異世界で一番の紳士たれ!

だんぞう

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#97 紳士たれ

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 再び大量の情報が送られてきた。同時に。
 これが視覚や聴覚を経由して送られてきた情報ならば全部が混ざって訳が分からなくなってしまうところだが、アクセスできる記憶の塊のような感じに受け取るので、なんとか俺でも処理できる。
 データとして受け取り、中の動画をそれぞれ開いて閲覧できるような感じ。
 んで、俺が魔法で地球の人たちへメッセージを送ることを検討した結果、届いたあの「観察者」と名乗る「我々」さんたちからの返事がこんな。

・方舟の情報を在地球者が知るのは良くない
・情報ではなく感情を伝えるのならば良い
・伝えられる相手はノアの一族にのみ
・感情の送信は特例として最初で最後の一回のみ許可する

 なるほど。一回だけの特例か――だとしたら、送信する内容は吟味する必要があるな。
 と、その前に大事なことを色々と確認しておかないといけない。
 前提部分によっては伝える内容も変わってくるし。
 それは「繋がり」とやらのこと。
 なぜ俺が地球で死んだのか、その原因は「繋がり」のせいなのかどうか。
 すぐに返答データが送られてくる。

・地球と方舟を繋げているのはノアの一族の魂の結びつきだけ
・地球側でノアの一族が不足しているために魂の繋がりに負荷がかかっている
・負荷がかかった状態の魂の繋がりに負荷がさらに追加された場合は繋がりが途中で切れる場合もある
・切れた繋がりの修復は今回のような魂の繋がりの補填がない限りは非常に困難
・一組の繋がりを構成する二つの魂が近い存在である場合は途中で切れずに一方へ吸引されることも散見される
・吸引される対象が地球側のみなのは方舟の存在秘匿のため
・最近は方舟側にて死亡したり呪詛により精神が著しく弱ったりなど繋がりに負荷がかかる事態が増加している

 つまり俺の場合はラビツのせいか。
 呪詛でリテルの魂が弱って「繋がり」に負荷がかかり、それで俺が吸引された、と。
 二つの魂が近い、というのは年齢や性別ってとこなのかな。
 地球で自堕落に過ごしていた俺と、ホルトゥスで好きな人のために努力し続けていたリテルとでは、そもそもの精神性が違う。
 だから魂のレベルが近いとは言い難く、単に肉体的な条件って予想。
 しかしリテルは本当に頑張ってたよな。
 だから俺も――この世界ホルトゥスに来てからのこの一連の冒険のことがまるで走馬灯のように脳裏を駆け巡る。
 そしてもしも向こうに居たままだった場合のことも考えてしまう。
 きっと俺は相変わらず丈侍じょうじと楽しく遊んでいて、でも丈侍の気持ちに気付かずに、英志ひでしについて嫌われたままだと勘違いして、母さんや姉さんとは関わりたくないから大学あたりで家を出るかもしれない。
 楽しい大学生活になるのかな。ちょっと女性不信だし、ずっと丈侍とつるんで終わりそうだな。
 でも丈侍には悪いけど、そういう関係になろうとはきっと思えないだろうな。
 地球で俺は幸せになれたかな。
 逆にこっちホルトゥスでは幸せになれるかな――ルブルムのたくさんの表情が浮かぶ。
 ケティにレム、マドハトにメリアン、カエルレウム師匠やディナ先輩やキタヤマさん、もっともっと多くの関わりあった人たちとの思い出も。

・無意識で繋がりそしてその繋がりがために死んだことに対して利照は後悔を感じているか?

 思考に割り込むように一つだけの情報が届く。
 どっちなんだろうな。
 後悔か。
 正直な感想としては完全なYESでも完全なNOでもない、かな。
 だって片方の未来はたれればで現実ではないし、もっと良くなるかも、もっと悪くなるかも、しれないし。
 ホルトゥスでは、心から好きになれる人に出逢えたけど、地球でだってすごく好きになれる人に出逢えたかもだし、こちらホルトゥスでは何度も死んでいた可能性もあったんだし。
 助けてもらえたのは、俺自身がようやく努力したからだとは思うんだよな。
 でもそれは、リテルやリテルの周囲の人たちのおかげでもある。
 もしも転生じゃなく――って、これ自体も転生とはちょっと違う感じだけど、完全な転移みたいなやつだったら、俺は今こうして生き残れていない気がする。
 リテルと肉体や記憶を共有していたからこそ、頑張れて、修行できて、学べて、耐えられて、何度も地味に反復練習できて、工夫して、誠意をもって人と接することもできて。
 おかげで自分自身も成長できて、少しは紳士に近づけて。
 やっぱりそのおかげだと思うんだよな。助けてもらえたのは。
 地球に居たままだったらきっとここまで成長も努力もしなかった気もしている。
 結果論なのかもだけど、来れて良かったと今では思えている。
 来れて、ってのも変か。
 ノアの一族だと一方通行で来ちゃうんだっけ。
 何でノアの一族だけしかだめなんだろう?
 返事がすぐに来る。

