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Episode➃ 最後の一滴
第22章|折口の敗北? <8>突然の呼び出し
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<8>
結局、俺が寝ていた場所は池袋駅近くの奥まった住宅地と判明した。ファストフード店で熱いコーヒーを飲んだあと、会社には体調不良で休むという連絡を入れたが、それを最後に携帯の電池は切れた。
欠勤連絡の電話に出るのが、人事の中泉や支店長だったらどうしようと動悸がしたが、あまり関わりのない営業社員が電話に出てくれたので助かったとホッとした。
これまでさんざん当日朝の欠勤連絡を入れてきた俺だが、突発的に仕事に穴をあけることに、なんの罪悪感も持たないというわけではなかった。それなりには申し訳ない気持ちになっている。
特に今回みたいに、前日、会社に夜中まで拘束されていたというわけでもなく、単に寝過ごしてしまったような日は…………。
ただ、今日の体調はすごく悪かった。
おそらく唐田さんとの食事の前にシアナマイドを飲んでいたせいだろう。
下戸体質になる薬、とは知っていたが、俺は優等生患者だったのでシアナマイドを飲んでから飲酒したのは昨日が初めてだった。しかも、もともと酒はかなり飲める体質だったので、“下戸になる”という言葉の真の意味をわかっていなかった。
極端に酒の分解が弱い人間にとっては、二日酔いの辛さも、生死を分けるレベルの体調不良になるということを、今日初めて知ったのだ………。
――――おぇぇぇ。マジで具合悪いけど、今日は夕方から、織田さんのお宅に行って打ち合わせの約束がある……それだけは這ってでも行くことにしよう。
――――先に家に帰って、風呂に入らないとな………。ゴミ置き場で寝てたから……。
アルコール依存症、一日ホームレス体験。
結局、唐田さんから持ち掛けられた人生相談も、まともに聞いてあげていない。
どんどん自分が、人生の坂道を転げ落ちているように思えて、いつまで普通の下のほう、でいられるかが不安になる。
***********************************
午後、電車を乗り継いで自宅に戻った。
その頃には、だるさはだいぶ回復してきたし、携帯電話も無事に充電できた。
唐田さんからの連絡は特になかったようだ。
まぁ、状況的に色気のある展開は起きなかったみたいだし、出社したタイミングで謝って話を聞けばいいや。
財布から現金がなくなっていたから、食事代くらいはおごってあげていると思うし。多分………。
確信はないけど………。
熱いシャワーを浴びて、設計の伏野さんが作ってくれた提案を準備し、織田さんとの打ち合わせに向かおうとしたその時。タイミングを見計らったように電話が鳴った。
―――――あ。会社からだ………。今日は休むって連絡しておいたのにな。なんだろう……。
電話が切れないうちに応答しなくてはと、焦って緑の通話ボタンを押すと、電話を耳に付ける前から、つんざくような支店長の怒鳴り声が聞こえた。
「折口ィ!!! オラ、テメェ、ふざけんじゃねぇぞ!!! パートナー社員にセクハラしやがって!!! 会社で大問題になってる。今すぐ支店に来い!!! 今、すぐにだ!!! 」…………。
結局、俺が寝ていた場所は池袋駅近くの奥まった住宅地と判明した。ファストフード店で熱いコーヒーを飲んだあと、会社には体調不良で休むという連絡を入れたが、それを最後に携帯の電池は切れた。
欠勤連絡の電話に出るのが、人事の中泉や支店長だったらどうしようと動悸がしたが、あまり関わりのない営業社員が電話に出てくれたので助かったとホッとした。
これまでさんざん当日朝の欠勤連絡を入れてきた俺だが、突発的に仕事に穴をあけることに、なんの罪悪感も持たないというわけではなかった。それなりには申し訳ない気持ちになっている。
特に今回みたいに、前日、会社に夜中まで拘束されていたというわけでもなく、単に寝過ごしてしまったような日は…………。
ただ、今日の体調はすごく悪かった。
おそらく唐田さんとの食事の前にシアナマイドを飲んでいたせいだろう。
下戸体質になる薬、とは知っていたが、俺は優等生患者だったのでシアナマイドを飲んでから飲酒したのは昨日が初めてだった。しかも、もともと酒はかなり飲める体質だったので、“下戸になる”という言葉の真の意味をわかっていなかった。
極端に酒の分解が弱い人間にとっては、二日酔いの辛さも、生死を分けるレベルの体調不良になるということを、今日初めて知ったのだ………。
――――おぇぇぇ。マジで具合悪いけど、今日は夕方から、織田さんのお宅に行って打ち合わせの約束がある……それだけは這ってでも行くことにしよう。
――――先に家に帰って、風呂に入らないとな………。ゴミ置き場で寝てたから……。
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結局、唐田さんから持ち掛けられた人生相談も、まともに聞いてあげていない。
どんどん自分が、人生の坂道を転げ落ちているように思えて、いつまで普通の下のほう、でいられるかが不安になる。
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午後、電車を乗り継いで自宅に戻った。
その頃には、だるさはだいぶ回復してきたし、携帯電話も無事に充電できた。
唐田さんからの連絡は特になかったようだ。
まぁ、状況的に色気のある展開は起きなかったみたいだし、出社したタイミングで謝って話を聞けばいいや。
財布から現金がなくなっていたから、食事代くらいはおごってあげていると思うし。多分………。
確信はないけど………。
熱いシャワーを浴びて、設計の伏野さんが作ってくれた提案を準備し、織田さんとの打ち合わせに向かおうとしたその時。タイミングを見計らったように電話が鳴った。
―――――あ。会社からだ………。今日は休むって連絡しておいたのにな。なんだろう……。
電話が切れないうちに応答しなくてはと、焦って緑の通話ボタンを押すと、電話を耳に付ける前から、つんざくような支店長の怒鳴り声が聞こえた。
「折口ィ!!! オラ、テメェ、ふざけんじゃねぇぞ!!! パートナー社員にセクハラしやがって!!! 会社で大問題になってる。今すぐ支店に来い!!! 今、すぐにだ!!! 」…………。
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