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人形師 -ドメイカー-
こうして物語は始まる
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あれから長い時間が過ぎた。先生に名前を呼ばれ、いつの間にか眠っていたようだ。慣れないことをしたから寝てしまったのかな?と先生には笑われてしまった。
「あとは私の魔力を与え続けるだけです。こんな時間ですし、食事に向かいましょうか」
「はい!いつものお店に行きましょう!」
「またあのお店ですか?シアもそろそろ大人の味を」
「駄目です!先生がなんと言っても譲れません!」
ガラサカには俺のお気に入りである料理亭がある。そこにあるイシシ焼きが美味しいのなんの。
先生はため息をつきつつも諦めた様子だ。
「しかし、こうして横に並ぶと大きくなりましたね」
「もう20歳ですよ?流石にこれ以上デカくはならないですよ」
「本当かな?」
夜だというのにガラサカは明るい。一番賑やかな時間帯なのかどこも明かりがついている。路上で爆睡したり喧嘩しては飲み比べ合ったりと平和な風景が並んでいる。
「混んでますね」
「やはり別のお店に」
「しませんから!」
ドォンッと大砲のような音が聞こえる。誰かが花火だ、と言って目線が空に向かう。そこには色とりどりの花火が空を占領していた。
「相変わらずガラサカは毎日がお祭りですね」
「先生知ってますか?ガラサカが毎晩花火を上げる理由」
「存じ上げませんね。どのような理由でしょう?」
「両国から来る人たちに向けての願いです。
平和であればあのように花火を上げれることが出来ると。魔力で人を傷付けるのではなく、魔力で人を癒やすのだと」
花火も術式で書かれ発動している。ガラサカでは人同士の殺し合いがないため、あまりあまった魔力を生活やイベントに費やしている。
前にガラサカガイドブックを見たときに豆知識として書かれていた。それを見て先生にドヤ顔で自慢しようとしていたんだ。
「なるほど、ガラサカらしいですね。しかし私にも耳が痛い話ですね」
「でも先生は魔物を倒す人形を作ってるじゃないですか」
「使い手によりますよ。それに今回は人ですからね。
だからシア、相手がどんな評価をされていても自分の目で耳で本人を知ってから評価しなさい。
間違いか正解かを決めるのはあなた自身です」
「はい。・・・なら、やっぱり先生は大丈夫です。
先生は人のために人形を作ってます。俺が見て聞いて評価したんですから、胸張ってください」
「おや、シアの評価だけでは心配ですね」
「なんでですか!」
そう言って俺たちは笑う。
「お待たせしました!2名様でお待ちの方ですね!」
中から店員が出てきて案内される。場所はちょうど窓側で打ち上げられている花火が見える。
「イシシ焼きセットをお願いします!あ、あと珈琲も!」
「イシシ焼きセットに珈琲ですね」
先生が食べないことは分かっているので珈琲を合わせて注文する。料理を待ちながら先生はデータを見、俺は外の景色を眺めている。
3日後にはガラサカを守る戦いが始まる。先生は人形を作るために呼ばれたけど、世話になってる人たちも居るから下から眺めるだけなのは嫌だな。
「先生、今回の依頼終わったらどうしますか?」
「そうですね」
先生は開いていたデータを閉じ、先に運ばれた珈琲を一口飲んでから口を開いた。
「とりあえず修復作業に追われますかね」
「あの数ですもんね・・・」
「まあきちんといただきますが」
眩しい笑顔を放つ先生。先生は優しく厳しい人だけど仕事に関わるゴールドに関しては恐ろしい。作る作業よりも修復作業の方がゴールド回収は多い。扱い方が悪ければ多めに取られる、なんて噂もあるぐらい。
「お待たせしましたー!イシシ焼きセットです!」
テーブルの上にイシシ焼き、炒めし、スープ、皮焼きが並べられる。ざっと3人前の量だけどイシシ焼きの匂いが食欲をそそる。
「いただきまーす!」
「見てるだけでお腹いっぱいになる量ですね・・・」
先生が呆れた声で何かを言った気がするけどスルーだ。イシシ焼きを一枚食べては炒めしを食べる。そしてスープを軽く飲みこんで口の中で味が混ざるのを楽しむ。
んーまい!!本当このお店のこのセットは好きだなぁ。俺が独立出来るようになったらガラサカに人形屋建てようかな。その前に術式を書けるようにしないと・・・。
「ごちそうさまでした!」
5分後、料理は綺麗に食べ終えて追加で珈琲を注文する。食事のあとの珈琲は最高!なんて思いながら先生と話していると、再び花火が放たれた。
「―――血の雨だ!!」
放たれた音と共に赤く濡れた男が店に入ってきた。その姿に店内にいる人は叫び声を上げ、店内は先程よりも騒がしくなる。
「・・・ガヴェルさん、聞こえますか?」
【ザッ――ザッ―――師?―――ザッ―――】
「通信は使えませんね。シア、工房に向かいますよ」
「わかりました!」
店員にゴールドを払い、俺が外を確認する。花火は打ち上がっていない。月は黄色いまま。赤い雨はどこか生臭い・・・これは人の血か、魔物の血か・・・。
「皆さん落ち着いてください。
私は人形師と申します。
今からこの建物に盾を用意しますので、建物から出ないでください。死にたいのであれば止めはしません。
私たちは今からガラサカの使徒と合流します。どうか皆様はここの美味しい珈琲を飲んで休んでください」