・ノアの一族がそれを望んだから可能となった
・望まぬ者に負担を強いるわけにはいかない

 「負担」か。
 そりゃホルトゥス側のノアの一族に問題があったら地球側のもう片方が死んじゃうんだもんな。
 でもさ、もっと多くの人たちが魂を繋げれば、地球と方舟の「繋がり」は保たれるし、「負担」ってほどのことにはならなくないんじゃ?
 元々負荷がかかってなければ、追加の負荷も追加にはならないから、「繋がり」には負荷に耐えられるだけのゆとりも生まれそうだし。
 つーかそもそも今はもう地球は「保護対象」とやらになったんだよね。
 だとしたら無理して繋げておく必要は――ああ、地球人が自らの手で、環境を改変しちゃって滅ぶかも、って恐れはあるのか。
 そういうニュースは嫌ってほど聞いた。
 環境破壊とか、温暖化とか、原発とか、マイクロプラスチックの海洋汚染とか、遺伝子組換えとか、新種のウイルスとか、大学受験で小論文を選ぶ人は普段からそういった話題にも目を通しておくようにって先生に言われたっけ。
 でも地球人が自ら地球の「環境改変」みたいなことして地球がダメになっちゃったとき、ホルトゥスはそんな地球人の魂を受け入れてくれるものだろうか。
 そんな環境を破壊するような魂は受け入れたくないっつって「繋がり」を遮断されちゃわないだろうか。

・地球から魂の移民については地球におけるその死が他者から強いられた被害者である場合のみ許容する方向で検討する
・ノアの一族全員が望まなくなれば繋がりは絶たれる
・地球との繋がりが絶たれた場合における方舟の存続可能期間については不明

 やっべ。
 俺が「繋がり」についてネガティブなイメージ持っちゃダメだってことだよな。
 そして移民は許容だけど、問題はもう一つの情報だ。
 「繋がり」が絶たれたらホルトゥス事態の存続も危ないってことか?
 そうか。そもそも地球の生命の避難場所として作ったんだっけ。
 ルブルムやリテルたちがいるこの世界が崩壊する――そうしたらこの世界に居る魂はどうなるのだろう。

・死亡後に再誕生することなく維持に消費される

 うーわ。
 世界の終焉アポカリプス来ちゃうよこれ。
 ホルトゥスからどんどん人が減っていって、方舟ホルトゥス自体も次第に狭くなっていって、もしくは、動かなくなっていって、やがて誰も居なくなるのか。
 そんな未来は嫌だ。
 俺が「ノアの一族」とやらで、その俺に、俺が知り合った人たちの笑顔を守ることができる可能性があるのだとしたら、俺は守る未来を選びたい。
 ということは「繋がり」を保つ方向で考える一択だな。
 その方向で対策を考えるとして、条件ももっと細かく知っておく必要がある。
 そもそもさ、「ノアの一族」ってのは子孫だけなのか?
 結婚しても結婚相手は「一族」に選んでもらえないのか?

・現状では血縁のみを対象としている

 それって古くないか?
 血が繋がってなければ「一族」じゃない、なんて。
 血が繋がっていても家族だと思えない相手も居るように――いや今この思考はダメだ。ネガティブな思考が反映されたらマズイ。
 それにさ、現に利照が抜けたらあの家族はボロボロになったじゃないか。あれはつまり俺も家族の一人だったってこと。
 そうじゃなくてだよ。
 血縁でなきゃ「一族」に入れてやらないっていうその前提が間違っていないかって言いたいんだ。
 地球の文化は家と家との結びつきであり、例えば、結婚することで互いの一族同士が繋がるよね。
 それなら子孫という縦方向だけではなく、横方向でも可能なんじゃないの?
 実際さ、俺は地球に居た当時、自分が「ノアの一族」だなんて知らなかったよ。
 というか、うちの家系って先祖代々ずっと日本人だったわけじゃないんだな。
 そういやキリストの墓とか日本にあるって聞いたけど、本当に昔の日本に渡ってきて、混ざっていたってこと?
 いやいや、話がブレてる。戻せ、俺。
 大事なのはそこじゃなく、意識していないのに受け継がれていた、ってとこ。
 それでもその「繋がり」に参加してたってことだろ?
 だったら無意識で「繋がり」に参加するってのは平常運転だよな?
 縦だけじゃなく横にも繋がれたら、「繋がり」は揺るぎないものになるんじゃないかな?
 横方向に繋がった「家族」はもう「ノアの一族」って言って良いんじゃないかな。意識していなくともさ。

