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第七章 母を訪ねて三千里
25.犯罪を犯した者達
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奴隷と言うとどうしても悪いイメージしか湧いてこない。そんな俺がイメージした奴隷市場など、良いものの訳がない。
暗くジメジメとした地下にある鉄格子嵌る部屋に入れられた十人くらいの首輪を着けられた人々が身を寄せ合って震えているのを見て回る、そんな感じだと思い込んでいたのであまり気が進まなかった。
だが着いた建物はどこかのお屋敷のような四階建ての広い建物で、場所間違えてない?と不思議に思うほどだった。
「お兄ちゃん、どんなのイメージしてたの?」
魔導車から降りポカンと建物を見上げる俺を呆れた顔して突ついたモニカは、腕を取ると「早く行こう」と建物の入り口へと引っ張って行く。
五段程の階段を登ると、普通の家にしては大きな扉の横で待機していた簡易的な貴族服のような格好の二人の兵士が俺達に一礼して扉を開けてくれる。
「ようこそおいでくださいました。イオネ姫様御一行でございますね?お話は伺っております、本日は当店をご利用くださいましてありがとうございます。奥の方でお茶のご用意がありますので、こちらへどうぞ」
通されたのは貴族の部屋かと思うほどの高そうなソファーとテーブルの置かれた部屋で、エレナがしているようなファッション性のある首輪を着けた女の子がワゴンにお茶の用意をして待っていた。
進められるがままに三人掛けのソファーに分かれて座ると女の子がお茶とお茶菓子とを並べてくれたので、せっかくなのでと口を付けたところでノック音がし、二人の男が部屋に入って来る。
「姫様のご来店、パーニョン奴隷商会一同、心より感謝致します。姫様には失礼かと存じますが人数の関係上、上座に座らさせて頂きます」
そう言って唯一空いていた一人掛けの椅子に座ったのは三十歳くらいの英気に満ちた目をし、白シャツに上等なズボンの爽やかな印象の男。その喋り方といい、雰囲気といい、やり手の若き商人といった感じか。
その斜め後ろに立った男は、物腰の柔らかそうな座った男とは正反対の護衛のような鋭い感じで、白毛混じりの黒髪をオールバックに纏めた四十を超えたくらいの上級冒険者の風格のある執事風の男。
「社交辞令など要らんよ、久しいなバスチアス。景気も良いようで何よりだよ」
「ハハハッ、これはこれは恐れ入ります。姫様の意に反し、お陰様で商会は順調に利益を伸ばしております」
「私とて奴隷というシステムの全てが嫌いな訳ではないぞ?身寄りの無い者、途方に暮れた者達の最後の拠り所である貴様等は必要であるとは思っている。だがな、それが犯罪の隠れ蓑、ひいては悪党共の資金源になるのは我慢ならんのだよ」
「勿論心得ております。我が商会は困った人々の助けになる事で利益を得ているのです。自分達の利益を優先して自らが人々を困らせるなどあってはならぬ事、それは商会に登録する全ての商人に徹底しておりますのでご安心下さい」
特に嘘の感じられない人を惹きつける暖かな笑顔でイオネを真っ直ぐに見つめるバスチアスと呼ばれた男。後ろに立つ男が同じ事を言っても信じられないだろうが、この男が言うと不思議とすんなり心に響いてくる。これが奴隷商会という人を扱う者の上に立つ男の力なのか?
