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第8話「重戦車は蹂躙し、殲滅する──」
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ズダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダッ!!
「げぎゃぁぁあ……!」
「ごるぁぁ…………!」
ドサッ、
バタン………………。
「重戦車」の主砲同軸機銃が、最後の群れを薙ぎ倒し荒野に静寂が戻った。
いや、正確には小さな息遣いと、重々しいエンジンの重低音のみ。
『ふー…………終わったかな?』
「す、すごい……」
ティーガー戦車のキューポラから顔を出したミィナは、ポカーンと口を開けて茫然としている。
それはアルガスとて同じ。
まさか、軍団をたった一人で殲滅してしまうなんて、正直───自分でも信じられない。
それにしても……───。
『感覚的には、右ストレートで戦車砲。そして、左のジャブで同軸機関銃か……』
「ふぇ?」
重戦車化したアルガスの上で、キョロキョロとあたりを見回すミィナ。
きっと、アルガスがどこで喋っているのかわからないのだろう。
うん……。
俺も分からん。
ティーガー戦車の体を、遠くから俯瞰して見ることができないので何とも言えないけれども、多分───砲塔の付け根あたりで声が出せている気がする。
そして、戦車内には車内スピーカーというものがあって、ヘッドセット越しに聞くことができるらしい。
らしい───というのは、
実は、戦闘中に幾度もヘルプを開いたりして確認したことや、自分自身に流れ込んできた天職の情報開示で知り得たものだ。
それによると、アルガスは重戦士から、「重戦車」という希少職にランクアップしたということだけは間違いないらしい。
つまり、無敵の装甲と、無敗の火力───最強無比の天職、それが「重戦車」だ。
ただ、大火力を誇る88mm戦車砲は、一度「重戦車」化した場合は、当初から装填されている弾を撃ってしまえば、装弾数が一発しかないのでここぞという時しか使いえないらしい。
二発目を討つには「再装填」が必要だというが……うむむむ。
どうやるんだ?
装填手が必要らしいが……。
そして、同軸機銃のMG34は左ジャブを放つ感覚で発射できる。だが、これも弾数制限がある。
再装填は以下略───。
だけど、ゴブリンやオーガ程度なら、装甲と重量を盾に履帯で轢き潰してしまえるのは強みだろう。
実際、さっきの軍団のほとんどは、重戦車による履帯の蹂躙により仕留めたものばかり。
連中、グッチャグチャだ───。
おかげで脅威となるものは、もうどこにもない。
希少職『重戦車』……。
って、ユニーク過ぎるだろう?!
とはいえ、急死に一生を得たのも事実。
(なんにしても、ありがたい───助かったよ。ヨーロッパの覇者ティーガーⅠよ……)
───さて……そろそろいいだろうか。
『ミィナ。ちょっと離れてろ』
「へ? うん─────って、きゃあ!!」
むん!
重戦車化──────解除!!
ブワッ──────!!!!
眩い光が巻き起こり、アルガスの体が重戦車の状態から急激に収束していく。
そして、ボロボロの鎧をまとったアルガスがそこに──────……。
「きゃぁぁぁあーー!」
「───よっと……!」
重戦車の上でワタワタとしていたミィナ。
足場がなくなったことで、空中をクルクルと舞う。
それを危なげなくキャッチし、お姫様抱っこ。
そして、アルガスは疲れの見える表情で、力なく笑った。
「危険な目にあわせたな……ごめんよ」
フルフルと首を振って否定するミィナ。
「おじ…………アルガスさん、助けてくれたよ?」
「当然だろ」
ニッ。と不器用な笑いを浮かべるアルガス。
腕の中のミィナと、以前救えなかったポーターの少女が重なり、胸がチクりと痛む。
だが…………………………。
「───今回は守れた……。(なぁ、少しは許してくれるかい?)」
「え?」
不思議そうなミィナに、
「いや、こっちの話だ。さ、軍団は倒したし───……一度、街に帰ろうか?」
「は、はい」
ぐーーーーきゅるるる……。
「はぅぅ……」
安心したことで、急にお腹が鳴るミィナ。
恥ずかしそうに頬を染め、アルガスの腕に顔を隠してモジモジとする。
「はは。お腹がすくってことが元気な証拠だ……。こんな場所だけど、簡単な食事にするか?」
「う、うん!!」
大量のモンスターの死骸が散らばる中、とても食事をとるような環境ではないけども、人はどんな場所でも腹は減るのだ。
幸い、死体を漁りに来る魔物もここには近づかない。
……というより、それすらも殲滅してしまったのだから当然だろう。
「───それにしても、ジェイスの奴……」
ただ逃げるだけならまだしも、ミィナまで危険に晒しやがった。
今度顔を見たら、問答無用でぶん殴ってやらないとな!
