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#18 揺れる馬車、揺るがさぬ決意
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「ケティには黙っててやるよ」
護衛として御者台のすぐ横に座っているテニール兄貴までそんなことを言い出した。
笑い上戸のテイラさんは咽るぐらい笑っててきっと前を見ていない。
「そ、そういうんじゃないですよ!」
「リテル、美しい人という使い方があるのか? 毛ではないのか?」
あーもうルブルム先輩も変な方向に話を進めないでくだ……毛?
「毛?」
「カエルレウム様が美しいという言葉を使ったのは、森に棲む獣の毛並みを褒めるときだけだったから」
カエルレウム師匠のお言葉を思い出す。
服が乾くまでに教えてもらったことの中に魔物情報や新しい魔法のことだけじゃなく、ルブルム先輩のこともあったから。
カエルレウム師匠に教えていただいた「本物のホムンクルス」は、子宮を模した瓶の中からは出られないし、知識を与えれば覚えはするものの、覚えるだけで「単なる記憶の格納庫に過ぎない」らしい。
でもルブルム先輩とアルブムは「思考するホムンクルス」になってほしいと、本来ならば男性の精液のみで作るとろこを、女性の卵核も用いて作ったそうだ。
結果的には「成長もするし、自分の意思を持ちもしたが、魔法で作ったとは言えない。女性の子宮の中で発生する現象を体外で再現したに留まった」とおっしゃっていた。
ルブルム先輩やアルブムが生まれてすぐの頃は魔物への対応と赤ちゃんの世話と両立はどうしてらしたんですかと尋ねたところ、世話に手がかかりそうな幼少時代は「ある程度成長を促進させた」らしく、その辺にはカエルレウム師匠にマッド・サイエンティストみを感じたりもした。
というわけで、本来ならば身体の成長と共に成熟するはずの精神が十分に育っていない可能性があると。
ルブルム先輩については肉体年齢こそリテルと同程度だが、精神年齢は肉体年齢に比べて四、五年幼いという。年齢を十進数換算したら十二歳くらい……小六か中一くらいか? アルブムなんかはもっと若いってことになる。
そんなルブルム先輩のことを俺はカエルレウム師匠から任された。
ルブルム先輩の偏った知識の不足分を補うこと。それからもう一つ、何年か前からルブルム先輩が感情を見せないように振る舞っていることについても探ってほしいと――ルブルム先輩は、昔はちゃんと笑う子だったらしくって。
「ルブルム先輩、美しいという言葉は毛並みだけじゃなく様々なことに対して使います。人や獣の容姿、収穫期の麦穂、春の新緑、紅葉も雪の平原も、木漏れ日、朝日を浴びた山並みや夜の月や星々も虹も、人が作った造形にだって」
ルブルム先輩は目を見開いた。
「ああ、私は思考を止めていたのか」
俺の顔をじっと見つめるこの表情はアレだ。俺の股間に興味を持っていたときと同じ、知的好奇心の表情だ。
おかげで少し落ち着けたと思ったら今度はマドハトが急に尻尾を振り始めた。
「リテルさま! 僕は美人ですかっ?」
この顔、どうしてもハッタに重なり頭を撫でる。
「マドハトは美人とは違うな。元気がいいとか、明るいとかかな」
「僕! 元気がよくて明るいです!」
一瞬動きを止めた尻尾がまた動き出す。
御者台から大きな拍手。
「リテルが魔女様の弟子になれたの、なんだかわかる気がするよ」
穏やかな声でそう言ったテイラさんはもう笑い止んでいた。
「さあ、フォーリーまではまだまだ距離がある。寝藁を多めに積んであるから眠れるときに寝ておくといい」
ストウ村やゴド村を含むクスフォード領の領都フォーリーまでは通常だと馬車で丸一日とちょっと。徒歩だと一日半。これは夜はちゃんと休んでの計算。
ラビツ一行は今朝早くにストウ村を出ているから、寄り道しなければ明日の昼にはフォーリーに着いているはず。
それに対してこちらはテイラさんとテニール兄貴が交代で夜通し馬車を走らせてくれると言っていたので、馬の体調次第ではあるけれどラビツ一行がフォーリーに居るうちに追いつける可能性は低くない。
