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光の戦士たち4

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「み、見ろ……!」
「街道だぁ!」
「あ、あの先を! あれは街ですか?!」


 廃村を出て丸3日ほど。
 小休止と大休止を挟みつつ、ジェイス一行はひたすら歩き続けていた。

 見え隠れする道の後を辿るだけの行軍は酷く疲れたが、それも終わりに近づいてきたらしい。

 あの軍団レギオンから逃走して約1週間。

 リズの活躍により、ついにジェイス一行は荒野を踏破したのだ。

 魔物の接触がなかったとはいえ、これは驚異的なことだ。

 くだんの軍団の追跡がなかったのも奇跡に近い───。

「ふぅ。あと数時間ね───それと、悪いけど。街についたら別行動させてもらうわよ」

 リズは額に浮いた汗を拭ってから、3人を突き放す様にいう。

「な、何言ってんだよ? ここまで来て!───な、仲間だろ?」
「そ、そうよ……。ほ、ほら、報酬とか山分けしないと」
「感謝しているのですよ。お礼もさせてください」

 作ったような笑いが酷く気味が悪い。
 リズはうんざりした表情で言う。

「仲間? 報酬? 感謝ぁぁ?…………そんなもの───」

 吐き捨てるようにリズは言うと、もう3人を顧みることなく再び歩き始めた。

 その表情は疲労しきっており、ジェイス達3バカよりも酷く消耗していることが窺える。

 ただ後をついていくだけの3人とは違い、リズは偵察を兼ねて経路を探しつつ、先頭員ポイントマンとして行軍速度の維持、そして前方警戒などを一人で全てをこなしていたのだ。

「そう言うなよ! 今の俺達は文無しだろ?───ギルドについたら、貯金を引き出して分配する。本当だ」
「そうねー。街に着いたらどうしようかしら。まずはお風呂に入って、美味しいもの食べて───あ! スイーツ食べたい!」
「いいですなー。私はまずたっぷりの水を飲んで、柔らかいベッドで休みたいですね」

 好き勝手なことを言って、和気あいあいと道中を楽しむ3人。
 さっきまで死にそうな顔をしていた癖に、街が見えたとたんこれだ。

「お、あの煙───ってことは、あそこの街はリリムダか。……前に何回か行ったな」
「あー、煙臭い街ねー。スイーツは期待できなさそう」
「製鉄と工芸の街ですな。あと、田舎です」

 ようやくの街に感謝もなしに、辛辣な感想。
 このあとも、ピーピーと煩い3人のおしゃべりを聞きながら歩くのはウンザリだった。

 本気で街に着いたら別行動をしようと考えていたのだが、さっきジェイスが言った通り文無しなのは事実……。

 パーティとしての貯金はあっても、個々で持つお金はベームスの街の宿に預けたままだ。

 その点では暫く行動を共にしなければならないだろう。業腹ではあるが、ジェイスに報酬を貰わないと食事もできない。
 だから、うんざりする思いを抱えつつも、リズはただただ感情を押し隠して歩く。
「はぁ…………。ねぇ、アルガス聞いてよ、私───一人でも荒野を抜けたよ?」

 いつも隣にいてくれたあの人に聞こえるように、リズはそっと囁く。
 誰も聞いていなくてもいい。
 空のもと、アルガスに届けばいいなと思い、ただ……そうッと呟くのだ。

 彼の教えに従い、身に着けた生存技術を駆使して荒野を抜けた。

 アルガスに師事していなければきっと全滅していたであろうという事実。それだけが少し誇らしい。

 ジェイス達は理解できないだろうが、間接的にも、彼らはアルガスに救われているのだ……二度も。

(アルガス───待っていてね。すぐに探しに行くから……)

