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第三章 紡がれた詩
3-10.男ってそういうものだぜ……
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ドワーフ国【サンタ・サ・スケス】に入った一行は国内第三の規模を誇るリバレーヒルズを訪れていた。ここはドワーフと人間との貿易市場最大の拠点であり、ドワーフの国に在りながら住人の半数が人間という少しばかり変わった街模様となっている。
「これが頼まれていた三本じゃ、品を改めてくれ」
物作りはドワーフの得意とするところであるがリバレーヒルズは魔導具の町、簡単な鍛冶はするが武器を打つような本格的な工房は少なかった。
その内の一軒、口伝てに評判の良かった工房【ブリーチ】に依頼したのはルイスの扱うアンジェラス用の槍の製作。グルカの助言を得て造らせたのは使い道の異なる三種類だった。
「魔法主体となるミスリル製は取り回しの良いよう二・五メートル。多人数を想定した万能性の強いピリルレヒ製は三メートルにしてある」
作らせたのは全てが金属であり、生身で扱うには重すぎる代物。もちろん鍛錬を積んだ騎士ならば使いこなすであろう逸品ではあるが、たかだか二ヶ月やそこら鍛えただけのルイスでは持ち上げるのですら気合のいる重量物である。
「良いのか悪いのか、俺には判断出来ないよ」
白い魔攻機装の登場に苦笑いをする親方は、工房の広いスペースで渡された新品の槍を試し振りするも正直過ぎる告白をするルイスに向けて苦笑いを深めて応えるしかなかった。
鍛冶屋として誇りを持ってした仕事の良さが分からない、これほどやる気の失せる客は他にないだろう。
「まぁ、そんなもんだ」
生身のままで一番長い槍を軽々と持ち上げたグルカは、下から上へとゆっくり見回した後で勢いよく構えて見せる。
その堂々たる居姿は親方を満足させるものであり、先のルイスの情けなさなど何処かに吹き飛んでしまうほど堂に入ったものであった。
「ユリノトレルは良い金属製だ。柔軟性と高度をバランスよく兼ね揃え、長く使っても破損が殆どない。その上、槍には最も重要となるしなりも申し分ない。自分で言うのもなんだが、最高の出来だと豪語できる逸品に仕上がった」
「三・八ってなげぇとは思ったけど、中持ちするとそうでもないんだな。端持ちも出来るってのは良いし、持った感触も振った感触も申し分ない。良い出来だぜ親父、俺が欲しいくらいだ」
他の二本の柄は飾り気のない真っ直ぐな棒に対し、グルカが握るユリノトレルの槍には中心付近と石突のある端、そして二つの中間辺りの三箇所に小さな鍔のような装飾が施され、更にそこには革製の紐で柄巻きがされている。これによりグリップ力を保ちながらも状況に合わせて持ち手を替えることにより長さを調節することが可能となっている。
「そうか。アンタみたいな玄人に認めてもらえれば儂ら職人としても造り甲斐があるというものだ」
堀の深い無骨な顔は強面と言えよう。それでも目を細めてグルカに語りかける店主は一見すると機嫌が良さそうではある。しかし言外に、違いが分からぬルイスが “つまらない客” だと非難している。
それを理解したルイスは苦笑いを浮かべて頬を掻き、申し訳なさそうにするしかなかった。
「親父、俺のはどうなった?」
「もちろん出来とる……これだ」
机に置かれたのは長短二振りの刀と、十枚毎に皮の容れ物に纏められた薄っぺらなナイフが十束。それに加えて黒い柄巻の苦無が二十本。
「苦無はノルンちゃんのだよね?投げナイフなんてどうするんだ?」
「まぁ見てろ」
四重の円が書かれた木の板には無数の穴が空いている。それを見れば弓矢や射撃の練習に使う的だと理解するのは容易かった。
ナイフのケースを一つ取り、的が掛けられているのとは反対の壁際に立ったレーンは指で弾くように留め具を外す。
