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#61 初めての契約
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(す、すみません)
(謝罪は不要だ。状況をできる限り詳しく話せ。特にウォルラースについては)
ディナ先輩から伝わってくる声のようなものは落ち着いている印象。
そのおかげで自分も冷静さを取り戻せる。
『テレパシー』と違って『遠話』は心に触れている感覚はない。
骨伝導みたいに頭の中に響いてくるし、同じように「言葉」に意識を集中すると向こうへ送れているっぽいけれど、言葉そのものしかやり取りができない印象だ。
(はいっ。ウォルラースとの遭遇は偶然だと思います。ウォルラースはスノドロッフ村の子どもたちをさらう計画を立てていて、名無し森砦の隊長ダイクと通じて、キョウゲン……えっと)
あと『テレパシー』と違って情報伝達量も速度もぜんぜん違う。
『遠話』は魔法を使った糸電話みたいな感じ。
ただそれでもいちいち発声しないで済むせいか、この『遠話』は、言葉でしゃべるよりかは早い速度でやり取りができている。
油断するとつるっと「ことば」が発せられてしまう。
口でしゃべるときって思考から発声までの間に言葉を選んだり表現を整えたりできているんだな、と改めて感じたり。
(焦らないでいい。ゆっくりとわかりやすい言葉で話せ)
(はい)
ホッとして話を続ける。
そこからは時系列で状況を説明した。
ダイクはもともと自分の状況に不満があり、業績を上げるためと実質的な小遣い稼ぎのために架空の「盗賊団カウダ」を作り上げ、街道を行く人々を襲っていたこと。
ウォルラースはそこに目をつけて協力を申し出て、その見返りとして計画していたスノドロッフの子どもたちの誘拐を手伝わせたこと。
カウダ盗賊団に憧れていたエルーシたちは、誘拐実行犯に仕立て上げるつもりで利用されたっぽいこと。
エルーシとロズさんたちとの確執、そしてエルーシの情報提供により急遽、俺たちも襲撃対象となったこと。
ロズさんの手配した馬車の御者であるノバディがダイクの仲間だったこと。
ウォルラースはあくまでも被害者を装って、アイシスからフォーリーへと向かう定期便で「襲われた」ことにして、盗賊団のアジトに運ばれたこと。
襲われた俺たちはケティが重傷を負ったが、メリアンの助力のおかげでなんとか撃退した。しかしケティがさらわれたこともあり、倒しきれずに逃した敵を追ったら、そのアジトである竪穴へ到着したこと。
ダイクたちに騙されていたホブゴブリン、ロービンとの出会い、洞窟を探索してウォルラースと遭遇したこと。
ウォルラースが逃げてきた盗賊団を囮にして「被害者」として助かろうとしたこと。
ルブルムが反射的に斬りかかったのを、ルブルムが以前「大きな牙」に酷い思いをしたせいで拒否反応が出たと説明してごまかしたこと。
洞窟を出たら砦の兵士たちが警邏の途中で寄ったと言った直後、襲いかかってきたこと。
ウォルラースが使った魔法品、とりわけ『身籠りの祝福』の説明。
ウォルラースの渡した何かによって、ダイクが凶暴化したこと。
その隙にウォルラースが逃げ出したことと、ルブルムが一人で追おうとしたこと。
すぐに追いかけてルブルムを保護したが、『眠りの波』によって魔法の眠りに落ちたこと。
その後、スノドロッフの人たちの加勢によりなんとかダイクを倒したこと。
川で血を洗い流したあと、スノドロッフの子どもたちが安全に夜を過ごせる場所として、ベイグルさんが案内してくれた小屋にルブルムも一緒に移動したこと。
そこにスノドロッフの子どもたち誘拐の実行犯が出現したこと。
その実行犯は砦の兵士でもあり、ダイクという上官による強制力もあり、従わざるを得なかったこと。
実際の誘拐には特殊な方法を用いたが、自分の身の安全のためにその誘拐方法はダイクやウォルラースたちにも秘密にしていたこと。
再び襲ってきたのは、ウォルラースをおびき寄せる道具としてスノドロッフの子どもを確保しようと企んだこと。
なぜそのようなことをしたかというと、同じくダイクに従わざるを得なかった兵士であり同郷の兄でもあるバータフラ・ミンが、結果的にウォルラースに殺されたため、その敵を取るために。
それを未然に防ぎ、取り押さえたこと。
取り押さえたバータフラ・レムペーに対し、保護を条件に証言を約束させたこと。
ダイクとウォルラースの襲撃前の状況については、そのレムペーから聞いたということ。
(それについては後で聞く。だいたい把握した)
ディナ先輩がそう言ったのは、レムについての詳細を話そうとしたときだった。
その直後、ディナ先輩の(ということです)という言葉を受信して、聞いていたのがディナ先輩だけではなかったと気付く。
途端に心配になる。俺、余計なこと言ってなかったか?
(ここからは二人だ)
ああ、やっぱり。
どんだけ叱られるかと身を引き締めたそのとき、ディナ先輩からやけに優しい言葉が届いた。
(よくやった。よくルブルムを守ってくれた。トシテルを信じて良かったよ)
(あっ、ありがとうございます)
(だが他は色々と問題があり過ぎる。ケティという娘が死にかけたのも、さらわれたのもトシテルの油断が原因だ)
(すみません)
(まあ、トシテルにしては上出来だ。で、大事な話だ。ウォルラースの牙、ウォルラースが用意した麻痺毒、そして『カウダの毒消し』が入った魔石、それらはなんとかしてボクの元へ届けろ。今夜、これから虹爵様の兵がそちらへ派遣される。明日の朝には着くだろう。トシテルが信用できる者に預けて、フォーリーの兵と一緒にフォーリーへ持ち帰らせるんだ。できればそのレムの身柄も欲しいところだが……)
ディナ先輩の懸念はやはりレムが処刑されるかもしれない、ということだろうか。
(スノドロッフの件ではフォーリーへの連行が可能だろうが、砦の兵士だと王国直属だからな、難しいかもしれん。その場合はなるべくその後の行き先を把握しておけ。ウォルラースがその娘に再び接触しないとも限らない)
(届け物については了解しました。それで……あの……)
(なんだ?)
(レムペーの母親はチキュウ出身でした。既に死亡してはいますが)
(なるほど……それでも、その娘よりはルブルムを大切にしろ)
なんという鋭さ。
(もちろんです)
(と答えたということは、娘はトシテルに懐いているな? なるほど。ボクからも口添えしておく。ルブルムに代われ)
(はい)
何を口添えするのか聞き返す間もなく俺はルブルムの腕輪から指を抜いた。
すぐにルブルムは頭を小刻みに振り始める。
頭の振り方の「はい」が横で「いいえ」が縦のこちらでは、「うなずく」行為も首を横に振るんだな。
それにしても『遠話』は発声を伴わずに会話できるから、こういう素振りにさえ気をつければサイレント会話魔法も作れるかもしれない。
『短話』って名前にして、トランシーバーみたいな。
今回は既に魔法が発動した後の途中参加だったから魔法のイメージはつかめなかったけど、今度触れた状態で『遠話』を使えないかどうかお願いしてみよう。
さてと。今のうちにディナ先輩お届け用セットを作っておくか。
「ケティ、さっき預けた俺の荷物、お願い」
タービタさん追跡前に白魔石をしまった俺の背負い袋をケティに手渡したというか押し付けたのだった。
ケティは寝藁の中から背負い袋を取り出しつつ俺を見る目が――少し冷たい?
