。

 もう一度言おう。巫女服だった。

 着替えかなとか思ったけど違った。なんで今着替えを持ってきたのかなと思ったけど違った。

 俺が着る用だった。抵抗したけどこれ以外に道はないらしかった。

 本当かよ。

 ………で、今俺は自分の肩にかかる黒髪をと、軽く指に巻いていた。これがどうも気になる。変装魔法で髪を長くする事なんて訳ないことなんだけど……うん、どうしても違和感がぬぐえなかった。

「これで万事解決です。殆ど男性が居ない明想院で由理君が目立ってしまうという事態も回避できますし、私は可愛い子が見れて嬉しいですし」

 俺の損が考慮されてないんじゃないですかね……。
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