左の親指で押し上げられたナイフは厚さ四ミリの鉄板を削り出した物。指に軽く挟み、抜き出すと同時に宙を舞った銀色の板は風の抵抗を受けることなく一直線に的へと向かう。
「凄いっ、レーンにこんな特技があったなんて……」
続けざまに放たれた五枚のナイフは中心部に描かれた黒い丸へと競い合うかのように突き立っている。それは達人クラスの命中率であり、人に自慢できる特技だと言えよう。
「おぉっ、こりゃすげぇな」
小さな逆三角に整えた顎髭、それを弄るのは癖なのだろう。組んだ腕の片方を顎に当てながらナイフの突き立つ的へと歩み寄る一人の男。身長はルイスと変わらぬ平均的ではあるものの、そこそこ肉付きの良い身体は逞しさを感じさせる。それに輪をかけるのは日焼けした黒い肌。
桃色の短髪は珍しい髪色であり、それに釣られて目をやれば、裏家業の人間を思わせる強面が目に入り思わず視線を逸らす者も多いことだろう。
「ムーランさん、また会いましたね」
かく言うルイスもその一人ではあったのだが、今がそうであるように、片目を瞑り小さく手を挙げて返事を返すその表情は平素とは打って変わり人懐っこいものであり万人に受ける好青年な印象。そのギャップこそが彼の魅力であり、誰に対しても人見知りせずハッキリとした物言いをする様子が更なる好印象を与え、数日前にこの場で初めて顔を合わせたレーンと意気投合している。
「それくらい少し練習すりゃ誰でも出来るだろ。それより、お前も受け取りか?」
「あぁ。発注したときも同じだったからな、出来上がるのも似たような日取りにはなるだろう。それにしてもまた会うとは……運命を感じたりして?」
「止めろよ、気持ち悪い。そういうのは女に言えや」
「バーカ。俺だって男にゃ興味ねぇよ。冗談はさて置きおやっさん、俺のは?」
「見て分かるじゃろ、今は接客中だ。今時の若者は順番すら守れぬのか……」
苛立たしげな顔でカウンターに乗せてある一振りの刀を手に取るとレーンに向けてズイッと突き出す店主。
苦言に頭を掻くムーランに向け、さも楽しげな笑みを浮かべたレーンがその柄を握れば、同時に引かれた二人の手により漆黒の刀身が姿を現した。
「ほぉぅ、これまたすげぇ刀だな」
美しき曲線を描く黒光するボディ、その外反りを彩るのは細波のような白銀の刃紋。
「もしかしてレーン……」
標準とされる六十センチよりは長く大太刀に分類される一メートルの刃長ではあるものの、一度見たら忘れられぬあの巨大な野太刀には遠く及ばない。
しかし、あまり一般的ではない刀などという武器をわざわざ造らせたのには、レーンの心境を一新した知る人ぞ知る最強の人間であるエヴランスの影響であるのは聞くまでもない。
「自分より勝ると思った相手をリスペクトし、それに近付けるよう努力する。その為に奴の持ち物を模してみた、それだけのことだ」
それでもプライドの高いイメージしかなかったレーンが素直に負けを認めて後追いをするなどルイスからしてみれば意外や意外。刃を立て、下から上へと品定めをするレーンをポカンと見つめてしまったのも仕方のない事だった。
「負けを素直に認めて向上心に転換するとは素晴らしい気概だ。それが俺たち操者の弱点とも言える生身の状態の武力向上というから更に好感度アップだな!」
「いやいや、お前、自分が生身で使う武器を造ったからって褒めてもらいたくて話を強引に捻じ曲げたろ?見え見えなんだよ」
「いや~、バレた? けどよ、実際に戦場に立つ事を考えると、万が一も考えておかなきゃ生き残れる可能性が減るってもんだぜ?」
戦場とは敵味方が入り乱れる混沌とする場所であり、場合によっては魔攻機装同士が戦闘を行うのに混じって生身の兵士までもがドンパチをする。
余力がある内に撤退するのが鉄則ではあるものの、演習や模擬戦とは違い互いに相手を叩きのめす事を目的とした戦争では、たとえ無事でいられたとしても自分のタイミングで撤退出来ることなど稀である。
銃弾や爆弾が行き交う中、もしも魔力が尽きて魔攻機装を維持することが出来なくなったとしたら……何の備えも無い操者に待っているのは “死” のみである。
