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第七章 母を訪ねて三千里
幕間──シンデレラ・ノア 中編
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レイ様は恋人のように優しく抱いて下さいました。
例えレイ様が私の事をなんとも思っていなくとも私にとっては一生の思い出になる幸せな時間。
ですがそういう時間に限って過ぎ去るのは早く、夢の時間はあっという間に終わりを告げて朝になってしまいました。
──しかし……しかしです。 次の日の朝、事件は起きました
レイ様のイタズラで目を覚ました私の目に飛び込んで来たのはベッドに転がるミアちゃんの姿。
「気持ち良かった?」
──ええ、とっても! 身も心も大満足です!
そんな私の気持ちを分かってか、ミアちゃんはご飯だと呼びに来てくれただけで早々に立ち去って行きます。
ですが冷静に考えると昨日から碌に仕事もしないでレイ様と一緒に過ごし、あろう事か望まれてもいないのに一晩を共に過ごした。職務怠慢も甚だしいです……。
──怒られる……絶対に怒られる……
「屋敷にいる間、お前は俺のモノ」
事態を理解したレイ様は嬉しい一言を下さいました。レイ様が帰るまででも構わない、一時だけでも……例えペットとしてでも私の事を見てくださるのならそれで構わない。
ご主人様の “どうしようもなく駄目な子” を見る視線に『ごめんなさい』と心の中で呟きながらも楽しく朝食を済ますと、昨日の夕方レイ様が寝ていた思い出の木の下へと連れてこられました。
木にもたれて座るレイ様の膝を枕に頭を乗せゴロゴロとじゃれついていると、仕事もほっぽり出して幸せに浸っていて良いのかなと思う自分と、今はこれが仕事なの!と言い訳をする自分がいます。
それでもレイ様と一緒に居たいという欲求が勝ってしまい幸せを満喫していると、いつのまにか寝てしまっていた。
耳を噛むという暴挙で私を起こしたレイ様は、もう少しゴロゴロしようと言った私の提案を手刀で叩き割り、何故か案内させられた厨房を早々に後にすると、お姫様抱っこでキスをしてくれる。
『幸せ!私の王子様~っ』と夢見心地でいれば、お屋敷の窓がゆっくりと下に降りて行く……はいぃっっ!?
我が目を疑いキョロキョロするも見間違いなどではなく、私を抱っこしたままレイ様が宙に浮いている!!!
「レイ様っ!レイ様っ!レイ様っ!!!!!」
驚く私がお気に召したのかニヤリと笑ったレイ様は一気に大空へと舞い上がるとお屋敷の屋根が小さく見え、私が住んでいるはずの町の全部が見渡せるほど高くまで飛び上がってしまう。
あまりの高さにゾクゾクとした感じが背中を這い回る中、見下ろした町にお店を発見すると後で連れて行ってくれると言うので大喜びしたら、いつのまにか怖かったのも吹き飛んでしまっていた。
風を切って空を飛び、連れてこられたのは森の中。何年振りか分からないほどに久しぶりな森はとても居心地が良く、一人で置き去りにされたのにちっとも不安ではなかった。
心地良くていつのまにか寝ていたら、用事を済ませて戻ってきたレイ様のキスで目が覚めた。レイ様は私の身体を気に入ってくださったようで、そのまま森の中で再び抱かれると、昨晩の事が思い起こされ天にも昇る心地良さが私の身体を支配したのだった。
幸せ一杯でお姫様抱っこされると、本当にお姫様になったように錯覚してしまう。
レイ様の首に抱き付き夢見心地で空の散歩をすると、約束通り町へと買い物に行き、何軒かのお店で調味料や沢山のワインなどを買いました。
「こんなに沢山どうするのですか?」
私が尋ねると今夜の夕食で屋敷中の人達に振る舞うと仰っるので、またワインが飲めるんだとワクワクしました。
初めて歩く人間の町は賑やかで見るもの全てが楽しかった。
「好きなものを買ってやる」
そう言ったレイ様に「レイ様とお揃いが良い」と即答すると意外そうな顔で私を見る。
私がねだったのはレイ様が左手に着けている透明な玉がいくつも連なるブレスレット。
特に困る事もなく「いいぞ」と答えたレイ様の腕に抱き付きルンルンで連れられて行くと、沢山の宝石がガラスのケースの中でキラキラと綺麗に飾られ『何このお店!』と驚いてしまった。物欲しそうに目移りする私を微笑ましげに見ていたレイ様は「他のにするか?」と聞いてくれたのですが私は首を横に振りました。
全く同じものではなかったけど初めて貰ったプレゼント。レイ様に着けてもらうと嬉しくて嬉しくてニヤケ顔が治りません!