・それはノアの一族としての望みか

 来た来た。
 責任重大だなこれ。
 でも俺は、ホルトゥスには滅んで欲しくない。
 それだけじゃない。純粋にさ、地球でもしも丈侍と英志が結婚とかいう話になったなら、例え日本の法律が認めなくとも、俺は絶対に二人を「家族」だと認める。
 その「認める」を可能にしたいんだ。ノアの一族としてはさ。
 きっと丈侍は、喜ぶと思うんだ。
 「家族」になれることも、地球とホルトゥスが繋がることも。
 もしも嫌がる人が居たらさ、その人「個人」は「繋がり」から解き放たれることを許可する前提で、「ノアの一族」が「家族」だと認めた者は、血縁じゃなくとも「ノアの一族」として扱えるって運用でいいと思う。
 自動的に全員じゃなく、パートナーとか、パートナーの兄弟姉妹とか、義理の両親とか、義理の子どもとか、手の届く範囲の、本当に「家族」だと思える相手なら「一族」で。
 「繋がり」の数が増えれば、一人あたりの負担も減るだろうし。
 それにほら、ホルトゥスの側にだって、クラーリンみたいに「ノアの一族」の負担を減らしたいって考える人だって居る。
 そうだよ。クラーリンは、グリニーさんと「家族」になれば、「ノアの一族」だよ。
 自分の寿命を削ってまでも助けたい相手が「家族」じゃなくって何なんだっての。
 地球でもホルトゥスでも、「ノアの一族」が「家族」と認めた相手は「ノアの一族」扱いにしていいよ!

・ノアの一族の範囲については我々全体で検討する
・伝える感情についてまとまったならば伝えよ

 検討してくれるのか――となると、うちの両親のどちらが「ノアの一族」だったのか教えてもらっても大丈夫かな?

・華、理名、英志はノアの一族

 はな――母さんと、理名りな――姉さんと、英志か。
 そうか、父さんと宮城のじいちゃんは違ったのか。ちょっと残念。
 俺はじいちゃん子で育ったから、なんかちょっと寂しくもあり――いやいや。だからこそ、じゃないか。
 大好きなじいちゃんとも「家族」なんだと思えば同じ「一族」として認めてほしいってさっき要望送ったばかりだよ。
 俺はじいちゃんとも「家族」でありたい――返事がないな。
 ということは伝える感情についてまとめるフェーズってことかな。
 最初で最後なんだよな。
 よし。気合入れて考えるかな。

 まずは母さんだ。
 俺が演奏会に同行しないときに死んじゃったせいで、迷惑かけてごめん。
 母さんは俺にあんまり興味なかったみたいだったけど、俺は母さんの演奏好きだし、よく聴いてたよ。
 誰に何を言われても強気で音を走らせる母さんの演奏を取り戻して欲しいし、母さんが演奏してくれたらこっちに居る俺も喜ぶから。
 俺に楽器の才能がなかったことで母さんは自分を責めることないんだよ。
 父さんだって楽器全滅だろ?
 俺は父さんに似たんだよ。
 一緒に演奏したいって夢を叶えられなくて申し訳ないけど、でもさ、上手にではなく楽しく弾いてた頃のピアノは下手でも楽しかったよ。
 そういう機会を与えてくれたこと、母さんには感謝してる。
 もちろん、生んでくれたこともだよ。
 生きるって大変なことだし、大事なことだよ。
 だから母さんは自分で死を選んじゃダメだ。
 母さんの望み通りには全然ならなかった息子の願いとか聞いてくれないかもだけどさ、そしたら父さんのために生きてくれよ。
 母さんが死んじゃったら、父さんまで死んじゃいそうで心配なんだよ。
 母さん、父さんのこと大好きだろ? でも父さんは少なくともその倍は好きだよ。
 だから生きて欲しい。
 あと、姉さんにあまり厳しくしないであげて。
 それと、英志が誰と家族になりたいって言っても認めてあげて。

 こんな感じかな。

 次に英志。
 色々と気付いてやれなくてごめんな。
 俺も英志ともっと一緒に楽しく遊びたかったよ。
 ハッタの世話も散歩も、それ以外のことももっと一緒に。
 不登校にさせちゃって、それもごめんな。
 行けないときは行かなくていいぞ。
 でも母さんみたいに死ぬことは選ばないでくれよ。
 こっちではハッタと楽しくやってて寂しくないから、あんまり急いでこっち来んなよ。
 お前には俺の代わりに丈侍と仲良くやってほしいから。
 もうこれ以上、丈侍を悲しませないでやってくれよ。
 俺の代わりにお前に頼む。
 丈侍とのこと、俺は祝福するから。
 大事な親友と大事な弟が一緒になってくれて、俺は安心だよ。
 父さんも母さんも姉さんも大変そうだけどさ、英志が頑張っちゃわないか心配だよ。
 お前さ、期待されると頑張るタイプだろ?
 無理はすんなよ。
 お前も好きなことやっていいんだぞ。
 そういうとこは兄貴のマネしてみろよ。
 他の誰が何て言おうとも、俺が許すから。お前の兄貴が、好きにやっていいって言ってんだ。
 だから頑張り過ぎんなよ。
 こんな兄貴だけどさ、いつもお前と丈侍のこと、応援してっから。
 二人で幸せに、新しい「家族」を作ってくれ。

