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Episode② 港区ラプソディ

第7章|六本木の超高級カラオケ店 <3>凄いメンツ

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<3>

 メンズを待つあいだに聞いた話によると、今日来る国会議員さんとMiekoさんは、もともと知り合いだという。


“ふだん港区界隈にいなさそうな普通の女の子”を探していた議員さんに、Meikoさんがトモコの写真を見せてみたところ(『イースタグラム』にアップしていた、ナース服姿の写真)、それが議員先生のハートにズキュンと刺さり、今回のカラオケ会に呼ばれることになった……という流れらしい。


確かに、トモコは美人だ。

目鼻立ちのはっきりした、エキゾチック美人。


そして私は……どちらかというと顔も中身も地味なほうだ。
だからトモコと飲み会に行くと、男性の人気は、華やかでノリも良いトモコに集中する。今日、私なんかが付いて来て良かったのかな、と思う。


清楚系セクシータイプのMeikoさん、華やか洋風美人トモコ、そして……平凡すぎる私。



(……この女子メンバー、明らかに私が“ハズレくじ”だよ)
 


********************


 私達に遅れること30分ほどで、男性陣がやって来た。


「じゃ、今日はよろしくお願いしまーす」「ウエーイ」


 部屋に集まったのは、男性3名、女性3名。

メンズは、国会議員のイシダさん、IT系の会社を経営しているタカさん、それに全身真っ黒の服に身を包んだ、投資家のカラスさんだった。

女性は、私と、トモコと、Miekoさん。


「あ、とりあえず適当に食べるもの見繕って。あとドンペリください。普通ので」
IT社長のタカさんがコンシェルジュにオーダーしている。


なんと、このカラオケ店は、部屋ごとに1人コンシェルジュさんが付いているらしい。
私の知っているカラオケのように、呼び出して待たなくても、すぐにオーダーを受け付けてくれるのだ。



「んじゃ、とりま自己紹介っすかね。え、俺から?」カラスさんが、栗色の前髪をいじりながら言った。20代後半くらいだろうか?韓流スターのような、塩顔のイケメンだ。

「カラスです。黒い服とお金と光り物が好きです。金融トレーダーやってて、最高月利は一応、3億円くらいかな、と。会員2万人の投資オンラインサロンも運営してたんスけど、最近、惜しまれて勇退しました~おねしゃーす」

カラスさんが左の人差し指を立てると、フー!フー!と一同が囃し立てた。
言葉の通り、カラスさんの手首には、文字盤にぎっしりとダイヤが埋め込まれた、ゴツい腕時計が光っていた。凄い時計だ……。



「タカです。IT企業の経営者やってます。趣味はサッカーです。普段は仕事忙しくてなかなかサッカー観戦行けないけど……あ、でも去年の年末は、経営者仲間とプライベートジェット借りてカタール行ってきました。ドーハの五つ星ホテルに泊まって、朝から飲んでパーティして、時間になったらスタジアム行ってサッカー観戦、合間に観光もして、めっちゃ楽しかった。俺、一瞬、マジで中東住もうかなと思っちゃったくらいで」


そこでカラスさんが「俺も中東移住、興味あるわ。税金安いんっしょ? 」と言う。


タカさんが答える「そうそう。俺もドバイに住んでる友達とかいてさ……まぁ、とか言いつつ、自分の会社あるし、結局、東京に住んで、ガンガン仕事して、週末は地味に仕事仲間とフットサルやってるだけの毎日、っていう。普段は小さな幸せ大事にして、贅沢は、するときはパーッとしたいタイプかな。美味しいもの食べるのが好きです。よろしくでーす」
一同が拍手する。


タカさんは、見た目だけだと社長とはわからない。30代の普通の青年、って感じで、スーツを着ていたら会社員に見えそうだ。顔はちょっとカエルに似ていて、クラスにいたらあまり印象に残らないような顔立ちだ。でも場慣れしている感じだし、話の内容がお金持ちっぽい。そのせいか、秘めた自信とバイタリティがありそうだった。



「もうさぁ、2人ともさ、自己紹介がさ、尖り過ぎだろぉ!」爆笑しているのは、男性陣の真ん中に座っているイシダさんだ。丸顔でパーツが顔の中心に寄っている。額(ひたい)部分の薄い頭髪も含めて、高校生の時に社会科の授業で見た“江戸からくり 茶運び人形”を、そのまま等身大のオジサンにした感じだな……、と思った。


イシダさんが続ける。「えーっと。オレは、国会議員してるイシダです」

「ヨッ!先生!」タカさんが合いの手を入れた。

「オレさぁ。もうさ、港区のヤツらって“東都カレンダー”の世界観に毒され過ぎてると思うのね。今、赤坂の議員宿舎住んでるんだけど、誘ってもらって飲みに行くとさ、セミプロみたいな女の子ばっかりじゃん?だから今日は普通の出会いがあるといいなって、思って来ました。35歳、独身です」



「イシダちゃん、そんなこと言っちゃって。ホントは『まんじゅうこわい』でしょ? 『港区女子コワイ、港区女子コワイ』って言いながら、この3人の中で一番女遊び激しいの、絶対イシダちゃんだからねっ。二人とも気を付けてねっ。うふふ」Miekoさんが、グラスにお酒を注がれながら茶化した。


「えっ、ていうかMiekoちゃんさぁ、オレが落語好きなの、なんで知ってんの!? 言ったっけ!? さすが姐《あね》さんは耳が早いよ~。ねぇ、タカくん」


 話を振られたタカさんもうなずく。「西麻布のラウンジで先生、噂になってるらしいっスよ。“落語の噺《はなし》で口説いてくる男”って。珍しいから目立つんじゃないですか。でも、なんかそういうのも、知的でイイですよね。頭の良い女性は、グッと来るんじゃないですか」


「やだ、オレ、噂になっちゃってんの!? ヤベ、やりすぎたかな~いい加減自重しないとだなぁ、テヘヘ」


「ふふ。じゃあとりあえず、女性陣の自己紹介の前に、シャンパンでカンパイしましょ~」


「お、ドンペリ。景気良いじゃん」イシダさんがはしゃぐ。



グラスをやり取りする隙に、私とトモコは目を合わせる。


(トモコ……なんかすごいよ、この人達)


(うん……里菜、あたしもビックリしてるよ)


目と目で、お互いの感想を確かめ合った。




『カンパーイ!!!』





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