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第一章 星が集いし町
8.お金稼ぎの生贄にされました
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魔攻機装の製造には、レーンの持つマジックバッグにもかけられている空間魔法が多いに活用されている。
何百何千という膨大な部品を組み合わせる構造上、そのままでは十メートルを超える巨体となってしまう魔攻機装。そこで活躍するのが外装の内面に施された術式で、整備、管理、運用、どれもが扱いやすい二メートルというコンパクトな身体に全てを収めることに成功して完成したのが現在の魔攻機装である。
ディアナの要求したシークァはこの技術を応用した物。
稀に無くはないが、魔攻機装の技術者とは大概がその製造に誇りをもって仕事をする連中ばかりで、自動車などの他の物に技術が転用されることはまだまだ少ない。
「今度はどこ行くんだ?」
しかし空間圧縮技術が生物に与える影響が懸念されることから、完成された道具であるマジックバッグですら生き物を入れるのはご法度とされてきたのだ。魔攻機装のノウハウを活かせば技術的には可能であるものの、人の乗るシークァとなると安全な物が造れるかどうかですら微妙なところである。
「造るのは確定したけど、色々詰め込んだでしょ?ちょっと私が持ってるだけでは費用が心許ないから……」
言葉を切ったディアナは絡めていた腕を解くと、滑らかな身のこなしでレーンの背後を通り抜けて反対側を歩いていたルイスの腕へと鞍替えをした。
「うぇ!?あ……えっと?」
真横に来た彼女の顔は極上の笑みで満たされており、腕に当たる弾力ですらかき消すほどの嫌な予感がルイスを襲う。
「だ・か・らぁ~」
「……だ、だから?」
「お金儲けしない?」
▲▼▲▼
白いウサギ耳を頭に生やしたお姉さんはとても可愛い人ではあった。
だが、ワザと谷間が見えるように胸部をはだけさせたブラウスと、下着が見えそうなほど丈の短いスカートは刺激的で、とてもではないが受付をする格好に相応しいとは思えない。
「ルイス、お前、見過ぎじゃね?」
赤いヒールが床を打つ音の響く地下通路。キュッと締まったお尻が右に左にと動くたびに、その少し上で誘うように白いボンボンのような尻尾が揺れる。
先導してくれるウサギ獣人のお姉さんの後に続いて黙って歩いていれば、魅惑的な後ろ姿を見たい欲求と、見ては駄目だとの自制心が葛藤してチラ見を繰り返していたルイスを面白がり、レーンから揶揄いが入る。
「バッ!?……み、見てないよ!」
その声は当然、お姉さんにも聞こえるもので、慌てて否定するルイスの声は上ずっていた。
その様子こそがレーンとディアナを愉しませ、ニタニタとした笑いが二人の口元を彩る。
「バーカ、折角誘ってくれてるんだ、見ないのはその姉ちゃんに魅力がないって言っているのと同じだぞ?それこそ失礼だろうが」
右にも左にも逃げ道がない事を悟ると大きな溜息が漏れ出る。
その姿を横目で見たお姉さんは長い耳を揺らしてクスリと小さく笑いはしたが、特別なお客様である三人のやり取りに加わることはない。
それからほどなくして足を止めると、一つの扉を開いて中へと促される。
「チュアラン様はすぐにお見えになります。こちらでしばらくお待ち下さい」
丁寧なお辞儀で扉の向こうへと姿を消したウサ耳お姉さん。
代わりにソファーへと案内したのは、真っ直ぐな金髪の間から人間の二倍の長さを誇る尖った耳を覗かせる美人なお姉さんだった。
紅茶を手際良く用意する姿だけでも絵になりそうな素晴らしい容姿。物珍しそうに眺めていたルイスではあったが、丈の短いメイド服に身を包む彼女は良く教育されており、残念ながら一度も目が合うことはなかった。
特徴的な耳とスレンダーな体型、男女問わず美形しかいないと言われるほど見た目に優れる彼女達はエルフと呼ばれる種族だ。しかし繁殖力の弱さから、大きな町でも滅多に見かけない者達でもある。
総じて賢いものの身体が丈夫でないことから貴族等の金持ちの家で働く代わりに保護してもらっていることが多く、この娘も例外ではなく、ここでメイドとして働きながら生活していた。
(そういえば、工房にいたニナもエルフだったな……)
そんな事を考えながら出された紅茶を愉しんでいれば、入って来た扉が慌ただしい音を立てて開け放たれる。
「ああっ、ディアナ!相変わらず惚れ惚れするほど美しい姿だっ!