その為、例え正規軍の操者とて生きて帰るための武術訓練は必須とされており、非正規である傭兵ならなおさら自分の生死に関わりが深い己の鍛錬に時間を費やす。
かく言うムーランも傭兵を始める為に武術道場へ通っており、卒業認定を受けたのを機に自分専用の武器を造るため、わざわざ【サンタ・サ・スケス】を訪れていた。
「まぁ、今やそんなものは常識か」
世界戦争時代では人の育成に時間を取る余裕などどこの国にもありはしなかった。
魔攻機装の戦闘力を少しでも向上させるために一応の武術訓練は施されるものの、万が一に備えての拳銃を渡され戦場へと送り込まれる。
しかし弾数の限られる銃での生き残りは例え生身の兵士だけが相手だったとしても困難を極めるものであり、魔攻機装に狙われたとすればなす術なく散るしか道はなかった。
世界が落ち着きを見せてからというもの、例え勝てなくとも魔攻機装の物理攻撃であれば運が良ければ凌げる可能性のある剣や短槍などの携帯が推奨された。
それと共に、その技術を磨くことで魔攻機装での戦績向上へと繋がり、評価が上がることで収入の向上にも繋がるのだと、ここ数年、レーンも通った紅月家のような武術訓練所への入門が一大ブームとなっている。
「そんなことよりよ、この後飲みに行かね?お互い、相棒が出来た記念っつぅことでよ」
「俺は文無しだぞ?お前の奢りなら付き合ってやる」
「文無しぃ!? まさか、あのボインちゃんがお前の紐なのか!?」
「的は得ているが改めて聞くと嫌な言い方だな」
「全財産を管理されていてカードはおろか、一リロも持たせてもらえないんだよ、な?」
「尻に敷かれてるのか!?」
「黙れグルカ!嫁どころか子供にすら頭の上がらないお前と一緒にするなっ!」
「ええっ!?旦那もですか!!」
男同士でワイノワイノとする三人。女の居ない場所限定のくだらないやりとりではあるものの、そんな三人を置き去りにそっとカウンターから離れた親方がすぐに戻ってきた。
「分かる……気持ちは分かるぞ、若いの」
うんうんと頷きながら何かを悟ったような顔。ムーランの前に注文の品を置くと、その隣に置かれたままになっていた苦無と脇差の横に小さな皮袋がそっと置かれた。
「これが頼まれていた三本じゃ、品を改めてくれ」
物作りはドワーフの得意とするところであるがリバレーヒルズは魔導具の町、簡単な鍛冶はするが武器を打つような本格的な工房は少なかった。
その内の一軒、口伝てに評判の良かった工房【ブリーチ】に依頼したのはルイスの扱うアンジェラス用の槍の製作。グルカの助言を得て造らせたのは使い道の異なる三種類だった。
「魔法主体となるミスリル製は取り回しの良いよう二・五メートル。多人数を想定した万能性の強いピリルレヒ製は三メートルにしてある」
作らせたのは全てが金属であり、生身で扱うには重すぎる代物。もちろん鍛錬を積んだ騎士ならば使いこなすであろう逸品ではあるが、たかだか二ヶ月やそこら鍛えただけのルイスでは持ち上げるのですら気合のいる重量物である。
「良いのか悪いのか、俺には判断出来ないよ」
白い魔攻機装の登場に苦笑いをする親方は、工房の広いスペースで渡された新品の槍を試し振りするも正直過ぎる告白をするルイスに向けて苦笑いを深めて応えるしかなかった。
鍛冶屋として誇りを持ってした仕事の良さが分からない、これほどやる気の失せる客は他にないだろう。
「まぁ、そんなもんだ」
生身のままで一番長い槍を軽々と持ち上げたグルカは、下から上へとゆっくり見回した後で勢いよく構えて見せる。
その堂々たる居姿は親方を満足させるものであり、先のルイスの情けなさなど何処かに吹き飛んでしまうほど堂に入ったものであった。
「ユリノトレルは良い金属製だ。柔軟性と高度をバランスよく兼ね揃え、長く使っても破損が殆どない。その上、槍には最も重要となるしなりも申し分ない。自分で言うのもなんだが、最高の出来だと豪語できる逸品に仕上がった」