こう……。ブワッッキーーーーンとな!
もう、パーティを首になろうが知るかッ!
リズも連れ戻して、あいつ等とは縁を切る───もう決めた。
お国の勅命なんぞ知るかッ!!
「おじ─────アルガスさん? どうしたの?」
「なんでもない。───あぁ、食料出してもらってもいいか?」
ポンと、軽く頭を撫でてやると恥ずかしそうに顔を伏せたミィナが、異次元収納袋を呼び出し、ゴソゴソと異空間から食材を取り出していく。
そういえば、ジェイス達……。
飯も持たずに、次の街に行けるのだろうか?
元の街とは逆方向に駆けて行ったけど、次に街までこの荒野を突っきるのに、どれほど日がかかるやら……。
(……くれぐれも、俺のリズにだけは傷をつけてくれるなよッ!)
本音ではすぐに追いかけたい……。
けれども、安易に追いかけても追いつけるとは思えない。
まずは体勢を立て直して、腰を据えて追いかけよう。
───リズを嫁にやった覚えはないからな! ジェイス……!!
ミィナの手によって、タワーシールドの裏に並べられていく食材を見ながらアルガスは決意を新たにした。
「げぎゃぁぁあ……!」
「ごるぁぁ…………!」
ドサッ、
バタン………………。
「重戦車」の主砲同軸機銃が、最後の群れを薙ぎ倒し荒野に静寂が戻った。
いや、正確には小さな息遣いと、重々しいエンジンの重低音のみ。
『ふー…………終わったかな?』
「す、すごい……」
ティーガー戦車のキューポラから顔を出したミィナは、ポカーンと口を開けて茫然としている。
それはアルガスとて同じ。
まさか、軍団をたった一人で殲滅してしまうなんて、正直───自分でも信じられない。
それにしても……───。
『感覚的には、右ストレートで戦車砲。そして、左のジャブで同軸機関銃か……』
「ふぇ?」
重戦車化したアルガスの上で、キョロキョロとあたりを見回すミィナ。
きっと、アルガスがどこで喋っているのかわからないのだろう。
うん……。
俺も分からん。
ティーガー戦車の体を、遠くから俯瞰して見ることができないので何とも言えないけれども、多分───砲塔の付け根あたりで声が出せている気がする。
そして、戦車内には車内スピーカーというものがあって、ヘッドセット越しに聞くことができるらしい。
らしい───というのは、
実は、戦闘中に幾度もヘルプを開いたりして確認したことや、自分自身に流れ込んできた天職の情報開示で知り得たものだ。
それによると、アルガスは重戦士から、「重戦車」という希少職にランクアップしたということだけは間違いないらしい。
つまり、無敵の装甲と、無敗の火力───最強無比の天職、それが「重戦車」だ。
ただ、大火力を誇る88mm戦車砲は、一度「重戦車」化した場合は、当初から装填されている弾を撃ってしまえば、装弾数が一発しかないのでここぞという時しか使いえないらしい。
二発目を討つには「再装填」が必要だというが……うむむむ。
どうやるんだ?