来るなら一言連絡入れてくれれば迎えに行ったものを……いつ帰って来たんだ?わざわざココに来たって事は俺の求婚を受け入れるって事だよな?」
豪華なソファーが軋むほどの勢いで腰を下ろした大男。筋肉自慢の身体は横にもデカいのだが、身長も二メートル弱と迫力も満点。そのおかげなのか、髪の無い厳つい頭は小さく見えるのだが、頬に傷のある顔が強面である事には変わりがない。
わざわざ端にいるディアナの正面に座ったのは、男の視界には彼女しか入っていなかったから。
あからさまに堅気ではない顔でキラキラとした目をディアナに向ける姿は異様な光景ではあったが、そんな態度が気に入らないレーンは机を思い切り叩いて紅茶のカップを踊らせた。
「過去に何があったかは知らねぇが、コレはもう俺のモノだ」
ソファーにふんぞり返るとディアナの肩に手を回し『自分のモノ』だと見せつけるように引き寄せる。
「あら嬉しいっ、嫉妬してくれるの?」
そうしてやっと向けられた視線は当然のように敵意のあるモノ。
しかし隣で頬を緩めて乙女のように嬉しがるディアナは、何年も前から彼女を知っているチュアランでも見たことのない表情だった。
「ディアナ、ソイツは誰だ?」
殺意すら混じる鋭い視線は隣に座るルイスにでさえ恐怖を感じさせるものではあったのだが、当のレーンは一歩も退く事なく平然と見返している。
視線を交わす二人は一触即発な雰囲気を醸し出していたが、肩に頭を預けたままのディアナは愉しそうに微笑んでいる。
「私のダーリンは帝国の皇子様なのよ?」
「なんだと?……謀反の第一皇子か」
視線を逸らしたのはチュアランの方。焦りの色の混じる困惑した顔に早変わると、正気を疑う目をディアナへと向ける。
この時既にエスクルサに潜伏するレーンを帝国兵が躍起になって探し回っているという情報を得ていたのだ。
「ソイツは国に追われる罪人だぞ?それに加担すればどうなるかくらい想像がつくだろう?悪い事は言わない、ソイツからは手を退くんだ」
身を預けていたソファーから背を離して浅く座り直し、自らの膝に肘を突いて軽く身を乗り出すとディアナの薄紫の瞳を覗き込む。
「もちろん知ってるし、それがどういう意味を持つのかも理解してるわよ?」
「じゃあ、もし俺が……」
「捕まったら生きては帰って来られないでしょうね。でも、私達は捕まったりしないわ。だってチュアラン、ここの主人たる貴方が私達を守ってくれるのよね?」
「お前なぁ……」
「それともぉ、数多いる貴方の女の中で唯一求婚までした私を売りに出すのかしらぁ?