今夜は満月なのと、夜の間はカエルレウム師匠が狼の王様にお願いしてくださったおかげで何匹かの狼が遠巻きについてきてくれているのとで、夜とは思えない速度で馬車は進んでいる。
時折浮いたかと思えるくらい揺れてはいるが、寝藁がいい感じにクッションになってくれている。
ルブルム先輩もマドハトも寝藁にもう横たわった。
ここはお言葉に甘えて睡眠を取っておいた方が良いだろう……と俺も横になった……のはいいが、今日という長い一日の出来事があまりにも多くあまりにも衝撃的すぎて、処理しきれていない情報が脳裏をぐるぐる回って眠れない。
それに心配事もある。寝ても偽装の渦が崩れないかどうかっていう。
俺たちが狼の王様の背に乗って村へと戻ったとき、テニール兄貴に「ちょっと雰囲気が変わったか?」と尋ねられた。どうやら寿命の渦をうっすらと感じ取れているっぽい。
でも考えてみりゃそうだよな。魔法は誰にだって使えるんだし。
カエルレウム師匠もおっしゃっていたよな。武を極めんとする戦士たちは寿命の渦のことを気配と呼び、熟練の者であれば『魔力感知』のように『気配感知』を行うことができると。魔術師ほど細かく感じ取る訓練を積んでいる者は多くはないだろうが、自分だけが気付けるという慢心は捨てなさいと。
俺の偽装の渦は今のところ回転が心持ち早くなりかけている気はするが、これは「美人です」と思わず口走ってしまった動揺が出たのかもしれない――でもそれでいいのかも。
テニール兄貴もテイラさんも笑っていたときは回転が若干膨らんでいた気がする。寿命の渦は肉体と魂とをつなげる部分だから、肉体の影響も魂の影響も受けるものなのだとしたら、逆に動揺が出ない方が不自然かもだし。
あとは呪詛のことも注意が必要だ。
呪詛の伝染は皮膚同士の場合、十分の一ディヴだけ接触すると発動すると聞かされた。一ディヴだから、元の世界の感覚で二十五秒くらいか。
ただ、呪詛伝染者が生存している場合は、呪詛伝染者の血液や切り落とされた体の一部にも呪詛が残るから、例えば皮膚についた返り血を拭かずにそのままにしておいても伝染する、というのが厄介なところ。
ラビツ一行が伝染したのも、まだゴブリンだったマドハトが生き延びたからっぽい。
呪詛効果の発動は伝染とは別条件で、一プロクル範囲内に伝染者が十人集まると発動する。勃起と射精を封じるという効果が。
村人たちに呪詛効果が発動したのはラビツたちが村を出てから三ホーラは経ってからなので、ラビツたち自身には呪詛が発動していない可能性は高そうってのも不安材料の一つ。無自覚だからこそ、人避けなどということを考えないだろうと。
ちなみに、ゴブリンマドハトの魔術特異症は呪詛の対象を「ゴブリンのみ」から「獣種のみ」に変更したように、俺の魔術特異症は呪詛の対象を「獣種のみ」から「獣種の男性のみ」にさらに変更してしまったらしい。なので俺は基本的には男に触らないようにしておかないと、ラビツ以外の伝染ルートを作ってしまうことになる。
ラビツといえば、カリカンジャロスの名前をストウ村のみんなに教えたのはラビツたちらしい。
カリカンジャロスがまとっていた瘴気が想定よりも少なかったらしく、カエルレウム師匠が村長に色々と尋ねられている中で明らかになった事実。
どうやら世の中には瘴気を喰らう生き物というのがいるらしく、ラビツたちはそれを使ったのではないかという話。
骨なしという半液体状の生き物が異門付近には生息していて、そいつらの大好物が瘴気らしく、瘴気をまとった魔物――主に死体――に取り付いて瘴気を喰らうという。骨なし自体は短時間であれば素手で触れても問題ないらしく、洞窟潜りがそれを捕まえて瓶などに詰めたものを高額で売っているとか。
洞窟潜りというのは、異門付近を巡回する特別な兵士たちのことで、兵士といっても魔術師も含まれているそうで、カエルレウム師匠のようにほぼ単身で異門付近を守る魔術師というのは珍しいのだそうだ。
だからこそ畏怖と敬意とで「寄らずの森の魔女様」は特別視されているとザンダさんもおっしゃっていた。
カリカンジャロスがゴブリンの亜種というのは本当で、本来はゴブリン同様に悪戯好きで、こちらに居着いた場合は大抵ゴブリンと一緒に暮らしているみたい。