「三・八ってなげぇとは思ったけど、中持ちするとそうでもないんだな。端持ちも出来るってのは良いし、持った感触も振った感触も申し分ない。良い出来だぜ親父、俺が欲しいくらいだ」
他の二本の柄は飾り気のない真っ直ぐな棒に対し、グルカが握るユリノトレルの槍には中心付近と石突のある端、そして二つの中間辺りの三箇所に小さな鍔のような装飾が施され、更にそこには革製の紐で柄巻きがされている。これによりグリップ力を保ちながらも状況に合わせて持ち手を替えることにより長さを調節することが可能となっている。
「そうか。アンタみたいな玄人に認めてもらえれば儂ら職人としても造り甲斐があるというものだ」
堀の深い無骨な顔は強面と言えよう。それでも目を細めてグルカに語りかける店主は一見すると機嫌が良さそうではある。しかし言外に、違いが分からぬルイスが “つまらない客” だと非難している。
それを理解したルイスは苦笑いを浮かべて頬を掻き、申し訳なさそうにするしかなかった。
「親父、俺のはどうなった?」
「もちろん出来とる……これだ」
机に置かれたのは長短二振りの刀と、十枚毎に皮の容れ物に纏められた薄っぺらなナイフが十束。それに加えて黒い柄巻の苦無が二十本。
「苦無はノルンちゃんのだよね?投げナイフなんてどうするんだ?」
「まぁ見てろ」
四重の円が書かれた木の板には無数の穴が空いている。それを見れば弓矢や射撃の練習に使う的だと理解するのは容易かった。
ナイフのケースを一つ取り、的が掛けられているのとは反対の壁際に立ったレーンは指で弾くように留め具を外す。
左の親指で押し上げられたナイフは厚さ四ミリの鉄板を削り出した物。指に軽く挟み、抜き出すと同時に宙を舞った銀色の板は風の抵抗を受けることなく一直線に的へと向かう。
「凄いっ、レーンにこんな特技があったなんて……」
続けざまに放たれた五枚のナイフは中心部に描かれた黒い丸へと競い合うかのように突き立っている。それは達人クラスの命中率であり、人に自慢できる特技だと言えよう。
「おぉっ、こりゃすげぇな」
小さな逆三角に整えた顎髭、それを弄るのは癖なのだろう。組んだ腕の片方を顎に当てながらナイフの突き立つ的へと歩み寄る一人の男。身長はルイスと変わらぬ平均的ではあるものの、そこそこ肉付きの良い身体は逞しさを感じさせる。それに輪をかけるのは日焼けした黒い肌。
桃色の短髪は珍しい髪色であり、それに釣られて目をやれば、裏家業の人間を思わせる強面が目に入り思わず視線を逸らす者も多いことだろう。
「ムーランさん、また会いましたね」
かく言うルイスもその一人ではあったのだが、今がそうであるように、片目を瞑り小さく手を挙げて返事を返すその表情は平素とは打って変わり人懐っこいものであり万人に受ける好青年な印象。そのギャップこそが彼の魅力であり、誰に対しても人見知りせずハッキリとした物言いをする様子が更なる好印象を与え、数日前にこの場で初めて顔を合わせたレーンと意気投合している。
「それくらい少し練習すりゃ誰でも出来るだろ。それより、お前も受け取りか?」
「あぁ。発注したときも同じだったからな、出来上がるのも似たような日取りにはなるだろう。それにしてもまた会うとは……運命を感じたりして?」
「止めろよ、気持ち悪い。そういうのは女に言えや」
「バーカ。俺だって男にゃ興味ねぇよ。冗談はさて置きおやっさん、俺のは?」
「見て分かるじゃろ、今は接客中だ。今時の若者は順番すら守れぬのか……」
苛立たしげな顔でカウンターに乗せてある一振りの刀を手に取るとレーンに向けてズイッと突き出す店主。
苦言に頭を掻くムーランに向け、さも楽しげな笑みを浮かべたレーンがその柄を握れば、同時に引かれた二人の手により漆黒の刀身が姿を現した。
「ほぉぅ、これまたすげぇ刀だな」
美しき曲線を描く黒光するボディ、その外反りを彩るのは細波のような白銀の刃紋。
「もしかしてレーン……」
標準とされる六十センチよりは長く大太刀に分類される一メートルの刃長ではあるものの、一度見たら忘れられぬあの巨大な野太刀には遠く及ばない。