振り向かなかった仕返し?取られた腹いせ?エスクルサの裏を牛耳る貴方がそんな子供みたいな事、しないわよね?」
真似をして浅く腰掛けたディアナは張りのある胸を揺らしてチュアランへと顔を寄せる。
何事かを言いたげに困惑する表情を一頻り楽しむと、子供を相手にするように鼻先を指で突ついてからレーンの元へと戻って行く。
三年前、物腰が柔らかで誰にでも愛想の良かった裏側、人と深く馴れ合わず、何でも一人でこなしてしまう孤高の女であったディアナ。
エスクルサの地下アイドル、その一番のファンは他ならぬチュアランであり、彼に言い寄ってくる数多の女など色褪せてしまうほどに魅力を感じて熱を上げ、幾度ものプロポーズをしたが全てが跳ね除けられてしまった。
当時の面影など今はなく、男の腕の中に戻った彼女は仔猫のように戯れ付き、主人の機微を少しも逃すまいとする忠犬のように下から見つめている。
「はぁ…………」
彼女がいなくなってからの三年間、良い女は何人もおれど、本気になることのできなかったチュアラン。しかし、この町を出て行ったディアナはもういないのだと己の心に刻み込むと額に手を当て、さまざまな色の入り混じる深い深い溜息を吐き出した。
「それで?俺に会いに来たわけでもなけりゃ、ただ匿って欲しくて来たわけじゃねぇんだろ?」
再び身を起こすと、口の端を吊り上げ悪戯っぽい笑みを浮かべる魅惑の女。
その姿にドキリとするチュアランだったが、自制心を盾にソファーに背を預けて距離を取った。
「お金、稼がせて?」
「ん?コロシアムに出るのか? 俺としては願ったり叶ったり……」
「出るのはこっちのルイスだけどね?」
商業都市エスクルサのメイン産業である魔攻機装の製造、それと対を成すほどの金が動くコロシアムの持ち主であるチュアランに紹介されてしまえば後には退けないだろう。
予め聞かされていた事とはいえ冗談であってくれればとの願い虚しく、訝しげな顔を向けられたルイスは目を逸らしながら頬を掻くのみ。
「魔攻機装すら持ってないようだが、そいつは操者なのか?」
「私も直接見たわけじゃないんだけど、あの魔石の無い白い腕輪は紛れもなく魔攻機装だわ」
魔攻機装の収まる腕輪には必ず一つ以上の魔石があり、その機体の扱える魔法の属性を示している。しかし、アンジェラスは人の手により造られた物とは違い、その定義に当て嵌まっていないのだ。
視線を受けたエルフのお姉さんが奥の棚からアタッシュケースを持ってくると、机の上で蓋を開けてチュアランの前へと差し出す。
彼が手に取ったのは手のひらサイズのカメラが二台。魔力を受けて宙に浮かぶと、その時を待つようにルイスの両脇に待機する。
「おい兄ちゃん、お前さんは勝つ自信があるのか? ディアナの頼みだからな、コロシアムの出場は面倒みてやる。けど、対戦相手を選ぶにも魔攻機装を見ない事には始まらねぇ。部屋の中で構わねぇから一度、兄ちゃんの魔攻機装を見せてくれ」
何百何千という膨大な部品を組み合わせる構造上、そのままでは十メートルを超える巨体となってしまう魔攻機装。そこで活躍するのが外装の内面に施された術式で、整備、管理、運用、どれもが扱いやすい二メートルというコンパクトな身体に全てを収めることに成功して完成したのが現在の魔攻機装である。
ディアナの要求したシークァはこの技術を応用した物。
稀に無くはないが、魔攻機装の技術者とは大概がその製造に誇りをもって仕事をする連中ばかりで、自動車などの他の物に技術が転用されることはまだまだ少ない。
「今度はどこ行くんだ?」
しかし空間圧縮技術が生物に与える影響が懸念されることから、完成された道具であるマジックバッグですら生き物を入れるのはご法度とされてきたのだ。魔攻機装のノウハウを活かせば技術的には可能であるものの、人の乗るシークァとなると安全な物が造れるかどうかですら微妙なところである。
「造るのは確定したけど、色々詰め込んだでしょ?ちょっと私が持ってるだけでは費用が心許ないから……」
言葉を切ったディアナは絡めていた腕を解くと、滑らかな身のこなしでレーンの背後を通り抜けて反対側を歩いていたルイスの腕へと鞍替えをした。
「うぇ!?あ……えっと?」
真横に来た彼女の顔は極上の笑みで満たされており、腕に当たる弾力ですらかき消すほどの嫌な予感がルイスを襲う。
「だ・か・らぁ~」
「……だ、だから?」
「お金儲けしない?」
▲▼▲▼
白いウサギ耳を頭に生やしたお姉さんはとても可愛い人ではあった。
だが、ワザと谷間が見えるように胸部をはだけさせたブラウスと、下着が見えそうなほど丈の短いスカートは刺激的で、とてもではないが受付をする格好に相応しいとは思えない。
「ルイス、お前、見過ぎじゃね?」