ただ一部地域では悲しい民間伝承があるせいで、ゴブリンともども排除の対象になっているという。
それはゴブリンが人を襲って産ませた子供がカリカンジャロスになるというものだ。カリカンジャロスは体躯も大きく平均的な獣種よりも背が高いし、ゴブリンにはない角や尻尾もある。獣種の子供程度の背丈しかないゴブリンとは違う。そのせいでゴブリンが人を孕ませるなどという迷信が生まれたという。
実際にカリカンジャロスが起こす被害というのは、畑の作物を夜のうちに抜いちゃうという農家にとってはけっこうシャレにならないものなのだが、方法さえ知っていれば子供にも追い払えるらしい。
カリカンジャロスは三つ以上は数えられないため、遭遇したら小石を幾つかまいて数えてみろと言えば、延々と数え続けるそうだ。そして陽の光を嫌うので、陽が昇ると飛び上がって森の中へ駆け込んでゆく……それ以降は畑の近くに小石をまいておけば寄ってこないと。
こちらの世界の魔物って全部が全部邪悪ってわけじゃなく、元の世界でいうおとぎ話に出てくるような抜けてるのも居るんだな――とはいえ、油断は禁物。
与えられた仕事を完遂するためには、紳士として振る舞いつつ、思考を止めず……思考が止まらず……思考というか不安が止まらないし全く眠れない。
実は不眠の要因がもう一つあることがちょっと前にわかった。
マドハトが体の小ささに似合わずイビキの存在感が強いのだ。これを真正面に受け止め続けられるほど俺の神経は太くない……と、寝返りを打ってマドハトに背を向けると、ルブルム先輩と目が合った。
目を開けて寝るタイプじゃないよね? ……などとおどけてみても、美人と見つめ合う緊張感が拭えない。
ルブルム先輩の目の前で右手をひらひらと振ってみる……俺の手を見て、また俺の顔を見た。ってことは起きてる?
「ルブルム先輩も、いびきで眠れないのですか?」
「起きてた」
そう言うと、ルブルム先輩はひらひらさせていた俺の右手を両手で握りしめた。
秋の深夜の肌寒さの中で、ルブルム先輩の手の温もりをやけに熱く感じた。
● 主な登場者
・有主利照/リテル
猿種、十五歳。リテルの体と記憶、利照の自意識と記憶とを持つ。
リテルの想いをケティに伝えた後、盛り上がっている途中で呪詛に感染。寄らずの森の魔女様から魔法を習い始めた。
・ケティ
リテルの幼馴染の女子。猿種、十六歳。黒い瞳に黒髪、肌は日焼けで薄い褐色の美人。胸も大きい。
リテルとは両想い。熱を出したリテルを一晩中看病してくれていた。リテルが腰紐を失くしたのを目ざとく見つけた。
・ラビツ
久々に南の山を越えてストウ村を訪れた傭兵四人組の一人。ケティの唇を奪った。
・マドハト
ゴブリン魔法『取り替え子』の被害者。ゴド村の住人で、とうとう犬種の体を取り戻した。
リテルに恩を感じついてきている。元の世界で飼っていたコーギーのハッタに似ている。イビキの主張が強め。
・ルブルム
魔女様の弟子である赤髪の少女。整った顔立ちのクールビューティー。華奢な猿種。
槍を使った戦闘も得意で、知的好奇心も旺盛。「自分はホムンクルスだから」を言い訳にしがち。
・アルブム
魔女様の弟子である白髪に銀の瞳の少女。鼠種の兎亜種。
外見はリテルよりも二、三歳若い。知的好奇心が旺盛。
・カエルレウム
寄らずの森の魔女様。深い青のストレートロングの髪が膝くらいまである猿種。
ルブルムとアルブムをホムンクルスとして生み出し、リテルの魔法の師匠となった。ゴブリンに呪詛を与えた張本人。
・テイラさん
村長の息子。定期的に領都フォーリーを訪れている。猿種。
リテルたちをフォーリーまで送るために馬車を出してくれた。
・テニール兄貴
ストウ村の門番。犬種の男性。傭兵経験があり、リテルにとって素手や武器での近接戦闘を教えてくれる兄貴分。
馬車の護衛として同乗している。
・骨なし
異世界との境界に近い場所に生息する半分液状の生物。瘴気を喰らう。
・カリカンジャロス
顔はゴブリンに似ているが、角も尻尾もある毛むくじゃらで獣種よりも大きな魔物。ゴブリンの亜種。