 こんな感じかな。
 本当はハッタじゃなくてマドハトだけどまあいいだろ。

 最後に姉さん。
 姉さんはさ、完璧にこなそうとし過ぎなんだよ。
 だから疲れて、ストレス溜めて、俺にぶつけてたんだよ。
 ストレス溜めてる時点で完璧じゃないんだよ。
 逆に考えてくれよ。完璧じゃなくていいってさ。
 最近ようやくわかったんだ。俺は姉さんのことずっと強いって思ってたけどさ、そうじゃなかったんだなって。
 弱かったんだよな。それなのに、俺のせいで弱さを見せられなかったんだよな。
 俺が長男としてもっとしっかり強くあればさ、姉さんはそんな強がらずに済んだんだよな。
 ごめんな。
 俺さ、姉さんとずっと目を合わせなかったけどさ、今思えばそれはきっと俺自身がやるべきことを姉さんに押し付けていたことから目を背けていたんだと思う。
 だから変に姉さんのストレス発散を受け止めるだけの歪な関係になっちゃっててさ。
 もっと正面からケンカして、俺が負うべき責任は俺が引き受けておくべきだったよ。
 今更だけどさ、俺が死んだのと姉さんとは全く関係ないんだ。
 だから姉さんはそこまで背負わないでいいんだよ。
 母さんの期待も全部受け止めてさ、姉さん偉いよ。頑張ってるよ。
 だからもっとのんびりしてもバチは当たらないよ。
 信じてもらえないかもだけど、俺は姉さんを恨んでないよ。
 幸せになって欲しいって思ってる。
 ガキの頃さ、俺が無茶苦茶な演奏してたとき、姉さんはそれを笑って見ててさ、その後、それをアレンジして曲に仕上げてくれただろ?
 ずっと忘れてたんだけどさ、あれ、俺けっこう感動したんだぜ。
 すっげー尊敬した。
 だからこそその後もずっと逆らわなかったんだなっての、思い出したんだ。
 俺さ、姉さんのあの演奏、すごい好きだったぜ。
 せっかくの才能を棄てないで欲しいな。
 母さんのためにじゃなくさ、姉さんの楽しめるような、姉さんが笑顔でできる演奏をさ、続けてくれよ。
 それを楽しみに待ってるからさ、無理しないで姉さんのペースで、のんびり前を向いてくれよな。

 こんな感じかな。
 なんかさ、最初で最後の言葉を届ける覚悟で伝え始めたら、見事に感謝とかねぎらいとかばっかりになったな。
 天国から言葉を届ける、みたいになっちゃったよ。
 でもまあ、これでいいよ。
 俺から「家族」に対しての贈り物だ。
 ありがとうの気持ち。

・確かに伝えよう
・そしてこの干渉については一部の記憶を抹消する
・もしも抹消が不完全だった場合は利照は情報を秘匿するように依頼する
・情報として方舟内に広まることで悪用される可能性を下げるためだから受け入れてほしい



「リテルさま!」

 マドハトに顔を舐められて目が覚めた。
 覚めた?
 寝てた?
 どこから? いつから?
 慌てて周囲を見回すと、マドハトが俺にしがみついていて、ディナ先輩が立っていて、グリニーさんの傍らにチェッシャーとクラーリンは三人とも座り込んでいる。それからまだ縛られたままのフラマさん。
 ファウンとウォルラースの死体は記憶の中と位置は動いていない。
 ネスタエアインタールの死体は――見当たらないってことは、ディナ先輩が燃やしたってことか?
 クラーリンは頭に手を当てて、考え込んでいる様子。とりあえずは生きてることにホッとする。

「リテル君、どこまで覚えているかい?」

 クラーリンがこちらを向く。

「グリニーさんの寿命の渦コスモスが伸びて千切れそうになっていて、それをクラーリンさんの寿命の渦コスモスを一部補充することで防いだ、という記憶は残っていますが……」

「クラーリン! あなたはそんな危険なことを!」

 グリニーさんに会話を遮られる。
 そのままグリニーさんはクラーリンを強くハグして、小さな声で「バカ、バカ、バカ」と繰り返している。
 その向こうのチェッシャーと目が合う。
 涙目のチェッシャーは、照れくさそうに視線を外す。
 ああそうだ。チェッシャーの告白への返事も保留してたっけ――他にも――なんだか凄まじく壮大な夢を観ていた気がするのだけど、「観た」って印象だけが残っていて、その内容がまるで頭に残っていない。
 ただ、チェッシャーには悪いがルブルムに物凄く逢いたくなっている。

「リテルさま、大丈夫ですかっ!」

 マドハトがまた俺の顔をなめようとする――のをやめさせる。
 ここいらへんには顔を洗える川も泉もないから。

「リテル。こちらは済んだぞ」

 とディナ先輩。
 「こちら」というのは、タールに『魔動人形』化されていたネスタエアイン――ディナ先輩のお母様の遺体の焼却、ということか。

「『魔動人形』に格納されていた魔石クリスタロはこちらに分けてある。細心の注意を払って魔術師組合で分析してもらうことにする。ギルフォドの魔術師組合にもタールの手下がまだ潜んでいる恐れを考慮して、フォーリーの魔術師組合までボクが運搬するということで話がついている」