赤いヒールが床を打つ音の響く地下通路。キュッと締まったお尻が右に左にと動くたびに、その少し上で誘うように白いボンボンのような尻尾が揺れる。
先導してくれるウサギ獣人のお姉さんの後に続いて黙って歩いていれば、魅惑的な後ろ姿を見たい欲求と、見ては駄目だとの自制心が葛藤してチラ見を繰り返していたルイスを面白がり、レーンから揶揄いが入る。
「バッ!?……み、見てないよ!」
その声は当然、お姉さんにも聞こえるもので、慌てて否定するルイスの声は上ずっていた。
その様子こそがレーンとディアナを愉しませ、ニタニタとした笑いが二人の口元を彩る。
「バーカ、折角誘ってくれてるんだ、見ないのはその姉ちゃんに魅力がないって言っているのと同じだぞ?それこそ失礼だろうが」
右にも左にも逃げ道がない事を悟ると大きな溜息が漏れ出る。
その姿を横目で見たお姉さんは長い耳を揺らしてクスリと小さく笑いはしたが、特別なお客様である三人のやり取りに加わることはない。
それからほどなくして足を止めると、一つの扉を開いて中へと促される。
「チュアラン様はすぐにお見えになります。こちらでしばらくお待ち下さい」
丁寧なお辞儀で扉の向こうへと姿を消したウサ耳お姉さん。
代わりにソファーへと案内したのは、真っ直ぐな金髪の間から人間の二倍の長さを誇る尖った耳を覗かせる美人なお姉さんだった。
紅茶を手際良く用意する姿だけでも絵になりそうな素晴らしい容姿。物珍しそうに眺めていたルイスではあったが、丈の短いメイド服に身を包む彼女は良く教育されており、残念ながら一度も目が合うことはなかった。
特徴的な耳とスレンダーな体型、男女問わず美形しかいないと言われるほど見た目に優れる彼女達はエルフと呼ばれる種族だ。しかし繁殖力の弱さから、大きな町でも滅多に見かけない者達でもある。
総じて賢いものの身体が丈夫でないことから貴族等の金持ちの家で働く代わりに保護してもらっていることが多く、この娘も例外ではなく、ここでメイドとして働きながら生活していた。
(そういえば、工房にいたニナもエルフだったな……)
そんな事を考えながら出された紅茶を愉しんでいれば、入って来た扉が慌ただしい音を立てて開け放たれる。
「ああっ、ディアナ!相変わらず惚れ惚れするほど美しい姿だっ!
来るなら一言連絡入れてくれれば迎えに行ったものを……いつ帰って来たんだ?わざわざココに来たって事は俺の求婚を受け入れるって事だよな?」
豪華なソファーが軋むほどの勢いで腰を下ろした大男。筋肉自慢の身体は横にもデカいのだが、身長も二メートル弱と迫力も満点。そのおかげなのか、髪の無い厳つい頭は小さく見えるのだが、頬に傷のある顔が強面である事には変わりがない。
わざわざ端にいるディアナの正面に座ったのは、男の視界には彼女しか入っていなかったから。
あからさまに堅気ではない顔でキラキラとした目をディアナに向ける姿は異様な光景ではあったが、そんな態度が気に入らないレーンは机を思い切り叩いて紅茶のカップを踊らせた。
「過去に何があったかは知らねぇが、コレはもう俺のモノだ」
ソファーにふんぞり返るとディアナの肩に手を回し『自分のモノ』だと見せつけるように引き寄せる。
「あら嬉しいっ、嫉妬してくれるの?」
そうしてやっと向けられた視線は当然のように敵意のあるモノ。
しかし隣で頬を緩めて乙女のように嬉しがるディアナは、何年も前から彼女を知っているチュアランでも見たことのない表情だった。
「ディアナ、ソイツは誰だ?」
殺意すら混じる鋭い視線は隣に座るルイスにでさえ恐怖を感じさせるものではあったのだが、当のレーンは一歩も退く事なく平然と見返している。
視線を交わす二人は一触即発な雰囲気を醸し出していたが、肩に頭を預けたままのディアナは愉しそうに微笑んでいる。
「私のダーリンは帝国の皇子様なのよ?」
「なんだと?……謀反の第一皇子か」
視線を逸らしたのはチュアランの方。焦りの色の混じる困惑した顔に早変わると、正気を疑う目をディアナへと向ける。
この時既にエスクルサに潜伏するレーンを帝国兵が躍起になって探し回っているという情報を得ていたのだ。
「ソイツは国に追われる罪人だぞ?それに加担すればどうなるかくらい想像がつくだろう?悪い事は言わない、ソイツからは手を退くんだ」
身を預けていたソファーから背を離して浅く座り直し、自らの膝に肘を突いて軽く身を乗り出すとディアナの薄紫の瞳を覗き込む。
「もちろん知ってるし、それがどういう意味を持つのかも理解してるわよ?」
「じゃあ、もし俺が……」
「捕まったら生きては帰って来られないでしょうね。でも、私達は捕まったりしないわ。だってチュアラン、ここの主人たる貴方が私達を守ってくれるのよね?」
「お前なぁ……」
「それともぉ、数多いる貴方の女の中で唯一求婚までした私を売りに出すのかしらぁ?
