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#58 操られた体
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二人に近づきながら状況を整理する。
タービタという人はスノドロッフ村の人。
数日前に失踪し、恐らく三人の子どもたち誘拐に関わっている。
ベイグルさんはスノドロッフ村の若き村長で、子どもたちを取り戻しに来た。
そしてタービタの出現に驚いていた。
ここまでが事実。
ここからは考察。
問題はタービタが、ダイクのようにスノドロッフを裏切っているのか、それとも何らかの魔法で操られているのか、というとこだよな。
するとベストな勝利条件は、タービタの無力化だろうか。
さっきの盗賊団の持ち物から麻痺毒を塗ったであろう武器の一つでも拝借してこれれば良かったけど――昏睡しちゃっているルブルムが安全に眠れる場所を紹介されて、さらわれた子どもたちと一緒に行動するってのに、そんな武器を持っていきたいとはとてもじゃないけど言えなかったもんな。
麻痺とか睡眠とか、相手を状態異常にする魔法はちょっと考えてみたけれど、魔法で効果を発生させようとすると、どうしても魔法抵抗が障害になる。
ウォルラースの使った魔法品「眠り石」だって、戦闘中は効果をまず発揮しないとメリアンも言っていたし。
となると実際に効果が高いのは毒なんだろうけど、リテルに近接戦闘を教えてくれたテニール兄貴は「自分の体以外の武器を使うときは、相手に奪われることをちゃんと考えた上で持て」って言ってたからなぁ。
そうそう。
他にも「人数の多さというのはときとして有利ではなく不利に働く」というのもあった。
例えば一対一で戦っているところに加勢する場合、互いの実力がわからないうちに参戦すると、かえって邪魔してしまうことがあると。
リテルが「よくわからない」と答えたとき、テニール兄貴は「想像してみて」と言った。「リテルと俺とで模擬戦をしているときにドッヂがリテルの味方として参戦してきたら」と。
どう動くか予測できない味方や、攻撃を自分自身の力だけでさばけない者は足手まといになると。
いま、向こうの二つの寿命の渦の動きを見ると交戦中のようだ。
俺はどのように加勢したら良いのだろうか。
ベイグルさんもタービタも槍を持っていた。
弓と矢筒は置いてきてしまった俺の武器は手斧と短剣。武器の長さが圧倒的に違う。
かといって魔法を使うにしても、射程の問題はつきまとう。
マドハトから教えてもらった『大笑いのぬかるみ』だと、ベイグルさんを巻き込んでしまう恐れもある。
メリアンやルブルムとなら、ある程度は互いの動きを察知できそうなものだけど、ベイグルさんとは手合わせすらしたことがないからなぁ。
とか様子を見ているうちに、ベイグルさんの寿命の渦が消えた!
慌てて『魔力微感知』を『魔力感知』へと切り替える。
「死」という単語が脳裏を過り、それだけで体が強張った。
武器を持った相手と戦うということは、そういうこともありえるというのは、テニール兄貴からもディナ先輩からも特に何度も念押しされたこと。
身を低くして、洞窟の中で曲がり角の先を『魔力感知』で探ったときの感覚を思い出す――いた!
ベイグルさんは、地下にいた。
落とし穴に落ちたのだろうか。
ベイグルさんの寿命の渦からは特に大きな負傷は感じない。
ということは、タービタはこのへんに落とし穴をあらかじめ準備した上で、誘い込んできたってわけか。
『魔力感知』では多分、落とし穴を見破るのは難しいだろうな。生きていないし、隠されてもいるだろうし。
掘った穴の上に土や草木を戻されでもしたら――いや、思考を停止するな。
地面から生えている草と、落とし穴の上に戻された草とではきっと寿命の渦の輝きが違うだろう。
それを注意深く――こっちに向かってくる?
偽装の渦で寿命の渦は隠せているはず――となると、向こうはこの暗闇でも俺を視認できているってことか?
そういや蝙蝠の半返りのウェスさんは、耳がとても良かった。
もしかして猫種の先祖返りだと夜目が効くのかな。
よし。試しに――俺は適当な小石を拾い、左手で弓を構える体勢を作る。
まずは『脳内モルヒネ』をかけてから。
ロービンに習った『見えざる弓』を、偽装消費命で、消費命の集中がバレないように発動――しなかった。
魔法発動の前提条件である明るさが足りなくてダメなのか、魔法代償の要求がそもそも発生しなかった。
暗すぎるのだとしたら、じゃあ灯りを作るか?
どうせ向こうから把握されているんだし。
とはいっても『発火』は一瞬だし、威力を弱めて発動時間を長くした『弱火』だとそこまで明るくないし。
そもそも火ではなく灯り自体を魔法で作ろうとすると、明確なイメージが自分の中に作れないことに気付く。
LEDは仕組みがよくわからないし、電球は電気がフィラメントを通る際に抵抗して光を出して――それがわかっていてもフィラメントの構造をイメージできないし。
そんな試行錯誤中にもタービタは距離をぐんぐん詰めてくる。
俺は覚悟を決めて手斧を鞘から取り出し、構える。
そして接敵するギリギリまで、付近に落とし穴らしき場所はないかと確認し続ける。
ああもう近いな。
三アブスくらいか。
リテルが狩人として鍛錬してくれていたおかげで、目視だけでだいたいの距離がわかる――今だ――俺は『大笑いのぬかるみ』を発動した。
タービタは派手にすっ転び、湿度を含んだ大きな音が辺りに響く。
よし。これでしばらくは大丈夫だろう。
俺はタービタが通ってきたルートを辿り、ベイグルさんの所へと急ぐ。
「ベイグルさん、ご無事ですか?」
落とし穴のようだが、暗くて中は見えない。
「私は無事です。タービタは」
ベイグルさんの声。
「今、つるつる滑ってます」
「近くに枯れ枝はありますか?」
『魔力感知』で見える、宇宙の星々のような草や虫の無数の寿命の渦の上に、寿命の渦のない枝の形を見つけて一本、手に取った。
「はい。手に取りました」
「その先端をゆっくりと穴の中へ入れていただけますか? 私の声の方へ」
「はい」
ゆっくりと、枯れ枝の先を穴の中へ差し込んでゆく。
声の方へ。ベイグルさんご自身を突付いてしまわないよう、気をつけながら。
「そこで止めてください……灯りの魔法を使います」
「はい」
「『燃える夢』」
消費命の集中を感じた直後、枯れ枝の先が燃えているみたいに明るくなった。
そしてベイグルさんと穴の全容とが見える。
けっこうな大きさと深さの穴。メリアンがまるごとすっぽり入りそうなほど。
道具は何を使ったのかわからないけれど、これ掘るの大変だったろうな。
さらに底には無数の枝を尖らせて地面に突き立ててある。
ベイグルさんはその枝と穴の壁とのわずかな隙間にほっそりと挟まっていて、串刺しは免れていた。さす猫。
「では、少し下がっていただきたい」
ベイグルさんは槍を両手で持ち、その槍の先端を穴から斜めに突き出した。
消費命を集中しながらジャンプしたと同時に消費する。
何かの魔法を発動したのだろう――そこからのことはしっかり見ていたはずなのに、なんだかまだうまく理解できないでいる。
槍が空中にピタッと止まり、ベイグルさんは、その槍を手がかり、足がかりにして穴の外へスルッと出てきたのだ。
その間、槍はまるでその場所に固定された鉄棒であるかのように、たわみもしなりもせず動きを止めていた。
槍が突然落ちたのは、ベイグルさんが出てきてから少し経ってからだった。
もちろんその槍の端をベイグルさんがつかんでいたから、槍は落とし穴には落ちずに回収できていたけれど。
「す、すごい魔法ですね!」
槍を空中に固定する魔法なのかな。
でも固定ってどうしてるんだろう。重力を遮断するとか?