装填手が必要らしいが……。
そして、同軸機銃のMG34は左ジャブを放つ感覚で発射できる。だが、これも弾数制限がある。
再装填は以下略───。
だけど、ゴブリンやオーガ程度なら、装甲と重量を盾に履帯で轢き潰してしまえるのは強みだろう。
実際、さっきの軍団のほとんどは、重戦車による履帯の蹂躙により仕留めたものばかり。
連中、グッチャグチャだ───。
おかげで脅威となるものは、もうどこにもない。
希少職『重戦車』……。
って、ユニーク過ぎるだろう?!
とはいえ、急死に一生を得たのも事実。
(なんにしても、ありがたい───助かったよ。ヨーロッパの覇者ティーガーⅠよ……)
───さて……そろそろいいだろうか。
『ミィナ。ちょっと離れてろ』
「へ? うん─────って、きゃあ!!」
むん!
重戦車化──────解除!!
ブワッ──────!!!!
眩い光が巻き起こり、アルガスの体が重戦車の状態から急激に収束していく。
そして、ボロボロの鎧をまとったアルガスがそこに──────……。
「きゃぁぁぁあーー!」
「───よっと……!」
重戦車の上でワタワタとしていたミィナ。
足場がなくなったことで、空中をクルクルと舞う。
それを危なげなくキャッチし、お姫様抱っこ。
そして、アルガスは疲れの見える表情で、力なく笑った。
「危険な目にあわせたな……ごめんよ」
フルフルと首を振って否定するミィナ。
「おじ…………アルガスさん、助けてくれたよ?」
「当然だろ」
ニッ。と不器用な笑いを浮かべるアルガス。
腕の中のミィナと、以前救えなかったポーターの少女が重なり、胸がチクりと痛む。
だが…………………………。
「───今回は守れた……。(なぁ、少しは許してくれるかい?)」
「え?」
不思議そうなミィナに、
「いや、こっちの話だ。さ、軍団は倒したし───……一度、街に帰ろうか?」
「は、はい」
ぐーーーーきゅるるる……。
「はぅぅ……」
安心したことで、急にお腹が鳴るミィナ。
恥ずかしそうに頬を染め、アルガスの腕に顔を隠してモジモジとする。
「はは。お腹がすくってことが元気な証拠だ……。こんな場所だけど、簡単な食事にするか?」
「う、うん!!」
大量のモンスターの死骸が散らばる中、とても食事をとるような環境ではないけども、人はどんな場所でも腹は減るのだ。
幸い、死体を漁りに来る魔物もここには近づかない。
……というより、それすらも殲滅してしまったのだから当然だろう。
「───それにしても、ジェイスの奴……」
ただ逃げるだけならまだしも、ミィナまで危険に晒しやがった。
今度顔を見たら、問答無用でぶん殴ってやらないとな!
こう……。ブワッッキーーーーンとな!
もう、パーティを首になろうが知るかッ!
リズも連れ戻して、あいつ等とは縁を切る───もう決めた。
お国の勅命なんぞ知るかッ!!
「おじ─────アルガスさん? どうしたの?」
「なんでもない。───あぁ、食料出してもらってもいいか?」
ポンと、軽く頭を撫でてやると恥ずかしそうに顔を伏せたミィナが、異次元収納袋を呼び出し、ゴソゴソと異空間から食材を取り出していく。
そういえば、ジェイス達……。
飯も持たずに、次の街に行けるのだろうか?
元の街とは逆方向に駆けて行ったけど、次に街までこの荒野を突っきるのに、どれほど日がかかるやら……。
(……くれぐれも、俺のリズにだけは傷をつけてくれるなよッ!)
本音ではすぐに追いかけたい……。
けれども、安易に追いかけても追いつけるとは思えない。
まずは体勢を立て直して、腰を据えて追いかけよう。
───リズを嫁にやった覚えはないからな! ジェイス……!!
ミィナの手によって、タワーシールドの裏に並べられていく食材を見ながらアルガスは決意を新たにした。
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