「それはいいけど、この子のズボン、このままにしておくの?」
レムの股間は血に染まったままだった。
「近くに川はあるけれど、こんな夜中に連れて行って洗うのはあまり良くはないわね」
タービタさんが部屋の片隅から紐のついた木桶を二つ持ってくる。
バケツくらいのサイズ。
「お疲れのところ申し訳ないけれど」
と笑顔で手渡された。
ベイグルさんが無言でその木桶を一つ受け取り、外へと出る。
それに続く俺の横目には、ミトとモペトがトームの目や耳を塞いでいるのが見えた。
小屋の外で番をしているメリアンに木桶を振って挨拶すると、俺はベイグルさんに続いて森の中へと踏み入ってゆく。
さっきタービタさんを追ったのとはまた違う方向へ。
ベイグルさんは相変わらず暗闇の中を明かりも持たずにスタスタと歩いてゆく。
詳細確認の全方位『魔力感知』から小屋が外れたくらいまで進んだところで、ベイグルさんがふと何かを言った。
「リテル殿のレムールも見える能力ですか?」
「はい?」
レムール?
リテルも、そして短期間ながら魔法やこの世界について学んだ俺も知らない単語で、思わず聞き返してしまった。
「いや、失礼。里の外の者でレムールを連れているのを見たのは初めてだったものですから」
やっぱり「レムール」と聞こえる。
なんのことだろう。
「えっと……不勉強ですみません。レムールというのは何のことでしょうか」
「重ねて失礼。リテル殿の左腕にレムールが居ましたので、てっきりご存知なのかと。先ほどから真っ暗な森の中で転ぶこともなく歩かれているようですし、消費命の集中も感じませんでしたから、てっきり魔法ではなくレムールの能力を使っているのかと」
左腕――まさか『虫の牙』の呪詛傷?
この影のムカデみたいな奴の正体を知っている?
しかも能力を使うって?
「あの、すみません。もしかしてこの左腕についてご存知なのでしたら教えてください。これは」
一瞬、言い淀む。
『虫の牙』から直接呪詛傷をつけられたのはディナ先輩だ。
俺はその呪詛傷を受け取っただけ。
消費命を集中するたびに絶望的な痛みで咬んでくるこの傷ムカデを解呪なり無効化なりできるのであれば、そんな嬉しいことない。
だけどそうやって俺が保身に走ることで、ディナ先輩自身の存在がバレるのは絶対に避けなくてはならない。
ベイグルさんはまさかウォルラースとつながっていることはないだろうけど、タービタさんみたいな例もある。
安易に情報を公開すべきではないような気がする。
ここは俺が紳士として我慢を続ければいいだけのこと。
「おお、未契約のようですね。それは確かに言いにくいことでしょう」
「俺は本当にレムールというものについて何も知らないんです」
これは本当の話。
ディナ先輩に話が及ばぬように心がけよう。
「そうでしたか。レムールは地界に存在する種族のことです。肉体を持たない存在がゆえ、その存在を維持するには、肉体を持つ生命体と契約しなくてはいけないそうです。私たちスノドロッフの民は、成人するとレムールと契約するのが一般的です。レムールは契約した生命体の体の表面に黒い影として留まるので、私たちのようなアルバスの赤い目を隠すのにはとても有難い存在なのです」
俺は話を聞きながら『魔力感知』で「レムール」を確認しようとした。
しかし傷ムカデどころか、ベイグルさんが恐らく契約しているであろうレムールについてもうまく感知できない。
「『魔力感知』は魂と肉体とをつなぐ寿命の渦を感知するものゆえ、レムールを『魔力感知』や『気配感知』で確認することはできないのです」
色々と見透かされているような気がして少し怖くなる。
「リテル殿はトームたちの命を救ってくださいました。特にトームについてはリテル殿の機転でなんとか命を繋げた状態だとお聞きしました。状況的に三人全員が助かったのは奇跡としか言いようがありません。それにタービタを救えたのも、リテル殿が駆けつけてくださったおかげだと思っています」
ベイグルさんは突然、片膝をついた。
「村長としてこういうことを言ってはいけない立場なのですが、トームは私の子です。父親として、リテル殿には深く感謝しているのです。本当にありがとうございます」
ベイグルさんが深く深くお辞儀をする。
そうか。
どうしてこんなにも良くしてくれるのだろうとは考えていた。
女性と子どもだけを小屋に避難させるならともかく俺まで同行を許されたのも不思議だったし。
「お、俺だけの力ではないです。皆が助けてくれたからこそ」
「そうです。だから私も、リテル殿の力になりたいと思うのです」
ベイグルさんが立ち上がる。
「レムールを種族と表現したのは、彼らが意思を持っていて、会話が可能だからです。そのレムールから聞きました。彼らの肉体を持たないという特性を利用して、強制的に召喚して呪詛として任意の生命体へ縛り付ける魔法が地界にはあると。そんな地界の魔法を付与した魔法品がこちらへと持ち込まれていたとしたら、そんな貴重な品物を持てるとしたら多大な富を持つ者でしょう。その者がリテル殿に呪詛としてレムールを縛り付けたのであれば、人には話せぬ事情にもなりましょう。ただ私はレムールの友として、そのように縛り付けられたレムールを見過ごせませんし、トーム殿を助けていただいたこと以外にも私自身の目でリテル殿を見た上で、あなたになら我々の秘密を打ち明けても構わないと判断したのです」
買いかぶりですよ、と言いたかったけど、声が詰まった。
嬉しくて。
自分自身を評価してもらえたこと、信じてもらえたことが、俺の行動を肯定してもらえたことが。
だから返せた言葉はほんの少しだけ。
「ありがとう、ございます」
「左腕を見せていただけますか? 私の契約しているレムールに呼びかけてもらいます」
俺は素直に左腕を差し出すと、ベイグルさんは顔を近づけてじっと見つめた。
途端に断続的な痛みが何度も俺の左腕を咬んだ。
思わず動いてしまう手がベイグルさんの顔に当たらないよう右手で必死につかんでぐっと堪える。
この状況で消費命を消費するのも失礼な気がして『脳内モルヒネ』を使うのも我慢した――が、ヤバいくらいに痛い。
「痛い」という単語を何十倍にも膨らましたくらいの痛み。
いっそ転げ回れたら楽になるのに――という状況をなんとか堪えられたのは、痛みがずっと続いたわけじゃないから。そして徐々に痛みが小さくなっていったから。
「どうやら、リテル殿に縛り付けられたレムールは、かなり長いことこちらに居させられているようです。その原因となった魔法品の使用者への復讐を手伝うのであれば、契約をしても良いと伝えてきたようです」
契約?
この呪詛傷――というかレムールと?