買い物が終わると再び空を飛んでお屋敷へと舞い戻りました。
空のデートも終わりかぁと少し残念でしたが、向かった厨房でレイ様が取り出したのは大きなイノシシ。ちょっとうぇっと思いましたがテキパキと慣れた手つきで皮を剥ぐレイ様を眺めていると何でも出来る人なんだなぁと素敵に思えます。
こんな人が私の旦那様だったらきっと私は何もする事なく椅子に座らされて、用意されたご飯を食べるだけの贅沢な生活なんだろうなぁなんて妄想をしていると、あっと言う間に串に刺されたお肉が出来上がっていました。
ミアちゃんが手伝いに来たり、レイ様が私とミアちゃんの為に包丁を作って下さったりと色々ありましたが、普段やったことのない夕食の準備はとても楽しかったです。
今夜の夕食はレイ様の用意したバーベキュー、お肉を焼いただけのシンプルな料理でしたが今まで食べた料理の中でも最高に美味しかった。勿論昨日食べた豪華な料理よりも、です。
その理由は当然レイ様が私達の為に手間暇かけて用意してくれたモノだからに他なりません。
食べ放題の夕食をお腹に入るだけ詰め込み、美味しいワインも沢山飲みました。
そのおかげで、眠りこけることはありませんでしたがお腹がはち切れそうになり、レイ様に膝枕をしてもらっちゃいました。ラッキーッ!
子供でも出来たかと言うほどにはち切れそうなお腹をさすりつつレイ様の膝枕を満喫する私を余所に、ミアちゃんとレイ様が何やら話をしています。
ぽやんとする頭で聞いていれば、なんと!レイ様は魔王を倒す為に旅をする勇者様だったのです!だからレイ様は強くて、色んな魔法も使えて、料理だって、何でも出来る凄い人だったんですね。納得です。
「もしノアが攫われたら、俺が助ける」
レイ様はそんな嬉しい言葉を残して何処かへ行ってしまいました。攫われたノア姫を助けに来るレイ王子……まるで物語のようですね。
レイ様の温もりが無くなりお腹も落ち着いて来たところで部屋に戻りましたが、レイ様はまだ戻っていません。
今夜もいっぱい愛してくださるかなぁと期待を胸にお風呂に入り身体を綺麗にするとベッドに入ってレイ様の帰りを待ちました。
背中に温もりを感じると、いつのまにかレイ様に後ろから抱きしめられていました。どうやら待ちくたびれてうとうとしていたようです。レイ様におねだりすると「ノアが望むなら」と快諾してくれたのですが、今夜はもう一人レイ様を求める人がベッドにいたようです。
私はレイ様のモノ、でもレイ様は残念ながら私のモノではないので独り占めする訳にはいきません。
レイ様を求めてやってきたミアちゃんにレイ様は否定的。しかし、その時レイ様が言った言葉を私は聞き逃しませんでした。
「俺達はお互い好き合ってる」
レイ様は確かに言いました、私は確かに聞きました。レイ様が私の事を “好き” だと初めて言ってくれたのです!
それは私が想う好きなのかどうかまでは分かりません。単に「あ~、あれ?好きだよ」的な軽いモノなのかもしれません。けど、確かにレイ様は私の事を好きだと……レイ様が私の事を好き……レイ様が私の事を好き……胸の中がその事だけでいっぱいになるくらいに木霊し『もうこのまま死んでもいいや』くらいの気持ちになっしまい…………涙が出たのは内緒です。
でも、ミアちゃんがレイ様の事を気にしてるのを知っていたのでカマをかけてみたのですが思った通り否定しません。それはそうですよね、裸でベッドに潜り込むくらいですもの。
仲良しのミアちゃんには私のように幸せな気持ちになって欲しい、そう思いレイ様に「三人で」と告げるとレイ様も快く受け止めてくださり、その夜は三人で天国に行きました。
例えレイ様が私の事をなんとも思っていなくとも私にとっては一生の思い出になる幸せな時間。
ですがそういう時間に限って過ぎ去るのは早く、夢の時間はあっという間に終わりを告げて朝になってしまいました。
──しかし……しかしです。 次の日の朝、事件は起きました
レイ様のイタズラで目を覚ました私の目に飛び込んで来たのはベッドに転がるミアちゃんの姿。
「気持ち良かった?」
──ええ、とっても! 身も心も大満足です!