いやでも違うよな。よじ登ってたもんな。力を加えても動かなかったから固定っちゃ固定なのか?
だとしたらどんな原理で?
この世界に来てから色んな魔法を見たけれど、原理が全くわからない、魔法らしい魔法を目の当たりにしてちょっとテンションが上ってしまった。
「リテル殿!」
ベイグルさんの声で、自分が油断していたことに気付く。
タービタがいつの間にかぬかるみの外に出ていて、俺に向かってタックルしてきたのだ。
俺はとっさに地面に触れて――その途端、タービタが急に向きを変える。
小屋とは反対側、森の奥の方へ。
「リテル殿はお戻りください!」
ベイグルさんがタービタを追って走り出す。
「わかりました!」
そうだな。こちらは陽動かもしれないし、俺は言われた通り戻ることにする。
さっきのぬかるみを見に行くと、ぬかるみの端に槍が刺さっていて、そこから反対方向へ滑った跡がある。
なるほど。槍の長さを利用して脱出したのか。
滑るのを警戒して槍を回収せずに、それでタックルか。
今後はそういう対策も考えないとな。
竪穴の底でマドハトが使った『大笑いのぬかるみ』は、けっこう長いこと盗賊団の奴をつるつるさせていたから、大丈夫だと勝手に判断して油断していたのか俺は。
情けない。
紳士には程遠いじゃないか――ここからは油断せずに戻ろう。
と、そのタイミングでベイグルさんが『燃える夢』とかいう魔法をかけてくれた枯れ枝が光を失い、手の中で崩れて消えた。
辺りは再び夜の森の闇に包まれた。
だいたいの方向は覚えているけれど――『魔力感知』を『魔力探知機』へと切り替えて、探知範囲を広げる。
円から細長い線へ。
その遠くまで伸ばした線を、確かこっちの方って方向へ向けてワイパーみたいに振って、ルブルムたちを探す――細くていい。距離を長く――もっと長く――お。
この寿命の渦は、ルブルムやケティ、子どもたちかな?
方向は把握したから今度はまた『魔力感知』の詳細モードへと戻して――ん?
この感覚、初めてじゃない。
ここからそう遠くない場所に、不自然な感覚――「何もない反応を返す違和感」ってやつ。
何か、誰か、隠れているのだろうか。
そんなことを考えていたこと自体、思考が空回りしていたようなもんだったんだな。
トン。
軽い、小さな衝撃を首元に覚えて、俺は結果的に油断していたのだと理解した。
触れてみると何かが刺さっている。
『脳内モルヒネ』のせいか、痛みは全くない。
痛みに鈍感になるという弊害もあるんだな。
すぐに抜いたが、思ったよりも早く体の自由がきかなくなった。
ああそうか、毒か――俺はバランスを失い、地面に突っ伏した。
それから体感でどれほどが経過しただろうか。
俺はなぜか少女をお姫様抱っこして森の中を小走りで移動していた。
今の俺の視界は、さっきまでと違う世界が映っていて、それが真っ暗な森の中でのこの移動速度を実現させていた。
『熱の瞳』
その魔法は色なしのサーモグラフィみたいな感じに熱を見られるようになる効果があった。
ただ残念なことに俺は行く先を知らない。
俺の体が感じている視覚や聴覚、皮膚を通して得られる重さや温度はちゃんと俺にも感じられている。
でもそれは俺がダイレクトに感じているのではなく、俺の体を使っている誰か――おそらく俺が抱えているこの少女に、精神的に触れることで俺にも間接的に流れ込んでいる、という感じ。
例えば動画があったとき、それを直接再生して観ているんじゃなく、再生しているのをスマホとかで撮影して、その撮影したほうを見ている、みたいな。
俺の体の主導権はいまや完全に少女のものだ。
ただ、俺は紳士として落ち着きを失わずにいた。
リテルはずっとこんな感じなのかな、という気持ちのおかげで。
落ち着いていなきゃいけない理由はもう一つある。
この少女が、俺の中で何かを手探りで探そうとしているのを感じるから。
その度に俺は少女の意識から「俺」を遠ざける――感覚的なことなので、うまく遠ざけられているのかどうかはわからないが。
なぜ遠ざけるかというと、少女の手探りな感じってのが、俺がリテルの記憶にアクセスするときと感覚的に似ているから。
俺の記憶を見ようとしている、そんな気配がして。
幸い、今のところは少女の意識が触れたって感じたとき、俺の意識の方を閉じるイメージを持って――なんとか少女の意識に素通りさせることに成功している、と思う。
また幾つかの木の根を飛び越える。
この『熱の瞳』は本当にすごい。
すごいと言えば、さっきの「何もない」状態を作り出していたのが『魔力感知逃れの衣』という魔法だということもわかった。
仕組みとしては偽装の渦と似ていて、自分の寿命の渦に対して偽装するのではなく、『魔力感知』の波長に触れられたら自動的に「何もない」反応を返す、そんな感じ。
そういう手があったか。
しかもこれなら、偽装の渦をうまくできないマドハトなんかにも使えるな。
少女の意識が俺の中にあって、それでその意識が魔法を使うもんだから、触れた状態で魔法を使う魔導合一のように俺はバッチリ学習できている。
なんというか体を乗っ取られて逆にお得という感じ――ふいに俺は立ち止まった。
進行方向、遠くに小さくほんのりと明るいものが見える。
その形はおそらく俺がさっきまでいた小屋――ルブルムとケティ、スノドロッフの子どもたちが居る小屋だろう。
メリアンは小屋の向こう側だろうか。
それともこの距離だと熱源としては混ざっちゃってわかりにくいのかもな。
暖炉には火も入れていたもんな。
続けて少女が『魔力感知』を使った――のを、俺も感じることができている。
これも、俺の中に入り込んで来ている少女にアクセスする感じで。
ちょっとホッとしたのは、少女の『魔力感知』が俺よりも範囲が狭く、感度も粗いこと。
だからまだあの小屋の中は感知できていない。
ん? なんだ?
俺は突然、片膝をついた。
お辞儀?