「契約したらこの痛みがなくなるとかだと嬉しいのですが」
「痛み? ああ、そういう何かが組み込まれた呪詛なのですね。そういうことであれば、レムールと契約をすれば呪詛の発動を抑えられるかもしれません。呪詛自体の解除は、その原因となった魔法品を研究しないとできないでしょうが、呪詛の発動を無視するだけならば……レムールとリテル殿を繋ぐ道筋を強制的な呪詛と契約との二種類に増やすことにより、レムール自身がどちらを通してリテル殿と繋がるのかを選択できるようになるはずです」
なるほど。
でも痛くするかしないかがレムール次第というのはちょっと気になるが、それでもレムールと友好的な関係を築ければ、今みたいな魔法発動即激痛みたいな状況からは逃れられるのかな。
「契約というものは、そんな簡単にできるものなのですか?」
「契約魔法自体は私が習得しています。契約者、つまりリテル殿以外にもう一人、レムールと契約済の者が居れば発動自体は可能なので、タービタに手伝ってもらいましょう」
話が決まったところで、俺とベイグルさんは水汲み作業に戻った。
小屋と小川とを全部で五往復はしただろうか。
その間に、小屋から離れた場所ではレムールの話を他にも色々と聞いた。
レムールというのは単体での名称であり、複数のレムールについてはレムルースと呼ぶこと。
呪詛や契約は、レムールにとってのこの世界における寿命の渦的なものに相当するということ。
契約したレムールには毎日、魔法代償を与える必要があるということ。これは彼らにとっての食事のようなものだという。
地界におけるレムルースは、このように他の生命体と共生関係を築き、暮らしていること。
契約することで使えるようになる能力は、レムール個々により異なるということ。
ちなみにベイグルさんの契約レムールの能力は「見る」ことで、暗い所や魔石の中に格納されている魔法などを「見る」ことができるものらしい。
それから、レムールの嫌がることを無理やりやらせようとすると、断られることもあるということ。
この契約は彼らを支配下に置くものではなく、あくまでも協力関係を繋ぐためのものであるということ。
ちなみにレムルースは形を持たない存在だけど、『契約』時に仮初の姿を取り決めると、通常時はその姿を保つらしい。
明るいところでベイグルさんの目を見せてもらったが、確かにレムールがベイグルさんの瞳から移動すると、赤い目に戻った。
二体居るのかと尋ねてみたら、スノドロッフの人たちがその体に契約しているのは番のレムルースだという。
レムルースにとってスノドロッフの人たちは安心できる繁殖地らしく、確かに双方に利益のある契約となっているようだ。
「手が空きました」
タービタさんが小屋から出てきた。
ルブルムも一緒だ。
しかしベイグルさんに、スノドロッフの秘術なので俺以外には見せるわけにはいかないと伝えられると、肩を落として小屋の中へと戻った。
最近、ルブルムとはずっとちゃんと話せていない。
申し訳ないがあとで弁明させてもらおう。
「まずは洗うのに使った最後の水を捨てに行きましょう」
木桶を俺とベイグルさんとで持ち、タービタさんを含めた三人だけで小川を目指す。
その道中、タービタさんからも改めてお礼を言われる。
感謝されてばかりという状態に慣れてなくて気持ちがむず痒い。
小川では木桶を何度か濯ぎ、明日の朝のための水を汲み、さあ戻ろうかと木桶を担いだとき、呼び止められた。
「リテル殿、契約を済ませてしまいましょう」
「よろしくお願いします」
タービタさんが俺の左腕に触れ、その上からベイグルさんがタービタさんの手の上に自身の手を重ねる。
なるほど。これだと契約の魔法が伝わることはない。
それにタービタさんは女性なので俺の呪詛が感染することもない。
「始めます。気持ちを楽にして、レムールの呼び声に答えてください」
レムールの呼び声――いったいどのようなものだろうか。
期待と不安とが混ざった気持ちが収まるよう、自身へと言い聞かせる。
ベイグルさんの消費命の集中を感じる。
目を閉じて、魔法を受け入れるときの心構えになる。
急に視界が開けた。
というよりも『テレパシー』でレムと向き合ったあのときに似ている。
そして俺の目の前に現れたのは黒い光球が三つ。
そのうちの二つが真ん中の黒光球の周りを旋回している。
もしかしてこの黒光球がレムール?
だとしたら、この中央の一つが呪詛傷として縛られたレムールなのだろうか。
度重なる凄まじい痛みに対し、今まではけっこうな怒りを覚えていたが、ベイグルさんから種族としてのレムールの話を聞いてからはそういう負の感情は全て消えた。
それよりも自分の居た世界から無理やり召喚されて縛り付けられて――その境遇に若干の親近感すら覚えもする。
(……この感覚、話しかけられるのかな?)
俺が思いを伝えようとしたら、黒光球が反応した。
意思疎通できるって言ってたよね。
そういや本当は魔法代償を食事として与えられているはずなんだっけ。
(食べますか?)
消費命をとりあえず一ディエス分、左手の呪詛傷のある場所に集中する。
痛みはなく、それがすっと消費されるのを感じる。
確かに魔法代償として消える感覚に似ている。
(モット)
言葉というか意思のようなものが伝わってくる。
ハッタを拾ったときのことを思い出す。
そういやハッタも拾ってきたとき、すごくお腹空かせていたっけ。
呪詛に縛られたレムールのために更に一ディエス分を九回、食事として消費命を引き渡す。
(アリガトウ)
その意思が伝わってきたときにはもう、黒光球は俺に触れていた。
「名前を決めてあげてください」
ベイグルさんの声が聞こえた。
さて。これからが本番だ。
● 主な登場者
・有主利照/リテル
猿種、十五歳。リテルの体と記憶、利照の自意識と記憶とを持つ。魔術師見習い。
ラビツ一行を追いかけている。ゴブリン用呪詛と『虫の牙』の呪詛と二つの呪詛に感染。自分以外の地球人の痕跡を発見。
・ケティ
リテルの幼馴染の女子。猿種、十六歳。黒い瞳に黒髪、肌は日焼けで薄い褐色の美人。胸も大きい。
リテルとは両想い。フォーリーから合流したが、死にかけたり盗賊団による麻痺毒を注入されたり。
・ラビツ
久々に南の山を越えてストウ村を訪れた傭兵四人組の一人。ケティの唇を奪った。
フォーリーではやはり娼館街を訪れていたっぽい。
・マドハト
ゴブリン魔法『取り替え子』の被害者。ゴド村の住人で、今は犬種の体を取り戻している。
元の世界で飼っていたコーギーのハッタに似ている。変な歌とゴブリン語とゴブリン魔法を知っている。
・ルブルム
魔女様の弟子である赤髪の少女。整った顔立ちのクールビューティー。華奢な猿種。
槍を使った戦闘も得意で、知的好奇心も旺盛。ウォルラースの魔法品により深い眠りに落ちていたが目覚めた。
・アルブム
魔女様の弟子である白髪に銀の瞳の少女。鼠種の兎亜種。
外見はリテルよりも二、三歳若い。知的好奇心が旺盛。
・カエルレウム
寄らずの森の魔女様。深い青のストレートロングの髪が膝くらいまである猿種。
