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第六章 ダンジョンはお嫌い?
50.母さん、妹が増えました
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「皆様のこれまでの攻略ペースを考えますと……」
時刻はお昼過ぎだったのだがベルモンテの勧めに従いそのまま第四十四層へと向かった。
これまた目印も何も見当たらないだだっ広いだけの荒野、足元には膝丈の細い草が密度薄く生えており、やせ細った大地といったイメージのフロアだった。
ここならばと魔導車を取り出すとベルモンテが興味深げに見ている。
「これが皆様の移動速度の秘密なのですね。徒歩ではあり得ない速度だったので不思議に思っていたのです」
道案内をすると言ったベルモンテを一番前の席に乗せると少しだけ ワクワク している様子が伺える。最初は内面的な感情が無いのかと思ったが、俺達に触発されてか段々と人間味が増してきている気がする。もしかして成長していたり?
席が足りなくなったので雪を俺の膝に乗せると嬉しそうに前を覗き込んでいた。
「ほら、雪、動くから座って」
「はい、トトさま」
ちょこんと大人しく座ったのを見計らい操作球に魔力を通せば僅かな浮遊感を感じさせて車体が浮き上がる。
その動きだけでも楽しいのか、両手を胸の前で組んだベルモンテは精一杯の “愉しい” という感情を顔に表し俺を見つめてくるので何とも言えず微笑ましい。
「じゃあ、動くよ」
そうして進み始めた魔導車、人間が走るよりも遥かに早いスピードで流れて行く景色を眺めているだけでニコニコとした表情をしているベルモンテと、初めての一番前の席ではしゃいでいる雪にほっこりしているとモニカが身を乗り出して来た。
「はいっ、三人分だって」
差し出されたはお皿に乗ったサンドイッチ、そういえば昼食はまだだったなと皿を受け取ると、その一つが持ち上げられ俺の口に運ばれてくる。
魔導車の運転で片手しか使えない俺の為にモニカが気を利かせてくれたのだ、なんと優しい妻でしょう!
それに齧り付くとチーズの匂いと共に薄く切られたハムの塩気が口に広がりつつもレタスがそれを程よく抑え、更に シャキシャキ とした食感が美味しさを倍増させる。
「んま~っ」
作ってくれたエレナに向き直り感謝の気持ちを込めてそう言うと「ありがとうございます」と微笑んでくれた。
雪にも一つ取らせて、最後の一つの乗った皿をベルモンテの前に出すと、黒い瞳しかない目を パチパチ とさせて戸惑いを見せたのだが、空気を読んで一先ず手に取った。
そして笑えたのが、すぐ後ろに座る彼女の頼れる人に振り返り『どうしよう』と困った顔を見せたのだ。
そのミカエラは苦笑いを浮かべると、皆に気付かれないようにと極々小さく頷けばベルモンテの顔に “嬉しい” の表情が現れる。
あまり見ていてはダメと思ったのか、すぐに座り直すと手にしたサンドイッチをまじまじと見つめ、意を決したかのように桃色の小さな唇を開くと はむっ と小さく齧り付いた。
その姿は、まだあまり物を知らない小さな子供のようで、可愛過ぎて キュン と来るものがある。
造られた筈の彼女は物を食べられるどころか、どうやら味覚まであるらしく、初めて口にする食べ物の味を噛みしめるように楽しげに口を動かしている。
「いつもは何を食べてるの?」
キョトン として俺を見ると『返事をしなくては!』と、口の中の物を名残惜しげに飲み込む様子にまで可愛らしさが滲み出ていると感じる。どうやら俺はこの “見た目は美女、中身は子供” のベルモンテの魅力にやられてしまったようだ。
「私はゴーレムなので人間のように食べ物を必要としません。このダンジョンから得られるマスターの魔力があれば、私を形作る為のコアさえ壊れない限り永久に活動する事が出来るのです」
返事し終わると時間を惜しむように、すぐに残りのサンドイッチを口に入れて食べ始める。
そうかそうか、本当に食べ物というモノ自体が初めてなのだな。それが気に入ってもらえたのは喜ぶべき事だろう。
「どう?うまい?」
コクコクと小刻みに頷く顔には一切の嘘が無く、本当に心から “美味しい” と思っている様子だ。その後もなんでもないサンドイッチをとても大事なモノのように味わってゆっくりと食べるベルモンテが微笑ましく、食べ終わるまでその様子をずっと見ていた。
