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第四章 海まで行こう
44.サプライズのお返し
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翌朝目覚めると、目の前には微笑む俺の妻が居た。一日の始まりが愛する妻の笑顔から始まる、このことほど幸せな出来事が他にあるだろうか?
「おはよう、私の旦那様っ」
「おはよう、俺のお姫様」
「えーっ!そこはさぁ~っ、奥さんとか、お嫁さんとかじゃないの?」
「お姫様の方がもっと可愛らしく感じるだろ?モニカにぴったりじゃないか」
「それはその……」
赤くなるモニカにキスをすると二人でワイノワイノと戯れ合う。あぁ、ずっとこのままで居られたら良いのに……だがそういう時ほど終わりは早く訪れるものだ。
「モニカ?レイ?起きたぁ?先に下に行くからねっ。イチャイチャするのは後ででも出来るから早く来なさいよ」
今日はリーディネを出発する予定だったのだ。サラに「すぐ行く」と返事をすると名残惜しみながらもベッドを出て出発の用意を始める。
すると、モニカがムクッと起き上がり背後から俺に抱きついて来た。
「愛してる、レイシュア」
「俺も愛してるよ、モニカ」
触れ合うだけの口付けをすると、素っ裸のモニカに悪戯しつつも準備を促した。
宿の前にはロンさんと、その奥さんのヴィオレッタさん、ランとリンの双子姉妹と、それに宿の従業員さんがお見送りをする為にわざわざ並んで待っていた。その真ん中にはコレットさんとサラ、それに雪が俺達二人を待っている。
三人ともニコニコしているが何か良い事でもあったのかな?
みんなが待つ宿の前、だが一つおかしな事がある。肝心の馬車が見当たらないのだ。
「ごめん、待たせたね。馬車はどうしたの?」
その言葉を待ってましたとばかりに、コレットさんがニコニコからニヤニヤと笑顔を履き替えた。
「レイ様、昨日の朝食の席で私が言った事、覚えてますか?」
勿論だとも。ウェーバーと似たようなもの、だろ?それが馬車と何か関係あるの?
コレットさんは後ろに隠していた鞄を見せるとこれ見よがしに ポンポン と叩く。益々分からない俺は首が傾くばかりだ。
「さんっ!」
突然指を三本立てて俺に突き出してくるサラ。
「にぃっ!」
今度は笑顔の雪が小さな指を二つ立て、ピースサインのように見せてくる。
「いちっ!」
隣からニュッと伸びた手、モニカが人差し指を立ててニコニコしている。なんなの?なんのカウントダウン?
「ゼローーッ!」
コレットさんが嬉しそうに笑いながら鞄を開くと、そこから黒くてとても大きなものが飛び出し地面に降り立った。
それは黒光りする箱型の乗り物。多少なりとも形は違えど、一度見たら忘れる事のないあの魔導車だった。
「え!?」
その場にいた全員が拍手をする中、取り残された俺は一人唖然としてしまっていた。
なんでこれが此処にあるのか分からない。どういう事?しかもこれって、この状況って……乗って行って良いって事?
「これは国王陛下からのレイ様とサラ様の婚約祝いの品です。レイ様が旅の中で望まれた時に渡すよう預かっておりました。やっとお目見え出来ましたね。
それで先に見せておいて大変申し訳ないのですが、乗る前にですね、せっかくの頂き物ですからここまで乗って来た馬車をレイ様の鞄にしまって来てください。馬はここで預かってもらえる約束をしていますので心配には及びません」
そ、そうか……王城を出る時には既にサラ達の中では婚約が成立していたんだな。
肝心の本人が知らないってどういう事だよっ!サプライズも良いとこだよっ!
それにしてもこんな物を貰っていいのか?それに婚約が発表されたとはいえサラ自身の気持ちもあるだろう?