そんな私の気持ちを分かってか、ミアちゃんはご飯だと呼びに来てくれただけで早々に立ち去って行きます。
ですが冷静に考えると昨日から碌に仕事もしないでレイ様と一緒に過ごし、あろう事か望まれてもいないのに一晩を共に過ごした。職務怠慢も甚だしいです……。
──怒られる……絶対に怒られる……
「屋敷にいる間、お前は俺のモノ」
事態を理解したレイ様は嬉しい一言を下さいました。レイ様が帰るまででも構わない、一時だけでも……例えペットとしてでも私の事を見てくださるのならそれで構わない。
ご主人様の “どうしようもなく駄目な子” を見る視線に『ごめんなさい』と心の中で呟きながらも楽しく朝食を済ますと、昨日の夕方レイ様が寝ていた思い出の木の下へと連れてこられました。
木にもたれて座るレイ様の膝を枕に頭を乗せゴロゴロとじゃれついていると、仕事もほっぽり出して幸せに浸っていて良いのかなと思う自分と、今はこれが仕事なの!と言い訳をする自分がいます。
それでもレイ様と一緒に居たいという欲求が勝ってしまい幸せを満喫していると、いつのまにか寝てしまっていた。
耳を噛むという暴挙で私を起こしたレイ様は、もう少しゴロゴロしようと言った私の提案を手刀で叩き割り、何故か案内させられた厨房を早々に後にすると、お姫様抱っこでキスをしてくれる。
『幸せ!私の王子様~っ』と夢見心地でいれば、お屋敷の窓がゆっくりと下に降りて行く……はいぃっっ!?
我が目を疑いキョロキョロするも見間違いなどではなく、私を抱っこしたままレイ様が宙に浮いている!!!
「レイ様っ!レイ様っ!レイ様っ!!!!!」
驚く私がお気に召したのかニヤリと笑ったレイ様は一気に大空へと舞い上がるとお屋敷の屋根が小さく見え、私が住んでいるはずの町の全部が見渡せるほど高くまで飛び上がってしまう。
あまりの高さにゾクゾクとした感じが背中を這い回る中、見下ろした町にお店を発見すると後で連れて行ってくれると言うので大喜びしたら、いつのまにか怖かったのも吹き飛んでしまっていた。
風を切って空を飛び、連れてこられたのは森の中。何年振りか分からないほどに久しぶりな森はとても居心地が良く、一人で置き去りにされたのにちっとも不安ではなかった。
心地良くていつのまにか寝ていたら、用事を済ませて戻ってきたレイ様のキスで目が覚めた。レイ様は私の身体を気に入ってくださったようで、そのまま森の中で再び抱かれると、昨晩の事が思い起こされ天にも昇る心地良さが私の身体を支配したのだった。
幸せ一杯でお姫様抱っこされると、本当にお姫様になったように錯覚してしまう。
レイ様の首に抱き付き夢見心地で空の散歩をすると、約束通り町へと買い物に行き、何軒かのお店で調味料や沢山のワインなどを買いました。
「こんなに沢山どうするのですか?」
私が尋ねると今夜の夕食で屋敷中の人達に振る舞うと仰っるので、またワインが飲めるんだとワクワクしました。
初めて歩く人間の町は賑やかで見るもの全てが楽しかった。
「好きなものを買ってやる」
そう言ったレイ様に「レイ様とお揃いが良い」と即答すると意外そうな顔で私を見る。
私がねだったのはレイ様が左手に着けている透明な玉がいくつも連なるブレスレット。
特に困る事もなく「いいぞ」と答えたレイ様の腕に抱き付きルンルンで連れられて行くと、沢山の宝石がガラスのケースの中でキラキラと綺麗に飾られ『何このお店!』と驚いてしまった。物欲しそうに目移りする私を微笑ましげに見ていたレイ様は「他のにするか?」と聞いてくれたのですが私は首を横に振りました。
全く同じものではなかったけど初めて貰ったプレゼント。レイ様に着けてもらうと嬉しくて嬉しくてニヤケ顔が治りません!