「ところでさ、このフロアには魔物はいないのか?」
僅かに目を大きく広げて ハッ とした表情を見せたものの、どうしようかと少しだけ迷いを見せるが微笑みへと変わる。
「えっとですね、少し色々な事が重なってしまい来られなくなったようですね……」
「それはつまり、魔導車と初めての食事にに夢中になってて命令を出すのを忘れてたって事だな?」
「…………恥ずかしながらおっしゃる通りです」
この短時間で妙に人間臭くなって来たベルモンテ、そんなおっちょこちょいな所も可愛く思え、しょうがない奴だなぁと何でも許してしまえる気になる。
身体は大きいが、雪より年下の娘か、もしくは妹でも出来たような感じがする。
「ですが、もうすぐこの階層のボス部屋です。剣を跳ね返す弾力のあるボディに、魔法の耐性も高い厄介な相手ですが、皆様はどう戦われるのか楽しみに致しておきますわ」
どんな系統の魔物かも分からないがそこそこ強いのだろうか。これまでのボスは難なく倒してきた俺達にとっては大した事がない可能性の方が高いんだよなぁ……。
△▽
「キモい!」
「うん、キモい」
「そうですか?私は特になんとも思いませんが……」
「アンタ、感覚がおかしいのよ」
「まぁ、好きだと言う人はあまりいないでしょうね」
開口一番けちょんけちょんに貶されたのは、ピンク色をした直径一メートルを超える細なが~~い身体をクネクネとくねらせてこちらを伺う素ぶりを見せる畑でよく見かける奴のでっかいバージョン。
地面から出ているだけでも二十メートル程はあり、残りは地面の下なので全長はどれ程の物なのかは分からない。
頭と思しき先端から二メートル程が十字に裂けており、その間から見えるびっしりと並んだギザギザした小さな白い歯が気持ちの悪さを助長している。
多少の違いはあれど、一言で言えば “巨大ミミズ” 意外にはないだろう。
ベルモンテによれば《タリロンブリス》と呼ばれる魔物で、見た目に反してなかなかに厄介なのだそうだ。
「んで、誰がやるよ?」
視線を逸らす女性陣に白い目を向けるものの誰もこっちを見ようとしない。完全に拒否の姿勢だな……。
アルはどうかというと、剣が効かないと予備知識を貰っているので、絶賛魔法練習中には厳しいと思われる。
消去法で行けば俺になるわけだが、俺が倒してもみんなの鍛錬にはならないんだけどなぁと思いつつも白結氣と朔羅を手にした。
時刻はお昼過ぎだったのだがベルモンテの勧めに従いそのまま第四十四層へと向かった。
これまた目印も何も見当たらないだだっ広いだけの荒野、足元には膝丈の細い草が密度薄く生えており、やせ細った大地といったイメージのフロアだった。
ここならばと魔導車を取り出すとベルモンテが興味深げに見ている。
「これが皆様の移動速度の秘密なのですね。徒歩ではあり得ない速度だったので不思議に思っていたのです」
道案内をすると言ったベルモンテを一番前の席に乗せると少しだけ ワクワク している様子が伺える。最初は内面的な感情が無いのかと思ったが、俺達に触発されてか段々と人間味が増してきている気がする。もしかして成長していたり?
席が足りなくなったので雪を俺の膝に乗せると嬉しそうに前を覗き込んでいた。
「ほら、雪、動くから座って」
「はい、トトさま」
ちょこんと大人しく座ったのを見計らい操作球に魔力を通せば僅かな浮遊感を感じさせて車体が浮き上がる。
その動きだけでも楽しいのか、両手を胸の前で組んだベルモンテは精一杯の “愉しい” という感情を顔に表し俺を見つめてくるので何とも言えず微笑ましい。
「じゃあ、動くよ」
そうして進み始めた魔導車、人間が走るよりも遥かに早いスピードで流れて行く景色を眺めているだけでニコニコとした表情をしているベルモンテと、初めての一番前の席ではしゃいでいる雪にほっこりしているとモニカが身を乗り出して来た。
「はいっ、三人分だって」
差し出されたはお皿に乗ったサンドイッチ、そういえば昼食はまだだったなと皿を受け取ると、その一つが持ち上げられ俺の口に運ばれてくる。
魔導車の運転で片手しか使えない俺の為にモニカが気を利かせてくれたのだ、なんと優しい妻でしょう!
