『ハタオト！～働くオトナの保健室～（産業医と保健師のカルテ）』→“走るオトナの保健室、あなたの会社にもお伺いします。”

Episode③ 魂の居場所

第12章｜みんなの記憶に残るもの ＜13＞減っていく体重、増えていく体重（鈴木風寿の回想 その7）

＜13＞

その頃、広瀬さんの上司である大山さんとは、面談後、毎回のように打ち合わせをしていた。

大山さんは広瀬さんのできなくなった仕事まで担当して、献身的に部下をサポートしていた。

しかし、広瀬さんが病のために徐々に痩せていくのとは対照的に、
大山さんの体重はみるみる増えていった。

大山さんは一度も文句を言わなかったが、
一人分の仕事ができなくなった広瀬さんの代わりに、大幅に業務が増加した大山さんに負担がかかっていることは、見た目ではっきりとわかった。

過重労働者リストの常連となり、体重が95kgを超え、BMIが32に増えてしまった大山さんに対し、産業医の立場としては「残業のしすぎは健康リスクを上げる」「健康のためもう少し体重も減らすように」と言わざるを得なかったが、背景にある事情も知っているだけに、もどかしさが残った。