買い物が終わると再び空を飛んでお屋敷へと舞い戻りました。
空のデートも終わりかぁと少し残念でしたが、向かった厨房でレイ様が取り出したのは大きなイノシシ。ちょっとうぇっと思いましたがテキパキと慣れた手つきで皮を剥ぐレイ様を眺めていると何でも出来る人なんだなぁと素敵に思えます。
こんな人が私の旦那様だったらきっと私は何もする事なく椅子に座らされて、用意されたご飯を食べるだけの贅沢な生活なんだろうなぁなんて妄想をしていると、あっと言う間に串に刺されたお肉が出来上がっていました。
ミアちゃんが手伝いに来たり、レイ様が私とミアちゃんの為に包丁を作って下さったりと色々ありましたが、普段やったことのない夕食の準備はとても楽しかったです。
今夜の夕食はレイ様の用意したバーベキュー、お肉を焼いただけのシンプルな料理でしたが今まで食べた料理の中でも最高に美味しかった。勿論昨日食べた豪華な料理よりも、です。
その理由は当然レイ様が私達の為に手間暇かけて用意してくれたモノだからに他なりません。
食べ放題の夕食をお腹に入るだけ詰め込み、美味しいワインも沢山飲みました。
そのおかげで、眠りこけることはありませんでしたがお腹がはち切れそうになり、レイ様に膝枕をしてもらっちゃいました。ラッキーッ!
子供でも出来たかと言うほどにはち切れそうなお腹をさすりつつレイ様の膝枕を満喫する私を余所に、ミアちゃんとレイ様が何やら話をしています。
ぽやんとする頭で聞いていれば、なんと!レイ様は魔王を倒す為に旅をする勇者様だったのです!だからレイ様は強くて、色んな魔法も使えて、料理だって、何でも出来る凄い人だったんですね。納得です。
「もしノアが攫われたら、俺が助ける」
レイ様はそんな嬉しい言葉を残して何処かへ行ってしまいました。攫われたノア姫を助けに来るレイ王子……まるで物語のようですね。
レイ様の温もりが無くなりお腹も落ち着いて来たところで部屋に戻りましたが、レイ様はまだ戻っていません。
今夜もいっぱい愛してくださるかなぁと期待を胸にお風呂に入り身体を綺麗にするとベッドに入ってレイ様の帰りを待ちました。
背中に温もりを感じると、いつのまにかレイ様に後ろから抱きしめられていました。どうやら待ちくたびれてうとうとしていたようです。レイ様におねだりすると「ノアが望むなら」と快諾してくれたのですが、今夜はもう一人レイ様を求める人がベッドにいたようです。
私はレイ様のモノ、でもレイ様は残念ながら私のモノではないので独り占めする訳にはいきません。
レイ様を求めてやってきたミアちゃんにレイ様は否定的。しかし、その時レイ様が言った言葉を私は聞き逃しませんでした。
「俺達はお互い好き合ってる」
レイ様は確かに言いました、私は確かに聞きました。レイ様が私の事を “好き” だと初めて言ってくれたのです!
それは私が想う好きなのかどうかまでは分かりません。単に「あ~、あれ?好きだよ」的な軽いモノなのかもしれません。けど、確かにレイ様は私の事を好きだと……レイ様が私の事を好き……レイ様が私の事を好き……胸の中がその事だけでいっぱいになるくらいに木霊し『もうこのまま死んでもいいや』くらいの気持ちになっしまい…………涙が出たのは内緒です。
でも、ミアちゃんがレイ様の事を気にしてるのを知っていたのでカマをかけてみたのですが思った通り否定しません。それはそうですよね、裸でベッドに潜り込むくらいですもの。
仲良しのミアちゃんには私のように幸せな気持ちになって欲しい、そう思いレイ様に「三人で」と告げるとレイ様も快く受け止めてくださり、その夜は三人で天国に行きました。
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