それに齧り付くとチーズの匂いと共に薄く切られたハムの塩気が口に広がりつつもレタスがそれを程よく抑え、更に シャキシャキ とした食感が美味しさを倍増させる。
「んま~っ」
作ってくれたエレナに向き直り感謝の気持ちを込めてそう言うと「ありがとうございます」と微笑んでくれた。
雪にも一つ取らせて、最後の一つの乗った皿をベルモンテの前に出すと、黒い瞳しかない目を パチパチ とさせて戸惑いを見せたのだが、空気を読んで一先ず手に取った。
そして笑えたのが、すぐ後ろに座る彼女の頼れる人に振り返り『どうしよう』と困った顔を見せたのだ。
そのミカエラは苦笑いを浮かべると、皆に気付かれないようにと極々小さく頷けばベルモンテの顔に “嬉しい” の表情が現れる。
あまり見ていてはダメと思ったのか、すぐに座り直すと手にしたサンドイッチをまじまじと見つめ、意を決したかのように桃色の小さな唇を開くと はむっ と小さく齧り付いた。
その姿は、まだあまり物を知らない小さな子供のようで、可愛過ぎて キュン と来るものがある。
造られた筈の彼女は物を食べられるどころか、どうやら味覚まであるらしく、初めて口にする食べ物の味を噛みしめるように楽しげに口を動かしている。
「いつもは何を食べてるの?」
キョトン として俺を見ると『返事をしなくては!』と、口の中の物を名残惜しげに飲み込む様子にまで可愛らしさが滲み出ていると感じる。どうやら俺はこの “見た目は美女、中身は子供” のベルモンテの魅力にやられてしまったようだ。
「私はゴーレムなので人間のように食べ物を必要としません。このダンジョンから得られるマスターの魔力があれば、私を形作る為のコアさえ壊れない限り永久に活動する事が出来るのです」
返事し終わると時間を惜しむように、すぐに残りのサンドイッチを口に入れて食べ始める。
そうかそうか、本当に食べ物というモノ自体が初めてなのだな。それが気に入ってもらえたのは喜ぶべき事だろう。
「どう?うまい?」
コクコクと小刻みに頷く顔には一切の嘘が無く、本当に心から “美味しい” と思っている様子だ。その後もなんでもないサンドイッチをとても大事なモノのように味わってゆっくりと食べるベルモンテが微笑ましく、食べ終わるまでその様子をずっと見ていた。
「ところでさ、このフロアには魔物はいないのか?」
僅かに目を大きく広げて ハッ とした表情を見せたものの、どうしようかと少しだけ迷いを見せるが微笑みへと変わる。
「えっとですね、少し色々な事が重なってしまい来られなくなったようですね……」
「それはつまり、魔導車と初めての食事にに夢中になってて命令を出すのを忘れてたって事だな?」
「…………恥ずかしながらおっしゃる通りです」
この短時間で妙に人間臭くなって来たベルモンテ、そんなおっちょこちょいな所も可愛く思え、しょうがない奴だなぁと何でも許してしまえる気になる。
身体は大きいが、雪より年下の娘か、もしくは妹でも出来たような感じがする。
「ですが、もうすぐこの階層のボス部屋です。剣を跳ね返す弾力のあるボディに、魔法の耐性も高い厄介な相手ですが、皆様はどう戦われるのか楽しみに致しておきますわ」
どんな系統の魔物かも分からないがそこそこ強いのだろうか。これまでのボスは難なく倒してきた俺達にとっては大した事がない可能性の方が高いんだよなぁ……。
△▽
「キモい!」
「うん、キモい」
「そうですか?私は特になんとも思いませんが……」
「アンタ、感覚がおかしいのよ」
「まぁ、好きだと言う人はあまりいないでしょうね」
開口一番けちょんけちょんに貶されたのは、ピンク色をした直径一メートルを超える細なが~~い身体をクネクネとくねらせてこちらを伺う素ぶりを見せる畑でよく見かける奴のでっかいバージョン。
地面から出ているだけでも二十メートル程はあり、残りは地面の下なので全長はどれ程の物なのかは分からない。
頭と思しき先端から二メートル程が十字に裂けており、その間から見えるびっしりと並んだギザギザした小さな白い歯が気持ちの悪さを助長している。
多少の違いはあれど、一言で言えば “巨大ミミズ” 意外にはないだろう。
ベルモンテによれば《タリロンブリス》と呼ばれる魔物で、見た目に反してなかなかに厄介なのだそうだ。
「んで、誰がやるよ?」
視線を逸らす女性陣に白い目を向けるものの誰もこっちを見ようとしない。完全に拒否の姿勢だな……。
アルはどうかというと、剣が効かないと予備知識を貰っているので、絶賛魔法練習中には厳しいと思われる。
消去法で行けば俺になるわけだが、俺が倒してもみんなの鍛錬にはならないんだけどなぁと思いつつも白結氣と朔羅を手にした。
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