「それで、本日はどのような奴隷をお探しでしょうか?ご存知の通り我が商会はお客様のニーズにお応えする為、老若男女優秀な人材を多数揃えております。必ず皆様のご希望に沿った……」
イオネのかざした手により「おや?」と不思議そうな顔をして言葉を中断したバスチアス。
「いや、すまない。今日は見に来ただけなのだ。この者は私の知人なのだが、奴隷というモノをあまりよく分かってなくてな。どこで得た知識なのかは知らないが良くないイメージしか持ち合わせてないので、現実というモノを見せたくてここならばと思い連れて来たのだ。
建物内の見学だけでも良いか?」
「勿論でございます。諸々の事情で奴隷となってしまった者達がどのようにして第二の人生を歩み出すのか、それを手助けしている我々の仕事振りをご覧になれば奴隷という存在が決して忌避されるべき者達ではない事がお分かりになりましょう。それでは早速ご案内致します」
連れて来られたのは重々しい感じを与える鉄製の扉の前、顔の辺りに覗き窓がありバスチアスが扉をノックするとそれが開いて中からギョロリとした目が覗くが、ハッとした様子ですぐに閉まると今度は扉が開かれた。
「地下に行く、鍵をくれるかい?」
ガタイの良い強面の如何にもと言った男から鍵の束を受け取ると、部屋の奥に見えている鉄格子に差込みその扉を開けて振り向いた。
「まずハーキース卿のイメージ通りの連中が実際に居るのをお見せしましょう。奴隷と一重に言っても「それはさっき説明した、すまんな」……滅相もございません、お陰で手間が省けました。
この先に居るのは犯罪者奴隷です。その犯罪者奴隷も二つに分けられ、謂れなき殺人をしたり盗賊団に加担したりと人々を苦しめた許されざる重犯罪者と、詐欺や窃盗といったまだ許される余地のある軽犯罪者とに分かれます。
ここから先はお子様やご婦人方にお見せするには少々過激な所です。心に自信が無ければここでお待ち頂いても構いませんが、覚悟の程はよろしかったですか?」
雪を抱っこすると「大丈夫だ」とイオネの返答で扉の先に歩き始めたバスチアスに続けば、暗くて狭い螺旋階段を地下へと降りて行く。
しばらくすると再び鍵のかかった鉄格子の扉が現れ、それを抜けると隣にあった別の鉄格子に鍵を挿していた。再び狭い螺旋を降り鍵のかかった鉄格子を開けると目的地に着いたらしく、振り返り皆が降りてくるのを待った。
「地下二階、重犯罪者奴隷が居る場所です。通常の取引ではここにお客様が入る事はございません。何故ならばここに居る者達は既に物と言っても過言では無いので必要な人数だけが告げられ売買が成立すると、こちらで用意した鉄格子の馬車に揺られて鉱山等の人目に付かない隔離された職場まで護送されるのです。
良いですか?鉄格子の前に白い線が引かれています、それ以上は近づいたら身の安全は保障しかねますのでくれぐれもご注意ください。この階の中などどれでも同じなので出来れば一つ目の檻の中を覗いたらお戻りください」
話は終わりだなと、一人で歩き出したイオネに続き歩き出そうとするとティナとモニカが俺の手を取る。二人ともこの雰囲気だけで怖いのか若干引き攣った顔で苦笑いを浮かべている。たとえ襲われたとしても余裕で撃退するほどの魔法を扱えるのにと不思議に思ったが、逆に自分では魔法も碌に使えない筈の雪は平然としていた。
「おいっ!女だ、女がいるぞっ!!」
「うぉいっマジかよ、なんでこんな所に!?」
「しかもべっぴんさんばかりじゃねぇか、うへへっ」
「おい、お嬢ちゃん。もっと近くに来いよ、俺達と遊ぼうぜ?」
「何!?ほんとだ!良い匂いがする、良い匂いがするぜ!!」
「何だと!?見えねえっ見えねえぞ!?」
「なんて上玉なんだ、たまんねぇな」
「おいっ、こっち来いって!」
覗いた鉄格子の中は牢獄のように暗く、五人の汚らしい服を着て頑丈そうな黒い首輪を着けられた男達が暇そうにゴロゴロしていたので部屋そのものも汚いように感じる。
奴等は俺達の存在に気が付くと下卑た笑いを浮かべて鉄格子に飛び付いて手を伸ばし、まるで救いを求めるように女に縋りつこうとする。その騒ぎを聞きつけた他の檻からも手が伸び、一列に並んでいる鉄格子から無数の手が生え蠢いている様子は気持ちの良いものではない。それに加えて彼女達に向けて上げられる罵倒とも取れる声に恐怖し、怯えて、モニカとティナが ギュッ としがみ付いてきたのも仕方のない事だろう。
「恐らくハーキース卿のご想像の奴隷はこのような者でしょう?ですがこれは最下層の奴隷、あまりお見せ出来るモノではない事は見て頂ければ一目瞭然です。もう十分かと思いますので上へと参りましょう」
バスチアスの声で引き返し階段へと戻ると、彼と一緒に部屋に来ていた執事風の男が扉の脇で立っており『あれ?居たの?』と思ったが気にせず階段を登った。
「さて地下一階軽犯罪者奴隷のフロアですが、ここにもお客様は入られません。ただ稀にモノ好きな方や人選をご自分でなさりたい方は足を運ばれることはございます。
