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第一章

第五十九話 壁際に追い詰められてしまった時の対処法を教えてください

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 王城に着くと、父さんへの挨拶とか滞在する部屋の確認とか城内の案内とか、と目まぐるしく進み、気が付くと夜が世界を覆う時刻となった。

 食堂へと移動し(安らぎの間みたいな名称があればよかったんだけど……)、夕食を食べ始めると、夢乃も弥生さんも「美味しい……」と感動の声を漏らした。

 ……弥生さん、ちゃんとご飯食べるんですね。昨日はお腹が空いていなかったのかな。それとも深夜に食べていたのだろうか……。

 そんな感じで夕食が終わり、阿鼻叫喚の尋問タイムが訪れてしまった訳だが、何故か俺は彩希と時葉に図書館へと連行されていた。

 ちなみに食堂を出る間際に振り返ってみると、佳那と悠可が小さく手を振っているのが見えた。佳那は「あとで」と声を出さずに口を動かしていて……。

 で、なんで俺は壁際に追い詰められているのでしょうか。

 さながら陣取りゲームの惨敗試合の究極形みたいに……。

「兄様」「先生」

 はい。

「「説明を求めます」」

 ……聖命国で、召喚された悪魔が王宮に攻めてきて――と俺は話し始める。

 俺と勇者で何とか退けたんですけど――それが夢乃を狙っての事だったとしたら危険であるため、俺の近くにいれば守れるから……と言う理由で招いた次第でございます。

 ちなみに弥生さんを連れてきたのは夢乃をここに招く上で、これは満たされなければならぬと聖命国の国王が出した条件に従ったからです。

「訊きたいのはそちらではなく……いえ、勿論その事情も大切ではあるんですけど……」

 え?

「先生、夢乃ちゃんに『お兄ちゃん』って呼ばれてましたよね。前に会ったときには特別なことは何もなかったって聞きましたけど……」

「この三日間でそんなに親しくなったんですか?」

 ……それには結構深い理由が存在しましてですね。俺が悪いんじゃなくてあっちの親父が俺に嘘をついていたのでありまして。

 風邪を引いているって聞かされて、会ってみると魔力の循環が悪くなっていたので治療をしたら……。

「したら?」

 それは風邪ではなくて、夢乃が生まれた時から悩まされていた病気だったみたいで。

 ……あそうだ、夢乃にはこの話をする許可を得てます。

「……わかりました。つまり先生は、夢乃ちゃんとの間にとびきり特別なことがあったと、そういうことですね」

 ………そういうことになりますかね。と俺は濁しまくった応答をする。

「困った人ですね……」

 よく言われます。と俺は頷く。ゆっくりと。恭しく。
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