ルブルムとアルブムをホムンクルスとして生み出し、リテルの魔法の師匠となった。『解呪の呪詛』を作成中。
・ディナ
カエルレウムの弟子。ルブルムの先輩にあたる。重度で極度の男嫌い。壮絶な過去がある。
アールヴを母に持ち、猿種を父に持つ。精霊と契約している。トシテルをようやく信用してくれた。
・ウェス
ディナに仕えており、御者の他、幅広く仕事をこなす。肌は浅黒く、ショートカットのお姉さん。蝙蝠種。
魔法を使えないときのためにと麻痺毒の入った金属製の筒をくれた。
・『虫の牙』所持者
キカイー白爵の館に居た警備兵と思われる人物。
『虫の牙』と呼ばれる呪詛の傷を与えるの魔法の武器を所持し、ディナに呪詛の傷を付けた。
・メリアン
ディナ先輩が手配した護衛。リテルたちを鍛える依頼も同時に受けている。
ものすごい筋肉と角と副乳とを持つ牛種の半返りの女傭兵。
・エルーシ
ディナが管理する娼婦街の元締め、ロズの弟である羊種。娼館で働くのが嫌で飛び出した。
仲間の猿種と鼠種と共に盗賊団に入団しようとした。現在逃走中と思われる。
・バータフラ
クラースト村出身の、とある四年分の世代全体に対して付けられた名前。全員が爬虫種。
上から、リーダーのミン、ダイクに心酔した実の兄弟アッタとネルデー、広場でメリアンに殺されたカンタ、そしてレム。
・レム
爬虫種。胸が大きい。バータフラ世代の五人目の生き残り。不本意ながら盗賊団に加担していた。
同じく仕方なく加担していたミンを殺したウォルラースを憎んでいる。ひょんなことからトシテルの妹になった。
・ロービン
マッチョ爽やかイケメンなホブゴブリン。メリアンと同じくらい強い。正義の心にあふれている。
マドハトと意気投合し、仲良くなれた様子。
・スノドロッフ村の子どもたち
魔石の産地であるスノドロッフ村からさらわれてきた子どもたち。カウダの毒による麻痺からは回復。
猫種の先祖返りでアルバス。ミトとモペトの女子が二人、男子がトーム。
・ベイグル
スノドロッフ村の若き村長。槍を武器に持つ。魔法も色々と得意。実はトームの父親。
スノドロッフ村の人々は成人するときにレムールと契約するが、その契約を行う魔法を知っている。
・トリエグル
スノドロッフ村の弓の名手。
・タービタ
スノドロッフ村の女性。数日前に行方不明になった後、全裸で槍だけを装備して突然姿を現した。レムに操られていたが、現在は元に戻った。
・ウォルラース
キカイーの死によって封鎖されたスリナの街から、ディナと商人とを脱出させたなんでも屋。金のためならば平気で人を殺す。
キカイーがディナたちに興味を示すよう唆した張本人。ダイクの作った盗賊団に一枚噛んだが、逃走。
・ロッキン
名無し森砦の守備隊第二隊副隊長であり勲爵。フライ濁爵の三男。
ダイクが率いていた守備隊の中で、唯一、盗賊団ではなかった。脚の怪我はリテルが回復してあげた。
・ダイク
名無し森砦の守備隊第二隊隊長であり勲爵であると自称。筋肉質で猿種にしては体が大きい。
実績作りのためにカウダ盗賊団を自作自演した。ロービンに左腕を切り落とされ、何かを呑み込んで人を辞めたっぽい。死亡。
・プラプディン
名無し森砦の守備隊にして盗賊団。小太りの両生種。頭に赤い花が咲いて死亡。
・スナドラ
名無し森砦の守備隊にして盗賊団。鼠種。頭に赤い花が咲いて死亡。
・ホリーリヴ
名無し森砦の守備隊にして盗賊団。鳥種。魔法を使うが、そこまで得意ではなさげ。暴走したダイクに殺された。
・ブラデレズン
名無し森砦の守備隊にして盗賊団。馬種。ルブルムやケティを見て鼻の下を伸ばしていた。
ウォルラースの魔法品でうずくまっていた女性陣を襲おうとしてメリアンに返り討ちにされた。
・レムール
レムールは単数形で、複数形はレムルースとなる。地界に生息する、肉体を持たず精神だけの種族。
自身の能力を提供することにより肉体を持つ生命体と共生する。『虫の牙』による呪詛傷は、強制召喚されたレムールだった。
■ はみ出しコラム【魔物デザイン その一の四】
今回のはみ出しコラムでも、#47 の【魔物まとめ その一】について、別の角度から書く。
・ホルトゥスにおけるアルティバティラエ
半裸に申し訳程度に白い布をまとい、怪我をした髪の長い獣種の姿に擬態して近づいてきた魔物。
獣種を捕食する。
・地球におけるアルティバティラエ
プリニウスの『博物誌』6.195 にて紹介されるアルタバティタエ(Artabatitae)。エティオピアに住む、四つの脚で歩く種族であり、野獣のようにうろつくという。
(参考URL: http://www.toroia.info/dict/?%E3%82%AE%E3%83%AA%E3%82%B7%E3%82%A2%E3%83%BB%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%9E/%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%90%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%A9%E3%82%A8 )
ただ、なぜか「アルティバティタエ」ではなく「アルティバティラエ」として広まっているようで、実際、「Artabatitae」で検索してもほとんどヒットしないが、「Artibatirae」だと博物誌に掲載されていたイラストを見つけることができる。
(参考URL: http://initiale.irht.cnrs.fr/decor/105022 )
・アルティバティラエのデザイン
まず野獣のようにうろつく四足で歩く種族ということから、もういっそ人間に擬態した生き物にしてしまおうとなった。
一般に擬態するのは天敵から身を守るためか、もしくは捕食対象の警戒を解くためである。今回は後者を採用した。
次に全裸では怪しまれるから何か付け加えようと思った。まるで人間が四つん這いになって歩いている姿に見えるように、と。
裸で油断させるなら美しい女性などがわかりやすいのだが、次回コラムにて解説するパイアと似てしまうため、美しさは抜き、あくまでも「四つん這いの人間」という路線で。
そもそも四足で移動するので四つん這いなのに人を超えたスピードが出るとか、あまり近づくと見破られる恐れがあるからその脚力を活かしてある程度の距離からなら飛びかかれる、などは完全に捕食目線から設定を付け足していった。
そのため体毛を「まるでボロ布を身につけているように見」せたり、「まるで怪我をしているかのように」体液を出す器官をつけたり、いっそのこと頭部も本物の頭部ではないというデザインに。
更に、人間は武器を使う生き物であるため、一見して肩甲骨に見える骨は重要な器官を覆っている設定も同様に「捕食者」という位置付けから進化していった結果である。
ちなみに、物語内では捕食対象として獣種に擬態していたが、幼体のアルティバティラエはその体の小ささゆえにゴブリンなど小型のヒューマノイドに擬態する、という設定である。
(謝罪は不要だ。状況をできる限り詳しく話せ。特にウォルラースについては)