誰に?
まさか見えない別の誰かが近くに潜んでいるのか?
また油断しかけていた自分を強く戒める。
というかどんだけ失敗を繰り返すんだ、俺は。
マンガで舐めプする連中を「おいおい、そりゃねぇだろ」なんて思っていたけどさ、俺、そのダメな奴まんまじゃないか。
俺の体が少女を優しく大木の陰に下ろし、杞憂で済んだことに感謝する。
でもさ。問題はその後だった。
俺は少女の太ももをまさぐり始めた。
いや、俺の意思じゃなく、少女の支配下でだよ?
しかもズボン、というかこの世界だと下着兼ねているんだよな――それを脚の付け根近くまでまくりあげてるし。
ちょっと待て、俺じゃない。落ち着け、俺。
紳士たれ、俺――もう油断はしない。
こういうときこそ理由とこの後の展開を幾つも考察しつつ、周囲への警戒も維持しつつ。
俺の手は、少女の露わになった左太ももに巻きつけられた革ベルトを二本、解く。
革製の細長いケースが少女の太ももから外れた。
しかしそのケースにはまだもう一本、革紐が付いている。
俺の手は今度は少女の腰紐に手をかける。
そこに結びつけられた革紐を解くと、少女のズボンの中から革ケースを完全に取り出した。
その外したケースを俺の太ももに取り付けようとして、俺の手が止まる。
俺の左太ももが少女のそれに比べて太過ぎて、革ベルトの長さが足りないのだ。
少女は少し考えてから、革ケースを俺の左の脛当てにくくりつけた。
取り付けた後で、中身を取り出して戻す確認を何度かしてくれる。
そのおかげで、革ケースの中身が吹き矢だということが分かった。
残りの吹き矢はあと四本。
さっき俺に刺さったのはこれだったんだな。
次に俺の手は、俺のウエストサイズを指で測りだす。
そのまま少女が腰に巻いている鞘付きベルトを同様に測り、俺は溜息をつく――すごいな、溜息まで操れるのか。
俺の手は少女の腰ベルトにつながっている小剣の鞘を取り外す。
その鞘は二重構造になっていて、小剣以外に吹き筒も収められている。
その鞘を、俺の手斧の鞘が付いている革ベルトへと取り付けた。
俺の手はさらに少女の革鎧へ伸びる。
革鎧と少女の胸との隙間に手を突っ込む――革は動きやすさ重視なのか柔らか仕上げだが、鎧の大きさに対して少女の胸が大き過ぎるせいでかなり窮屈だ。
お、俺じゃないですよ。
この少女が自分で触っているんですよ――なるほど。革鎧の内側に隠しポケットを作ってあるのか。
そこから小さな指輪を取り出し、俺の右の小指になんとかはめる。
この指輪、小さくて鋭い突起がついている。
その突起を内側にして――これって暗器ってやつ? 握手すると相手に刺さるやつ?
俺は続けて少女の右太ももをまさぐり始める――見た目は本当にただの痴漢だな。
右太ももにもまた別の革ケースが装備されていて、今度は取り外さずにケースを開き、中から金属の筒を取り出した。
これ、ウェスさんからもらった毒の容れ物に似ている。
コルクっぽい栓を外して毒容器を水平近くにまで傾けると、その入口へ指輪の突起部分を浸す。
その後は慎重に毒容器に栓をして、少女の右太ももの革ケースへと戻した。
この流れ、あの小屋に襲撃かけるつもりと見て間違いないよな?
行かせちゃいけない――全身に力を入れる。
俺の動きがわずかに止まる――やっぱり。
そろそろ毒も抜けてくれたか。
あのとき、地面に突っ伏すとき、俺は矢を抜くと同時に自身に対して『カウダの毒消し』を使ったのだ。
もちろん偽装消費命で消費命の集中がバレないようにして。
『カウダの毒消し』は回復までに時間がかかる。
でも、ようやくだ。
少女の意識が急に慌て始めたのを感じる。
急に俺の右手が手のひらを広げ、俺の顔をつかもうと向かってきた。
指輪の毒針で麻痺毒をもう一度注入しようって魂胆か?
俺は必死に左手で右手首をつかんだものの、今度は左手を動かされそうになる。
くっそ。何か手はないか?
右手の手のひらを少女の側へと向け、体全体で少女に向かって倒れ込もうとする。
すると少女の意識は俺の身をよじれさせた。
お互い必死だった。
だから当然、わざとではない。
俺の顔面と少女の顔面とがぶつかったのは。
それも歯と歯とが。
● 主な登場者
・有主利照/リテル
猿種、十五歳。リテルの体と記憶、利照の自意識と記憶とを持つ。魔術師見習い。
ラビツ一行を追いかけている。ゴブリン用呪詛と『虫の牙』の呪詛と二つの呪詛に感染。少女に体を乗っ取られている。
・ケティ
リテルの幼馴染の女子。猿種、十六歳。黒い瞳に黒髪、肌は日焼けで薄い褐色の美人。胸も大きい。
リテルとは両想い。フォーリーから合流したが、死にかけたり盗賊団による麻痺毒を注入されたり。
・テニール兄貴
ストウ村の門番。犬種の男性。リテルにとって素手や武器での近接戦闘を教えてくれた兄貴分。
フォーリーで領兵をしたのち、傭兵を経て、嫁を連れて故郷へ戻ってきた。リテルにナイフを隠せる脛当てを貸した。
・ドッヂ
リテルの弟。猿種の先祖返り。リスザル頭。元気な子。
・ラビツ
久々に南の山を越えてストウ村を訪れた傭兵四人組の一人。ケティの唇を奪った。
フォーリーではやはり娼館街を訪れていたっぽい。
・マドハト
ゴブリン魔法『取り替え子』の被害者。ゴド村の住人で、今は犬種の体を取り戻している。
元の世界で飼っていたコーギーのハッタに似ている。変な歌とゴブリン語とゴブリン魔法を知っている。
・ルブルム
魔女様の弟子である赤髪の少女。整った顔立ちのクールビューティー。華奢な猿種。
槍を使った戦闘も得意で、知的好奇心も旺盛。ウォルラースの魔法品により深い眠りに落ちている。
・アルブム
魔女様の弟子である白髪に銀の瞳の少女。鼠種の兎亜種。
外見はリテルよりも二、三歳若い。知的好奇心が旺盛。
・カエルレウム
寄らずの森の魔女様。深い青のストレートロングの髪が膝くらいまである猿種。
ルブルムとアルブムをホムンクルスとして生み出し、リテルの魔法の師匠となった。『解呪の呪詛』を作成中。
・ディナ
カエルレウムの弟子。ルブルムの先輩にあたる。重度で極度の男嫌い。壮絶な過去がある。
アールヴを母に持ち、猿種を父に持つ。精霊と契約している。トシテルをようやく信用してくれた。
・ウェス
ディナに仕えており、御者の他、幅広く仕事をこなす。肌は浅黒く、ショートカットのお姉さん。蝙蝠種。
魔法を使えないときのためにと麻痺毒の入った金属製の筒をくれた。
・『虫の牙』所持者
キカイー白爵の館に居た警備兵と思われる人物。
『虫の牙』と呼ばれる呪詛の傷を与える異世界の魔法の武器を所持し、ディナに呪詛の傷を付けた。
・メリアン
ディナ先輩が手配した護衛。リテルたちを鍛える依頼も同時に受けている。
ものすごい筋肉と角と副乳とを持つ牛種の半返りの女傭兵。
・エルーシ