 ディナ先輩は正式な魔術師免状をお持ちだから、魔術師組合とダイレクトに『遠話』で連絡が取れるのか。
 そういう話になったということは、俺とマドハトはディナ先輩のお供をする感じかな?
 ウォルラースやタールの横の繋がりは広そうだから油断ならないな――「横の繋がり」という表現になぜか引っかかった。
 なんだろう。「横の繋がり」って、最近特に意識して使った記憶もないのだけれど。

「ぼんやりしているな? 魔法の影響がまだ残っているのか?」

「『つながれ、魂の形』では、魔術特異症のリテル君はあくまでもグリニーに僕自身の魂が触れるための「ひとつまみの祝福」的な協力のみであり、実際の寿命の渦コスモスの移動は術者である僕にしか許可していない構造だ。意識が戻ってきているということは魔法の効果時間が終了しているし……ああ、そうだ。発動時に触れていたリテル君ならば、魔術の構成要素を参照することはできるだろう?」

「は、はい。確認してみます」

「リテル、ボクにも見せろ」

 ディナ先輩の手が俺の手に触れる。こうして触れられるのは、ディナ先輩のお屋敷での勉強会以来か――あれから随分と色々なことが――なんだろう。この記憶を思い出す下りも最近あったような。

「早くしろ」

「はいっ」

 クラーリンの使用した『つながれ、魂の形』を思い出す。俺の『同じ皮膚』と似たような思考で、俺の寿命の渦コスモスと対象、つまりグリニーさんの寿命の渦コスモスを、「魔術特異症」という共通点で繋げ、そして俺とクラーリンとをまた別の寿命の渦コスモスを同調させる思考で繋げ、パイプ役のような俺自身の寿命の渦コスモスには影響を及ぼさず、術者であるクラーリンの寿命の渦コスモスを対象であるグリニーさんの寿命の渦コスモスへ流し込むという、その一方向のみ流れを許可する内容。
 特に問題はない構成のよう感じる。

「ふむ。リテルの寿命の渦コスモスや精神構造には影響を及ぼさない思考だな」

「グリニーを助けるためだけの魔法だから、他の者に迷惑をかけたらグリニーが哀しむ」

「かけたじゃないっ! クラーリン! あなたの寿命を減らしてまで私はっ!」

 グリニーさんの声に張りがあるし、声量も大きい。
 アイシスで会話したときはもっとボソボソとした、振り絞って声を出している感じだった。
 本当に元気になっているんだな。
 そうか。クラーリンは、大事な人の病気を、魔法で治療できたのか。
 じんわりと温かい気持ちになる。
 なぜか俺まで涙がこぼれる。
 そんな俺の頭を、ディナ先輩が優しくなでてくれた。

「よくやったぞ、リテル。お前は自分のしたことを誇っていい」

 あれだけ厳しかったディナ先輩にそんなこと言われたせいで、涙が止まらなくなる。
 俺、こんなに涙もろかったっけ?
 この世界ホルトゥスにある日突然やってきて、リテルの体を間借りしながら必死に生き延びてきて、ずっと抱えていた世界に対する被異物感に、リテルやリテルの周囲の人たちへの申し訳なさと、自分自身に対する不安もずっと拭いきれずに、それでも、それでも俺は――俺は、少しは紳士に近づけたのかな?
 そうだ。
 紳士なら、今は泣いてるときじゃないよな。
 自身の母のご遺体をあんな風に利用されて、しかもディナ先輩自身の手で傷つけさせるなんてことを許してしまったのは俺の力不足が原因だ。
 あの日あのときタールをタールのまま倒すことができていれば、『魔動人形』化されていたとはいえ、ディナ先輩のお母様のご遺体はそのままディナ先輩にお渡しすることだってできたはず。
 まだできることはあったってのに、最良の方法を選べたわけじゃないのに、俺は情けなく泣いていられる立場じゃない。
 ディナ先輩の方こそ、泣きたいだろうに――これはアレだ。
 お葬式で自分が泣きたいのに、そこまで深い関係じゃない知人とかに先に大げさに泣かれちゃって涙が引っ込んじゃうタイプのアレだ。
 しかも俺はそのアレの方という。
 ダッサいな。俺、全然紳士に届いてねぇ。

「ディナ先輩、ありがとうございます。でもまだ及第点です。俺はもっと最良の結果に届くよう精進します」

 ディナ先輩はちょっと驚いた顔で俺を見つめ――ああ、やっぱりディナ先輩の目が赤くなっている。
 それから自然な笑顔で、もう一回俺の頭を撫でてくれた。

「リテルさま! 僕もなでてほしいです!」

 マドハトが俺の手の下に頭をねじ込もうとしてくる。
 ディナ先輩に、ではなく、俺に?
 ああでもそうだな。
 マドハトはもよくやってくれた。
 なんだかんだで重要なシーンで俺を一番近くで支えてくれた。
 マドハトの頭をわしわしと撫でる。
 本当にこいつは、ハッタの生まれ変わりなのかもな。