振り向かなかった仕返し?取られた腹いせ?エスクルサの裏を牛耳る貴方がそんな子供みたいな事、しないわよね?」
真似をして浅く腰掛けたディアナは張りのある胸を揺らしてチュアランへと顔を寄せる。
何事かを言いたげに困惑する表情を一頻り楽しむと、子供を相手にするように鼻先を指で突ついてからレーンの元へと戻って行く。
三年前、物腰が柔らかで誰にでも愛想の良かった裏側、人と深く馴れ合わず、何でも一人でこなしてしまう孤高の女であったディアナ。
エスクルサの地下アイドル、その一番のファンは他ならぬチュアランであり、彼に言い寄ってくる数多の女など色褪せてしまうほどに魅力を感じて熱を上げ、幾度ものプロポーズをしたが全てが跳ね除けられてしまった。
当時の面影など今はなく、男の腕の中に戻った彼女は仔猫のように戯れ付き、主人の機微を少しも逃すまいとする忠犬のように下から見つめている。
「はぁ…………」
彼女がいなくなってからの三年間、良い女は何人もおれど、本気になることのできなかったチュアラン。しかし、この町を出て行ったディアナはもういないのだと己の心に刻み込むと額に手を当て、さまざまな色の入り混じる深い深い溜息を吐き出した。
「それで?俺に会いに来たわけでもなけりゃ、ただ匿って欲しくて来たわけじゃねぇんだろ?」
再び身を起こすと、口の端を吊り上げ悪戯っぽい笑みを浮かべる魅惑の女。
その姿にドキリとするチュアランだったが、自制心を盾にソファーに背を預けて距離を取った。
「お金、稼がせて?」
「ん?コロシアムに出るのか? 俺としては願ったり叶ったり……」
「出るのはこっちのルイスだけどね?」
商業都市エスクルサのメイン産業である魔攻機装の製造、それと対を成すほどの金が動くコロシアムの持ち主であるチュアランに紹介されてしまえば後には退けないだろう。
予め聞かされていた事とはいえ冗談であってくれればとの願い虚しく、訝しげな顔を向けられたルイスは目を逸らしながら頬を掻くのみ。
「魔攻機装すら持ってないようだが、そいつは操者なのか?」
「私も直接見たわけじゃないんだけど、あの魔石の無い白い腕輪は紛れもなく魔攻機装だわ」
魔攻機装の収まる腕輪には必ず一つ以上の魔石があり、その機体の扱える魔法の属性を示している。しかし、アンジェラスは人の手により造られた物とは違い、その定義に当て嵌まっていないのだ。
視線を受けたエルフのお姉さんが奥の棚からアタッシュケースを持ってくると、机の上で蓋を開けてチュアランの前へと差し出す。
彼が手に取ったのは手のひらサイズのカメラが二台。魔力を受けて宙に浮かぶと、その時を待つようにルイスの両脇に待機する。
「おい兄ちゃん、お前さんは勝つ自信があるのか? ディアナの頼みだからな、コロシアムの出場は面倒みてやる。けど、対戦相手を選ぶにも魔攻機装を見ない事には始まらねぇ。部屋の中で構わねぇから一度、兄ちゃんの魔攻機装を見せてくれ」
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