ディナが管理する娼婦街の元締め、ロズの弟である羊種。娼館で働くのが嫌で飛び出した。
仲間の猿種と鼠種と共に盗賊団に入団しようとした。現在逃走中と思われる。
・バータフラ
広場の襲撃者である二人の爬虫種の片方。ロービンの居る竪穴の底まで馬に乗って逃走。
洞窟内へと逃げたがロービンに倒された。「スノドロッフの子どもたちを保護した」と言っていたらしいが盗賊団の入れ墨があった。
・ロービン
マッチョ爽やかイケメンなホブゴブリン。メリアンと同じくらい強い。正義の心にあふれている。
マドハトと意気投合し、仲良くなれた様子。
・スノドロッフ村の子どもたち
魔石の産地であるスノドロッフからさらわれてきた子どもたち。カウダの毒による麻痺からは回復。
猫種の先祖返りでアルバス。ミトとモペトの女子が二人、男子がトーム。
・ベイグル
スノドロッフ村の若き村長。槍を武器に持つ。魔法も色々と得意。
・トリエグル
スノドロッフ村の弓の名手。
・タービタ
スノドロッフ村の女性。数日前に行方不明になった後、全裸で槍だけを装備して突然姿を現した。
・ウォルラース
キカイーの死によって封鎖されたスリナの街から、ディナと商人とを脱出させたなんでも屋。金のためならば平気で人を殺す。
キカイーがディナたちに興味を示すよう唆した張本人。盗賊団の一味のようだが、逃走。
・ロッキン
名無し森砦の守備隊第二隊副隊長であり勲爵。フライ濁爵の三男。
ダイクが率いていた守備隊の中で、唯一、盗賊団ではなかった。脚の怪我はリテルが回復してあげた。
・ダイク
名無し森砦の守備隊第二隊隊長であり勲爵であると自称。筋肉質で猿種にしては体が大きい。
ウォルラースとつるむ盗賊団のようである。ロービンに左腕を切り落とされ、何かを呑見込んで人を辞めたっぽい。死亡。
・プラプディン
名無し森砦の守備隊にして盗賊団。小太りの両生種。頭に赤い花が咲いて死亡。
・スナドラ
名無し森砦の守備隊にして盗賊団。鼠種。頭に赤い花が咲いて死亡。
・ホリーリヴ
名無し森砦の守備隊にして盗賊団。鳥種。魔法を使うが、そこまで得意ではなさげ。暴走したダイクに殺された。
・ブラデレズン
名無し森砦の守備隊にして盗賊団。馬種。ルブルムやケティを見て鼻の下を伸ばしていた。
ウォルラースの魔法品でうずくまっていた女性陣を襲おうとしてメリアンに返り討ちにされた。
・魔法を使う少女
爬虫種。胸が大きい。盗賊団の毒を用いた吹き矢でリテルを襲い、その後、リテルの体のコントロールを奪った。
■ はみ出しコラム【魔物デザイン その一の一】
今回のはみ出しコラムでは、#47 の【魔物まとめ その一】について、別の角度から書いてみようと思う。
【魔物まとめ その一】においては、主に「● 主な登場者」の記載内容に補足をつけた内容をご紹介したが、その内容はあくまでもホルトゥスにおける魔物像である。
今回はそれらの魔物について、地球での話を中心に内情まで踏み込んで書こうと思う。
・ホルトゥスにおけるカリカンジャロス
顔はゴブリンに似ているが、角も尻尾もある毛むくじゃらで獣種よりも大きな魔物。ゴブリンの亜種。
ゴブリン同様悪戯好きだが、三以上数えられないため三つ以上の小石を数えさせれば足止めできる。陽の光も嫌い。
・地球におけるカリカンジャロス
カリカンジャロスは、キリスト教圏において、クリスマスから公現祭の間の時期に現れると信じられているゴブリンに似たギリシャ起源の民話上の生き物。
地の精であり、大地を支えている巨大な木を鋸で切ろうと試みるが、1月6日の公現祭と共にいなくなり失敗する。木は、その後すぐに蘇生して毎年繰り返される。また、クリスマスから公現祭の間の時期には地表に出てくるので、民家などでいたずらや悪さをして回る。
民間の伝承によれば、キリスト教においての神聖な数字の「3」を言う事ができないので、民家などで悪さをする事を封じるにはなんらかの数をカウントさせる行為を仕向けると防ぐ事ができると言われている。例えば、地面に木の実などをばら撒いてその数をカウントさせると、キリスト教においての神聖な数字の「3」を言う事ができないので、永遠に「1,2,1,2,・・・」と繰り返している内に1月6日の公現祭がきてお払いをされてしまうので、再び地下の世界に戻らなくてはいけなくなる。
ギリシャ以外の国でも、同種の似たような地の精の名前が知られており、本来の語源はどこなのかはよく解っていない。
(Wikipedia より)
このページには、カラコンジュルについても述べられている。
ブルガリアではカラコンジュルと呼ばれる。
外見は様々に伝えられ、一例では人間に似ているが体毛に覆われ、尾を持ち、大きな頭に角がついているとされる。あるいは一つ目で一つ足だとされることもある。あるいは馬頭の人のようであるともされる。また、犬や子牛の姿に変身することもある。洞窟や川、廃屋とした化した水車小屋などに住むといわれ、夜行性であるという。
(同じく Wikipedia より)
・デザイン
まず最初にこの魔物に着目したのは、「ゴブリンに似ている」という点と、「3を言うことができない」という点。
前者の特徴は、物語の進行上ゴブリンの呪詛を人間へ伝染させるための舞台装置として、ラビツたちにゴブリン集落を襲わせる理由付けとしてとても役立った。
そして後者は、ホルトゥスにおけるゴブリンの立ち位置を考えると、なんとも愛らしい性質ということで採用の後押しとなった。
カリカンジャロス自体の姿の描写はあまりなかったため、容姿についてはブルガリアのカラコンジュルの特徴を一部採用させていただいた。
また、ホルトゥスにはキリスト教が存在しない(宗教自体が存在しない世界観)ため、「3を言うことができない」から「3以上数えられない」という変更も行った。
あまり賢くなく、実際には脅威ではないのだが、ホルトゥスの人々を不安にさせ、いわれなき罪を被せられてもらうためにも、その体長を、一般的な獣種よりも大きくなるよう調整した。角を採用したのも脅威的になってもらうためである。
タービタという人はスノドロッフ村の人。
数日前に失踪し、恐らく三人の子どもたち誘拐に関わっている。
ベイグルさんはスノドロッフ村の若き村長で、子どもたちを取り戻しに来た。
そしてタービタの出現に驚いていた。
ここまでが事実。
ここからは考察。
問題はタービタが、ダイクのようにスノドロッフを裏切っているのか、それとも何らかの魔法で操られているのか、というとこだよな。
するとベストな勝利条件は、タービタの無力化だろうか。
さっきの盗賊団の持ち物から麻痺毒を塗ったであろう武器の一つでも拝借してこれれば良かったけど――昏睡しちゃっているルブルムが安全に眠れる場所を紹介されて、さらわれた子どもたちと一緒に行動するってのに、そんな武器を持っていきたいとはとてもじゃないけど言えなかったもんな。