 俺たちはウォルラースの隠れ家だった洞窟を出た。
 ネスタエアインタールが乗ってきた馬も見つけ、ファウンとウォルラースの死体を一緒に乗せる。
 麻痺し縛られたままのフラマさんは、俺とマドハトが乗ってきた馬に乗せ、クラーリンとグリニーさんはクラーリンが乗ってきた馬に一緒に乗り、ディナ先輩は自身が乗ってきた馬に。
 俺とマドハトとチェッシャーは徒歩で移動を開始する。
 まずは、ギルフォド一・マンクソム一・ニュナム三の共同夜営地を目指す。
 あの惨劇の地。
 ディナ先輩が魔術師組合を介してクスフォード虹爵イーリス・クラティア様と、ギルフォドを治めるトゥイードル濁爵メイグマ・クラティア様とに連絡してくださり、話をつけてくれたようだ。
 結果的にクラーリンは「人質を取られて脱出に手を貸さざるを得なかった」ということに落ち着いた、とディナ先輩が調整してくださった。
 だから、トゥイードル濁爵領兵がこの共同夜営地に到着するまでここで待機した後、クラーリンたちはいったんギルフォドまで一緒に移動することになった。
 タールが潜伏していた場所や、伝言のために使用していた酒場など、現地で捜査に協力することで、「手を貸さざるを得なかった」分の罪をチャラにしてもらえるらしい。
 司法取引のようなものはホルトゥスにもあるんだな。
 グリニーさんとチェッシャーはフラマさんを連れてクラーリンと一緒にギルフォドまでいったん一緒に行くということになった。
 ネスタエアインタールに燃やされて焼け焦げた死体については、現状を確認したいのでそのままにしておいて欲しいとのこと。
 黒き森が近いので、死体の放置はウンセーレー・ウィヒトが怖いのだが、トゥイードル濁爵領兵の皆さんはタールの『魔動人形』を警戒しているようで、ちゃんと死体かどうかの確認は必ずあちら側でしたいので、死せる旅人ヴィエートル・モルトスとして自然に還すのもしないでくれと言われたようだ。

「済まないが、ここまでにさせてくれ」

 共同夜営地に到着していないというのに、クラーリンが突然、馬を止めた。





● 主な登場者

有主ありす利照としてる/リテル
 猿種マンッ、十五歳。リテルの体と記憶、利照としてるの自意識と記憶とを持つ。魔術師見習い。
 レムールのポーとも契約。傭兵部隊を勇気除隊。ウォルラースとタールを倒し、地球の家族へ最初で最後のメッセージを送った。

幕道まくどう丈侍じょうじ
 小三から高一までずっと同じクラスの、元の世界で唯一仲が良かった友達。交換ノベルゲームやTRPGでよく遊んだ。
 彼の弟、昏陽くれひに両親も含めた家族四人全員が眼鏡使用者。実は利照への秘めた想いがあった。現在は英志と仲が良い。

有主ありす英志ひでし
 利照の一つ違いの弟。音楽の才能があり要領も良くイケメンで学業もスポーツも万能。実は兄さん大好き弟だった。
 幼い頃は仲良かったが、ハッタを拾ってきたあたりから当たりが強くなった。現在は丈侍と仲が良い。

有主ありす理名りな
 利照の姉。自分に対しても厳しいが、利照に対する正論DVは苛烈を極めていた。母の期待に相当なプレッシャーを感じていた。
 利照の誕生日に利照以外が海外旅行していた事実が週刊誌で報じられ、そのことで周囲に責められ、現在は引きこもり。

有主ありすはな
 利照の母。音楽以外の全てを音楽に全振りした。子供を音楽の才能でしか測らず、音楽の才能がない利照からは興味を失った。
 利照の誕生日に利照以外が海外旅行していた事実が週刊誌で報じられて責められ、自殺未遂で入院中。ノアの一族。

有主ありす葉理惟はりい
 利照の父。利照の誕生日に利照以外が海外旅行していた事実が週刊誌で報じられた後、ボロボロになった家族を支えている。
 本当は前出の旅行中に利照の誕生日のお祝いを計画していたが、利照に断られた。ちゃんと家族を愛していた。

・ケティ
 リテルの幼馴染の女子。猿種マンッ、十六歳。黒い瞳に黒髪、肌は日焼けで薄い褐色の美人。胸も大きくリテルとは両想い。
 フォーリーから合流したがリテルたちの足を引っ張りたくないと引き返した。ウォルラースの牙をディナへ届けた。

・ラビツ
 イケメンではないが大人の色気があり強者感を出している鼠種ラタトスクッの兎亜種。
 高名な傭兵集団「ヴォールパール自警団」に所属する傭兵。二つ名は「胸漁り」。現在は謝罪行脚中。

・マドハト
 ゴブリン魔法『取り替え子』の被害者。ゴド村の住人。取り戻した犬種アヌビスッの体は最近は丈夫に。
 地球で飼っていたコーギーのハッタに似ている。ゴブリン魔法を使える。傭兵部隊を勇気除隊。いつもリテルと共に。