 アルガス……。
 アルガス───。

「私の、アルガス……」

 リズの心の大部分を占める、愛しい人。

 今はもう、いなくなってしまった大切な人……。

 今でこそ、荒野を抜けるという行動に自分を律していたからこそ、深く考えずにはいられたが、街に着き───一息ついたらどうなるか分からない。


 アルガスが死んだ………………。


 この事実を、どこかで受け止めなければならない。

 ゲラゲラと笑うジェイス達の声が、どうしようもなくリズの心をざわつかせていたが、それを知るのは彼女ただ一人。

 ジェイス一行はついに荒野を抜け───リリムダの街に着いた。

※ ※

 ざわざわ……。

 ざわざわ……。

 浮浪者よりもひどい恰好をしたジェイス達だったが、Sランクパーティの証明と王国公認の勇者の威光で入門は難なく進んだ。

 リリムダの街はベームスなんかよりもずっと栄えており、垢ぬけていた。
 それでも、やはり荒野の傍にある街らしく冒険者の姿が目立つ。

 おかげで、ボロボロで全身から酷い匂いを放っているジェイス一行も、さほど目立つことなく街の雑踏に紛れ込むことができていた。

 エエ格好しいのジェイスは、こんなボロボロの格好を見られることを良しとしないだろう。

 それゆえか、俯き加減でズンズン歩く。

 いつの間にか先頭を入れ替わっていたが、リズとしても街中においてはジェイスに先を譲っている。

 勝手知ったるといった雰囲気で歩を進めるジェイスだが───。

「ね、ねぇ? どこいくの? ギルドはたしかこっちじゃ───……」

 何よりも先にギルドに向かうと思っていたリズは戸惑いの声をあげる。

「はぁ? 何言ってんだよ……まずは宿に決まってんだろ? 疲れてんだよ」
「そうよ───ギルドなんか!いつでもいいじゃん」
「まったくです……。もうクタクタですよ」

 ギルドに行くという、考えすらなかった雰囲気の3人。
 
「で、でも───あの軍団レギオンの情報を、一刻も早く伝えないと!」

 あの軍団がベームスの街を飲みこみ、破壊していたら、次はまた別の近隣の街が襲われるのだ。

 荒野の傍の街かもしれないし、あるいはベームスを破壊してさらに人類の勢力圏に奥地に向かうことも考えられる。

 軍団は破壊と混沌の存在で、一カ所に留まるよりも常に獲物を求めて突き進む。
 一刻も早く対処しないと被害が甚大なものになるのだ。

「もう、誰か報告してるって───いいから、いいから」

 それだけ言うと取り合わずにさっさと街の高級宿に向かうジェイス達。
 リズは一瞬どうしようかと思ったが、自分の実績ではギルドがまともに話を聞いてくれるかどうか自信がなかった。

 報告だけしても、リズは途中で気を失っていたため、軍団の全容や進行方向を報告できないのだ……。

 それにリーダーを差し置いて報告すると、色々と不都合も生じるのだ。報酬の不正受給を疑われたりなんだのと───。

 リズは知る由もないが、それは、ちょうどアルガスがベームスで単独報告をした時のように扱われるのが関の山であるのだ。

 それも、アルガスよりも実績のないリズならいわんや……。

「く……」

 唇を噛みつつも、リズはジェイス達に従うしかない。
 それに、リズも疲れ切っていた───明日でいいかという、甘美な誘惑に抗いきれずにトボトボとジェイスに追従した。

 その様子を何か勘違いしたのか、
「大丈夫だって! ここの宿は馴染みだ。ツケが効くんだぜ。ま、金は心配すんなよ」

 ゲハハハハ、と見当違いに悪いジェイスに一瞬殺意すら覚えるリズであった。

 この男のせいでアルガスは死んだというのに、報告するおざなりにしようというその態度───!

