異世界最強のセンセイ~王女の妹と令嬢達の先生になったんだが、教え子たちが可愛すぎて授業どころじゃない~

古澄典雪

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第一章

第四話 メイドさんと紅茶はいかが

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 二十時過ぎまで時葉への授業を行って、今日の仕事は終了(ちなみにテストでは時葉にも満点を取られた)。

 王宮の六階、バルコニーへと移動し、そこに備え付けてあるテーブルに着く。ここに来ると、一日が終わったという感覚が湧いてくる。

 王宮は――恐らく防衛の観点からの理由なんだろうけど――小高い丘の上に作られていて、その六階ともなると国が一望できる高さを持つ。

 既に世界は夜に包まれている。無数の星が、誰かを幻想的な夢の世界に導いている。いつ見ても綺麗で、いつまで見ても飽きることはないように思えた。

「……由理様」

 掛けられた声に振り返ると、そこにはメイド服を身に纏う少女の姿がある。水色の髪に優しげな瞳が印象的な――王城に仕えるメイドさん、榎嶋佳那。

 俺と同い年ということもあり、仲良くさせてもらっている。最近ではここで一緒にお茶を飲むことが習慣になってきた。

「紅茶をお持ちいたしました」

「いつもありがとう、佳那」

「いえいえ」

「今日もお茶に付き合ってくれない?」

「喜んで」

 座ってよ、と言うと彼女は一礼してから席に着いた。俺は何も言わずとも座ってくれていいと言っているのだが、どうもメイドとしての矜持だか何だかで――こんな感じに、俺が許可するまでは座ってくれない。

 とか思っていると、佳那はにっこりと微笑んで、

「時葉様からお聞きしたのですが……」

 と言った。
 ――ま、待て待て。嫌な予感しかしないんだが。

「今日は図書館で研究に没頭されていたとか……」

「……もしかして、時葉怒ってた?」

「……そんなに気にされていないと思いますが」

、ってことは」

 にこり。

「……明日あたり謝りに行った方が良さそうだな」

「それが良いと思いますよ」

 授業の時は全然そんなそぶり見せないのにな……。

「……今日も思ったんだけどさ、俺が彼女たちに勉強を教える意味ってあるのかな」

「……どういう?」

「いや、なんか教えなくても何でも出来そうな気がするんだけど……」

 テストの結果とか見ててもさ、と付け加える。

「由理様がいるからこそ、だと思いますけどね」

「……それ、父さんにも同じようなこと言われたんだけど、どういうこと?」

「由理様に褒めてもらいたくて頑張ってるんでしょう、ってことですよ」

「……からかわないでくれよ……」

「からかってなんかいませんよ」

 彼女はころころと笑ってから、指を一本ずつ立てて。

「最年少で王国の剣術大会に優勝した天才剣士、『力の記憶』保持者にも匹敵する魔術技能を備える天才魔術師、古代魔法の研究の第一人者………」

「……誰の事だ?」

「この国の第一王子の話ですよ」

 ………………はて、名前が思い浮かばないな。誰だったっけ。
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