麻痺とか睡眠とか、相手を状態異常にする魔法はちょっと考えてみたけれど、魔法で効果を発生させようとすると、どうしても魔法抵抗が障害になる。
ウォルラースの使った魔法品「眠り石」だって、戦闘中は効果をまず発揮しないとメリアンも言っていたし。
となると実際に効果が高いのは毒なんだろうけど、リテルに近接戦闘を教えてくれたテニール兄貴は「自分の体以外の武器を使うときは、相手に奪われることをちゃんと考えた上で持て」って言ってたからなぁ。
そうそう。
他にも「人数の多さというのはときとして有利ではなく不利に働く」というのもあった。
例えば一対一で戦っているところに加勢する場合、互いの実力がわからないうちに参戦すると、かえって邪魔してしまうことがあると。
リテルが「よくわからない」と答えたとき、テニール兄貴は「想像してみて」と言った。「リテルと俺とで模擬戦をしているときにドッヂがリテルの味方として参戦してきたら」と。
どう動くか予測できない味方や、攻撃を自分自身の力だけでさばけない者は足手まといになると。
いま、向こうの二つの寿命の渦の動きを見ると交戦中のようだ。
俺はどのように加勢したら良いのだろうか。
ベイグルさんもタービタも槍を持っていた。
弓と矢筒は置いてきてしまった俺の武器は手斧と短剣。武器の長さが圧倒的に違う。
かといって魔法を使うにしても、射程の問題はつきまとう。
マドハトから教えてもらった『大笑いのぬかるみ』だと、ベイグルさんを巻き込んでしまう恐れもある。
メリアンやルブルムとなら、ある程度は互いの動きを察知できそうなものだけど、ベイグルさんとは手合わせすらしたことがないからなぁ。
とか様子を見ているうちに、ベイグルさんの寿命の渦が消えた!
慌てて『魔力微感知』を『魔力感知』へと切り替える。
「死」という単語が脳裏を過り、それだけで体が強張った。
武器を持った相手と戦うということは、そういうこともありえるというのは、テニール兄貴からもディナ先輩からも特に何度も念押しされたこと。
身を低くして、洞窟の中で曲がり角の先を『魔力感知』で探ったときの感覚を思い出す――いた!
ベイグルさんは、地下にいた。
落とし穴に落ちたのだろうか。
ベイグルさんの寿命の渦からは特に大きな負傷は感じない。
ということは、タービタはこのへんに落とし穴をあらかじめ準備した上で、誘い込んできたってわけか。
『魔力感知』では多分、落とし穴を見破るのは難しいだろうな。生きていないし、隠されてもいるだろうし。
掘った穴の上に土や草木を戻されでもしたら――いや、思考を停止するな。
地面から生えている草と、落とし穴の上に戻された草とではきっと寿命の渦の輝きが違うだろう。
それを注意深く――こっちに向かってくる?
偽装の渦で寿命の渦は隠せているはず――となると、向こうはこの暗闇でも俺を視認できているってことか?
そういや蝙蝠の半返りのウェスさんは、耳がとても良かった。
もしかして猫種の先祖返りだと夜目が効くのかな。
よし。試しに――俺は適当な小石を拾い、左手で弓を構える体勢を作る。
まずは『脳内モルヒネ』をかけてから。
ロービンに習った『見えざる弓』を、偽装消費命で、消費命の集中がバレないように発動――しなかった。
魔法発動の前提条件である明るさが足りなくてダメなのか、魔法代償の要求がそもそも発生しなかった。
暗すぎるのだとしたら、じゃあ灯りを作るか?
どうせ向こうから把握されているんだし。
とはいっても『発火』は一瞬だし、威力を弱めて発動時間を長くした『弱火』だとそこまで明るくないし。
そもそも火ではなく灯り自体を魔法で作ろうとすると、明確なイメージが自分の中に作れないことに気付く。
LEDは仕組みがよくわからないし、電球は電気がフィラメントを通る際に抵抗して光を出して――それがわかっていてもフィラメントの構造をイメージできないし。
そんな試行錯誤中にもタービタは距離をぐんぐん詰めてくる。
俺は覚悟を決めて手斧を鞘から取り出し、構える。
そして接敵するギリギリまで、付近に落とし穴らしき場所はないかと確認し続ける。
ああもう近いな。
三アブスくらいか。
リテルが狩人として鍛錬してくれていたおかげで、目視だけでだいたいの距離がわかる――今だ――俺は『大笑いのぬかるみ』を発動した。
タービタは派手にすっ転び、湿度を含んだ大きな音が辺りに響く。
よし。これでしばらくは大丈夫だろう。
俺はタービタが通ってきたルートを辿り、ベイグルさんの所へと急ぐ。
「ベイグルさん、ご無事ですか?」
落とし穴のようだが、暗くて中は見えない。
「私は無事です。タービタは」
ベイグルさんの声。
「今、つるつる滑ってます」
「近くに枯れ枝はありますか?」
『魔力感知』で見える、宇宙の星々のような草や虫の無数の寿命の渦の上に、寿命の渦のない枝の形を見つけて一本、手に取った。
「はい。手に取りました」
「その先端をゆっくりと穴の中へ入れていただけますか? 私の声の方へ」
「はい」
ゆっくりと、枯れ枝の先を穴の中へ差し込んでゆく。
声の方へ。ベイグルさんご自身を突付いてしまわないよう、気をつけながら。
「そこで止めてください……灯りの魔法を使います」
「はい」
「『燃える夢』」
消費命の集中を感じた直後、枯れ枝の先が燃えているみたいに明るくなった。
そしてベイグルさんと穴の全容とが見える。
けっこうな大きさと深さの穴。メリアンがまるごとすっぽり入りそうなほど。
道具は何を使ったのかわからないけれど、これ掘るの大変だったろうな。
さらに底には無数の枝を尖らせて地面に突き立ててある。
ベイグルさんはその枝と穴の壁とのわずかな隙間にほっそりと挟まっていて、串刺しは免れていた。さす猫。
「では、少し下がっていただきたい」
ベイグルさんは槍を両手で持ち、その槍の先端を穴から斜めに突き出した。
消費命を集中しながらジャンプしたと同時に消費する。
何かの魔法を発動したのだろう――そこからのことはしっかり見ていたはずなのに、なんだかまだうまく理解できないでいる。
槍が空中にピタッと止まり、ベイグルさんは、その槍を手がかり、足がかりにして穴の外へスルッと出てきたのだ。
その間、槍はまるでその場所に固定された鉄棒であるかのように、たわみもしなりもせず動きを止めていた。
槍が突然落ちたのは、ベイグルさんが出てきてから少し経ってからだった。
もちろんその槍の端をベイグルさんがつかんでいたから、槍は落とし穴には落ちずに回収できていたけれど。
「す、すごい魔法ですね!」
槍を空中に固定する魔法なのかな。
でも固定ってどうしてるんだろう。重力を遮断するとか?