ディナ先輩から伝わってくる声のようなものは落ち着いている印象。
そのおかげで自分も冷静さを取り戻せる。
『テレパシー』と違って『遠話』は心に触れている感覚はない。
骨伝導みたいに頭の中に響いてくるし、同じように「言葉」に意識を集中すると向こうへ送れているっぽいけれど、言葉そのものしかやり取りができない印象だ。
(はいっ。ウォルラースとの遭遇は偶然だと思います。ウォルラースはスノドロッフ村の子どもたちをさらう計画を立てていて、名無し森砦の隊長ダイクと通じて、キョウゲン……えっと)
あと『テレパシー』と違って情報伝達量も速度もぜんぜん違う。
『遠話』は魔法を使った糸電話みたいな感じ。
ただそれでもいちいち発声しないで済むせいか、この『遠話』は、言葉でしゃべるよりかは早い速度でやり取りができている。
油断するとつるっと「ことば」が発せられてしまう。
口でしゃべるときって思考から発声までの間に言葉を選んだり表現を整えたりできているんだな、と改めて感じたり。
(焦らないでいい。ゆっくりとわかりやすい言葉で話せ)
(はい)
ホッとして話を続ける。
そこからは時系列で状況を説明した。
ダイクはもともと自分の状況に不満があり、業績を上げるためと実質的な小遣い稼ぎのために架空の「盗賊団カウダ」を作り上げ、街道を行く人々を襲っていたこと。
ウォルラースはそこに目をつけて協力を申し出て、その見返りとして計画していたスノドロッフの子どもたちの誘拐を手伝わせたこと。
カウダ盗賊団に憧れていたエルーシたちは、誘拐実行犯に仕立て上げるつもりで利用されたっぽいこと。
エルーシとロズさんたちとの確執、そしてエルーシの情報提供により急遽、俺たちも襲撃対象となったこと。
ロズさんの手配した馬車の御者であるノバディがダイクの仲間だったこと。
ウォルラースはあくまでも被害者を装って、アイシスからフォーリーへと向かう定期便で「襲われた」ことにして、盗賊団のアジトに運ばれたこと。
襲われた俺たちはケティが重傷を負ったが、メリアンの助力のおかげでなんとか撃退した。しかしケティがさらわれたこともあり、倒しきれずに逃した敵を追ったら、そのアジトである竪穴へ到着したこと。
ダイクたちに騙されていたホブゴブリン、ロービンとの出会い、洞窟を探索してウォルラースと遭遇したこと。
ウォルラースが逃げてきた盗賊団を囮にして「被害者」として助かろうとしたこと。
ルブルムが反射的に斬りかかったのを、ルブルムが以前「大きな牙」に酷い思いをしたせいで拒否反応が出たと説明してごまかしたこと。
洞窟を出たら砦の兵士たちが警邏の途中で寄ったと言った直後、襲いかかってきたこと。
ウォルラースが使った魔法品、とりわけ『身籠りの祝福』の説明。
ウォルラースの渡した何かによって、ダイクが凶暴化したこと。
その隙にウォルラースが逃げ出したことと、ルブルムが一人で追おうとしたこと。
すぐに追いかけてルブルムを保護したが、『眠りの波』によって魔法の眠りに落ちたこと。
その後、スノドロッフの人たちの加勢によりなんとかダイクを倒したこと。
川で血を洗い流したあと、スノドロッフの子どもたちが安全に夜を過ごせる場所として、ベイグルさんが案内してくれた小屋にルブルムも一緒に移動したこと。
そこにスノドロッフの子どもたち誘拐の実行犯が出現したこと。
その実行犯は砦の兵士でもあり、ダイクという上官による強制力もあり、従わざるを得なかったこと。
実際の誘拐には特殊な方法を用いたが、自分の身の安全のためにその誘拐方法はダイクやウォルラースたちにも秘密にしていたこと。
再び襲ってきたのは、ウォルラースをおびき寄せる道具としてスノドロッフの子どもを確保しようと企んだこと。
なぜそのようなことをしたかというと、同じくダイクに従わざるを得なかった兵士であり同郷の兄でもあるバータフラ・ミンが、結果的にウォルラースに殺されたため、その敵を取るために。
それを未然に防ぎ、取り押さえたこと。
取り押さえたバータフラ・レムペーに対し、保護を条件に証言を約束させたこと。
ダイクとウォルラースの襲撃前の状況については、そのレムペーから聞いたということ。
(それについては後で聞く。だいたい把握した)
ディナ先輩がそう言ったのは、レムについての詳細を話そうとしたときだった。
その直後、ディナ先輩の(ということです)という言葉を受信して、聞いていたのがディナ先輩だけではなかったと気付く。
途端に心配になる。俺、余計なこと言ってなかったか?
(ここからは二人だ)
ああ、やっぱり。
どんだけ叱られるかと身を引き締めたそのとき、ディナ先輩からやけに優しい言葉が届いた。
(よくやった。よくルブルムを守ってくれた。トシテルを信じて良かったよ)
(あっ、ありがとうございます)
(だが他は色々と問題があり過ぎる。ケティという娘が死にかけたのも、さらわれたのもトシテルの油断が原因だ)
(すみません)
(まあ、トシテルにしては上出来だ。で、大事な話だ。ウォルラースの牙、ウォルラースが用意した麻痺毒、そして『カウダの毒消し』が入った魔石、それらはなんとかしてボクの元へ届けろ。今夜、これから虹爵様の兵がそちらへ派遣される。明日の朝には着くだろう。トシテルが信用できる者に預けて、フォーリーの兵と一緒にフォーリーへ持ち帰らせるんだ。できればそのレムの身柄も欲しいところだが……)
ディナ先輩の懸念はやはりレムが処刑されるかもしれない、ということだろうか。
(スノドロッフの件ではフォーリーへの連行が可能だろうが、砦の兵士だと王国直属だからな、難しいかもしれん。その場合はなるべくその後の行き先を把握しておけ。ウォルラースがその娘に再び接触しないとも限らない)
(届け物については了解しました。それで……あの……)
(なんだ?)
(レムペーの母親はチキュウ出身でした。既に死亡してはいますが)
(なるほど……それでも、その娘よりはルブルムを大切にしろ)
なんという鋭さ。
(もちろんです)
(と答えたということは、娘はトシテルに懐いているな? なるほど。ボクからも口添えしておく。ルブルムに代われ)
(はい)
何を口添えするのか聞き返す間もなく俺はルブルムの腕輪から指を抜いた。
すぐにルブルムは頭を小刻みに振り始める。
頭の振り方の「はい」が横で「いいえ」が縦のこちらでは、「うなずく」行為も首を横に振るんだな。
それにしても『遠話』は発声を伴わずに会話できるから、こういう素振りにさえ気をつければサイレント会話魔法も作れるかもしれない。
『短話』って名前にして、トランシーバーみたいな。
今回は既に魔法が発動した後の途中参加だったから魔法のイメージはつかめなかったけど、今度触れた状態で『遠話』を使えないかどうかお願いしてみよう。
さてと。今のうちにディナ先輩お届け用セットを作っておくか。
「ケティ、さっき預けた俺の荷物、お願い」
タービタさん追跡前に白魔石をしまった俺の背負い袋をケティに手渡したというか押し付けたのだった。
ケティは寝藁の中から背負い袋を取り出しつつ俺を見る目が――少し冷たい?
