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第3章「帝国の賢者」

第17話「人造死霊術(後編)」

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「───カラクリは何だ、ロベルトぉぉぉお!!」

 叫ぶエミリア。
 そこに、しつこくすがりつくものがいた。

 半分にしてやったエルフが、なんとまだ動いている。

「ッ……この!!」

 踏みつぶしてやろうかと足を振り上げたエミリア。

 だが、奇妙なことに気付き、眉を顰める。
 なんと、動いているのは半分の片方だけ。
 ───もう一方はピクリとも動かない。

 …………こ、これは?

「キィ、キィ、キィィイ……!」

 エルフの頭部からウゾウゾと、蠢く昆虫の様なものが顔を出し、必死にエルフのもう半欠けの脳ミソににじり寄ろうとしている。

 そして、そいつの先端が半欠けの脳に触れたとたん、ビクリ!! と、半分に裂けたエルフがまた動き始めた───。

「おや、おやおやおや……。これは、これは───ネタがバレてしまったようですね」

 まいった、参ったと、天を仰ぐロベルト。

「そうです───。これは完全な死霊術ではありませんよ。見てください」

 そう言ってロベルトが懐から取り出したのは、真っ赤な幼虫のような気味の悪い物体。

「これは、寄生型ホムンクルス───。この子は人体に寄生し、宿主が死ねば宿主を乗っ取り動き出すのです! 私が死霊術を解析し、その様に作りました!!」

 こ、コイツ───!!

「それがお前の研究成果なの───」

 馬鹿め……。

「そんなものは死霊術ではないわ!!」

「そうです、そうです!!───だから……だから、あなたが欲しい! 今すぐッ!!」

 さぁ、愛しきアンデッドよ……!

「───かかれ!!」

 ズルリ…………。
 ズルズル…………。

「うううううう……」
「ぐぐぐぅ…………」
「あーうー…………」

 戦士、双剣使い、虚無僧までもがドロリと動き出す。

 そして、半欠けのエルフも……。

「くだらない───」
「ふふ、どうでしょうか? 死体が起き上がり襲い掛かる───その恐怖!!」

 とくと、味わいなさい!!

「くだらないと言ったぁぁあ!」

 エミリアは気合い一閃!

 カッ! と、目を見開くと、
「ふ──────……ようはホムンクルスとやらを破壊すればいいのね?」

 ならば、

 ──────グシャッぁぁあ!!

 エミリアは足元で蠢くエルフの頭部───そこに巣食うホムンクルスを、思いっきり踏みつぶした。

 すると思った通り、エルフがビクリ! と震えて──────止まる。

「そうですよ!! ですが、できますか! その優秀な武器と剣だけで、全てのホムンクルスを破壊することが」

 さぁ!!! やってみなさい!!
 ロベルトが余裕の表情で死体を指し示す。

「ふっ」

 対する、エミリアは小馬鹿にした笑いをニヒルに決めると───。

 そして、スーっと背中に手を伸ばし、黒いマントの下に隠していた武器を取り出す。


 ジャキン──────ズドン!!!


 頭部をぶっ飛ばされた戦士がグシャと、湿った音を立てて倒れる。


 ……ドサッ。


「───できるわよ?」

 隠し持っていたショットガンを構えたエミリアが、ガシャキン───と、ポンプアクションを決めると薬莢を排莢し、再装填。

「え? あ? な……?」

 ポカンとした顔のロベルト。

「……お馬鹿・・・な『大賢者』さん、」

 ジャキ──────ズドン!!
 グシャアア──────どさり。

 双剣使いも斃れる。

「───こんなノロマを量産したところで、私に敵うとでも?」

 馬鹿め……。

 S級の冒険者どもが元より強くなるならまだしも───。
 弱体化した死体を操ったところで、何になる?

 すぅぅう、
「──────死霊術を舐めるなッ!!」

 ショットガンを担うと、大剣を代わりに携え、鋭く踏み込み───ズパンッ!! と虚無僧の首を一刀のもとに跳ねる。

「な、ば……ばかな!」
「バカはアンタよ───大賢者さん」

 さぁ、そろそろ年貢の納め時。

 他の連中残りの勇者小隊の情報をたっぷり吐き出してから───。



「死になさい!!」



 チャキっ!! 

 美しい所作で剣を向けると、ロベルトが青い顔で後ずさる。

 だが、
「ふ───ふふふふふふふふふ。ふははははははははははははははは!!」

 言ったでしょう───!!

 寄生型ホムンクルスは人体に寄生し、宿主が死ねば動き出すと!!!

「なに?……………………ッッ、まさか!」

「さぁさぁ、お手並み拝見──────死霊術の先輩エミリアさん、私の軍団を降して見せて欲しい!!」

 コイツ!!

「うううああああ…………」
「「ぐるるるるるる…………」」
「「「あーうーあー……………」」」

「「「「「おおおおおお………!」」」」」


 な、なんてやつ!!

「───ま、まさか、帝国軍全体に寄生虫をばら撒いたの?!」

「はははははははははははは!! 当たり前でしょう! アナタが来る・・・・・・のです。備えておきました」


 この、
「───外道がぁぁぁぁあああ!!」



 なんてことだ。
 ……全帝国軍が再び起き上がる!?
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