軽犯罪者奴隷は努力次第で更生を認められる事もある奴隷ですが、その実例はとても少ないというのが現実です。と言うのは、人間は一度楽な道を覚えてしまうと歯止めが効かなくなり、自分では駄目だと分かっていても楽をしようとする心理が働いてしまうのです。
ここも先程と同じで白線より近付かないようにお願いします」
そう言って今度は自ら先頭に立ち、牢屋とも言える鉄格子の部屋の前を歩き始めた。
地下二階と同じ作りなのに内に居る人の雰囲気でこうも印象が変わるモノなのかと思い知らされるほど静かな地下一階は、奴隷の身なりも先程よりは全然マシで、綺麗とは言えないが一週間洗ってない服を着ている、といった程度だ。
五人一組で部屋に居る奴隷達の表情は様々で、絶望感漂う顔や、明らかに暇だと訴える余裕そうな顔、中には目を瞑り瞑想に耽っている者もいた。
俺達が遠巻きに中を覗きながら通って行っても声をかけてくる者も少なく、先程のような下品な言葉も掛からない。たまに良い暇つぶしくらいに思った奴が野次を飛ばして来るぐらいで静かなものだった。
「まぁ、見てもさして面白いものではないのでこのような感じと受け取って頂けたら私としてはそれで満足です。
犯罪者奴隷は重、軽共に売買するのに特別な許可が必要となります。一番の要因としては人々を困らせた犯罪者を再び世間に逃がしてしまっては平和に暮らす民の生活が脅かされるからです。ですからそのような配慮をしつつ適切に取引の出来る者にだけ許可が与えられるのです。
それぞれ厳選な審査が行われるのですが、私は重犯罪者、軽犯罪者の両方を取り扱う事をサルグレッド王国から許可を頂いて営業を行っております。
その私を筆頭としたパーニョン奴隷商会が奴隷という身分に陥ってしまった人々をどのように扱っているのか、また、奴隷とはどのような存在なのかを見て頂く為に、まずは最上階である四階へと参りましょう」
暗くジメジメとした地下にある鉄格子嵌る部屋に入れられた十人くらいの首輪を着けられた人々が身を寄せ合って震えているのを見て回る、そんな感じだと思い込んでいたのであまり気が進まなかった。
だが着いた建物はどこかのお屋敷のような四階建ての広い建物で、場所間違えてない?と不思議に思うほどだった。
「お兄ちゃん、どんなのイメージしてたの?」
魔導車から降りポカンと建物を見上げる俺を呆れた顔して突ついたモニカは、腕を取ると「早く行こう」と建物の入り口へと引っ張って行く。
五段程の階段を登ると、普通の家にしては大きな扉の横で待機していた簡易的な貴族服のような格好の二人の兵士が俺達に一礼して扉を開けてくれる。
「ようこそおいでくださいました。イオネ姫様御一行でございますね?お話は伺っております、本日は当店をご利用くださいましてありがとうございます。奥の方でお茶のご用意がありますので、こちらへどうぞ」
通されたのは貴族の部屋かと思うほどの高そうなソファーとテーブルの置かれた部屋で、エレナがしているようなファッション性のある首輪を着けた女の子がワゴンにお茶の用意をして待っていた。
進められるがままに三人掛けのソファーに分かれて座ると女の子がお茶とお茶菓子とを並べてくれたので、せっかくなのでと口を付けたところでノック音がし、二人の男が部屋に入って来る。
「姫様のご来店、パーニョン奴隷商会一同、心より感謝致します。姫様には失礼かと存じますが人数の関係上、上座に座らさせて頂きます」
そう言って唯一空いていた一人掛けの椅子に座ったのは三十歳くらいの英気に満ちた目をし、白シャツに上等なズボンの爽やかな印象の男。その喋り方といい、雰囲気といい、やり手の若き商人といった感じか。
その斜め後ろに立った男は、物腰の柔らかそうな座った男とは正反対の護衛のような鋭い感じで、白毛混じりの黒髪をオールバックに纏めた四十を超えたくらいの上級冒険者の風格のある執事風の男。
「社交辞令など要らんよ、久しいなバスチアス。景気も良いようで何よりだよ」
「ハハハッ、これはこれは恐れ入ります。姫様の意に反し、お陰様で商会は順調に利益を伸ばしております」
「私とて奴隷というシステムの全てが嫌いな訳ではないぞ?身寄りの無い者、途方に暮れた者達の最後の拠り所である貴様等は必要であるとは思っている。だがな、それが犯罪の隠れ蓑、ひいては悪党共の資金源になるのは我慢ならんのだよ」
「勿論心得ております。我が商会は困った人々の助けになる事で利益を得ているのです。自分達の利益を優先して自らが人々を困らせるなどあってはならぬ事、それは商会に登録する全ての商人に徹底しておりますのでご安心下さい」
特に嘘の感じられない人を惹きつける暖かな笑顔でイオネを真っ直ぐに見つめるバスチアスと呼ばれた男。後ろに立つ男が同じ事を言っても信じられないだろうが、この男が言うと不思議とすんなり心に響いてくる。これが奴隷商会という人を扱う者の上に立つ男の力なのか?