「それはいいけど、この子のズボン、このままにしておくの?」
レムの股間は血に染まったままだった。
「近くに川はあるけれど、こんな夜中に連れて行って洗うのはあまり良くはないわね」
タービタさんが部屋の片隅から紐のついた木桶を二つ持ってくる。
バケツくらいのサイズ。
「お疲れのところ申し訳ないけれど」
と笑顔で手渡された。
ベイグルさんが無言でその木桶を一つ受け取り、外へと出る。
それに続く俺の横目には、ミトとモペトがトームの目や耳を塞いでいるのが見えた。
小屋の外で番をしているメリアンに木桶を振って挨拶すると、俺はベイグルさんに続いて森の中へと踏み入ってゆく。
さっきタービタさんを追ったのとはまた違う方向へ。
ベイグルさんは相変わらず暗闇の中を明かりも持たずにスタスタと歩いてゆく。
詳細確認の全方位『魔力感知』から小屋が外れたくらいまで進んだところで、ベイグルさんがふと何かを言った。
「リテル殿のレムールも見える能力ですか?」
「はい?」
レムール?
リテルも、そして短期間ながら魔法やこの世界について学んだ俺も知らない単語で、思わず聞き返してしまった。
「いや、失礼。里の外の者でレムールを連れているのを見たのは初めてだったものですから」
やっぱり「レムール」と聞こえる。
なんのことだろう。
「えっと……不勉強ですみません。レムールというのは何のことでしょうか」
「重ねて失礼。リテル殿の左腕にレムールが居ましたので、てっきりご存知なのかと。先ほどから真っ暗な森の中で転ぶこともなく歩かれているようですし、消費命の集中も感じませんでしたから、てっきり魔法ではなくレムールの能力を使っているのかと」
左腕――まさか『虫の牙』の呪詛傷?
この影のムカデみたいな奴の正体を知っている?
しかも能力を使うって?
「あの、すみません。もしかしてこの左腕についてご存知なのでしたら教えてください。これは」
一瞬、言い淀む。
『虫の牙』から直接呪詛傷をつけられたのはディナ先輩だ。
俺はその呪詛傷を受け取っただけ。
消費命を集中するたびに絶望的な痛みで咬んでくるこの傷ムカデを解呪なり無効化なりできるのであれば、そんな嬉しいことない。
だけどそうやって俺が保身に走ることで、ディナ先輩自身の存在がバレるのは絶対に避けなくてはならない。
ベイグルさんはまさかウォルラースとつながっていることはないだろうけど、タービタさんみたいな例もある。
安易に情報を公開すべきではないような気がする。
ここは俺が紳士として我慢を続ければいいだけのこと。
「おお、未契約のようですね。それは確かに言いにくいことでしょう」
「俺は本当にレムールというものについて何も知らないんです」
これは本当の話。
ディナ先輩に話が及ばぬように心がけよう。
「そうでしたか。レムールは地界に存在する種族のことです。肉体を持たない存在がゆえ、その存在を維持するには、肉体を持つ生命体と契約しなくてはいけないそうです。私たちスノドロッフの民は、成人するとレムールと契約するのが一般的です。レムールは契約した生命体の体の表面に黒い影として留まるので、私たちのようなアルバスの赤い目を隠すのにはとても有難い存在なのです」
俺は話を聞きながら『魔力感知』で「レムール」を確認しようとした。
しかし傷ムカデどころか、ベイグルさんが恐らく契約しているであろうレムールについてもうまく感知できない。
「『魔力感知』は魂と肉体とをつなぐ寿命の渦を感知するものゆえ、レムールを『魔力感知』や『気配感知』で確認することはできないのです」
色々と見透かされているような気がして少し怖くなる。
「リテル殿はトームたちの命を救ってくださいました。特にトームについてはリテル殿の機転でなんとか命を繋げた状態だとお聞きしました。状況的に三人全員が助かったのは奇跡としか言いようがありません。それにタービタを救えたのも、リテル殿が駆けつけてくださったおかげだと思っています」
ベイグルさんは突然、片膝をついた。
「村長としてこういうことを言ってはいけない立場なのですが、トームは私の子です。父親として、リテル殿には深く感謝しているのです。本当にありがとうございます」
ベイグルさんが深く深くお辞儀をする。
そうか。
どうしてこんなにも良くしてくれるのだろうとは考えていた。
女性と子どもだけを小屋に避難させるならともかく俺まで同行を許されたのも不思議だったし。
「お、俺だけの力ではないです。皆が助けてくれたからこそ」
「そうです。だから私も、リテル殿の力になりたいと思うのです」
ベイグルさんが立ち上がる。
「レムールを種族と表現したのは、彼らが意思を持っていて、会話が可能だからです。そのレムールから聞きました。彼らの肉体を持たないという特性を利用して、強制的に召喚して呪詛として任意の生命体へ縛り付ける魔法が地界にはあると。そんな地界の魔法を付与した魔法品がこちらへと持ち込まれていたとしたら、そんな貴重な品物を持てるとしたら多大な富を持つ者でしょう。その者がリテル殿に呪詛としてレムールを縛り付けたのであれば、人には話せぬ事情にもなりましょう。ただ私はレムールの友として、そのように縛り付けられたレムールを見過ごせませんし、トーム殿を助けていただいたこと以外にも私自身の目でリテル殿を見た上で、あなたになら我々の秘密を打ち明けても構わないと判断したのです」
買いかぶりですよ、と言いたかったけど、声が詰まった。
嬉しくて。
自分自身を評価してもらえたこと、信じてもらえたことが、俺の行動を肯定してもらえたことが。
だから返せた言葉はほんの少しだけ。
「ありがとう、ございます」
「左腕を見せていただけますか? 私の契約しているレムールに呼びかけてもらいます」
俺は素直に左腕を差し出すと、ベイグルさんは顔を近づけてじっと見つめた。
途端に断続的な痛みが何度も俺の左腕を咬んだ。
思わず動いてしまう手がベイグルさんの顔に当たらないよう右手で必死につかんでぐっと堪える。
この状況で消費命を消費するのも失礼な気がして『脳内モルヒネ』を使うのも我慢した――が、ヤバいくらいに痛い。
「痛い」という単語を何十倍にも膨らましたくらいの痛み。
いっそ転げ回れたら楽になるのに――という状況をなんとか堪えられたのは、痛みがずっと続いたわけじゃないから。そして徐々に痛みが小さくなっていったから。
「どうやら、リテル殿に縛り付けられたレムールは、かなり長いことこちらに居させられているようです。その原因となった魔法品の使用者への復讐を手伝うのであれば、契約をしても良いと伝えてきたようです」
契約?
この呪詛傷――というかレムールと?