しかし、あまり一般的ではない刀などという武器をわざわざ造らせたのには、レーンの心境を一新した知る人ぞ知る最強の人間であるエヴランスの影響であるのは聞くまでもない。
「自分より勝ると思った相手をリスペクトし、それに近付けるよう努力する。その為に奴の持ち物を模してみた、それだけのことだ」
それでもプライドの高いイメージしかなかったレーンが素直に負けを認めて後追いをするなどルイスからしてみれば意外や意外。刃を立て、下から上へと品定めをするレーンをポカンと見つめてしまったのも仕方のない事だった。
「負けを素直に認めて向上心に転換するとは素晴らしい気概だ。それが俺たち操者の弱点とも言える生身の状態の武力向上というから更に好感度アップだな!」
「いやいや、お前、自分が生身で使う武器を造ったからって褒めてもらいたくて話を強引に捻じ曲げたろ?見え見えなんだよ」
「いや~、バレた? けどよ、実際に戦場に立つ事を考えると、万が一も考えておかなきゃ生き残れる可能性が減るってもんだぜ?」
戦場とは敵味方が入り乱れる混沌とする場所であり、場合によっては魔攻機装同士が戦闘を行うのに混じって生身の兵士までもがドンパチをする。
余力がある内に撤退するのが鉄則ではあるものの、演習や模擬戦とは違い互いに相手を叩きのめす事を目的とした戦争では、たとえ無事でいられたとしても自分のタイミングで撤退出来ることなど稀である。
銃弾や爆弾が行き交う中、もしも魔力が尽きて魔攻機装を維持することが出来なくなったとしたら……何の備えも無い操者に待っているのは “死” のみである。
その為、例え正規軍の操者とて生きて帰るための武術訓練は必須とされており、非正規である傭兵ならなおさら自分の生死に関わりが深い己の鍛錬に時間を費やす。
かく言うムーランも傭兵を始める為に武術道場へ通っており、卒業認定を受けたのを機に自分専用の武器を造るため、わざわざ【サンタ・サ・スケス】を訪れていた。
「まぁ、今やそんなものは常識か」
世界戦争時代では人の育成に時間を取る余裕などどこの国にもありはしなかった。
魔攻機装の戦闘力を少しでも向上させるために一応の武術訓練は施されるものの、万が一に備えての拳銃を渡され戦場へと送り込まれる。
しかし弾数の限られる銃での生き残りは例え生身の兵士だけが相手だったとしても困難を極めるものであり、魔攻機装に狙われたとすればなす術なく散るしか道はなかった。
世界が落ち着きを見せてからというもの、例え勝てなくとも魔攻機装の物理攻撃であれば運が良ければ凌げる可能性のある剣や短槍などの携帯が推奨された。
それと共に、その技術を磨くことで魔攻機装での戦績向上へと繋がり、評価が上がることで収入の向上にも繋がるのだと、ここ数年、レーンも通った紅月家のような武術訓練所への入門が一大ブームとなっている。
「そんなことよりよ、この後飲みに行かね?お互い、相棒が出来た記念っつぅことでよ」
「俺は文無しだぞ?お前の奢りなら付き合ってやる」
「文無しぃ!? まさか、あのボインちゃんがお前の紐なのか!?」
「的は得ているが改めて聞くと嫌な言い方だな」
「全財産を管理されていてカードはおろか、一リロも持たせてもらえないんだよ、な?」
「尻に敷かれてるのか!?」
「黙れグルカ!嫁どころか子供にすら頭の上がらないお前と一緒にするなっ!」
「ええっ!?旦那もですか!!」
男同士でワイノワイノとする三人。女の居ない場所限定のくだらないやりとりではあるものの、そんな三人を置き去りにそっとカウンターから離れた親方がすぐに戻ってきた。
「分かる……気持ちは分かるぞ、若いの」
うんうんと頷きながら何かを悟ったような顔。ムーランの前に注文の品を置くと、その隣に置かれたままになっていた苦無と脇差の横に小さな皮袋がそっと置かれた。
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