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第24話「勘のいい女」

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「ふんふ~ん……♪」

 勇者パーティが占領した魔王軍の補給処跡にて、

 軽やかな鼻歌と共に、随分と上機嫌な様子のクリスティが天幕から出てきた。
 何故か知らないけれど、やたらと肌がツヤツヤ。

 それを遠目から見ているサオリ。若々しい肌は傍から見ていても眩しいものだ。

(あらまぁ、浮かれちゃって)

 はしたないことに、この子クリスティあの子ナナミも、最近はあのうさん臭い冒険者上がりの斥候ヴァンプの所に入り浸りだ。

 天幕の中では、さぞやとんでもない肉欲の宴が催されているのかと思いきや───意外や意外……。
 例の斥候───……ようするにヴァンプの奴は彼女たちに指一本触れていないらしい。

 むしろ、毎朝げっそりした顔で朝早くに天幕から抜け出すと、こそこそと一人で毛布をかぶって寝入ってしまうようだ。
 それも外で……。

(一体何が何やら───……)

 ほんと、何やってんのかしら?

 サオリは首を傾げつつ、クリスティに見つからないようにそっと物陰に身を隠す。
 覗いていたことがばれたら色々気まずいものだ。

 だが、クリスティがヴァンプを慕う理由もわからなくはない。
 サオリとて、昨日の顛末はクリスティから聞いているので、概要は掌握している。

 なにせ、あの神童と言われた大僧正のクリスティの意外な弱点を、ヴァンプという青年は一瞬で溶解してしまったのだ。
 それゆえ、勇者ナナミの信頼と同時に大僧正クリスティからも多大な信頼と愛情を得るに至っている。


 ……………………それはいい。


 サオリが気にしているのは、それ・・ではない。
 それ・・よりも、なによりも気になることがあったのだ。

 だから、彼女は問う。

「クリスティ」
「ん? あ…………さ、サオリ」

 ヴァンプの天幕から出てきたところを見咎めらたと思っているのだろうか?
 顔を赤らめたクリスティがモジモジとしているが、ぶっちゃけどうでもいい。

 そもそも、ヴァンプはあの中にいないことはとっくに確認済みだ。

 今頃、奴は目立たない場所で毛布をかぶって仮眠をとっていることだろう。
 毎晩毎晩ご苦労なことだ。

「少し話があるんだけど、いいかしら?」 
「え、あ…………うん」

 きっとヴァンプのことを聞かれるのだろうと、顔を曇らせるクリスティ。
 それは間違いではないが、彼女の想像していることとは全くかけ離れている。

 ガキどもが色恋しようとどうでもいいことだ。
 そんな飯事などどうでもいい。

 そう。
 悠久の時を生きるハイエルフのサオリにとっては、本当にどうでもいい事───。

 それよりも……。

「先日の戦闘中の話、もう一度聞かせてくれないかしら」
「へ───??」

 そう。
 ヴァンプはクリスティに語って聞かせたのだ。




 200年前の古戦場で・・・・・・・・・・死んだ戦士たちの生き様・・・・・・・・・・を───……まるで見知っていた・・・・・・・・・かの如く───。
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