 やはり、報酬をもらったらこのパーティから抜けよう。

 そして、たった一人ででもアルガスを探すのだ……。
 たとえ、彼の骨の一欠片でも、彼の形見の一つででも───。

 その夜、疲れ切ったジェイス一行は放浪の汚れを落とし、美食に舌鼓を打ち、そしてふかふかのベッドで寝た。

 後日とんでもない事実が分かるとも知らずに……。




 そして、その後日。

「えぇ?! 『光の戦士たちシャイニングガード』御一行ですか? いやー、初めてお目にかかります! あわわわ!」

 ジェイス達はたっぷりと休養を取って疲れを落としたのち、昼頃に起き出すという重役出勤でギルドに顔を出していた。

 メンバーはいつもの3バカ───もとい、三人。

 なぜなら、間の悪いことにリズは高熱を出して寝込んでしまったのだ。

 やはり、無理が祟ったのだろう。

 毎日毎日、行軍行軍。
 そして、心労につぐ心労。

 アルガスの死、それだけでも心に耐え難いというのに、3バカの相手……。
 そりゃあ、キツイ。

 しかも、昼間は経路の偵察のために3バカが休止している間もほとんど休まず行動していた。

 さらにはその合間に食料と水の確保……。

 よく持った方だと思う。
 アルガスがいれば、間違いなくリズを褒めていただろう。

 それでも、アルガスはいない。
 もう、いない………………。

 仕方なく、ジェイス達は宿に看病を任せて、渋々ながらギルドに向かうことにした。

 リズやアルガスに任せることもできないので、本当に嫌々ながらだ。
 報告義務を怠ると、色々面倒なのだ。

 それでも朝飯を食って、湯を浴びれば、いつもの余裕を取り戻したらしい3バカ。
 宿に用意させた装備を着込み、不敵な表情でギルドに乗り込んだ。

 その恰好は街用の軽装主体だったが、ピカピカの装備で見栄えだけは、まさに勇者パーティだ。

「ささ、どうぞこちらへ!」

 ギルドでは、禿頭の男性に案内されて奥の応接セットに通される。

「いやー。高名な皆様にお越しいただくとは! 私、当ギルドのマスターを先月仰せつかったものです。どうぞお見知りおきを!」

「おう、覚えとくぜ───そんなにしょちゅう顔は出せないが、当面はこの荒野付近で活動する予定だ」
「はい! それは光栄です──で、今日のご用向きは? あ、もしや、例の件で……?」

 揉み手をせんばかりに、平身低頭のギルドマスター。

 ギルドマスターは大抵、元冒険者がやることが多いが、このギルドマスターはどうみても冒険者には見えない。

 ちいさな手は女の子の様に柔らかそうで、筋肉もなにもない。
 剣など握ったこともなさそうだ。

 見た感じ、ただのオッサン。
 禿の中肉中背の、どこに出しても恥ずかしくない普通のオッサンだった。

「例の件……?──分からんが、多分それかな。今日は、報告と貯金の引き出しに来た」

「かしこまりました! では、報告は───例の件、荒野に発生した軍団レギオンの件についての、補足でよろしいですか?」

 やはり、すでに噂になっているようだ。

 あれ程の規模だ。
 いくつかの逃げおおせたパーティが、軍団に危機について報告したのだろう。

 ならば、ジェイス達にはもう報告することは、規定情報の確認と補足くらいなもの。

「───そうだ。それだ!……あれは、酷く凶悪な軍団だ! あれはもう、魔王級のそれと言っていい! すぐに国に報告し、王国軍を、」

「えぇえぇ! そうですね! まさに類を見ない規模の軍団レギオンです。ですが、まさかたった一人で殲滅されるとは……! さすがは『光の戦士たちシャイニングガード』達のメンバーですな」

「───おう。そうだ! 今すぐに、軍の派遣要請をしてくれッ! 俺達をもってしても、奴らに痛打をあたえた・・・・・・・・・・ものの、惜しくも・・・・取り逃がしてしまった。だから、その援護に───…………………って、え? 殲滅?」