早く早くとモニカに押されて馬車を片付けに行く。帰ってきた時には既にみんな魔導車に乗っていた。
サラが一番前の席を指差す、俺が運転していいのか!?躊躇しているとモニカはさっさと前の席に座って俺に「はやくぅ」と手招きする。
それに釣られて近寄ると、フロント部分の真ん中、正面から見て一番目立つ場所には、俺が騎士伯となる時に申請したハーキース家としての家紋が彫り込まれた小さな金色のコインが棒で突き刺したかのように取り付けられている。
つまりこの魔導車は正真正銘、俺の物だという証だ。
そのことに感動していると宿の従業員さんが扉を開けてくれるので「ありがとう」と乗り込むと、弾力はあるが座ると少し沈み込むような不思議な座席だった。
差し出された手には細いシルバーのチェーンに繋がれた青い魔石、表面に刻まれた見たこともない紋章を不思議に思いつつも手に取ると淡い光を放っていた。
「それは『魔導キー』と言いまして登録されている魔導車を起動させるのに必要になるものです。それが無いと魔導車を走らせる事が出来ないので失くさないようにお願いします。
魔導車の操作はウェーバーと同じです。真ん中にある黒い玉に手を置いて魔力を通せば思い描いた通りに走ります。
ただ街中では人通りがあるのでスピードを出さないのが暗黙のルールとなっておりますので、その際にはご注意下さい。ちなみに魔導車で人を撥ねるといくらレイ様でも罪に問われますので悪しからず」
コレットさんの説明をワクワクしながら聞き終えるとモニカの席との間にある制御球に手を置く。するとその手の上に指輪の嵌った左手がそっと乗せられた。
「行こうっ」
微笑みを合図に早速魔力を流してみる。フワリと感じる僅かな浮遊感、おおっ!!動いたよ!
ロンさん以下、宿の人達に手を振り別れを告げると、恐る恐るながらも魔導車を進めてみる。
微弱な魔力を流すだけでフワ~っと走る。しかも思う通りに動くから楽しい事この上ない。
リーディネから出ると魔力量を少し増やしただけで物凄いスピードで走り出した。
「ちょっと!お兄ちゃんっ早すぎじゃないの!?人とか轢かないでよ!」
「大丈夫です、そのくらいでは傷一つ付きません」
「違うコレット!そういう問題じゃないでしょう!?お兄ちゃんスピード落として!怖い怖いっ」
俺の運転する魔導車は賑やかだ。マジでこれ楽しいよ!もっと早く出してくれれば良かったのに。
「気が済んだら私にも変わってくださいね!」
更に危険なヤツが後ろで目を光らせている事に気が付いていたのは、俺だけのようだった……。
「おはよう、私の旦那様っ」
「おはよう、俺のお姫様」
「えーっ!そこはさぁ~っ、奥さんとか、お嫁さんとかじゃないの?」
「お姫様の方がもっと可愛らしく感じるだろ?モニカにぴったりじゃないか」
「それはその……」
赤くなるモニカにキスをすると二人でワイノワイノと戯れ合う。あぁ、ずっとこのままで居られたら良いのに……だがそういう時ほど終わりは早く訪れるものだ。
「モニカ?レイ?起きたぁ?先に下に行くからねっ。イチャイチャするのは後ででも出来るから早く来なさいよ」
今日はリーディネを出発する予定だったのだ。サラに「すぐ行く」と返事をすると名残惜しみながらもベッドを出て出発の用意を始める。
すると、モニカがムクッと起き上がり背後から俺に抱きついて来た。
「愛してる、レイシュア」
「俺も愛してるよ、モニカ」
触れ合うだけの口付けをすると、素っ裸のモニカに悪戯しつつも準備を促した。
宿の前にはロンさんと、その奥さんのヴィオレッタさん、ランとリンの双子姉妹と、それに宿の従業員さんがお見送りをする為にわざわざ並んで待っていた。その真ん中にはコレットさんとサラ、それに雪が俺達二人を待っている。
三人ともニコニコしているが何か良い事でもあったのかな?
みんなが待つ宿の前、だが一つおかしな事がある。肝心の馬車が見当たらないのだ。
「ごめん、待たせたね。馬車はどうしたの?」
その言葉を待ってましたとばかりに、コレットさんがニコニコからニヤニヤと笑顔を履き替えた。
「レイ様、昨日の朝食の席で私が言った事、覚えてますか?」
勿論だとも。ウェーバーと似たようなもの、だろ?それが馬車と何か関係あるの?