いやでも違うよな。よじ登ってたもんな。力を加えても動かなかったから固定っちゃ固定なのか?
だとしたらどんな原理で?
この世界に来てから色んな魔法を見たけれど、原理が全くわからない、魔法らしい魔法を目の当たりにしてちょっとテンションが上ってしまった。
「リテル殿!」
ベイグルさんの声で、自分が油断していたことに気付く。
タービタがいつの間にかぬかるみの外に出ていて、俺に向かってタックルしてきたのだ。
俺はとっさに地面に触れて――その途端、タービタが急に向きを変える。
小屋とは反対側、森の奥の方へ。
「リテル殿はお戻りください!」
ベイグルさんがタービタを追って走り出す。
「わかりました!」
そうだな。こちらは陽動かもしれないし、俺は言われた通り戻ることにする。
さっきのぬかるみを見に行くと、ぬかるみの端に槍が刺さっていて、そこから反対方向へ滑った跡がある。
なるほど。槍の長さを利用して脱出したのか。
滑るのを警戒して槍を回収せずに、それでタックルか。
今後はそういう対策も考えないとな。
竪穴の底でマドハトが使った『大笑いのぬかるみ』は、けっこう長いこと盗賊団の奴をつるつるさせていたから、大丈夫だと勝手に判断して油断していたのか俺は。
情けない。
紳士には程遠いじゃないか――ここからは油断せずに戻ろう。
と、そのタイミングでベイグルさんが『燃える夢』とかいう魔法をかけてくれた枯れ枝が光を失い、手の中で崩れて消えた。
辺りは再び夜の森の闇に包まれた。
だいたいの方向は覚えているけれど――『魔力感知』を『魔力探知機』へと切り替えて、探知範囲を広げる。
円から細長い線へ。
その遠くまで伸ばした線を、確かこっちの方って方向へ向けてワイパーみたいに振って、ルブルムたちを探す――細くていい。距離を長く――もっと長く――お。
この寿命の渦は、ルブルムやケティ、子どもたちかな?
方向は把握したから今度はまた『魔力感知』の詳細モードへと戻して――ん?
この感覚、初めてじゃない。
ここからそう遠くない場所に、不自然な感覚――「何もない反応を返す違和感」ってやつ。
何か、誰か、隠れているのだろうか。
そんなことを考えていたこと自体、思考が空回りしていたようなもんだったんだな。
トン。
軽い、小さな衝撃を首元に覚えて、俺は結果的に油断していたのだと理解した。
触れてみると何かが刺さっている。
『脳内モルヒネ』のせいか、痛みは全くない。
痛みに鈍感になるという弊害もあるんだな。
すぐに抜いたが、思ったよりも早く体の自由がきかなくなった。
ああそうか、毒か――俺はバランスを失い、地面に突っ伏した。
それから体感でどれほどが経過しただろうか。
俺はなぜか少女をお姫様抱っこして森の中を小走りで移動していた。
今の俺の視界は、さっきまでと違う世界が映っていて、それが真っ暗な森の中でのこの移動速度を実現させていた。
『熱の瞳』
その魔法は色なしのサーモグラフィみたいな感じに熱を見られるようになる効果があった。
ただ残念なことに俺は行く先を知らない。
俺の体が感じている視覚や聴覚、皮膚を通して得られる重さや温度はちゃんと俺にも感じられている。
でもそれは俺がダイレクトに感じているのではなく、俺の体を使っている誰か――おそらく俺が抱えているこの少女に、精神的に触れることで俺にも間接的に流れ込んでいる、という感じ。
例えば動画があったとき、それを直接再生して観ているんじゃなく、再生しているのをスマホとかで撮影して、その撮影したほうを見ている、みたいな。
俺の体の主導権はいまや完全に少女のものだ。
ただ、俺は紳士として落ち着きを失わずにいた。
リテルはずっとこんな感じなのかな、という気持ちのおかげで。
落ち着いていなきゃいけない理由はもう一つある。
この少女が、俺の中で何かを手探りで探そうとしているのを感じるから。
その度に俺は少女の意識から「俺」を遠ざける――感覚的なことなので、うまく遠ざけられているのかどうかはわからないが。
なぜ遠ざけるかというと、少女の手探りな感じってのが、俺がリテルの記憶にアクセスするときと感覚的に似ているから。
俺の記憶を見ようとしている、そんな気配がして。
幸い、今のところは少女の意識が触れたって感じたとき、俺の意識の方を閉じるイメージを持って――なんとか少女の意識に素通りさせることに成功している、と思う。
また幾つかの木の根を飛び越える。
この『熱の瞳』は本当にすごい。
すごいと言えば、さっきの「何もない」状態を作り出していたのが『魔力感知逃れの衣』という魔法だということもわかった。
仕組みとしては偽装の渦と似ていて、自分の寿命の渦に対して偽装するのではなく、『魔力感知』の波長に触れられたら自動的に「何もない」反応を返す、そんな感じ。
そういう手があったか。
しかもこれなら、偽装の渦をうまくできないマドハトなんかにも使えるな。
少女の意識が俺の中にあって、それでその意識が魔法を使うもんだから、触れた状態で魔法を使う魔導合一のように俺はバッチリ学習できている。
なんというか体を乗っ取られて逆にお得という感じ――ふいに俺は立ち止まった。
進行方向、遠くに小さくほんのりと明るいものが見える。
その形はおそらく俺がさっきまでいた小屋――ルブルムとケティ、スノドロッフの子どもたちが居る小屋だろう。
メリアンは小屋の向こう側だろうか。
それともこの距離だと熱源としては混ざっちゃってわかりにくいのかもな。
暖炉には火も入れていたもんな。
続けて少女が『魔力感知』を使った――のを、俺も感じることができている。
これも、俺の中に入り込んで来ている少女にアクセスする感じで。
ちょっとホッとしたのは、少女の『魔力感知』が俺よりも範囲が狭く、感度も粗いこと。
だからまだあの小屋の中は感知できていない。
ん? なんだ?
俺は突然、片膝をついた。
お辞儀?
誰に?