「えぇ、そうです。そうです! ベームスの街はいま沸き返っておりますよ。新たな英雄が生まれたと! 皆さまのお仲間の、」

 え、いや、ちょ───。
 待て待て待て。

「な、なにを言ってんだ? 軍団レギオンだぞ?! 1000体もの魔物の群れを───」
「───そう! アルガス殿が、たった一人で軍団を殲滅されたそうです!」

「「「はぁ?!」」」

「いやー……! すばらしい! まさに英雄です。いえ、もしかしたら彼は勇者───おっと、こちらに本物の勇者がおられましたな、ガハハハハハ!」

 勝手に納得、勝手に突っ込み。
 ギルドマスターは一人でゲハゲハと笑う。

 さらに、
「───で、軍の派遣要請とは? そして、アルガス殿はご一緒ではないので?」

 いや──────その、

 ……………………えっと。


「「「…………………………」」」

 固まるジェイス一行。
 全員が全員で顔を見合わせ、目配せであーでもない、こーでもない。

 だが、ここはやはり、

「…………………………………おう! く、苦戦したぜ!!」

「でしょうなー! でしょうなー!! いやー、すごい!! さすがは『光の戦士たちシャイニングガード』です! これはもう、大戦果ですぞ! 軍団殲滅の報告は今朝届いたばかりのホカホカの情報なのですが、さすがに『ベームス~リリムダ』間は距離がありますからな、今日までかかってしましました。ガハハハハハ」

 一人でバカ笑いするギルドマスター相手に、ジェイス達は引き攣った笑いしかできない。

 というか、問い詰めたい──────「冗談だよな?!」と……。

「ガーーハハハハハ───…………。で、軍の派遣要請とは?」

 く。

 しつけえ!
 忘れろっつの、失言だっつの!

 ダラダラと汗を流しつつジェイスは必死に、軍の派遣というドデカイ爆弾に近い発言を誤魔化す方法を考えていた。

 そこに、
「いえいえ、ほらマスターどの、ジェイス殿は軍団殲滅後のドロップ品について言及しているのですよ。冒険者どもに拾われるよりも軍を派遣して、国庫に収めようという広い御心が───」

「ガッハッハッハ! なーにをご冗談を? ドロップ品もオール回収。1000体以上の討伐証明に、ベームスでは買取しきれない量のドロップ品の山と聞いて、各地の冒険者ギルドや、魔導商会に商人ギルド、それに鍛冶屋組合がこぞってアルガス殿と交渉をしたがっているそうですぞ───かくいう我がギルドも、いくつか欲しい魔物の素材がありましてな」

 いやーよかったよかった。と、一人でホクホク顔のギルドマスター。

 当然、ジェイス一行の顔は疑問顔と失言と、何が起こっているのか分からない状況で、七色に顔色が変化していた。

「最高のポーターと重戦士の組み合わせだそうで、いやー……凄い。さすがです! で、こちら───当ギルドでお引き取りしたい素材なんですが、」

 勝手に素材リストを取り出し、皮算用しているギルドマスター。

 ジェイス達は、もはや軽いパニックだ。

 色々なことがいっぺんに起こり過ぎて、頭が「バーーーーーーン!」といく一歩手前。

 ただ、幸いなことに───この場にリズがいない。
 それだけが、ジェイスにとって幸運なことだった。

 ───だってそうだろ?

 あり得ないはずのこと。
 あのアルガスが生存しており──しかも、あの軍団をどうにかして、殲滅しただとか……?

 いや、マジで?

 それだけでなく、ドロップ品をすべて回収?! いやいやいやいやいや…………いやいやいやいや……あ、あり得ないだろう?

 え?
 いや、マジで?

 全然、どうやればそんなことができるのか分からない……。

 王国軍一個師団でも連れていったとか?
 ……んなわけねー。

 3人の顔色が真っ黒になって、土色に染まる頃、3バカの景色はグニャーと歪みつつあった。
 ギルドマスターがいなければ、3人ともバッターーーン! と倒れていただろう。

 だが、それをさせないのもやはりギルドマスターの一言だった。

 彼は素材目録と一緒に、他のギルドから送られてきた近況情報を見ているのだが、そこにある詳報のアルガスの戦果の一文に引っかかりを覚えた。

「───で、この素材と、これは高く買い取らさせていただきます……。ん? なんだこれ、」

 アルガスの戦果詳報、備考欄。

「……なお、アルガス・ハイデマン氏の「将軍級討伐」改め「軍団級の阻止」のクエストは達成を確認。しかし、達成の戦果は『光の戦士たちシャイニングガード』にあらず、アルガス・ハイデマン氏およびポーターのミィナ氏の二名の戦果とすることを特に言及するものなり──……って、なんだこりゃ?」



 しーーーーーーーーーーーーーーーーん。



「───『光の戦士たちシャイニングガード』の戦果じゃない? んん? どういうことだ?───ジェイス殿……って、」

 ───あれ?