ゴブリン同様悪戯好きだが、三以上数えられないため三つ以上の小石を数えさせれば足止めできる。陽の光も嫌い。
■ はみ出しコラム【近隣領】
リテルの育ったストウ村、マドハトの本体が育ったゴド村はともにラトウィヂ王国のクスフォード領に属する。
・王都キャンロル
ラトウィヂ王国の誇る王都キャンロルは「美しい迷宮」との異名を持つ。国王ドード六世は鳥種。
ラトウィヂ王国は、西に海、それ以外の三方を山脈に囲まれた国である。
魔物に襲われた場合の避難や救助の関係もあり、王都や領都と近隣の村々は比較的短い距離にあることが多い。ラトウィヂ王国内においては、街道を一週間移動して次の街にも砦にも着かないということはない。
・クスフォード領
クスフォード領はラトウィヂ王国内では南東に位置し、領都フォーリーは大きな城塞都市である。
領主はマウルタシュ・クスフォード虹爵。爬虫種ワニ亜種の先祖返りで女性である。
この領主のおかげもあり、クスフォード領では先祖返りや半返りへの差別がかなり少ない。
領内の寄らずの森においては、長らく「寄らずの森の魔女様」が単身で異門を守っていることもあり、その周辺においては魔物も少なく、安全な土地が確保されていることから農業が盛んである。
・ヨクシャ王国
ストウ村の南、馬車も通れぬ鉤爪連山を越え、徒歩で一週間ほど行くとたどり着けるダズベリン村は、ヨクシャ王国の最北端の辺境である。
王都はクロッフだが、地理的な悪条件によりラトウィヂ王国との交流はあまりない。
・ボートー領
ボートー領はクスフォード領の北に位置し、領都はアイシスという湖畔の城塞都市である。
領主はキングー・ボートー紅爵。象種の男性である。
アイシスは王都キャンロルの西に位置し、クスフォード領やライストチャーチ領へ向かう者たちの中継地点となっており、旅人を労う施設で有名。
・ライストチャーチ領
ライストチャーチ領はボートー領の北に位置し、領都はニュナムという立派な城塞都市である。
領主はモノケロ・ライストチャーチ白爵。馬種の男性である。
古くは隣国ギルフォルド王国との国境近くのマンクソム砦に最も近い大都市ということで、堅牢な城壁が有名。
・ギルフォド
かつてはギルフォルド王国最南端の都市であり、ラトウィヂ王国とシルヴィーノ王国との交易品が集まる巨大な商業都市だったが、自国以外の商人に対してあまりにも高額な関税を課したため戦争が発生し、その後、ラトウィヂ王国の領土となった。
現在はマンクソム砦以上の砦地区と商業地区とが隣接する双子城塞都市となっている。王国領。
砦地区には戦上手で名高いトゥイードル濁爵が常駐している。
・シルヴィルーノ王国
ラトウィヂ王国の東に聳えるマンティコラの歯山脈のさらに東に位置する肥沃な王国。王都はブルノーで、国王はブルノー五世。
ラトウィヂ王国とは有効的な関係で、交易が盛ん。
・ギルフォルド王国
ラトウィヂ王国の北東に位置する大国。百年ほど前にラトウィヂ・シルヴィーノ連合との大戦に破れ、現在は休戦中。
かつてギルフォドはギルフォルド最南端の都市だった。
・ガトールド王国
ラトウィヂ王国より海を挟んだ西に位置する国。王都はトムンソで、女王エーミリにより統治されている。
海産物とオレア油、果実などが有名。
・ラーグビ王国
ラトウィヂ王国の北西に位置する。領土の広さに対して周辺国よりも異門の発生確率が高い。
そのため対獣種不戦国宣言を出しており、周囲のいかなる戦争にも加担しないが、ラーグビ王国内で育った優秀な戦士たちは個人傭兵として多くの戦争に参加はしている。
・ウォーリント王国
ラトウィヂ王国の南西、ヨクシャ王国の西に位置する。国の内外において争いの絶えない国。
トゥイードル濁爵がもとは平民であったにも関わらず爵位を与えられたのは、対ウォーリントとの戦争にて目覚ましい活躍をしたためである。
護衛として御者台のすぐ横に座っているテニール兄貴までそんなことを言い出した。
笑い上戸のテイラさんは咽るぐらい笑っててきっと前を見ていない。
「そ、そういうんじゃないですよ!」
「リテル、美しい人という使い方があるのか? 毛ではないのか?」
あーもうルブルム先輩も変な方向に話を進めないでくだ……毛?
