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第3章「帝国の賢者」

第16話「vs S級冒険者(前編)」

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「───そうはさせねぇよ!」
 ガィィィイイイン!!!

 サッと、エミリアとロベルトの間に割って入る影が数名ッ!
 大剣を携えた戦士風の大男が、すかさずエミリアの剣を受け止めた。

「チッ!」
「くくく。何の策もなくアナタの様な、猪武者の前に出るわけないでしょうに───私を誰だと思っていますかッ」

 賢者サージロベルト───。

「いーえ。今は帝国一の頭脳を持つ、大賢者アッカーマンのロベルトです!!───そして彼らは、S級冒険者!! アナタを迎え撃つ最強の刺客ですよ!」

 コイツ等が最強・・の刺客?

 フッ……。

「あんまり、笑わせてくれないでよ───ロベルトぉぉお!」

 ───ふんッッッ!
 
 ギリギリギリ……!!

 膂力でもって押し返すエミリア。
 S級だとかいう冒険者の戦士は、顔面汗だらけにしながらも、ズリズリと後ずさる。

「こ、こりゃ……! わ、割に合わねぞ!」

 ギギギギギギ……。

 戦士の剣が不気味な音を立てる。
 得物の質が違い過ぎて相手にならないのだ。

「何を気弱なことを! 大金を払ったのですよ!! 私の準備が整うまで・・・・・・・時間を稼ぎなさい!!」

 予想外の苦戦にロベルトが驚いている。
 いや、それ以上に──────準備だと?

(何か企んでいるな……)

 だが、構うものかッ。
 罠だろうが何だろうが、それごと食い破ってやる!

「迂闊だぞ、ボルドー!!」

 戦士を援護するべく、双剣使いの獣人が戦士の背後から、突如エミリアに襲い掛かる。


 ───チッ!


 ギィン!! 激しい火花を弾けさせながらエミリアと戦士が距離を取る。
 その中間に双剣使いが着地すると、猛然と肉薄し、エミリアに白兵戦を挑む。

「おらおらおらおらおらぁぁぁあ!!」

 双剣使いの、素早い剣の一撃一撃がエミリアの肉を削ぎ落さんと攻め寄せる。

 ギィン! ギィン! ガィン!

 それをバックステップで躱しながら捌き、一撃を叩き込もうと隙を伺っていると──。

「今だ! コンビネーションアタック!!」

 リーダー格らしい戦士が叫び、双剣使いが背後に飛んだ。

(───何の真似かしら?)

 弓使いのエルフを除く三人が、サッとそれぞれを支援できる位置に別れると、エミリアを半包囲する。

 なるほど───ベテランだ。

 ……面白い、
「───いいわよ。……まずは、あなた達から血祭りにしてあげるッ」

 4対1という、不利な条件ながらエミリアは全く焦っていなかった。

 剣を肩に乗せると、トントンと肩を叩きしつつ、空いた手でチョイチョイ───と挑発して見せる。

「こ、コイツ!」
「落ち着け───連携を乱せば、奴の思うつぼだぞ」
 
 頭に血の上りやすいリーダー格の戦士を、双剣使いがいさめている。

 こいつが参謀格ね。

「ふふふ。ビビってるのかしら?───それでは、ごあいさつ。皆さまご機嫌用、」

 不敵な笑みを浮かべると、淑女が紳士に挨拶でもするかのように、スカートのようにも見える黒いマントの端を少し摘まんで一礼───。

 肢体が晒されるのも構わず、

「───お日柄もよく。そして、………無様に死ねッ!」

 挑発のさなか、猛然と体を起こすと、全身のバネを使って振りかぶりぃぃい───!

 ブンッ!!

 と空気を震わせながら、一人───包囲の輪から離れている弓使いのエルフ目掛けて剣を投擲したエミリア。

「んなッ?!」
「まずい!」
「…………ちぃ!」

 リーダー格の戦士以外の全員が驚愕するなか、その戦士だけが一歩早く動いた!!

 な、
「───舐めるなぁぁぁぁあ!!」

 ガ、ギィィイン!!

 辛うじて飛び出した戦士。
 そいつが辛くもその一撃を防ぐも、僅かだが包囲が崩れる。

 そこに、エミリアが突っかけた。

 狙いは、邪魔なエルフッ!!

「───ちぃぃぃ!! メルシア、チャンスがあったら射れ!!」

 きりりり、と矢を番えた弓がしなる。

「任せて!───ダークエルフめ、私達の時間差攻撃……避けられるかしら!」

 大剣使いの戦士が、巨大な刀身を盾にしつつエミリアに突進。
 双剣使いの獣人が、戦士の姿に隠れるようにして遊撃の構え。

 虚無僧風の男はエミリアの退路を断つ!

 結果、エミリアは素手で四人に立ち向かうしかないのだ──────…………素手?

 誰が??

「奴は武器がない! 畳み掛けるぞ!」
「おう!!」「ええ、任せて───」

 エルフの弓使いが精霊魔法を纏わせた弓矢を引き絞り、戦士と双剣使いがエミリアと激突する瞬間に狙いを定める。

 なるほど───。

 戦士の攻撃を一の太刀としつつ、双剣使いが二の太刀、そして、エルフの弓使いが三の太刀。

 連続攻撃と見せかけて、微妙に一撃の時間をずらした、絶妙な時間差攻撃かッ!!

「やるじゃない──────。…………ほんの、ちょっとだけねッ!!」

 だーけーどー、それに付き合ってやる道理はないわ!


「───私を誰だと思っているッッ」


 ブワサぁ! と、黒いマントを翻したエミリア。

 その下にある、ボロに包まれた瑞々しい肢体を晒しつつも──────そこに巻き付くようにして体を縛っているのは、大量の各種ガンベルト。

 そこに収まった無数のコルトガバメント自動拳銃を二挺───両手を交差させつつ、二手で引き抜く。


 ズ───ジャキ!!


「な、なんだ、あれは──────?!」

 これのこと?
 これは、コルトガバメント。




「───45口径の拳銃よ!!」
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