「それで、本日はどのような奴隷をお探しでしょうか?ご存知の通り我が商会はお客様のニーズにお応えする為、老若男女優秀な人材を多数揃えております。必ず皆様のご希望に沿った……」
イオネのかざした手により「おや?」と不思議そうな顔をして言葉を中断したバスチアス。
「いや、すまない。今日は見に来ただけなのだ。この者は私の知人なのだが、奴隷というモノをあまりよく分かってなくてな。どこで得た知識なのかは知らないが良くないイメージしか持ち合わせてないので、現実というモノを見せたくてここならばと思い連れて来たのだ。
建物内の見学だけでも良いか?」
「勿論でございます。諸々の事情で奴隷となってしまった者達がどのようにして第二の人生を歩み出すのか、それを手助けしている我々の仕事振りをご覧になれば奴隷という存在が決して忌避されるべき者達ではない事がお分かりになりましょう。それでは早速ご案内致します」
連れて来られたのは重々しい感じを与える鉄製の扉の前、顔の辺りに覗き窓がありバスチアスが扉をノックするとそれが開いて中からギョロリとした目が覗くが、ハッとした様子ですぐに閉まると今度は扉が開かれた。
「地下に行く、鍵をくれるかい?」
ガタイの良い強面の如何にもと言った男から鍵の束を受け取ると、部屋の奥に見えている鉄格子に差込みその扉を開けて振り向いた。
「まずハーキース卿のイメージ通りの連中が実際に居るのをお見せしましょう。奴隷と一重に言っても「それはさっき説明した、すまんな」……滅相もございません、お陰で手間が省けました。
この先に居るのは犯罪者奴隷です。その犯罪者奴隷も二つに分けられ、謂れなき殺人をしたり盗賊団に加担したりと人々を苦しめた許されざる重犯罪者と、詐欺や窃盗といったまだ許される余地のある軽犯罪者とに分かれます。
ここから先はお子様やご婦人方にお見せするには少々過激な所です。心に自信が無ければここでお待ち頂いても構いませんが、覚悟の程はよろしかったですか?」
雪を抱っこすると「大丈夫だ」とイオネの返答で扉の先に歩き始めたバスチアスに続けば、暗くて狭い螺旋階段を地下へと降りて行く。
しばらくすると再び鍵のかかった鉄格子の扉が現れ、それを抜けると隣にあった別の鉄格子に鍵を挿していた。再び狭い螺旋を降り鍵のかかった鉄格子を開けると目的地に着いたらしく、振り返り皆が降りてくるのを待った。
「地下二階、重犯罪者奴隷が居る場所です。通常の取引ではここにお客様が入る事はございません。何故ならばここに居る者達は既に物と言っても過言では無いので必要な人数だけが告げられ売買が成立すると、こちらで用意した鉄格子の馬車に揺られて鉱山等の人目に付かない隔離された職場まで護送されるのです。
良いですか?鉄格子の前に白い線が引かれています、それ以上は近づいたら身の安全は保障しかねますのでくれぐれもご注意ください。この階の中などどれでも同じなので出来れば一つ目の檻の中を覗いたらお戻りください」
話は終わりだなと、一人で歩き出したイオネに続き歩き出そうとするとティナとモニカが俺の手を取る。二人ともこの雰囲気だけで怖いのか若干引き攣った顔で苦笑いを浮かべている。たとえ襲われたとしても余裕で撃退するほどの魔法を扱えるのにと不思議に思ったが、逆に自分では魔法も碌に使えない筈の雪は平然としていた。
「おいっ!女だ、女がいるぞっ!!」
「うぉいっマジかよ、なんでこんな所に!?」
「しかもべっぴんさんばかりじゃねぇか、うへへっ」