まさか見えない別の誰かが近くに潜んでいるのか?
また油断しかけていた自分を強く戒める。
というかどんだけ失敗を繰り返すんだ、俺は。
マンガで舐めプする連中を「おいおい、そりゃねぇだろ」なんて思っていたけどさ、俺、そのダメな奴まんまじゃないか。
俺の体が少女を優しく大木の陰に下ろし、杞憂で済んだことに感謝する。
でもさ。問題はその後だった。
俺は少女の太ももをまさぐり始めた。
いや、俺の意思じゃなく、少女の支配下でだよ?
しかもズボン、というかこの世界だと下着兼ねているんだよな――それを脚の付け根近くまでまくりあげてるし。
ちょっと待て、俺じゃない。落ち着け、俺。
紳士たれ、俺――もう油断はしない。
こういうときこそ理由とこの後の展開を幾つも考察しつつ、周囲への警戒も維持しつつ。
俺の手は、少女の露わになった左太ももに巻きつけられた革ベルトを二本、解く。
革製の細長いケースが少女の太ももから外れた。
しかしそのケースにはまだもう一本、革紐が付いている。
俺の手は今度は少女の腰紐に手をかける。
そこに結びつけられた革紐を解くと、少女のズボンの中から革ケースを完全に取り出した。
その外したケースを俺の太ももに取り付けようとして、俺の手が止まる。
俺の左太ももが少女のそれに比べて太過ぎて、革ベルトの長さが足りないのだ。
少女は少し考えてから、革ケースを俺の左の脛当てにくくりつけた。
取り付けた後で、中身を取り出して戻す確認を何度かしてくれる。
そのおかげで、革ケースの中身が吹き矢だということが分かった。
残りの吹き矢はあと四本。
さっき俺に刺さったのはこれだったんだな。
次に俺の手は、俺のウエストサイズを指で測りだす。
そのまま少女が腰に巻いている鞘付きベルトを同様に測り、俺は溜息をつく――すごいな、溜息まで操れるのか。
俺の手は少女の腰ベルトにつながっている小剣の鞘を取り外す。
その鞘は二重構造になっていて、小剣以外に吹き筒も収められている。
その鞘を、俺の手斧の鞘が付いている革ベルトへと取り付けた。
俺の手はさらに少女の革鎧へ伸びる。
革鎧と少女の胸との隙間に手を突っ込む――革は動きやすさ重視なのか柔らか仕上げだが、鎧の大きさに対して少女の胸が大き過ぎるせいでかなり窮屈だ。
お、俺じゃないですよ。
この少女が自分で触っているんですよ――なるほど。革鎧の内側に隠しポケットを作ってあるのか。
そこから小さな指輪を取り出し、俺の右の小指になんとかはめる。
この指輪、小さくて鋭い突起がついている。
その突起を内側にして――これって暗器ってやつ? 握手すると相手に刺さるやつ?
俺は続けて少女の右太ももをまさぐり始める――見た目は本当にただの痴漢だな。
右太ももにもまた別の革ケースが装備されていて、今度は取り外さずにケースを開き、中から金属の筒を取り出した。
これ、ウェスさんからもらった毒の容れ物に似ている。
コルクっぽい栓を外して毒容器を水平近くにまで傾けると、その入口へ指輪の突起部分を浸す。
その後は慎重に毒容器に栓をして、少女の右太ももの革ケースへと戻した。
この流れ、あの小屋に襲撃かけるつもりと見て間違いないよな?
行かせちゃいけない――全身に力を入れる。
俺の動きがわずかに止まる――やっぱり。
そろそろ毒も抜けてくれたか。
あのとき、地面に突っ伏すとき、俺は矢を抜くと同時に自身に対して『カウダの毒消し』を使ったのだ。
もちろん偽装消費命で消費命の集中がバレないようにして。
『カウダの毒消し』は回復までに時間がかかる。
でも、ようやくだ。
少女の意識が急に慌て始めたのを感じる。
急に俺の右手が手のひらを広げ、俺の顔をつかもうと向かってきた。
指輪の毒針で麻痺毒をもう一度注入しようって魂胆か?
俺は必死に左手で右手首をつかんだものの、今度は左手を動かされそうになる。
くっそ。何か手はないか?
右手の手のひらを少女の側へと向け、体全体で少女に向かって倒れ込もうとする。
すると少女の意識は俺の身をよじれさせた。
お互い必死だった。
だから当然、わざとではない。
俺の顔面と少女の顔面とがぶつかったのは。
それも歯と歯とが。
● 主な登場者
・有主利照/リテル
猿種、十五歳。リテルの体と記憶、利照の自意識と記憶とを持つ。魔術師見習い。
ラビツ一行を追いかけている。ゴブリン用呪詛と『虫の牙』の呪詛と二つの呪詛に感染。少女に体を乗っ取られている。
・ケティ
リテルの幼馴染の女子。猿種、十六歳。黒い瞳に黒髪、肌は日焼けで薄い褐色の美人。胸も大きい。
リテルとは両想い。フォーリーから合流したが、死にかけたり盗賊団による麻痺毒を注入されたり。
・テニール兄貴
ストウ村の門番。犬種の男性。リテルにとって素手や武器での近接戦闘を教えてくれた兄貴分。
フォーリーで領兵をしたのち、傭兵を経て、嫁を連れて故郷へ戻ってきた。リテルにナイフを隠せる脛当てを貸した。
・ドッヂ
リテルの弟。猿種の先祖返り。リスザル頭。元気な子。
・ラビツ
久々に南の山を越えてストウ村を訪れた傭兵四人組の一人。ケティの唇を奪った。
フォーリーではやはり娼館街を訪れていたっぽい。
・マドハト
ゴブリン魔法『取り替え子』の被害者。ゴド村の住人で、今は犬種の体を取り戻している。
元の世界で飼っていたコーギーのハッタに似ている。変な歌とゴブリン語とゴブリン魔法を知っている。
・ルブルム
魔女様の弟子である赤髪の少女。整った顔立ちのクールビューティー。華奢な猿種。
槍を使った戦闘も得意で、知的好奇心も旺盛。ウォルラースの魔法品により深い眠りに落ちている。
・アルブム
魔女様の弟子である白髪に銀の瞳の少女。鼠種の兎亜種。
外見はリテルよりも二、三歳若い。知的好奇心が旺盛。
・カエルレウム
寄らずの森の魔女様。深い青のストレートロングの髪が膝くらいまである猿種。
ルブルムとアルブムをホムンクルスとして生み出し、リテルの魔法の師匠となった。『解呪の呪詛』を作成中。
・ディナ
カエルレウムの弟子。ルブルムの先輩にあたる。重度で極度の男嫌い。壮絶な過去がある。
アールヴを母に持ち、猿種を父に持つ。精霊と契約している。トシテルをようやく信用してくれた。
・ウェス
ディナに仕えており、御者の他、幅広く仕事をこなす。肌は浅黒く、ショートカットのお姉さん。蝙蝠種。
魔法を使えないときのためにと麻痺毒の入った金属製の筒をくれた。
・『虫の牙』所持者
キカイー白爵の館に居た警備兵と思われる人物。