「毛?」
「カエルレウム様が美しいという言葉を使ったのは、森に棲む獣の毛並みを褒めるときだけだったから」
カエルレウム師匠のお言葉を思い出す。
服が乾くまでに教えてもらったことの中に魔物情報や新しい魔法のことだけじゃなく、ルブルム先輩のこともあったから。
カエルレウム師匠に教えていただいた「本物のホムンクルス」は、子宮を模した瓶の中からは出られないし、知識を与えれば覚えはするものの、覚えるだけで「単なる記憶の格納庫に過ぎない」らしい。
でもルブルム先輩とアルブムは「思考するホムンクルス」になってほしいと、本来ならば男性の精液のみで作るとろこを、女性の卵核も用いて作ったそうだ。
結果的には「成長もするし、自分の意思を持ちもしたが、魔法で作ったとは言えない。女性の子宮の中で発生する現象を体外で再現したに留まった」とおっしゃっていた。
ルブルム先輩やアルブムが生まれてすぐの頃は魔物への対応と赤ちゃんの世話と両立はどうしてらしたんですかと尋ねたところ、世話に手がかかりそうな幼少時代は「ある程度成長を促進させた」らしく、その辺にはカエルレウム師匠にマッド・サイエンティストみを感じたりもした。
というわけで、本来ならば身体の成長と共に成熟するはずの精神が十分に育っていない可能性があると。
ルブルム先輩については肉体年齢こそリテルと同程度だが、精神年齢は肉体年齢に比べて四、五年幼いという。年齢を十進数換算したら十二歳くらい……小六か中一くらいか? アルブムなんかはもっと若いってことになる。
そんなルブルム先輩のことを俺はカエルレウム師匠から任された。
ルブルム先輩の偏った知識の不足分を補うこと。それからもう一つ、何年か前からルブルム先輩が感情を見せないように振る舞っていることについても探ってほしいと――ルブルム先輩は、昔はちゃんと笑う子だったらしくって。
「ルブルム先輩、美しいという言葉は毛並みだけじゃなく様々なことに対して使います。人や獣の容姿、収穫期の麦穂、春の新緑、紅葉も雪の平原も、木漏れ日、朝日を浴びた山並みや夜の月や星々も虹も、人が作った造形にだって」
ルブルム先輩は目を見開いた。
「ああ、私は思考を止めていたのか」
俺の顔をじっと見つめるこの表情はアレだ。俺の股間に興味を持っていたときと同じ、知的好奇心の表情だ。
おかげで少し落ち着けたと思ったら今度はマドハトが急に尻尾を振り始めた。
「リテルさま! 僕は美人ですかっ?」
この顔、どうしてもハッタに重なり頭を撫でる。
「マドハトは美人とは違うな。元気がいいとか、明るいとかかな」
「僕! 元気がよくて明るいです!」
一瞬動きを止めた尻尾がまた動き出す。
御者台から大きな拍手。
「リテルが魔女様の弟子になれたの、なんだかわかる気がするよ」
穏やかな声でそう言ったテイラさんはもう笑い止んでいた。
「さあ、フォーリーまではまだまだ距離がある。寝藁を多めに積んであるから眠れるときに寝ておくといい」
ストウ村やゴド村を含むクスフォード領の領都フォーリーまでは通常だと馬車で丸一日とちょっと。徒歩だと一日半。これは夜はちゃんと休んでの計算。
ラビツ一行は今朝早くにストウ村を出ているから、寄り道しなければ明日の昼にはフォーリーに着いているはず。
それに対してこちらはテイラさんとテニール兄貴が交代で夜通し馬車を走らせてくれると言っていたので、馬の体調次第ではあるけれどラビツ一行がフォーリーに居るうちに追いつける可能性は低くない。
今夜は満月なのと、夜の間はカエルレウム師匠が狼の王様にお願いしてくださったおかげで何匹かの狼が遠巻きについてきてくれているのとで、夜とは思えない速度で馬車は進んでいる。
時折浮いたかと思えるくらい揺れてはいるが、寝藁がいい感じにクッションになってくれている。
ルブルム先輩もマドハトも寝藁にもう横たわった。