「おい、お嬢ちゃん。もっと近くに来いよ、俺達と遊ぼうぜ?」
「何!?ほんとだ!良い匂いがする、良い匂いがするぜ!!」
「何だと!?見えねえっ見えねえぞ!?」
「なんて上玉なんだ、たまんねぇな」
「おいっ、こっち来いって!」
覗いた鉄格子の中は牢獄のように暗く、五人の汚らしい服を着て頑丈そうな黒い首輪を着けられた男達が暇そうにゴロゴロしていたので部屋そのものも汚いように感じる。
奴等は俺達の存在に気が付くと下卑た笑いを浮かべて鉄格子に飛び付いて手を伸ばし、まるで救いを求めるように女に縋りつこうとする。その騒ぎを聞きつけた他の檻からも手が伸び、一列に並んでいる鉄格子から無数の手が生え蠢いている様子は気持ちの良いものではない。それに加えて彼女達に向けて上げられる罵倒とも取れる声に恐怖し、怯えて、モニカとティナが ギュッ としがみ付いてきたのも仕方のない事だろう。
「恐らくハーキース卿のご想像の奴隷はこのような者でしょう?ですがこれは最下層の奴隷、あまりお見せ出来るモノではない事は見て頂ければ一目瞭然です。もう十分かと思いますので上へと参りましょう」
バスチアスの声で引き返し階段へと戻ると、彼と一緒に部屋に来ていた執事風の男が扉の脇で立っており『あれ?居たの?』と思ったが気にせず階段を登った。
「さて地下一階軽犯罪者奴隷のフロアですが、ここにもお客様は入られません。ただ稀にモノ好きな方や人選をご自分でなさりたい方は足を運ばれることはございます。
軽犯罪者奴隷は努力次第で更生を認められる事もある奴隷ですが、その実例はとても少ないというのが現実です。と言うのは、人間は一度楽な道を覚えてしまうと歯止めが効かなくなり、自分では駄目だと分かっていても楽をしようとする心理が働いてしまうのです。
ここも先程と同じで白線より近付かないようにお願いします」
そう言って今度は自ら先頭に立ち、牢屋とも言える鉄格子の部屋の前を歩き始めた。
地下二階と同じ作りなのに内に居る人の雰囲気でこうも印象が変わるモノなのかと思い知らされるほど静かな地下一階は、奴隷の身なりも先程よりは全然マシで、綺麗とは言えないが一週間洗ってない服を着ている、といった程度だ。
五人一組で部屋に居る奴隷達の表情は様々で、絶望感漂う顔や、明らかに暇だと訴える余裕そうな顔、中には目を瞑り瞑想に耽っている者もいた。
俺達が遠巻きに中を覗きながら通って行っても声をかけてくる者も少なく、先程のような下品な言葉も掛からない。たまに良い暇つぶしくらいに思った奴が野次を飛ばして来るぐらいで静かなものだった。
「まぁ、見てもさして面白いものではないのでこのような感じと受け取って頂けたら私としてはそれで満足です。
犯罪者奴隷は重、軽共に売買するのに特別な許可が必要となります。一番の要因としては人々を困らせた犯罪者を再び世間に逃がしてしまっては平和に暮らす民の生活が脅かされるからです。ですからそのような配慮をしつつ適切に取引の出来る者にだけ許可が与えられるのです。
それぞれ厳選な審査が行われるのですが、私は重犯罪者、軽犯罪者の両方を取り扱う事をサルグレッド王国から許可を頂いて営業を行っております。
その私を筆頭としたパーニョン奴隷商会が奴隷という身分に陥ってしまった人々をどのように扱っているのか、また、奴隷とはどのような存在なのかを見て頂く為に、まずは最上階である四階へと参りましょう」
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