「契約したらこの痛みがなくなるとかだと嬉しいのですが」
「痛み? ああ、そういう何かが組み込まれた呪詛なのですね。そういうことであれば、レムールと契約をすれば呪詛の発動を抑えられるかもしれません。呪詛自体の解除は、その原因となった魔法品を研究しないとできないでしょうが、呪詛の発動を無視するだけならば……レムールとリテル殿を繋ぐ道筋を強制的な呪詛と契約との二種類に増やすことにより、レムール自身がどちらを通してリテル殿と繋がるのかを選択できるようになるはずです」
なるほど。
でも痛くするかしないかがレムール次第というのはちょっと気になるが、それでもレムールと友好的な関係を築ければ、今みたいな魔法発動即激痛みたいな状況からは逃れられるのかな。
「契約というものは、そんな簡単にできるものなのですか?」
「契約魔法自体は私が習得しています。契約者、つまりリテル殿以外にもう一人、レムールと契約済の者が居れば発動自体は可能なので、タービタに手伝ってもらいましょう」
話が決まったところで、俺とベイグルさんは水汲み作業に戻った。
小屋と小川とを全部で五往復はしただろうか。
その間に、小屋から離れた場所ではレムールの話を他にも色々と聞いた。
レムールというのは単体での名称であり、複数のレムールについてはレムルースと呼ぶこと。
呪詛や契約は、レムールにとってのこの世界における寿命の渦的なものに相当するということ。
契約したレムールには毎日、魔法代償を与える必要があるということ。これは彼らにとっての食事のようなものだという。
地界におけるレムルースは、このように他の生命体と共生関係を築き、暮らしていること。
契約することで使えるようになる能力は、レムール個々により異なるということ。
ちなみにベイグルさんの契約レムールの能力は「見る」ことで、暗い所や魔石の中に格納されている魔法などを「見る」ことができるものらしい。
それから、レムールの嫌がることを無理やりやらせようとすると、断られることもあるということ。
この契約は彼らを支配下に置くものではなく、あくまでも協力関係を繋ぐためのものであるということ。
ちなみにレムルースは形を持たない存在だけど、『契約』時に仮初の姿を取り決めると、通常時はその姿を保つらしい。
明るいところでベイグルさんの目を見せてもらったが、確かにレムールがベイグルさんの瞳から移動すると、赤い目に戻った。
二体居るのかと尋ねてみたら、スノドロッフの人たちがその体に契約しているのは番のレムルースだという。
レムルースにとってスノドロッフの人たちは安心できる繁殖地らしく、確かに双方に利益のある契約となっているようだ。
「手が空きました」
タービタさんが小屋から出てきた。
ルブルムも一緒だ。
しかしベイグルさんに、スノドロッフの秘術なので俺以外には見せるわけにはいかないと伝えられると、肩を落として小屋の中へと戻った。
最近、ルブルムとはずっとちゃんと話せていない。
申し訳ないがあとで弁明させてもらおう。
「まずは洗うのに使った最後の水を捨てに行きましょう」
木桶を俺とベイグルさんとで持ち、タービタさんを含めた三人だけで小川を目指す。
その道中、タービタさんからも改めてお礼を言われる。
感謝されてばかりという状態に慣れてなくて気持ちがむず痒い。
小川では木桶を何度か濯ぎ、明日の朝のための水を汲み、さあ戻ろうかと木桶を担いだとき、呼び止められた。
「リテル殿、契約を済ませてしまいましょう」
「よろしくお願いします」
タービタさんが俺の左腕に触れ、その上からベイグルさんがタービタさんの手の上に自身の手を重ねる。
なるほど。これだと契約の魔法が伝わることはない。
それにタービタさんは女性なので俺の呪詛が感染することもない。
「始めます。気持ちを楽にして、レムールの呼び声に答えてください」
レムールの呼び声――いったいどのようなものだろうか。
期待と不安とが混ざった気持ちが収まるよう、自身へと言い聞かせる。
ベイグルさんの消費命の集中を感じる。
目を閉じて、魔法を受け入れるときの心構えになる。
急に視界が開けた。
というよりも『テレパシー』でレムと向き合ったあのときに似ている。
そして俺の目の前に現れたのは黒い光球が三つ。
そのうちの二つが真ん中の黒光球の周りを旋回している。
もしかしてこの黒光球がレムール?
だとしたら、この中央の一つが呪詛傷として縛られたレムールなのだろうか。
度重なる凄まじい痛みに対し、今まではけっこうな怒りを覚えていたが、ベイグルさんから種族としてのレムールの話を聞いてからはそういう負の感情は全て消えた。
それよりも自分の居た世界から無理やり召喚されて縛り付けられて――その境遇に若干の親近感すら覚えもする。
(……この感覚、話しかけられるのかな?)
俺が思いを伝えようとしたら、黒光球が反応した。
意思疎通できるって言ってたよね。
そういや本当は魔法代償を食事として与えられているはずなんだっけ。
(食べますか?)
消費命をとりあえず一ディエス分、左手の呪詛傷のある場所に集中する。
痛みはなく、それがすっと消費されるのを感じる。
確かに魔法代償として消える感覚に似ている。
(モット)
言葉というか意思のようなものが伝わってくる。
ハッタを拾ったときのことを思い出す。
そういやハッタも拾ってきたとき、すごくお腹空かせていたっけ。
呪詛に縛られたレムールのために更に一ディエス分を九回、食事として消費命を引き渡す。
(アリガトウ)
その意思が伝わってきたときにはもう、黒光球は俺に触れていた。
「名前を決めてあげてください」
ベイグルさんの声が聞こえた。
さて。これからが本番だ。
● 主な登場者
・有主利照/リテル
猿種、十五歳。リテルの体と記憶、利照の自意識と記憶とを持つ。魔術師見習い。
ラビツ一行を追いかけている。ゴブリン用呪詛と『虫の牙』の呪詛と二つの呪詛に感染。自分以外の地球人の痕跡を発見。
・ケティ
リテルの幼馴染の女子。猿種、十六歳。黒い瞳に黒髪、肌は日焼けで薄い褐色の美人。胸も大きい。
リテルとは両想い。フォーリーから合流したが、死にかけたり盗賊団による麻痺毒を注入されたり。
・ラビツ
久々に南の山を越えてストウ村を訪れた傭兵四人組の一人。ケティの唇を奪った。
フォーリーではやはり娼館街を訪れていたっぽい。
・マドハト
ゴブリン魔法『取り替え子』の被害者。ゴド村の住人で、今は犬種の体を取り戻している。
元の世界で飼っていたコーギーのハッタに似ている。変な歌とゴブリン語とゴブリン魔法を知っている。
・ルブルム
魔女様の弟子である赤髪の少女。整った顔立ちのクールビューティー。華奢な猿種。
槍を使った戦闘も得意で、知的好奇心も旺盛。ウォルラースの魔法品により深い眠りに落ちていたが目覚めた。
・アルブム
魔女様の弟子である白髪に銀の瞳の少女。鼠種の兎亜種。
外見はリテルよりも二、三歳若い。知的好奇心が旺盛。
・カエルレウム
寄らずの森の魔女様。深い青のストレートロングの髪が膝くらいまである猿種。
ルブルムとアルブムをホムンクルスとして生み出し、リテルの魔法の師匠となった。『解呪の呪詛』を作成中。