ここはお言葉に甘えて睡眠を取っておいた方が良いだろう……と俺も横になった……のはいいが、今日という長い一日の出来事があまりにも多くあまりにも衝撃的すぎて、処理しきれていない情報が脳裏をぐるぐる回って眠れない。
それに心配事もある。寝ても偽装の渦が崩れないかどうかっていう。
俺たちが狼の王様の背に乗って村へと戻ったとき、テニール兄貴に「ちょっと雰囲気が変わったか?」と尋ねられた。どうやら寿命の渦をうっすらと感じ取れているっぽい。
でも考えてみりゃそうだよな。魔法は誰にだって使えるんだし。
カエルレウム師匠もおっしゃっていたよな。武を極めんとする戦士たちは寿命の渦のことを気配と呼び、熟練の者であれば『魔力感知』のように『気配感知』を行うことができると。魔術師ほど細かく感じ取る訓練を積んでいる者は多くはないだろうが、自分だけが気付けるという慢心は捨てなさいと。
俺の偽装の渦は今のところ回転が心持ち早くなりかけている気はするが、これは「美人です」と思わず口走ってしまった動揺が出たのかもしれない――でもそれでいいのかも。
テニール兄貴もテイラさんも笑っていたときは回転が若干膨らんでいた気がする。寿命の渦は肉体と魂とをつなげる部分だから、肉体の影響も魂の影響も受けるものなのだとしたら、逆に動揺が出ない方が不自然かもだし。
あとは呪詛のことも注意が必要だ。
呪詛の伝染は皮膚同士の場合、十分の一ディヴだけ接触すると発動すると聞かされた。一ディヴだから、元の世界の感覚で二十五秒くらいか。
ただ、呪詛伝染者が生存している場合は、呪詛伝染者の血液や切り落とされた体の一部にも呪詛が残るから、例えば皮膚についた返り血を拭かずにそのままにしておいても伝染する、というのが厄介なところ。
ラビツ一行が伝染したのも、まだゴブリンだったマドハトが生き延びたからっぽい。
呪詛効果の発動は伝染とは別条件で、一プロクル範囲内に伝染者が十人集まると発動する。勃起と射精を封じるという効果が。
村人たちに呪詛効果が発動したのはラビツたちが村を出てから三ホーラは経ってからなので、ラビツたち自身には呪詛が発動していない可能性は高そうってのも不安材料の一つ。無自覚だからこそ、人避けなどということを考えないだろうと。
ちなみに、ゴブリンマドハトの魔術特異症は呪詛の対象を「ゴブリンのみ」から「獣種のみ」に変更したように、俺の魔術特異症は呪詛の対象を「獣種のみ」から「獣種の男性のみ」にさらに変更してしまったらしい。なので俺は基本的には男に触らないようにしておかないと、ラビツ以外の伝染ルートを作ってしまうことになる。
ラビツといえば、カリカンジャロスの名前をストウ村のみんなに教えたのはラビツたちらしい。
カリカンジャロスがまとっていた瘴気が想定よりも少なかったらしく、カエルレウム師匠が村長に色々と尋ねられている中で明らかになった事実。
どうやら世の中には瘴気を喰らう生き物というのがいるらしく、ラビツたちはそれを使ったのではないかという話。
骨なしという半液体状の生き物が異門付近には生息していて、そいつらの大好物が瘴気らしく、瘴気をまとった魔物――主に死体――に取り付いて瘴気を喰らうという。骨なし自体は短時間であれば素手で触れても問題ないらしく、洞窟潜りがそれを捕まえて瓶などに詰めたものを高額で売っているとか。
洞窟潜りというのは、異門付近を巡回する特別な兵士たちのことで、兵士といっても魔術師も含まれているそうで、カエルレウム師匠のようにほぼ単身で異門付近を守る魔術師というのは珍しいのだそうだ。
だからこそ畏怖と敬意とで「寄らずの森の魔女様」は特別視されているとザンダさんもおっしゃっていた。
カリカンジャロスがゴブリンの亜種というのは本当で、本来はゴブリン同様に悪戯好きで、こちらに居着いた場合は大抵ゴブリンと一緒に暮らしているみたい。
ただ一部地域では悲しい民間伝承があるせいで、ゴブリンともども排除の対象になっているという。
