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Episode➃ 最後の一滴

第14章|『シューシンハウス』営業社員 折口勉の休日 <1>水曜日の昼下がり 【Episode④はじまり】

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―――山田のヤツ、今頃どうしているんだろうな………。



 誰ひとり来なかった“集会”を定刻に終え、集会所の鍵を受付に返し、俺はブラブラと道を歩き、公園を目指した。

 うっすらと、今日こそは人間同士のができる機会に恵まれるかもしれない、と期待していたのだが、思いは儚く裏切られてしまった。


こんな日はベンチで手持ちの小説でも読んで、適当に時間を潰すのがいいだろう。そう思った。


 時間は昼の12時を回ったところだ。軽い空腹を感じた俺は、コンビニに立ち寄って、昼飯を買うことにした。最近気になる、栄養バランス。サラダを買おうか。いや、やっぱり牛丼にしよう。
家庭的な温かみとは違うけれど、日本全国どこで買っても均質な味を保証してくれるであろう、味偏差値48を決して下回らないジャパニーズ・コンビニ・フードを手にしてレジに向かう途中、ドリンクの棚が目に入った。


 脳裏に、--やめといたほうがいいんじゃないの--、という警告が一瞬チラついた気がしたが、その思いを振り払うように、棚からストロング缶を取った。1本でいいか。少し迷ったが、2本手に取った。本当は3本目にも指が掛かったが、それは贅沢すぎる! と思った。40代半ばになっても、思うがままに散財できるほどの給料は貰えていないのだ。


 俺はその日、開催予定だった(というか開催はされたが誰も来なかった)“哲学カフェ”のレジュメを入れたエコバッグを持っていた。買った酒はエコバッグに入れ、牛丼のほうは手に持ってコンビニを出た。温かい牛丼が手に煩わしく思われない、涼やかな秋の空気が心地良かった。
 

 このあたりは自宅からそう遠くないし、毎月“哲学カフェ”を開催しているので、ある程度の土地勘があるエリアだ。コンビニを出た先には公立小学校と、隣接された児童公園があることを知っている。そのベンチで昼飯を食べよう、と考えて歩いた。


 座れるベンチを探すまで、食べ物や飲み物を開けるのは行儀が悪い。だが、喉が鳴った。

いそいそと牛丼をエコバッグに入れ直し、ストロング缶を取りだし、プルタブを開けて、口に注ぎ込む。


ささやかな酒宴………。ひとりきりの水曜日だ。

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