 いつの間にかもぬけの殻になっていた、応接セット周り。
 ジェイスはおろか、メイベルもザラディンもいない。

「…………??? えーっと、御貯金の御引き出しは───」


 もちろん答えるものはどこにもいなかった。


 一方、
 「光の戦士たちシャイニングガード」逗留中の宿にて。

「ぶはっぶはー……」
「げほげほっ!」
「ぶふーーー……!」

 3人とも息がつまったかのように、ジェイスの泊まる大部屋に入って、ようやくく息をついた。
 それまで、まるで深海にでもいるかのように息もできない程の状態で、それほどまでに衝撃を受けていたのだ。

「うげぇ……水とってくれ」
「あぅー……私にもちょうだい」
「はいはい……ぐびぐび、はい」

 ザラディンから水差しを受け取り、グビグビと飲み干すジェイス達。

「ぷっはー…………あー、死ぬかと思った」
「げっぷー…………な、なにがどうなってんの?」
「むぅ………。聞いた話をまとめるに───アルガスが、あの軍団レギオンを殲滅し、ベームスに無事帰還したようですな」

 ザラディンが眉間にしわを寄せつつムムム……と唸っている。

 ───は?

「ありえねーだろ? なんかの誤報だろ?」
「だよねー……。あのノロマ野郎だよ?」
「………………ですが、他に何が考えられますか?」

 それを言われてしまうと、何も言えなくなるジェイス達。
 少なくともギルドが意図的に誤報を流すのでもない限り、軍団レギオンの殲滅なんて誇大妄想に近いものを垂れ流すはずがない。

 仮にそれが嘘や誤報だったならば、そのせいで軍団を取り逃がしでもしたらドエライことになるのだ。

 ゆえに慎重。
 この手の情報は、慎重に慎重を期されるべきなのだ。
 ギルド側とて、何度も精査したことだろう。誰だって、こんな荒唐無稽な話を鵜呑みにするはずがない。

 つまり、ベームスから、他のギルドに戦果の詳報が伝わっている時点で、精査済みの情報で、その内容物はほぼ真実だという事。

「………………アルガスが生きている?」
「し、しかも、軍団レギオンを殲滅って───私たちまずくない?」
「だ、大丈夫ですよ。直接手を下したわけではありませんし……」

 だが見捨てたのは事実。

 格安で購入したポーターならいざ知らず、曲がりなりにもパーティのメンバーを見捨てて逃走。
 しかし、
 それが一転して、見捨てられた側が一人奮戦して、敵を殲滅したなんてことが世間に知られれば……。

 いや。
 既にヤバイ……。

 だって、アルガスの報告はギルドに出回っている。
 あの野郎がわざわざ備考欄に「───ほにゃらら」と付け加えるくらいには、悪意を籠めて!! くそッ!

「あんのッ野郎ぉ~。ノロマのくせに舐めた真似しやがって……」
「いちいち備考欄に追加とか陰険よ~」
「これは許せませんねぇ。何か手を打つべきでしょう。───まずは、情報の収集です」

 そうして、ジェイス達は、あーでもない、こーでもないと頓珍漢な逆恨みでアルガスに害意を向けようとしていた。

 知らぬは、アルガス本人と高熱でうなされているリズのみ……。

 そして、リリムダの街には一日遅れでとんでもない情報が舞い込んでくることになる。
 そう、くだんのアルガスの起こした大事件について…………。

 それは皆さんご存知の、軍団殲滅の報告の直後に起こった大事件についてであり、この街にも深ーーく関わることだった──……。
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