それはゴブリンが人を襲って産ませた子供がカリカンジャロスになるというものだ。カリカンジャロスは体躯も大きく平均的な獣種よりも背が高いし、ゴブリンにはない角や尻尾もある。獣種の子供程度の背丈しかないゴブリンとは違う。そのせいでゴブリンが人を孕ませるなどという迷信が生まれたという。
実際にカリカンジャロスが起こす被害というのは、畑の作物を夜のうちに抜いちゃうという農家にとってはけっこうシャレにならないものなのだが、方法さえ知っていれば子供にも追い払えるらしい。
カリカンジャロスは三つ以上は数えられないため、遭遇したら小石を幾つかまいて数えてみろと言えば、延々と数え続けるそうだ。そして陽の光を嫌うので、陽が昇ると飛び上がって森の中へ駆け込んでゆく……それ以降は畑の近くに小石をまいておけば寄ってこないと。
こちらの世界の魔物って全部が全部邪悪ってわけじゃなく、元の世界でいうおとぎ話に出てくるような抜けてるのも居るんだな――とはいえ、油断は禁物。
与えられた仕事を完遂するためには、紳士として振る舞いつつ、思考を止めず……思考が止まらず……思考というか不安が止まらないし全く眠れない。
実は不眠の要因がもう一つあることがちょっと前にわかった。
マドハトが体の小ささに似合わずイビキの存在感が強いのだ。これを真正面に受け止め続けられるほど俺の神経は太くない……と、寝返りを打ってマドハトに背を向けると、ルブルム先輩と目が合った。
目を開けて寝るタイプじゃないよね? ……などとおどけてみても、美人と見つめ合う緊張感が拭えない。
ルブルム先輩の目の前で右手をひらひらと振ってみる……俺の手を見て、また俺の顔を見た。ってことは起きてる?
「ルブルム先輩も、いびきで眠れないのですか?」
「起きてた」
そう言うと、ルブルム先輩はひらひらさせていた俺の右手を両手で握りしめた。
秋の深夜の肌寒さの中で、ルブルム先輩の手の温もりをやけに熱く感じた。
● 主な登場者
・有主利照/リテル
猿種、十五歳。リテルの体と記憶、利照の自意識と記憶とを持つ。
リテルの想いをケティに伝えた後、盛り上がっている途中で呪詛に感染。寄らずの森の魔女様から魔法を習い始めた。
・ケティ
リテルの幼馴染の女子。猿種、十六歳。黒い瞳に黒髪、肌は日焼けで薄い褐色の美人。胸も大きい。
リテルとは両想い。熱を出したリテルを一晩中看病してくれていた。リテルが腰紐を失くしたのを目ざとく見つけた。
・ラビツ
久々に南の山を越えてストウ村を訪れた傭兵四人組の一人。ケティの唇を奪った。
・マドハト
ゴブリン魔法『取り替え子』の被害者。ゴド村の住人で、とうとう犬種の体を取り戻した。
リテルに恩を感じついてきている。元の世界で飼っていたコーギーのハッタに似ている。イビキの主張が強め。
・ルブルム
魔女様の弟子である赤髪の少女。整った顔立ちのクールビューティー。華奢な猿種。
槍を使った戦闘も得意で、知的好奇心も旺盛。「自分はホムンクルスだから」を言い訳にしがち。
・アルブム
魔女様の弟子である白髪に銀の瞳の少女。鼠種の兎亜種。
外見はリテルよりも二、三歳若い。知的好奇心が旺盛。
・カエルレウム
寄らずの森の魔女様。深い青のストレートロングの髪が膝くらいまである猿種。
ルブルムとアルブムをホムンクルスとして生み出し、リテルの魔法の師匠となった。ゴブリンに呪詛を与えた張本人。
・テイラさん
村長の息子。定期的に領都フォーリーを訪れている。猿種。
リテルたちをフォーリーまで送るために馬車を出してくれた。
・テニール兄貴
ストウ村の門番。犬種の男性。傭兵経験があり、リテルにとって素手や武器での近接戦闘を教えてくれる兄貴分。
馬車の護衛として同乗している。
・骨なし
異世界との境界に近い場所に生息する半分液状の生物。瘴気を喰らう。
・カリカンジャロス
顔はゴブリンに似ているが、角も尻尾もある毛むくじゃらで獣種よりも大きな魔物。ゴブリンの亜種。