懐からチョークを取り出し術式を発動する。大きな盾が現れ建物を包むように設置される。これで魔物や何かが来ても暫くは大丈夫なはずだ。先生がその作業を終える前に工房までの最短距離を表示させ登録する。
走っても10分弱ってところだな。
「あとは私の魔力を与え続けるだけです。こんな時間ですし、食事に向かいましょうか」
「はい!いつものお店に行きましょう!」
「またあのお店ですか?シアもそろそろ大人の味を」
「駄目です!先生がなんと言っても譲れません!」
ガラサカには俺のお気に入りである料理亭がある。そこにあるイシシ焼きが美味しいのなんの。
先生はため息をつきつつも諦めた様子だ。
「しかし、こうして横に並ぶと大きくなりましたね」
「もう20歳ですよ?流石にこれ以上デカくはならないですよ」
「本当かな?」
夜だというのにガラサカは明るい。一番賑やかな時間帯なのかどこも明かりがついている。路上で爆睡したり喧嘩しては飲み比べ合ったりと平和な風景が並んでいる。
「混んでますね」
「やはり別のお店に」
「しませんから!」
ドォンッと大砲のような音が聞こえる。誰かが花火だ、と言って目線が空に向かう。そこには色とりどりの花火が空を占領していた。
「相変わらずガラサカは毎日がお祭りですね」
「先生知ってますか?ガラサカが毎晩花火を上げる理由」
「存じ上げませんね。どのような理由でしょう?」
「両国から来る人たちに向けての願いです。
平和であればあのように花火を上げれることが出来ると。魔力で人を傷付けるのではなく、魔力で人を癒やすのだと」
花火も術式で書かれ発動している。ガラサカでは人同士の殺し合いがないため、あまりあまった魔力を生活やイベントに費やしている。
前にガラサカガイドブックを見たときに豆知識として書かれていた。それを見て先生にドヤ顔で自慢しようとしていたんだ。
「なるほど、ガラサカらしいですね。しかし私にも耳が痛い話ですね」
「でも先生は魔物を倒す人形を作ってるじゃないですか」
「使い手によりますよ。それに今回は人ですからね。
だからシア、相手がどんな評価をされていても自分の目で耳で本人を知ってから評価しなさい。
間違いか正解かを決めるのはあなた自身です」
「はい。・・・なら、やっぱり先生は大丈夫です。
先生は人のために人形を作ってます。俺が見て聞いて評価したんですから、胸張ってください」
「おや、シアの評価だけでは心配ですね」
「なんでですか!」
そう言って俺たちは笑う。
「お待たせしました!2名様でお待ちの方ですね!」
中から店員が出てきて案内される。場所はちょうど窓側で打ち上げられている花火が見える。
「イシシ焼きセットをお願いします!あ、あと珈琲も!」
「イシシ焼きセットに珈琲ですね」
先生が食べないことは分かっているので珈琲を合わせて注文する。料理を待ちながら先生はデータを見、俺は外の景色を眺めている。
3日後にはガラサカを守る戦いが始まる。先生は人形を作るために呼ばれたけど、世話になってる人たちも居るから下から眺めるだけなのは嫌だな。
「先生、今回の依頼終わったらどうしますか?」
「そうですね」
先生は開いていたデータを閉じ、先に運ばれた珈琲を一口飲んでから口を開いた。
「とりあえず修復作業に追われますかね」
「あの数ですもんね・・・」
「まあきちんといただきますが」
眩しい笑顔を放つ先生。先生は優しく厳しい人だけど仕事に関わるゴールドに関しては恐ろしい。作る作業よりも修復作業の方がゴールド回収は多い。扱い方が悪ければ多めに取られる、なんて噂もあるぐらい。
「お待たせしましたー!イシシ焼きセットです!」
テーブルの上にイシシ焼き、炒めし、スープ、皮焼きが並べられる。ざっと3人前の量だけどイシシ焼きの匂いが食欲をそそる。
「いただきまーす!」
「見てるだけでお腹いっぱいになる量ですね・・・」
先生が呆れた声で何かを言った気がするけどスルーだ。イシシ焼きを一枚食べては炒めしを食べる。そしてスープを軽く飲みこんで口の中で味が混ざるのを楽しむ。
んーまい!!本当このお店のこのセットは好きだなぁ。俺が独立出来るようになったらガラサカに人形屋建てようかな。その前に術式を書けるようにしないと・・・。
「ごちそうさまでした!」
5分後、料理は綺麗に食べ終えて追加で珈琲を注文する。食事のあとの珈琲は最高!なんて思いながら先生と話していると、再び花火が放たれた。
「―――血の雨だ!!」
放たれた音と共に赤く濡れた男が店に入ってきた。その姿に店内にいる人は叫び声を上げ、店内は先程よりも騒がしくなる。
「・・・ガヴェルさん、聞こえますか?」
【ザッ――ザッ―――師?―――ザッ―――】
「通信は使えませんね。シア、工房に向かいますよ」
「わかりました!」
店員にゴールドを払い、俺が外を確認する。花火は打ち上がっていない。月は黄色いまま。赤い雨はどこか生臭い・・・これは人の血か、魔物の血か・・・。
「皆さん落ち着いてください。
私は人形師と申します。
今からこの建物に盾を用意しますので、建物から出ないでください。死にたいのであれば止めはしません。
私たちは今からガラサカの使徒と合流します。どうか皆様はここの美味しい珈琲を飲んで休んでください」
懐からチョークを取り出し術式を発動する。大きな盾が現れ建物を包むように設置される。これで魔物や何かが来ても暫くは大丈夫なはずだ。先生がその作業を終える前に工房までの最短距離を表示させ登録する。
走っても10分弱ってところだな。
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