・ディナ
カエルレウムの弟子。ルブルムの先輩にあたる。重度で極度の男嫌い。壮絶な過去がある。
アールヴを母に持ち、猿種を父に持つ。精霊と契約している。トシテルをようやく信用してくれた。
・ウェス
ディナに仕えており、御者の他、幅広く仕事をこなす。肌は浅黒く、ショートカットのお姉さん。蝙蝠種。
魔法を使えないときのためにと麻痺毒の入った金属製の筒をくれた。
・『虫の牙』所持者
キカイー白爵の館に居た警備兵と思われる人物。
『虫の牙』と呼ばれる呪詛の傷を与えるの魔法の武器を所持し、ディナに呪詛の傷を付けた。
・メリアン
ディナ先輩が手配した護衛。リテルたちを鍛える依頼も同時に受けている。
ものすごい筋肉と角と副乳とを持つ牛種の半返りの女傭兵。
・エルーシ
ディナが管理する娼婦街の元締め、ロズの弟である羊種。娼館で働くのが嫌で飛び出した。
仲間の猿種と鼠種と共に盗賊団に入団しようとした。現在逃走中と思われる。
・バータフラ
クラースト村出身の、とある四年分の世代全体に対して付けられた名前。全員が爬虫種。
上から、リーダーのミン、ダイクに心酔した実の兄弟アッタとネルデー、広場でメリアンに殺されたカンタ、そしてレム。
・レム
爬虫種。胸が大きい。バータフラ世代の五人目の生き残り。不本意ながら盗賊団に加担していた。
同じく仕方なく加担していたミンを殺したウォルラースを憎んでいる。ひょんなことからトシテルの妹になった。
・ロービン
マッチョ爽やかイケメンなホブゴブリン。メリアンと同じくらい強い。正義の心にあふれている。
マドハトと意気投合し、仲良くなれた様子。
・スノドロッフ村の子どもたち
魔石の産地であるスノドロッフ村からさらわれてきた子どもたち。カウダの毒による麻痺からは回復。
猫種の先祖返りでアルバス。ミトとモペトの女子が二人、男子がトーム。
・ベイグル
スノドロッフ村の若き村長。槍を武器に持つ。魔法も色々と得意。実はトームの父親。
スノドロッフ村の人々は成人するときにレムールと契約するが、その契約を行う魔法を知っている。
・トリエグル
スノドロッフ村の弓の名手。
・タービタ
スノドロッフ村の女性。数日前に行方不明になった後、全裸で槍だけを装備して突然姿を現した。レムに操られていたが、現在は元に戻った。
・ウォルラース
キカイーの死によって封鎖されたスリナの街から、ディナと商人とを脱出させたなんでも屋。金のためならば平気で人を殺す。
キカイーがディナたちに興味を示すよう唆した張本人。ダイクの作った盗賊団に一枚噛んだが、逃走。
・ロッキン
名無し森砦の守備隊第二隊副隊長であり勲爵。フライ濁爵の三男。
ダイクが率いていた守備隊の中で、唯一、盗賊団ではなかった。脚の怪我はリテルが回復してあげた。
・ダイク
名無し森砦の守備隊第二隊隊長であり勲爵であると自称。筋肉質で猿種にしては体が大きい。
実績作りのためにカウダ盗賊団を自作自演した。ロービンに左腕を切り落とされ、何かを呑み込んで人を辞めたっぽい。死亡。
・プラプディン
名無し森砦の守備隊にして盗賊団。小太りの両生種。頭に赤い花が咲いて死亡。
・スナドラ
名無し森砦の守備隊にして盗賊団。鼠種。頭に赤い花が咲いて死亡。
・ホリーリヴ
名無し森砦の守備隊にして盗賊団。鳥種。魔法を使うが、そこまで得意ではなさげ。暴走したダイクに殺された。
・ブラデレズン
名無し森砦の守備隊にして盗賊団。馬種。ルブルムやケティを見て鼻の下を伸ばしていた。
ウォルラースの魔法品でうずくまっていた女性陣を襲おうとしてメリアンに返り討ちにされた。
・レムール
レムールは単数形で、複数形はレムルースとなる。地界に生息する、肉体を持たず精神だけの種族。
自身の能力を提供することにより肉体を持つ生命体と共生する。『虫の牙』による呪詛傷は、強制召喚されたレムールだった。
■ はみ出しコラム【魔物デザイン その一の四】
今回のはみ出しコラムでも、#47 の【魔物まとめ その一】について、別の角度から書く。
・ホルトゥスにおけるアルティバティラエ
半裸に申し訳程度に白い布をまとい、怪我をした髪の長い獣種の姿に擬態して近づいてきた魔物。
獣種を捕食する。
・地球におけるアルティバティラエ
プリニウスの『博物誌』6.195 にて紹介されるアルタバティタエ(Artabatitae)。エティオピアに住む、四つの脚で歩く種族であり、野獣のようにうろつくという。
(参考URL: http://www.toroia.info/dict/?%E3%82%AE%E3%83%AA%E3%82%B7%E3%82%A2%E3%83%BB%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%9E/%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%90%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%A9%E3%82%A8 )
ただ、なぜか「アルティバティタエ」ではなく「アルティバティラエ」として広まっているようで、実際、「Artabatitae」で検索してもほとんどヒットしないが、「Artibatirae」だと博物誌に掲載されていたイラストを見つけることができる。
(参考URL: http://initiale.irht.cnrs.fr/decor/105022 )
・アルティバティラエのデザイン
まず野獣のようにうろつく四足で歩く種族ということから、もういっそ人間に擬態した生き物にしてしまおうとなった。
一般に擬態するのは天敵から身を守るためか、もしくは捕食対象の警戒を解くためである。今回は後者を採用した。
次に全裸では怪しまれるから何か付け加えようと思った。まるで人間が四つん這いになって歩いている姿に見えるように、と。
裸で油断させるなら美しい女性などがわかりやすいのだが、次回コラムにて解説するパイアと似てしまうため、美しさは抜き、あくまでも「四つん這いの人間」という路線で。
そもそも四足で移動するので四つん這いなのに人を超えたスピードが出るとか、あまり近づくと見破られる恐れがあるからその脚力を活かしてある程度の距離からなら飛びかかれる、などは完全に捕食目線から設定を付け足していった。
そのため体毛を「まるでボロ布を身につけているように見」せたり、「まるで怪我をしているかのように」体液を出す器官をつけたり、いっそのこと頭部も本物の頭部ではないというデザインに。
更に、人間は武器を使う生き物であるため、一見して肩甲骨に見える骨は重要な器官を覆っている設定も同様に「捕食者」という位置付けから進化していった結果である。
ちなみに、物語内では捕食対象として獣種に擬態していたが、幼体のアルティバティラエはその体の小ささゆえにゴブリンなど小型のヒューマノイドに擬態する、という設定である。
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