・ルブルム
 魔女様の弟子である赤髪の少女。整った顔立ちのクールビューティー。華奢な猿種マンッ
 魔法も戦闘もレベルが高く、知的好奇心も旺盛。親しい人を傷つけてしまっていると自分を責めがち。

・アルブム
 魔女様の弟子である白髪に銀の瞳の少女。鼠種ラタトスクッの兎亜種。
 外見はリテルよりも二、三歳若い。知的好奇心が旺盛。

・カエルレウム
 寄らずの森の魔女様。深い青のストレートロングの髪が膝くらいまである猿種マンッ
 ルブルムとアルブムをホムンクルスとして生み出し、リテルの魔法の師匠となった。

・ディナ
 カエルレウムの弟子。ルブルムの先輩にあたる。重度で極度の男嫌い。壮絶な過去がある。
 アールヴを母に持ち、猿種マンッを父に持つ。精霊と契約している。ウォルラースを追って合流。

・ディナの母
 アールヴという閉鎖的な種族ながら、猿種マンッに恋をしてディナを生んだ。名はネスタエアイン。
 キカイー白爵レウコン・クラティアの館からディナを逃がすために死に、タールにより『魔動人形』化された。現在は灰に。

・ウェス
 ディナに仕えており、御者の他、幅広く仕事をこなす。肌は浅黒く、ショートカットのお姉さん。蝙蝠種カマソッソッ
 魔法を使えないときのためにと麻痺毒の入った金属製の筒をくれた。

・タール
 元ギルフォド第一傭兵大隊隊長。『虫の牙』でディナに呪詛の傷を付け、フラマとオストレアの父の仇でもある。
 地界クリープタ出身の魔人。種族はナベリウス。『魔動人形』化したネスタエアイン内に居たタールはようやく処理された。

・メリアン
 ディナ先輩が手配した護衛。ラビツとは傭兵仲間で婚約者。ものすごい筋肉と角と副乳とを持つ牛種モレクッの半返りの女傭兵。知識も豊富で頼れる。二つ名は「噛み千切る壁」。現在はギルフォド第一傭兵大隊隊長代理。

・レム
 爬虫種セベクッ。胸が大きい。バータフラ世代の五人目の生き残り。不本意ながら盗賊団に加担していた。
 同じく仕方なく加担していたミンを殺したウォルラースを憎んでいる。トシテルの心の妹。現在、ルブルムに同行。

・ウォルラース
 キカイーがディナたちに興味を示すよう唆した張本人。金のためならば平気で人を殺すが、とうとう死亡した。
 ダイクの作った盗賊団に一枚噛んでいた。海象種ターサスッの半返り。クラーリンともファウンとも旧知の仲であった。

・ナイト
 初老の馬種エポナッ。地球では親の工場で働いていた日本人、喜多山キタヤマ馬吉ウマキチ
 2016年、四十五歳の誕生日にこちらへ転生してきた。今は発明家として過ごしているが、ナイト商会のトップである。

・ファウン
 ルージャグから逃げたクーラ村の子供たちを襲った山羊種パーンッ三人組といっとき行動を共にしていた山羊種パーンッ
 リテルを兄貴と呼び、ギルフォドまで追いかけてきた。傭兵部隊を一緒に勇気除隊した深夜、突如として姿を消した。死亡。

・フラマ
 おっぱいで有名な娼婦。鳥種ホルスッの半返り。淡いピンク色の長髪はなめらかにウェーブ。瞳は黒で口元にホクロ。
 胸の大きさや美しさ、綺麗な所作などで大人気。父親が地界クリープタ出身の魔人。ウォルラースに洗脳されている。

・オストレア
 鳥種ホルスッの先祖返りで頭は白のメンフクロウ。スタイルはとてもいい。フラマの妹。
 父の仇であるタールの部下として傭兵部隊に留まっていた。現在もギルフォドで傭兵部隊の任期消化中。

・オストレアとフラマの父
 地界クリープタ出身の魔人。種族はアモン。タールと一緒に魔法品の研究をしていたが、タールに殺された。
 タールの、ギルフォルド王国に居るアモン種族の『魔動人形』が、この父である可能性が高い。

・エルーシ
 ディナが管理する娼婦街の元締め、ロズの弟である羊種クヌムッ。娼館で働くのが嫌で飛び出した。
 共に盗賊団に入団した仲間を失い逃走中だった。使い魔にしたカッツァリーダゴキブリや『発火』で夜襲をかけてきたが、死亡。

・コンウォル
 スプリガン。定期便に乗る河馬種タウエレトッの男の子に偽装していた。タールの『魔動人形』の一体。
 夜襲の際に正体を現して『虫の牙』を奪いに来た。そしてマドハトの首をねたが、リテルに叩き潰されて焼かれた。

・クラーリン
 グリニーに惚れている魔術師。猫種バステトッ。目がギョロついているおじさん。グリニーを救うためにウォルラースに協力。
 チェッシャーやリテルやエルーシに魔法や魔術師としての心構えを教えた。ホルトゥスと地球との繋がりを紐解くきっかけを作った。

