悪役令息、主人公に媚びを売る

17 嫌われている一族

訂正しよう。ヴァニーユ家は良い噂を聞かない、と先程あったがそれよりも、“嫌われている”に近い。

あの一族はきちんと王に忠実だし、（多分）人を狩る訳でもない(恐らく)
あの一族が嫌われているのは、ある噂が数百年も流れているからだ。

あの一家は人の血を吸って生きている、と。
根拠は恐らくあるのだろう。無ければ数百年も噂されていない。

例えば、ヴァニーユ家に許可なく足を踏み入れた輩は次の日、倒れている所を発見される。顔は真っ青で原因は貧血。
そいつの首には鋭利な歯型のようなものが着いていた。噛まれた人は、何も覚えていなかったそうだとか。
しかもこの事件は年に何回も起きている。

怪しい。怪しすぎる

しかし証拠は探しても全く無いため起訴は出来ない

という具合だ。

実は前世読んでいた原作ではロイドは名前位しか出てこなかったのてそんな重要なキャラだとは思わないが、こんな顔が良いとは思わなかった。

にこにこしながらロイドは言った

「僕と本当にお友達になりたいの？だったら凄く嬉しいなあ！
僕はお友達が居ないから、凄く寂しかったんだ。よろしくね？」

もっと渋るかと思ったが、少し拍子抜けした。まあ良い。色々な友達を作って損することは無いからな。

よろしく、と手を差し出されたので、俺も手を出そうとしたら


「ふふ」

「.....っ?!」


握手の状態て手を引かれ、釣られた俺ももつれて座っているロイドに被さるような体制になってしまった

「あ、あのぉ？」

恐る恐るロイドの顔を見ると、うっとりとした表情がそこにあった
なぜに

ロイドは一瞬目を細めた後俺の肩を掴み(無理矢理)立たせてくれる

「いや、ね？綺麗なお顔だと思ってつい」

お前に言われても何も響かない。一旦自分の顔を見てきて欲しい。

「それよりもさ、ほら。飼い犬が凄い顔で待ってるよ？」

と、俺の後ろに視線を移した
振り返ると、きゅるきゅるな目でこちらを見つめる姿があった

「レオンハルト」

呼びかけると分かりやすくぱああっと顔が明るくなる
正直可愛い

「君の従者、健気だねえ」

ロイドがなんか言っているがそれをスルーして、レオンハルトに近寄る

「ウィリアム様、あの方はあまり近づかない方が良いかと....」

と遠慮がちに言うレオンハルト

「大丈夫だよ。私にも考えがあるからね」

「.....っ! すみません、出過ぎたマネを」

途端、しゅんと眉を下げる

(なんか、叱られた犬みたいだなあ)

「ふふ、良いよ。私を心配してくれたんだよね」

「.....!  っはい！」

ああ、良いな こういう会話
前世高校生だった頃の部活の後輩を思い出しながらレオンハルトの髪をわしゃわしゃと撫でていると、後ろからため息が聞こえた

「あのさ、僕の前でイチャイチャしないでくれない？」

うるさい。だったら見るな