コレットさんは後ろに隠していた鞄を見せるとこれ見よがしに ポンポン と叩く。益々分からない俺は首が傾くばかりだ。
「さんっ!」
突然指を三本立てて俺に突き出してくるサラ。
「にぃっ!」
今度は笑顔の雪が小さな指を二つ立て、ピースサインのように見せてくる。
「いちっ!」
隣からニュッと伸びた手、モニカが人差し指を立ててニコニコしている。なんなの?なんのカウントダウン?
「ゼローーッ!」
コレットさんが嬉しそうに笑いながら鞄を開くと、そこから黒くてとても大きなものが飛び出し地面に降り立った。
それは黒光りする箱型の乗り物。多少なりとも形は違えど、一度見たら忘れる事のないあの魔導車だった。
「え!?」
その場にいた全員が拍手をする中、取り残された俺は一人唖然としてしまっていた。
なんでこれが此処にあるのか分からない。どういう事?しかもこれって、この状況って……乗って行って良いって事?
「これは国王陛下からのレイ様とサラ様の婚約祝いの品です。レイ様が旅の中で望まれた時に渡すよう預かっておりました。やっとお目見え出来ましたね。
それで先に見せておいて大変申し訳ないのですが、乗る前にですね、せっかくの頂き物ですからここまで乗って来た馬車をレイ様の鞄にしまって来てください。馬はここで預かってもらえる約束をしていますので心配には及びません」
そ、そうか……王城を出る時には既にサラ達の中では婚約が成立していたんだな。
肝心の本人が知らないってどういう事だよっ!サプライズも良いとこだよっ!
それにしてもこんな物を貰っていいのか?それに婚約が発表されたとはいえサラ自身の気持ちもあるだろう?
早く早くとモニカに押されて馬車を片付けに行く。帰ってきた時には既にみんな魔導車に乗っていた。
サラが一番前の席を指差す、俺が運転していいのか!?躊躇しているとモニカはさっさと前の席に座って俺に「はやくぅ」と手招きする。
それに釣られて近寄ると、フロント部分の真ん中、正面から見て一番目立つ場所には、俺が騎士伯となる時に申請したハーキース家としての家紋が彫り込まれた小さな金色のコインが棒で突き刺したかのように取り付けられている。
つまりこの魔導車は正真正銘、俺の物だという証だ。
そのことに感動していると宿の従業員さんが扉を開けてくれるので「ありがとう」と乗り込むと、弾力はあるが座ると少し沈み込むような不思議な座席だった。
差し出された手には細いシルバーのチェーンに繋がれた青い魔石、表面に刻まれた見たこともない紋章を不思議に思いつつも手に取ると淡い光を放っていた。
「それは『魔導キー』と言いまして登録されている魔導車を起動させるのに必要になるものです。それが無いと魔導車を走らせる事が出来ないので失くさないようにお願いします。
魔導車の操作はウェーバーと同じです。真ん中にある黒い玉に手を置いて魔力を通せば思い描いた通りに走ります。
ただ街中では人通りがあるのでスピードを出さないのが暗黙のルールとなっておりますので、その際にはご注意下さい。ちなみに魔導車で人を撥ねるといくらレイ様でも罪に問われますので悪しからず」
コレットさんの説明をワクワクしながら聞き終えるとモニカの席との間にある制御球に手を置く。するとその手の上に指輪の嵌った左手がそっと乗せられた。
「行こうっ」
微笑みを合図に早速魔力を流してみる。フワリと感じる僅かな浮遊感、おおっ!!動いたよ!
ロンさん以下、宿の人達に手を振り別れを告げると、恐る恐るながらも魔導車を進めてみる。
微弱な魔力を流すだけでフワ~っと走る。しかも思う通りに動くから楽しい事この上ない。
リーディネから出ると魔力量を少し増やしただけで物凄いスピードで走り出した。
「ちょっと!お兄ちゃんっ早すぎじゃないの!?人とか轢かないでよ!」
「大丈夫です、そのくらいでは傷一つ付きません」
「違うコレット!そういう問題じゃないでしょう!?お兄ちゃんスピード落として!怖い怖いっ」
俺の運転する魔導車は賑やかだ。マジでこれ楽しいよ!もっと早く出してくれれば良かったのに。
「気が済んだら私にも変わってくださいね!」
更に危険なヤツが後ろで目を光らせている事に気が付いていたのは、俺だけのようだった……。
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