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Episode② 港区ラプソディ
第9章|弱肉強食の世界 <23>トモコと私が仲良くなったワケ
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<23>
ACLS講習は、講義、実技、テストの三部構成で、2日がかりで行われた。
ACLSの参加者は、医療者ばかりだ。基本的な呼吸確保、心臓マッサージなどは、とうぜん素早く正確に実施できる前提で、さらに発展的な内容……、心電図の読み取り、投与薬剤の選定、除細動の適切な使用などを習っていく。
その内容はかなり複雑で、難しかった。
参加者の中には若いドクターも沢山いて、ふだん救急外来をやらない科の先生達は、お医者さんでも真剣に講義を聞いてメモをとっていたほどだ。
講義のあとの実習は、数名ずつのグループに分けて行われた。
グループごとに一体、赤いジャージを着せられた救命講習訓練専用のマネキン人形が準備されていて、それをチームメンバーが取り囲み、実習を受ける。
このマネキンには、心電図の電極を付けると複数の波形を出す機能、心臓マッサージの有効性を判定する機能などがついている。気管チューブ挿管の練習ができるように、喉の奥に疑似的に気道も作られている。
トモコと私は、その時、同じ実習グループに振り分けられた。
私は転職組だし、大きい総合病院の違う病棟で働いていたから、その日までトモコのことを知らなかった。
トモコは、美人だけどちょっとキツそうで、私は最初、苦手なタイプかな? ……って思っていたんだ。
だけど、実習が始まると、手つきが鮮やかで、急性期ナースの鏡!
ってカンジだった。講習指導員にも堂々と返事してて、カッコイイな~って、思った。
休憩時間にトモコから声をかけてくれて、初めて話した。
私たちが同い年だってことも、その時に知った。
実習の合間に挟まれる休憩時間のたびにちょっとずつ話して、打ち解けていった。
講習会の2日目、ACLSの仕上げで、1人ずつ皆の前で、習った心肺蘇生の手順を実演することになった。
でも……その時、またいつものアレが来て、強いめまいがして、私、心肺蘇生の実演が、できなくなってしまったんだ。
――――失敗する、失敗する、失敗する、失敗する、失敗する、失敗する、失敗する、失敗する、失敗する、失敗する、失敗する、失敗する、失敗する。
――――助けられない、助けられない、助けられない、助けられない、助けられない、助けられない、助けられない、助けられない、助けられない、助けられない、助けられない、助けられない、助けられない……
頭の中にテレパシーの“声”が響いて、過呼吸気味になって、手が止まってしまった私を見た誰かが、笑いながら言った。
――――足立さん、またァ?? あの子、ナース失格だよね。普段から、すぐああなるらしいよ。早く辞めたらいいのにね。
――――ほんとだよ。毎日患者さんの世話で忙しいのに、病気のスタッフなんか、邪魔なだけ、だよね。
その時だった。トモコの声が聞こえた。
「はぁッ!? そんなこと言うヤツのほうが、医療者失格だわ!! 」
トモコが駆け寄ってきて言った。
「足立さん、具合悪いの? 大丈夫。こっちでいったん、休みなよ」
実習会場でみんなのさらし者になっていた私の手を引いて、トモコが部屋の外に連れ出してくれた。
廊下でトモコが言った。
「インストラクターには、あとで実演して見せたらいいんだから、大丈夫だよ。足立さん、練習の時は手順わかってたでしょ? 」
「ありがとう……」
涙がこぼれた。
トモコが、ポケットティッシュを差し出してくれた。
それ以来、トモコとはちょくちょく、プライベートで遊ぶようになった。
ACLS講習は、講義、実技、テストの三部構成で、2日がかりで行われた。
ACLSの参加者は、医療者ばかりだ。基本的な呼吸確保、心臓マッサージなどは、とうぜん素早く正確に実施できる前提で、さらに発展的な内容……、心電図の読み取り、投与薬剤の選定、除細動の適切な使用などを習っていく。
その内容はかなり複雑で、難しかった。
参加者の中には若いドクターも沢山いて、ふだん救急外来をやらない科の先生達は、お医者さんでも真剣に講義を聞いてメモをとっていたほどだ。
講義のあとの実習は、数名ずつのグループに分けて行われた。
グループごとに一体、赤いジャージを着せられた救命講習訓練専用のマネキン人形が準備されていて、それをチームメンバーが取り囲み、実習を受ける。
このマネキンには、心電図の電極を付けると複数の波形を出す機能、心臓マッサージの有効性を判定する機能などがついている。気管チューブ挿管の練習ができるように、喉の奥に疑似的に気道も作られている。
トモコと私は、その時、同じ実習グループに振り分けられた。
私は転職組だし、大きい総合病院の違う病棟で働いていたから、その日までトモコのことを知らなかった。
トモコは、美人だけどちょっとキツそうで、私は最初、苦手なタイプかな? ……って思っていたんだ。
だけど、実習が始まると、手つきが鮮やかで、急性期ナースの鏡!
ってカンジだった。講習指導員にも堂々と返事してて、カッコイイな~って、思った。
休憩時間にトモコから声をかけてくれて、初めて話した。
私たちが同い年だってことも、その時に知った。
実習の合間に挟まれる休憩時間のたびにちょっとずつ話して、打ち解けていった。
講習会の2日目、ACLSの仕上げで、1人ずつ皆の前で、習った心肺蘇生の手順を実演することになった。
でも……その時、またいつものアレが来て、強いめまいがして、私、心肺蘇生の実演が、できなくなってしまったんだ。
――――失敗する、失敗する、失敗する、失敗する、失敗する、失敗する、失敗する、失敗する、失敗する、失敗する、失敗する、失敗する、失敗する。
――――助けられない、助けられない、助けられない、助けられない、助けられない、助けられない、助けられない、助けられない、助けられない、助けられない、助けられない、助けられない、助けられない……
頭の中にテレパシーの“声”が響いて、過呼吸気味になって、手が止まってしまった私を見た誰かが、笑いながら言った。
――――足立さん、またァ?? あの子、ナース失格だよね。普段から、すぐああなるらしいよ。早く辞めたらいいのにね。
――――ほんとだよ。毎日患者さんの世話で忙しいのに、病気のスタッフなんか、邪魔なだけ、だよね。
その時だった。トモコの声が聞こえた。
「はぁッ!? そんなこと言うヤツのほうが、医療者失格だわ!! 」
トモコが駆け寄ってきて言った。
「足立さん、具合悪いの? 大丈夫。こっちでいったん、休みなよ」
実習会場でみんなのさらし者になっていた私の手を引いて、トモコが部屋の外に連れ出してくれた。
廊下でトモコが言った。
「インストラクターには、あとで実演して見せたらいいんだから、大丈夫だよ。足立さん、練習の時は手順わかってたでしょ? 」
「ありがとう……」
涙がこぼれた。
トモコが、ポケットティッシュを差し出してくれた。
それ以来、トモコとはちょくちょく、プライベートで遊ぶようになった。
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