『虫の牙』と呼ばれる呪詛の傷を与える異世界の魔法の武器を所持し、ディナに呪詛の傷を付けた。
・メリアン
ディナ先輩が手配した護衛。リテルたちを鍛える依頼も同時に受けている。
ものすごい筋肉と角と副乳とを持つ牛種の半返りの女傭兵。
・エルーシ
ディナが管理する娼婦街の元締め、ロズの弟である羊種。娼館で働くのが嫌で飛び出した。
仲間の猿種と鼠種と共に盗賊団に入団しようとした。現在逃走中と思われる。
・バータフラ
広場の襲撃者である二人の爬虫種の片方。ロービンの居る竪穴の底まで馬に乗って逃走。
洞窟内へと逃げたがロービンに倒された。「スノドロッフの子どもたちを保護した」と言っていたらしいが盗賊団の入れ墨があった。
・ロービン
マッチョ爽やかイケメンなホブゴブリン。メリアンと同じくらい強い。正義の心にあふれている。
マドハトと意気投合し、仲良くなれた様子。
・スノドロッフ村の子どもたち
魔石の産地であるスノドロッフからさらわれてきた子どもたち。カウダの毒による麻痺からは回復。
猫種の先祖返りでアルバス。ミトとモペトの女子が二人、男子がトーム。
・ベイグル
スノドロッフ村の若き村長。槍を武器に持つ。魔法も色々と得意。
・トリエグル
スノドロッフ村の弓の名手。
・タービタ
スノドロッフ村の女性。数日前に行方不明になった後、全裸で槍だけを装備して突然姿を現した。
・ウォルラース
キカイーの死によって封鎖されたスリナの街から、ディナと商人とを脱出させたなんでも屋。金のためならば平気で人を殺す。
キカイーがディナたちに興味を示すよう唆した張本人。盗賊団の一味のようだが、逃走。
・ロッキン
名無し森砦の守備隊第二隊副隊長であり勲爵。フライ濁爵の三男。
ダイクが率いていた守備隊の中で、唯一、盗賊団ではなかった。脚の怪我はリテルが回復してあげた。
・ダイク
名無し森砦の守備隊第二隊隊長であり勲爵であると自称。筋肉質で猿種にしては体が大きい。
ウォルラースとつるむ盗賊団のようである。ロービンに左腕を切り落とされ、何かを呑見込んで人を辞めたっぽい。死亡。
・プラプディン
名無し森砦の守備隊にして盗賊団。小太りの両生種。頭に赤い花が咲いて死亡。
・スナドラ
名無し森砦の守備隊にして盗賊団。鼠種。頭に赤い花が咲いて死亡。
・ホリーリヴ
名無し森砦の守備隊にして盗賊団。鳥種。魔法を使うが、そこまで得意ではなさげ。暴走したダイクに殺された。
・ブラデレズン
名無し森砦の守備隊にして盗賊団。馬種。ルブルムやケティを見て鼻の下を伸ばしていた。
ウォルラースの魔法品でうずくまっていた女性陣を襲おうとしてメリアンに返り討ちにされた。
・魔法を使う少女
爬虫種。胸が大きい。盗賊団の毒を用いた吹き矢でリテルを襲い、その後、リテルの体のコントロールを奪った。
■ はみ出しコラム【魔物デザイン その一の一】
今回のはみ出しコラムでは、#47 の【魔物まとめ その一】について、別の角度から書いてみようと思う。
【魔物まとめ その一】においては、主に「● 主な登場者」の記載内容に補足をつけた内容をご紹介したが、その内容はあくまでもホルトゥスにおける魔物像である。
今回はそれらの魔物について、地球での話を中心に内情まで踏み込んで書こうと思う。
・ホルトゥスにおけるカリカンジャロス
顔はゴブリンに似ているが、角も尻尾もある毛むくじゃらで獣種よりも大きな魔物。ゴブリンの亜種。
ゴブリン同様悪戯好きだが、三以上数えられないため三つ以上の小石を数えさせれば足止めできる。陽の光も嫌い。
・地球におけるカリカンジャロス
カリカンジャロスは、キリスト教圏において、クリスマスから公現祭の間の時期に現れると信じられているゴブリンに似たギリシャ起源の民話上の生き物。
地の精であり、大地を支えている巨大な木を鋸で切ろうと試みるが、1月6日の公現祭と共にいなくなり失敗する。木は、その後すぐに蘇生して毎年繰り返される。また、クリスマスから公現祭の間の時期には地表に出てくるので、民家などでいたずらや悪さをして回る。
民間の伝承によれば、キリスト教においての神聖な数字の「3」を言う事ができないので、民家などで悪さをする事を封じるにはなんらかの数をカウントさせる行為を仕向けると防ぐ事ができると言われている。例えば、地面に木の実などをばら撒いてその数をカウントさせると、キリスト教においての神聖な数字の「3」を言う事ができないので、永遠に「1,2,1,2,・・・」と繰り返している内に1月6日の公現祭がきてお払いをされてしまうので、再び地下の世界に戻らなくてはいけなくなる。
ギリシャ以外の国でも、同種の似たような地の精の名前が知られており、本来の語源はどこなのかはよく解っていない。
(Wikipedia より)
このページには、カラコンジュルについても述べられている。
ブルガリアではカラコンジュルと呼ばれる。
外見は様々に伝えられ、一例では人間に似ているが体毛に覆われ、尾を持ち、大きな頭に角がついているとされる。あるいは一つ目で一つ足だとされることもある。あるいは馬頭の人のようであるともされる。また、犬や子牛の姿に変身することもある。洞窟や川、廃屋とした化した水車小屋などに住むといわれ、夜行性であるという。
(同じく Wikipedia より)
・デザイン
まず最初にこの魔物に着目したのは、「ゴブリンに似ている」という点と、「3を言うことができない」という点。
前者の特徴は、物語の進行上ゴブリンの呪詛を人間へ伝染させるための舞台装置として、ラビツたちにゴブリン集落を襲わせる理由付けとしてとても役立った。
そして後者は、ホルトゥスにおけるゴブリンの立ち位置を考えると、なんとも愛らしい性質ということで採用の後押しとなった。
カリカンジャロス自体の姿の描写はあまりなかったため、容姿についてはブルガリアのカラコンジュルの特徴を一部採用させていただいた。
また、ホルトゥスにはキリスト教が存在しない(宗教自体が存在しない世界観)ため、「3を言うことができない」から「3以上数えられない」という変更も行った。
あまり賢くなく、実際には脅威ではないのだが、ホルトゥスの人々を不安にさせ、いわれなき罪を被せられてもらうためにも、その体長を、一般的な獣種よりも大きくなるよう調整した。角を採用したのも脅威的になってもらうためである。
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