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第3章「帝国の賢者」

第14話「獲ったどーーーーー!」

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 ───私を舐めるなッッ!!!!!

 ダンッ!!! と踏み込み、軽戦車から飛ぶエミリア。

 そして、最後の踏み込みとともに、すでに跳躍しているギーガンと空中で睨み合い……──────激突するッッ!!

 ギーガンの気合一閃!!

 「ふん!!」と、ばかりに振り下ろされた大剣を彼女は両手で挿みこんだ。

 ガシィィィイイイ……!!!

 ──ギリギリ、ギシ……。

「むっ……! こ、この剣は───!?」
「ぐはははははは! 気付いたかッ。こいつは、お前の剣よ!!」

 ゴテゴテと装飾を施された剣は、確かにオリハルコンの輝きを放っている。

 そして、削り取られてはいるが……微かに、魔族のものでありダークエルフの里で鍛えた証の紋章が───。

「このぉッ! わ、私の剣に余計な装飾を──!」

 怒りに満ちた表情でエミリアはギーガンを睨むも、奴は全く怯まないッ。

「ふんッ! 薄汚い魔族の分際で分不相応なものを使っているから、ワシが再利用してやったまでよ! むしろ、」

 ───ありがたく思え!!

「ふざけるなッ!! 我ら───魔族の戦士に受け継がれる、栄えある魔剣に何という醜悪な装飾を!………………恥を知りなさいッ」
「ぬかせ、小娘がぁぁあ!! この紋様の美しさが我が帝国の力の証じゃぁあ───!」

 ギリギリ……と、力を籠め剣を奪い返そうとするエミリア。
 空中で二人は絡み合い今も滞空している。

「笑止───。その文様には、なんの軍事ミリタリー的価値アドバンテージもないわ!!」

「ならば、勝ち取ってみせるがいいッ!!」

 ───もちろんよ!!!

 小柄なエミリアと巨躯のギーガン。
 一見してギーガンのほうが有利に見えるが……。

「───私を誰だと思っている!!」

 膂力はドワーフに次ぐ、怪力の持ち主──────。

 ───ダークエルフの、
「エミリア・ルイジアナよッ!!」

 ブンッ!!

 両手で白羽取りした大剣を、力任せに引っこ抜くと空高く舞い上がる。

 そして、勢いのまま空中で激突する二人。

「ば、かな……!」
「アンタが、ね」

 ガッッ!!

 驚愕に顔を染めるギーガンの頭を、両足の太ももで挿むように、そっと包み込み抱締めるエミリア。

 巨躯の将軍と小柄なダークエルフ。

 まるで祖父と小さな孫の様に見える二人は空中で絡み合い、ギーガンはエミリアの鼓動と温もりを間近で感じた。

(ダーク……エルフ───)

 至近距離で見つめ合う二人。
 そっと、ギーガンの頭を撫でるエミリアは、ニコリとほほ笑む。

 不覚にも、ギーガンはそれを美しいと感じてしまった。だが、次の瞬間!!───彼女の顔がキッ、と鋭いものに代わる。

「捕・ま・え・た……」

 ミリミリミリ……! と、怪力を感じた頃には頭部に激痛が走り、エミリアの膂力に負けて空中ですら押し返されていく。
 そのまま、帝国軍が壊滅した方へと飛んでいき───。

「ぐ、が───は、放せ……!」

「帝国軍指揮官──魔族領侵攻部隊の長……そして、我らが大敵、」

 ギーガンの抗議など耳を貸さず、エミリアは冷たい目でギーガンを見下ろすと、言う。

「……数多の同胞を殺戮し、今もなお、その地位にいる───すなわち、我らが怨敵ッ」

「ま、まて!! よせ!!」

 ギリギリ……ミシミシ……!!

「め、命令だ!! へ、へへへへ、陛下の命令だ! 上司の指示なのだ!!」

 わ、ワシは……。
 ワシは──────!!

「ワシは悪くないッッッ!! ワシは微塵も悪くなどない!! ワシは──────」

「はッ」 

 まともな言い訳を言うのかと思えば……。

「んなわけ、」



 あるかーーーーーーーーーーーーー!!!



 ブチィ!!
 力任せに首根っこを引っこ抜くと、ギーガンの身体を蹴り飛ばす。

 ギュルギュルと回転する身体が、陣地手前に、急造した応急地雷原にドスーン──と。

 首を見れば、まだ口をパクパク動かして、何やら言っているが───もう幾ばくも命の火はないだろう。

 それでもまだ、どう見ても言い訳を言ってやがる……。

 もっとも、肺がなければ空気を送り出せない。
 どうやっても、しゃべれはしまい。

「聞くに耐えないわ」

 ドスーーーンと、体が地雷原に転がったのを見据えて、
「くっだらない男……。最後くらい気概を見せなさい」

 ミシミシと、手に持つ顔面を握りつぶす様に構え──────ぶん投げた!!

 ブンッッと!

 身体のすぐそこ───地面に敷設された地雷目掛けてッ。

 ぱくぱくぱくーーーーーーー!! と口が動いている。

 多分、やめろーーーーー!! とか言ってるのだろうが、

「帝国軍は終~了─────さようなら、最後の将軍。派手に吹っ飛びなさいッッ!!」


 そして、地雷に顔面が着弾────、地雷の信管を叩いて、ドカーーーーーーーーン!

 と、首が空に舞い上がっていく。

 爆風の中に見えた顔が、「嘘ぉぉぉぉおおん?!」って感じで歪んでいく。

「良かったわね───帝国軍では戦死者は二階級特進するんでしょ? きっと、アナタがナンバーワンよ」

 あははははははははははは!

 ひとしきり笑うと、エミリアはクルリと身を翻して着地。

 あとには、ベチャベチャと、地雷で生焼けに焼けたギーガンの肉片が降り注ぐのみ。

きったないシャワーね……」

 それはそれは楽しげに、ニッコリとギーガンの最後を見つめてエミリアは笑った。

 そこにタイミングよく、空に舞い飛んでいた剣がクルクルと回転しながら落ちてくる。

 パシリッッ! と、見もせずにそれをキャッチしたエミリアは、柄に唇を当て小さく呟いた。


(おかえり……)


 そして、言う。



 さぁ、
「お次はロベルト──────」


 そうとも、勇者パーティの知恵袋。
 賢者ロベルト───次は、お前の番だ。
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