・グリニー
 チェッシャーの姉。猫種バステトッ。美人だが病気でやつれている。その病とは魔術特異症に起因するものらしい。
 現在かなり弱っており、クラーリンが魔法で延命しなければ危険な状況だったが、クラーリンと利照のおかげで回復。

・チェッシャー
 姉の薬を買うための寿命売りでフォーリーへ向かう途中、野盗に襲われ街道脇に逃げ込んでいたのをリテルに救われた。
 猫種バステトッの半返りの女子。宵闇通りで娼婦をしているが魔法を使い貞操は守り抜いている。リテルに告白した。

・ローダ
 グリニーと寿命の渦コスモスが繋がっている、地球側の魂。病気で入院しているアメリカ人女性である様子。

・レムール
 レムールは単数形で、複数形はレムルースとなる。地界クリープタに生息する、肉体を持たず精神だけの種族。
 自身の能力を提供することにより肉体を持つ生命体と共生する。『虫の牙』による呪詛傷は、強制召喚されたレムールだった。

・ショゴウキ号
 ナイト(キタヤマ)がリテルに貸し出した特別な馬車ゥラエダ。「ショゴちゃん」と呼ばれる。現在はルブルムが使用。
 板バネのサスペンション、藁クッション付き椅子、つり革、床下隠し収納等々便利機能の他、魔法的機能まで搭載。

・ドラコ
 古い表現ではドラコーン。魔術師や王侯貴族に大人気の、いわゆるドラゴン。その卵を現在、リテルが所持。
 卵は手のひらよりちょっと大きいくらいで、孵化に必要な魔法代償プレチウムを与えられるまで、石のような状態を維持する。

・ナベリウス
 苦痛を与えたり、未来を見ることができる能力を持つ勇猛な地界クリープタの一種族。「並列思考」ができる。
 鳥種ホルスッの先祖返りに似た外観で、頭部は烏。種族的にしわがれ声。魔法品の制作も得意。

・アモン
 強靭で、限定的な未来を見たり、炎を操ることができるなどの能力を持つ地界クリープタの一種族。
 鳥種ホルスッの先祖返りに似た外観だが、蛇のように自在に動かせる尾を持つ。頭部は水鳥や梟、烏に似る。

・「我々」
 「神」ではないが、太古の地球人類に「神」として崇められた存在。地球が保護対象となる前、地球を移住先とするために環境へ改変した存在から地球の生命を守るため方舟(恐らくホルトゥス)を作り、一時的に地球の生命を保護した。現在は「観察者」。

・ウンセーレー・ウィヒト
 特定の種族名ではなく現象としての名前。異門ポールタ近くで寿命によらない大量死がある稀に発生する。
 死者たちの姿で燐光を帯びて現れ、火に弱いが、触れられた生者は寿命の渦コスモスを失う。


■ はみ出しコラム【ナベリウスとアモンの魔法】
 今回も、リテル以外の登場人物が使用する魔法を紹介する。
 まずは個人が作成した魔法ではなく、地界クリープタの種族であるナベリウスとアモンにおける種族魔法である。

● ナベリウスの種族魔法
・『ナベリウスの爪』:凄まじい苦痛を与える魔法。
・『魔法固定』:魔石クリスタロ以外に魔法を固定させる魔法。魔法品の制作に利用する。
・『限られた未来』:そこから分岐する未来を数秒先まで感じる。

● アモンの種族魔法
・『炎の蛇』:触れた炎を自在に動かすことができる。その姿は蛇のよう。
・『未来の智』:対象に触れて集中することで、その結果(確率の高い未来)を見ることができる。
・『疑いの囁き』:相手の持つ「疑念」の量を調節できる。抵抗可能。ゼロは1以上にできない。


 そしてここからはタールの作成した魔法

● タールの魔法
・『死者の装い』:魔術使用時に獣種を一人殺す必要がある。その殺した者の外見と、寿命の渦の形を纏う魔術。直接触れると違和感を感じられてしまう。体格や部位(性器や半返りや先祖返りの特徴など)が異なる場合、見破られやすくなる。
・『アモンの炎術』:アモン同様に炎を自在に操る魔術。通常は炎を操っている間、他の行動は取れないがナベリウスには可能。炎を作るわけではなく、あくまでもある炎を使う。炎を束ねる(細くする)ことで、火力を上げることができる。水をかけられたり、酸素がない場所では炎は消える。
 →アモンの『炎の蛇』は、アモンの種族魔法であるため、フラマとオストレアの父親フドアキラを『魔動人形』化した際にその種族魔法の構成要素を学び、アモン以外も使用できる魔法として再構築したもの。
・『魔動人形間通話』:同じ意識を持つ『魔動人形』間で情報を伝達することができる。『遠話』よりもより多くの情報を送受信できるが、両側の術者が同じタイミングで発動しないと通信は不能。事前にタイミングを取り決めておく必要がある。
・『死に人形化』:『魔動人形』が使用すると、寿命の渦コスモス魔石クリスタロに格納された状態へと擬態させ、死に人形にしか見えない状態となる。
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