ゴブリン同様悪戯好きだが、三以上数えられないため三つ以上の小石を数えさせれば足止めできる。陽の光も嫌い。
■ はみ出しコラム【近隣領】
リテルの育ったストウ村、マドハトの本体が育ったゴド村はともにラトウィヂ王国のクスフォード領に属する。
・王都キャンロル
ラトウィヂ王国の誇る王都キャンロルは「美しい迷宮」との異名を持つ。国王ドード六世は鳥種。
ラトウィヂ王国は、西に海、それ以外の三方を山脈に囲まれた国である。
魔物に襲われた場合の避難や救助の関係もあり、王都や領都と近隣の村々は比較的短い距離にあることが多い。ラトウィヂ王国内においては、街道を一週間移動して次の街にも砦にも着かないということはない。
・クスフォード領
クスフォード領はラトウィヂ王国内では南東に位置し、領都フォーリーは大きな城塞都市である。
領主はマウルタシュ・クスフォード虹爵。爬虫種ワニ亜種の先祖返りで女性である。
この領主のおかげもあり、クスフォード領では先祖返りや半返りへの差別がかなり少ない。
領内の寄らずの森においては、長らく「寄らずの森の魔女様」が単身で異門を守っていることもあり、その周辺においては魔物も少なく、安全な土地が確保されていることから農業が盛んである。
・ヨクシャ王国
ストウ村の南、馬車も通れぬ鉤爪連山を越え、徒歩で一週間ほど行くとたどり着けるダズベリン村は、ヨクシャ王国の最北端の辺境である。
王都はクロッフだが、地理的な悪条件によりラトウィヂ王国との交流はあまりない。
・ボートー領
ボートー領はクスフォード領の北に位置し、領都はアイシスという湖畔の城塞都市である。
領主はキングー・ボートー紅爵。象種の男性である。
アイシスは王都キャンロルの西に位置し、クスフォード領やライストチャーチ領へ向かう者たちの中継地点となっており、旅人を労う施設で有名。
・ライストチャーチ領
ライストチャーチ領はボートー領の北に位置し、領都はニュナムという立派な城塞都市である。
領主はモノケロ・ライストチャーチ白爵。馬種の男性である。
古くは隣国ギルフォルド王国との国境近くのマンクソム砦に最も近い大都市ということで、堅牢な城壁が有名。
・ギルフォド
かつてはギルフォルド王国最南端の都市であり、ラトウィヂ王国とシルヴィーノ王国との交易品が集まる巨大な商業都市だったが、自国以外の商人に対してあまりにも高額な関税を課したため戦争が発生し、その後、ラトウィヂ王国の領土となった。
現在はマンクソム砦以上の砦地区と商業地区とが隣接する双子城塞都市となっている。王国領。
砦地区には戦上手で名高いトゥイードル濁爵が常駐している。
・シルヴィルーノ王国
ラトウィヂ王国の東に聳えるマンティコラの歯山脈のさらに東に位置する肥沃な王国。王都はブルノーで、国王はブルノー五世。
ラトウィヂ王国とは有効的な関係で、交易が盛ん。
・ギルフォルド王国
ラトウィヂ王国の北東に位置する大国。百年ほど前にラトウィヂ・シルヴィーノ連合との大戦に破れ、現在は休戦中。
かつてギルフォドはギルフォルド最南端の都市だった。
・ガトールド王国
ラトウィヂ王国より海を挟んだ西に位置する国。王都はトムンソで、女王エーミリにより統治されている。
海産物とオレア油、果実などが有名。
・ラーグビ王国
ラトウィヂ王国の北西に位置する。領土の広さに対して周辺国よりも異門の発生確率が高い。
そのため対獣種不戦国宣言を出しており、周囲のいかなる戦争にも加担しないが、ラーグビ王国内で育った優秀な戦士たちは個人傭兵として多くの戦争に参加はしている。
・ウォーリント王国
ラトウィヂ王国の南西、ヨクシャ王国の西に位置する。国の内外において争いの絶えない国。
トゥイードル濁爵がもとは平民であったにも関わらず爵位を与えられたのは、対ウォーリントとの戦争にて目覚ましい活躍をしたためである。
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